連載シリーズ「広告規制違反FILE」では、消費者庁により公表された広告規制違反の摘発事例について、問題の広告表現と違反の理由、処分の内容などについて、弁護士が分かりやすく速報解説をしていきます。
各規制の具体的なNG例として、実際の広告表現で把握することができますので、是非ご参照ください。
命令概要
対象事業者の類型 | 食品販売事業者 |
対象事業者の取扱商品 | 機能性表示食品 |
課徴金納付命令の日 | 2025年3月19日 |
課徴金納付命令の内容 | 以下の合計額である1億903万円の支払い ①令和4年1月6日から 令和5年6月30日までの間の商品①の売上額14億3526万3319円の3%である4305万円 ②令和2年7月1日から 令和5年6月30日までの間の商品②の売上額21億9966万2934円の3%である6598万円 |
公表資料URL【PDF】 | https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_250319_01.pdf |
問題視された表現
問題となった表現の概要
- 自社ウェブサイト等において、「高めの血圧を下げる機能性サプリ」、「血圧をグーンと下げる」、「機能性表示食品 きなり匠」、「酸化LDLコレステロールを減少させる機能性取得 ○」、「血圧を下げる機能性取得 ○」、「中性脂肪を低下させる機能性取得 ○」と記載のある表等を表示するなどの表示をした
- これによって、①高めの血圧を下げる効果、②血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果、③中性脂肪を低下させる効果があるかのような表示をした
実際の表現
商品①に関して
自社ウェブサイト
「高めの血圧を下げる機能性サプリ」、「血圧をグーンと下げる」、「機能性表示食品 きなり匠」

「酸化LDLコレステロールを減少させる機能性取得 ○」、「血圧を下げる機能性取得 ○」、「中性脂肪を低下させる機能性取得 ○」

容器包装
中性脂肪を低下させる効果、高めの血圧を下げる効果及び血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果があるかのような記載


商品②に関して
自社ウェブサイト
中性脂肪を低下させる効果があるかのような記載

冊子
中性脂肪を低下させる効果があるかのような記載

容器包装
中性脂肪を低下させる効果があるかのような記載

消費者庁が問題視した点
「消費者庁は、それぞれ、景品表示法第8条第3項の規定に基づき、さくらフォレストに対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、さくらフォレストから資料が提出された。しかし、当該資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。」
解説
今回の課徴金納付命令は、機能性表示食品を販売していた事業者の自社ウェブサイト商品ページ、冊子、容器包装において、当該商品には、①高めの血圧を下げる効果、②血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果、③中性脂肪を低下させる効果、があるかのように表示していたところ、消費者庁からの裏付け資料の提出の求めに対して、合理的な根拠を示すことができなかったとして、不当表示のうち、優良誤認表示に該当するとして、令和5年6月30日に発令されていた措置命令が発令されていた件について続く命令です。
景品表示法は、「不当表示」として、以下の3種類の広告を規制しています。
- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- その他一般消費者に誤認されるおそれがある表示として内閣総理大臣の指定するもの
第五条(不当な表示の禁止)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
そして、本件では、このうち、第1号の優良誤認表示に該当すると判断されました。
優良誤認表示は、以下の要件を満たす場合にこれに該当すると考えられています。
要件1 | 商品又は役務の品質、規格その他の内容に関する表示であること |
要件2-a | 一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであること |
要件2-b | 事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すものであること |
本件では、
①高めの血圧を下げる効果
②血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果
③中性脂肪を低下させる効果
があるかのような表示がされていたため、実際にはこれらの効果がなければ、「商品の品質」について、「実際のものよりも著しく優良であると示すもの」に該当します。
そして、この「実際にこれらの効果があるのかどうか」について、景品表示法は不実証広告規制という制度をおいています。
不実証広告規制とは、消費者庁長官が、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる制度です。
このとき、業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(景品等表示法第7条第2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(景品等表示法第8条第3項)。
第七条
(略)
2 内閣総理大臣は、前項の規定による命令(以下「措置命令」という。)に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。
(略)第八条(課徴金納付命令)
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
(略)
3 内閣総理大臣は、第一項の規定による命令(以下「課徴金納付命令」という。)に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示と推定する。
(略)
今回の命令でも、この不実証広告規制が用いられ、①高めの血圧を下げる効果、②血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果、③中性脂肪を低下させる効果、という効果について、資料の提出が求められ、実際に資料が提出されたものの、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められず、優良誤認表示であったと推定されて課徴金納付命令が発令されたという流れとなります。
まとめ
本記事では、2025年3月19日付けの機能性表示食品販売事業者に対する課徴金納付命令について速報解説をしていきました。
次回以降も、「広告規制違反FILE」では、消費者庁の公表した処分について、随時解説をしていきます。
摘発事例の表現を抑え、NGリストとして把握することで、自社の広告規制違反のリスクを回避しましょう。

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。