法律事務所の事務職とは?仕事内容を徹底解説

コラム

法律事務所の事務職の仕事内容について、具体的なイメージをお持ちですか?一般事務やパラリーガルとの違い、弁護士を支える多岐にわたる業務、そして求められるスキルややりがいまで、この記事で全てが分かります。未経験からこの仕事を目指すための具体的な方法も徹底解説。この記事を読めば、法律事務所の事務職の全貌が明らかになり、あなたがこの仕事に向いているか、どうすれば挑戦できるかの具体的な道筋が見えてくるでしょう。

法律事務所の事務職とは何か

法律事務所の事務職とは、弁護士やパラリーガルといった法律専門職が、円滑に業務を遂行できるよう、事務所運営に関わる幅広い事務作業をサポートする職種です。一般的な企業における事務職と同様に、電話応対や書類作成、データ入力などの業務を担当しますが、法律事務所特有の専門性高い守秘義務が求められる点が大きな特徴です。

法律に関する専門知識が必須ではないケースも多く、未経験からでも挑戦しやすい職種の一つとされていますが、法律事務所の業務は依頼者の人生を左右する重要な内容を含むため、確性、丁寧さ、そして高い倫理観が常に求められます。法律の知識は実務を通して習得していくことが可能です。

一般的な事務職との違い

法律事務所の事務職は、その名の通り「事務職」ではありますが、一般的な企業で働く事務職とは異なる特性を持っています。最も大きな違いは、取り扱う情報が法律に関わる専門的かつ機密性の高いものである点、そして業務の背景に常に「法律」が存在することです。

項目一般企業の事務職法律事務所の事務職
業務内容の特性社内文書作成、データ入力、備品管理、電話・来客応対など、多岐にわたるが業界特有の専門性は低い場合が多い。弁護士のサポート(訴訟書類の補助、裁判所への提出代行)、法律相談の受付、依頼者との連絡調整、法律専門用語を用いた書類管理など、法律業務に特化した内容が含まれる。
求められる知識PCスキル(Word, Excelなど)、ビジネスマナー、コミュニケーション能力が中心。上記に加え、基本的な法律用語、裁判手続きの流れ、関連法令への理解が求められる。また、法律事務所特有のシステムや書式に慣れる必要がある。
守秘義務の重さ企業秘密や個人情報など一般的な守秘義務。依頼者のプライバシー、事件内容、交渉状況など、非常に機密性の高い情報を取り扱うため、より厳格な守秘義務が課せられる。違反は重大な結果を招く可能性がある。
責任とプレッシャー業務の正確性が求められるが、直接的に他者の権利や財産に影響することは比較的少ない。作成する書類や手続きのミスが、依頼者の権利や裁判の結果に直接影響を与える可能性があるため、高い正確性とプレッシャーが伴う。

パラリーガルとの違い

法律事務所には「事務職」の他に「パラリーガル」という職種も存在します。これら二つの職種は、弁護士をサポートするという共通点を持つものの、その役割業務の専門性において明確な違いがあります。

項目法律事務所の事務職パラリーガル
主な役割事務所の円滑な運営を支える一般的な事務作業全般を担当。弁護士やパラリーガルが本業に集中できるよう、バックオフィス業務を担う。弁護士の指示・監督のもと、法律事務に関する専門的業務を行う。法律知識を活かし、より専門的な調査や書類作成補助に深く関わる。
業務の専門性電話・来客応対、郵便物管理、備品管理、経理補助、簡単な書類作成補助、データ入力など、事務処理能力が重視される。事実関係の調査、判例・文献調査、法律文書(訴状、準備書面など)のドラフト作成、証拠収集補助、裁判所への提出代行など法律知識を活用した専門性が求められる。
求められる知識・スキルPCスキル、ビジネスマナー、コミュニケーション能力、正確性、丁寧さ、守秘義務の徹底。法律知識は入所後に習得するケースも多い。法律に関する深い知識と理解、論理的思考力、リサーチ能力、文章作成能力。実務経験や専門の教育課程を修了していることが多い。
キャリアパス事務職としての専門性を高める、または経験を積んでパラリーガルへの転身を目指すケースもある。法律専門職としてのキャリアを深め、より高度な案件に携わる。弁護士資格取得を目指す者もいる。

法律事務所における主な役割と立ち位置

法律事務所という特殊な環境において、事務職員の役割と立ち位置は非常に重要です。弁護士が本来の業務である法律相談、弁護活動、裁判対応などに集中できるのは、事務職の献身的なサポートがあるからこそです。

主な役割と立ち位置は以下の通りです。

  • 弁護士の業務を円滑に進めるためのサポート
    弁護士が多忙な日々を送る中で、事務職は書類作成の補助、スケジュール管理、資料収集と整理、裁判所や官公庁への書類提出代行など、弁護士の「手足」となって業務を支えます。これにより、弁護士はより高度な法的判断や戦略立案に時間を割くことができます
  • 事務所の運営管理
    来客応対、電話応対、郵便物管理、備品管理と発注、経理補助など、事務所がスムーズに機能するための基盤となる事務処理全般を担います。これらの業務が滞りなく行われることで、事務所全体の生産性が向上します。
  • 依頼者との窓口
    法律相談の受付や依頼者からの問い合わせ対応など、依頼者が最初に接する事務所の「顔」となることも少なくありません。親切かつ丁寧な対応は、依頼者からの信頼を得る上で不可欠であり、事務所の印象を大きく左右します。
  • 情報の管理と保護
    依頼者のプライベートな情報や係争内容に関わる機密性の高い書類など、重要な情報を正確に管理し、厳格な守秘義務を徹底します。情報の適切な管理は、依頼者の信頼を守り、事務所の信用を維持するために極めて重要です。
  • チームの一員としての貢献
    弁護士、パラリーガル、他の事務職員と密に連携し、チームとして事件解決や事務所運営に貢献します。個々の業務が連携し合うことで、より効率的かつ質の高いリーガルサービスを提供することが可能になります。

法律事務所の事務職の具体的な仕事内容

法律事務所の事務職は、弁護士が円滑に業務を遂行できるよう、多岐にわたるサポート業務を行います。その仕事内容は、一般的な企業の事務職とは異なり、法律事務特有の専門性が求められる場面も少なくありません。ここでは、具体的な業務内容を詳しく解説します。

弁護士のサポート業務

法律事務所の事務職の核となるのが、弁護士の業務を直接的に支えるサポート業務です。これには、法律文書の作成補助からスケジュール管理資料収集まで、幅広いタスクが含まれます。

書類作成補助

弁護士が作成する多種多様な法律文書について、その作成を補助します。具体的には、弁護士の指示に基づき、既存の書式やテンプレートを用いて、訴状、答弁書、準備書面といった裁判所に提出する書類や、内容証明郵便、契約書の下書き、遺言書などの作成をサポートします。法律用語や専門知識に触れる機会が多く、正確性と細部への注意力が極めて重要となります。

スケジュール管理

弁護士の多忙なスケジュールを管理し、業務が滞りなく進むようにサポートします。裁判の期日、依頼者との打ち合わせ、出張、講演会などの日程調整を行い、リマインダー設定や移動手段の手配なども担当します。弁護士が本来の業務に集中できるよう、時間を効率的に管理する能力が求められます。

資料収集と整理

事件や相談内容に応じて、必要な資料の収集と整理を行います。これには、判例や文献の調査、公的機関(法務局、市役所など)からの情報収集、依頼者から預かった資料の整理・ファイリングなどが含まれます。収集した資料は、弁護士がすぐに参照できるよう、体系的に整理し、必要に応じてデータベース化する作業も行います。情報収集能力と整理整頓のスキルが不可欠です。

来客と電話対応

法律事務所の事務職は、事務所の「顔」として、来客や電話の対応も重要な業務です。外部との最初の接点となるため、丁寧で適切な対応が求められます。

法律相談の受付

法律相談を希望する方からの問い合わせに対応し、初回相談の予約受付を行います。相談内容の概要を簡単にヒアリングし、適切な担当弁護士への引き継ぎや、相談に必要な書類の案内なども行います。依頼者の不安に寄り添い、安心感を与える対応が重要です。

依頼者対応

来所した依頼者の応対、お茶出し、書類の受け渡し、簡単な問い合わせへの対応などを行います。依頼者とのコミュニケーションを通じて、弁護士と依頼者の橋渡し役を担うこともあります守秘義務を厳守しつつ、丁寧で親身な対応が求められます。

電話応対と取次ぎ

外部からの電話対応を行い、弁護士への取次ぎや、伝言メモの作成などを行います。裁判所や相手方からの連絡、新規の問い合わせなど、様々な電話に対応するため、状況を正確に把握し、適切に判断する能力が必要です。

事務所内の事務処理

法律事務所の円滑な運営を支えるため、一般的な事務処理も重要な業務です。これには、経理補助から備品管理まで、幅広い庶務が含まれます

業務内容具体的なタスク
郵便物管理事務所に届く郵便物の受領、開封、内容確認、弁護士への配布、そして発送業務(郵便局への持ち込み、宅配便の手配など)を行います。重要な書類の紛失がないよう、細心の注意を払います。
備品管理と発注文房具、事務用品、書籍、OA機器などの事務所備品の在庫を管理し、不足が生じないように発注・補充を行います。快適な執務環境を維持するための縁の下の力持ちです。
経理補助領収書の整理、出納帳への入力、請求書や領収書の発行補助、交通費などの経費精算補助など、事務所の会計処理の一部をサポートします。正確な数字の取り扱いが求められます。
データ入力とファイリング依頼者情報、事件情報、会計データなどを専用システムやExcelに入力します。また、紙媒体の書類を整理し、電子化(スキャン)して保存する作業も行います。情報の一元管理と検索性の向上に貢献します。

裁判所や官公庁への対応

法律事務所の事務職は、裁判所やその他の公的機関への書類提出や情報取得も重要な業務の一つです。これらは弁護士の訴訟活動や各種手続きに不可欠な作業です。

書類提出代行

弁護士が作成した訴状、答弁書、準備書面などの裁判書類を、裁判所に提出しに行きます。また、法務局での登記関連書類の提出、検察庁での書類受領、市役所や区役所での住民票・戸籍謄本などの取得など、各種公的機関への書類提出や受領を代行します。

謄写業務

裁判記録の謄写(コピー)取得や、法務局での登記簿謄本、戸籍謄本、住民票などの公的書類の謄写取得を行います。これらの書類は、事件の証拠や手続きに必要な情報源となるため、迅速かつ正確な取得が求められます。

法律事務所の事務職に求められるスキルと知識

法律事務所の事務職として活躍するためには、一般的なビジネススキルに加えて、法律事務所ならではの専門的な知識や心構えが不可欠です。ここでは、具体的にどのようなスキルが求められるのかを詳しく解説します。

基本的なビジネススキル

どのような職場でも共通して求められる基本的なビジネススキルは、法律事務所の事務職においても土台となります。これらのスキルを習得していることは、業務を円滑に進める上で非常に重要です。

PCスキル

法律事務所の業務は、PCなしでは成り立ちません。書類作成、データ管理、情報収集など、多岐にわたる業務でPCを駆使します。特に以下のスキルは必須と言えるでしょう。

スキル項目具体的内容と求められるレベル
Word契約書、訴状、準備書面など、様々な法律文書の作成・編集能力。書式設定、目次作成、変更履歴の管理などがスムーズに行えること。
Excel依頼者情報、事件管理、経費計算などのデータ入力・管理。基本的な関数(SUM、AVERAGEなど)、並べ替え、フィルター機能などが使いこなせること。
PowerPoint説明資料やプレゼンテーション資料の作成補助。基本的なスライド作成、図表の挿入などができること。
タイピングスキル正確かつスピーディーな文字入力能力。大量の書類作成やデータ入力に対応するためには不可欠です。
インターネット検索必要な情報(法令、判例、ニュースなど)を効率的に検索し、正確な情報を特定する能力。

コミュニケーション能力

法律事務所の事務職は、所内外の多くの人々と接する機会があります。弁護士、依頼者、裁判所職員、他士業、取引先など、様々な立場の人々と円滑なコミュニケーションを図る能力が求められます。

  • 傾聴力:依頼者の話を丁寧に聞き、必要な情報を正確に把握する能力。
  • 説明力:弁護士からの指示や、依頼者への連絡事項を分かりやすく伝える能力。
  • 質問力:不明点や疑問点を的確に質問し、誤解なく業務を進める能力。
  • 協調性:弁護士や他のスタッフと協力し、チームとして業務を遂行する能力。

特に、依頼者は不安や悩みを抱えて来所することが多いため、共感を示し、安心感を与える丁寧な対応が重要になります。

ビジネスマナー

法律事務所は、社会的な信頼が非常に重要な組織です。そのため、基本的なビジネスマナーを身につけていることは必須条件となります。

  • 電話応対:丁寧な言葉遣い、的確な情報伝達、迅速な取次ぎ。
  • 来客応対:笑顔での挨拶、適切な案内、お茶出しなど。
  • 言葉遣い:敬語を正しく使い分け、相手に不快感を与えない言葉遣い。
  • 身だしなみ:清潔感があり、法律事務所にふさわしい服装や髪型。

これらのマナーは、事務所全体の印象を左右し、依頼者からの信頼を得る上で非常に大きな役割を果たします。

法律事務所ならではの専門性

一般的な事務職のスキルに加え、法律事務所という特殊な環境で特に重要となる専門性があります。これらは、法律事務職ならではの責任とやりがいにもつながります。

守秘義務の徹底

法律事務所が扱う情報は、依頼者の個人情報や企業の機密情報など、非常にデリケートな内容がほとんどです。そのため、守秘義務の徹底は、法律事務所の事務職にとって最も重要な心構えの一つです

  • 業務上知り得た情報を外部に漏らさない。
  • 個人情報保護法などの法令を遵守する。
  • 書類やデータの管理を厳重に行い、情報漏洩のリスクを最小限に抑える。

情報漏洩は、依頼者の人生や企業の存続に重大な影響を及ぼす可能性があるため、常に高い倫理観と責任感を持って業務にあたることが求められます。

正確性と丁寧さ

法律事務所で作成される書類やデータは、裁判の証拠となったり、依頼者の権利義務に直接関わったりするため、わずかなミスも許されません

  • 書類作成:誤字脱字がないか、日付や金額、氏名などの情報が正確か、何度も確認する。
  • データ入力:数字や文字の入力ミスがないか、二重チェックを行う。
  • 情報伝達:弁護士や依頼者への伝言が正確か、誤解が生じないように注意する。

一つ一つの業務を丁寧かつ正確にこなす集中力と、ミスを見逃さない細やかな注意力が求められます。

情報収集能力

弁護士の業務をサポートする上で、必要な情報(法令、判例、文献、事件関連情報など)を迅速かつ的確に収集する能力は非常に重要です。

  • データベースの活用:法情報データベース(D1-Law.com、TKCローライブラリーなど)を使いこなす。
  • インターネット検索の応用:公的機関のウェブサイトや信頼できる情報源から必要な情報を効率的に見つけ出す。
  • 資料整理:収集した情報を整理し、弁護士がすぐに利用できる状態にする。

弁護士が本来の業務に集中できるよう、質の高い情報提供でサポートすることが期待されます。

臨機応変な対応力

法律事務所の業務は、突発的な事態や緊急の対応を求められることが少なくありません。例えば、急な来客、裁判所からの連絡、期限が迫った書類作成など、予測不能な状況に直面することもあります。

  • 優先順位の判断:複数の業務が重なった際に、重要度や緊急度に応じて優先順位をつけ、効率的に処理する。
  • 状況判断:予期せぬ事態が発生した際に、冷静に状況を判断し、適切な対応をとる。
  • 柔軟性:ルーティンワークだけでなく、突発的な依頼にも柔軟に対応できる姿勢。

常に冷静さを保ち、状況に応じて最適な行動を選択できる対応力が、円滑な事務所運営には不可欠です。

法律事務所の事務職のやりがいと大変なこと

法律事務所の事務職は、その業務の性質上、一般的な事務職とは異なる独自のやりがいと大変さがあります。社会貢献を実感できる一方で、高い専門性と責任が求められる職種です。

やりがい

法律事務所の事務職は、日々の業務を通じて多くのやりがいを感じることができます。特に、社会貢献性や専門性の向上、そしてチームの一員としての達成感は大きな魅力です。

社会貢献性

法律事務所は、依頼者の抱える法的トラブルを解決し、権利を守ることで社会正義の実現に貢献しています。事務職は、弁護士の業務を支えることで、間接的ではありますが、この社会貢献の一翼を担っていることを実感できます。

例えば、困っている依頼者のために迅速に書類を準備したり、スムーズな手続きをサポートしたりすることで、依頼者が抱える不安の軽減や問題解決に貢献できます。自分の仕事が誰かの役に立っているという実感が、大きなモチベーションとなるでしょう。

専門知識の習得

法律事務所で働く中で、民法、刑法、会社法といった基本的な法律知識はもちろんのこと、訴訟手続きの流れ、契約書の作成方法、登記に関する知識など、多岐にわたる法律実務に関する専門知識が自然と身につきます。

これらの知識は、日々の業務で弁護士とのやり取りや書類作成を通じて習得され、法律用語や専門用語にも慣れることができます。法律に関する知識は、日常生活や将来のキャリアにおいても非常に役立つため、自己成長を求める方にとっては大きな魅力となるでしょう。

弁護士のサポートを通じた達成感

法律事務所の事務職は、弁護士が円滑に業務を進められるよう、多方面からサポートを行います。複雑な事件の資料整理、裁判所への書類提出、期日管理など、弁護士の業務を陰で支える役割です。

自分のサポートがなければ弁護士が本来の業務に集中できないこともあり、弁護士の業務が成功裏に終わった際には、チームの一員として大きな達成感を得られます。特に、難解な事件が解決に導かれたり、依頼者が救われたりした際には、その喜びを共有できるでしょう。

大変なこと

一方で、法律事務所の事務職には、特有の厳しさやプレッシャーも存在します。これらを理解し、適切に対応できる準備が必要です。

守秘義務の重さ

法律事務所では、依頼者のプライバシーに関する情報や、事件の核心に関わる機密情報など、非常にデリケートな情報を数多く取り扱います。そのため、事務職には極めて高い守秘義務が課せられます

情報漏洩は、依頼者の権利を侵害するだけでなく、事務所の信頼を失墜させる重大な問題に発展する可能性があります。業務中に知り得た情報は、家族や友人であっても決して口外してはならず、情報管理には常に細心の注意を払う必要があります。この責任の重さは、一般的な事務職とは大きく異なる点であり、常に意識しておくべきことです。

多岐にわたる業務への対応

法律事務所の事務職の業務内容は非常に幅広く、弁護士のサポート業務から来客・電話対応、事務所内の事務処理、さらには裁判所や官公庁への対応まで多岐にわたります。時には複数の業務を同時並行で進める必要があり、臨機応変な対応力と高いマルチタスク能力が求められます。

急な依頼や緊急の対応が必要となることも少なくなく、常に優先順位を判断し、効率的に業務をこなすスキルが不可欠です。慣れないうちは、業務量の多さや種類の豊富さに戸惑うこともあるかもしれません。

正確性が求められるプレッシャー

法律事務所で取り扱う書類や手続きは、依頼者の権利や財産、さらには人生に直結する重要なものがほとんどです。書類の誤字脱字、数字の間違い、期日の見落としなど、わずかなミスが重大な結果を招く可能性があります。

そのため、事務職には常に高い正確性と細部への注意力が求められます。作成した書類は何度も見直し、ダブルチェックやトリプルチェックを徹底するなど、ミスを未然に防ぐための努力が不可欠です。この正確性を維持するためのプレッシャーは、日々の業務において常に伴うものとなります。

法律事務所の事務職に向いている人向いていない人

法律事務所の事務職は、その専門性と業務の特性から、特定の資質や性格を持つ人が活躍しやすい傾向にあります。ここでは、法律事務所の事務職に向いている人と、そうでない人の特徴を具体的に解説します。

向いている人

法律事務所の事務職は、弁護士の業務を円滑に進める上で不可欠な存在です。そのため、以下のような資質や特性を持つ人が特に向いていると言えるでしょう。

特徴理由・求められる能力
正確性と几帳面さがある人法律事務所の業務では、書類作成、データ入力、ファイリングなど、わずかなミスも許されない正確性が求められます。数字や文字の入力間違い、書類の不備などが、依頼者の不利益や裁判の遅延に直結する可能性があるため、細部まで気を配れる几帳面な姿勢が不可欠です。
守秘義務を徹底できる人依頼者の個人情報や相談内容、事件の進捗状況など、全ての情報が機密事項です。業務上知り得た情報を決して外部に漏らさないという、強い倫理観と守秘義務意識が最も重要視されます。
コミュニケーション能力が高い人弁護士、依頼者、裁判所、官公庁、他士業など、多岐にわたる関係者と連携を取る機会が頻繁にあります。状況に応じた適切な言葉遣いと対応ができ、円滑な人間関係を築ける能力が求められます。
責任感が強く、プロ意識がある人弁護士のサポート業務は、依頼者の人生を左右する重要な案件に関わることも少なくありません。自分の仕事が全体のプロセスにどう影響するかを理解し、最後まで責任を持って業務を遂行するプロ意識が求められます。
学習意欲と向上心がある人法律は常に改正され、社会情勢も変化します。新しい判例や法改正に対応するため、常に最新の情報を学び、知識をアップデートしていく意欲が重要です。また、業務効率化のための新しいツールやシステム導入にも積極的に対応できる柔軟性も求められます。
冷静沈着で臨機応変な対応ができる人予期せぬトラブルや緊急の対応が求められる場面もあります。そのような時でも慌てずに状況を判断し、適切に対応できる冷静さと、マニュアル通りではない事態にも柔軟に対応できる臨機応変さが重要です。
マルチタスク処理能力がある人複数の案件や業務を同時に抱えることが日常茶飯事です。それぞれの優先順位を判断し、効率的に業務を並行して進めるスキルが求められます。
人の役に立ちたいという奉仕の精神がある人弁護士のサポートを通じて、依頼者の問題解決に貢献するという社会貢献性の高い仕事です。困っている人の助けになりたいという気持ちが、日々の業務のモチベーションにつながります。

向いていない人

一方で、以下のような特性を持つ人は、法律事務所の事務職として働く上で困難を感じやすいかもしれません。

特徴理由・課題となる点
大雑把で不正確な作業をする人法律事務では、些細なミスが大きな問題に発展するリスクがあります。確認を怠ったり、細部に注意を払わない姿勢は、この仕事には不向きです。
秘密を守れない、口が軽い人依頼者のプライバシーや機密情報に触れる機会が多いため、守秘義務の意識が低い人は、事務所の信頼を損なうだけでなく、法的な問題を引き起こす可能性もあります。
コミュニケーションが苦手な人弁護士や依頼者、外部機関との円滑な意思疎通が不可欠です。報連相が不足したり、相手の意図を汲み取れないと、業務に支障が出ます。
責任感が希薄な人自分の仕事が依頼者の人生や弁護士の業務に与える影響を理解せず、他人任せにしたり、途中で投げ出すような姿勢は、この仕事には適していません。
変化を嫌い、新しいことを学ぶのが苦手な人法律やITツールの進化に対応できないと、業務の効率化や質の向上についていけなくなります。常に学び続ける意欲が求められるため、変化を拒む姿勢はマイナスです。
感情の起伏が激しい人依頼者の中には精神的に不安定な方もおり、冷静な対応が求められます。また、多忙な環境下でも常に落ち着いて業務を遂行できる精神的な安定性が重要です。
単調な作業やルーティンワークが苦手な人書類の整理やデータ入力など、地道で繰り返し行う作業も多く含まれます。これらの作業を苦痛に感じる人は、長続きしにくいかもしれません。

未経験から法律事務所の事務職を目指すには

未経験でも採用される可能性

法律事務所の事務職は、必ずしも法律の専門知識や実務経験が必須ではありません。未経験者でも採用される可能性は十分にあります。特に、以下のような事務所では未経験者の採用に積極的な傾向が見られます。

  • 中小規模の法律事務所:大手事務所に比べ、個々の弁護士の裁量が大きく、OJT(On-the-Job Training)で育成する体制が整っている場合があります。
  • 若手弁護士が立ち上げた事務所:新しい組織文化の中で、未経験者のフレッシュな視点や柔軟性を評価する傾向があります。
  • 特定の分野に特化していない総合法律事務所:幅広い業務に対応するため、多様なバックグラウンドを持つ人材を求めていることがあります。

未経験者を採用する事務所は、即戦力よりも人柄やポテンシャル、学習意欲を重視します。法律事務の仕事は多岐にわたり、一つずつ丁寧に覚える姿勢が求められるため、真面目さや向上心がある方は高く評価されるでしょう。

アピールすべきポイント

未経験から法律事務所の事務職を目指す場合、これまでの経験を法律事務所の業務にどう活かせるかを具体的にアピールすることが重要です。以下のポイントを意識して、履歴書や職務経歴書、面接で伝えましょう。

基本的なビジネススキル

法律事務所の事務職は、一般企業と同様に基本的なビジネススキルが不可欠です。これまでの職務経験で培ったスキルを具体例を交えてアピールしましょう。

  • PCスキル:Wordでの文書作成、Excelでのデータ管理、Outlookでのメール・スケジュール管理など、基本的なOfficeソフトの操作能力。特に、正確かつ迅速なタイピングスキルは必須です。
  • コミュニケーション能力:弁護士、依頼者、裁判所、官公庁など、多様な立場の人々と円滑に意思疎通を図る能力。相手の意図を正確に理解し、分かりやすく伝える力が求められます。
  • ビジネスマナー:電話応対、来客対応、メールのやり取りなど、社会人としての基本的なマナー。法律事務所は信頼性が重視されるため、丁寧で礼儀正しい対応は非常に重要です。

法律事務所ならではの専門性への意欲

法律事務所特有の業務に対する理解と、それらを習得しようとする強い意欲を示すことが重要です。

  • 守秘義務の徹底への理解と意識:法律事務所の業務において最も重要な要素の一つです。個人情報や機密情報を扱うことの重要性を理解し、厳守する意識があることを示しましょう。
  • 正確性と丁寧さへのこだわり:法律文書の作成や手続きにおいて、わずかなミスが重大な結果を招くことがあります。日頃から物事を正確かつ丁寧に進めることを意識している点をアピールします。
  • 学習意欲と向上心:法律は常に改正され、実務も変化します。新しい知識やスキルを積極的に学び、自己成長に繋げようとする意欲は高く評価されます。
  • 情報収集能力と問題解決能力:複雑な案件や未経験の事態に直面した際に、自ら情報を収集し、解決策を探す能力。過去の経験で課題解決に取り組んだエピソードがあれば効果的です。

取得すると有利な資格

未経験の場合でも、特定の資格を取得しておくことで、法律事務職への適性や意欲を示すことができ、採用において有利に働くことがあります。

以下に、法律事務所の事務職を目指す上で有利となる可能性のある資格をまとめました。

資格名概要と法律事務での関連性
法律事務職員能力認定試験日本弁護士連合会が後援する、法律事務職員の専門知識と実務能力を評価する試験です。法律事務の基礎知識があることを客観的に証明できるため、未経験者にとっては特に有効なアピール材料となります。
日商簿記検定法律事務所でも経理補助業務が発生するため、簿記の知識は役立ちます。特に2級以上を取得していれば、経理業務への適応能力を示すことができます
MOS(Microsoft Office Specialist)WordやExcelなど、Officeソフトの利用スキルを証明する国際資格です。法律事務所の事務職ではPC作業が多いため、実務で必要なPCスキルがあることを具体的に示せます
行政書士、宅地建物取引士などこれらの法律系資格は、法律に関する基礎知識があることを示します。たとえ実務経験がなくても、法律への興味や学習意欲、基本的な法律用語の理解があることをアピールできます。ただし、これらの資格は法律事務職の必須要件ではありません。

これらの資格はあくまで「有利に働く」ものであり、必須ではありません。資格がなくても、これまでの経験で培ったスキルや、法律事務職への強い意欲とポテンシャルをしっかりとアピールすることが最も重要です。

まとめ

法律事務所の事務職は、一般的な事務職とは異なり、弁護士の業務を多角的にサポートする専門性の高い仕事です。書類作成補助から来客対応、経理補助まで多岐にわたる業務を担い、高い正確性と守秘義務が求められます。しかし、社会貢献性の高い仕事であり、法律知識を深めながら弁護士のサポートを通じて大きな達成感を得られるやりがいがあります。法律への関心や責任感が強く、正確な業務遂行ができる方には、非常に魅力的なキャリアパスとなるでしょう。未経験からでも挑戦可能であり、挑戦する価値のある職種です。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所メディア編集部
2024年4月に開業した法律事務所。ベンチャー企業法務、インターネット・IT企業法務、風評被害対策法務、インフルエンサー法務等を中心に幅広いサービスを提供しており、半蔵門駅徒歩1分の千代田区一番町に事務所を構えている。

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