SNSでの商品紹介の注意点は?法的リスクやPR表記の使い方も!

インフルエンサー法務

インフルエンサーとしてSNSで企業案件の商品紹介を行う際、思わぬ法的リスクに直面する可能性があることをご存知ですか? フォロワーへの影響力を持つインフルエンサーだからこそ、景品表示法や薬機法、著作権など、様々な法律への配慮が不可欠です。

本記事では、インフルエンサーが企業案件で商品紹介を行う際に発生しうる法的リスクと、具体的な注意点を分かりやすく解説します。

ステルスマーケティング(ステマ)の問題点や、健康食品・化粧品に関する広告規制、さらにはPR表記の適切な方法やハッシュタグの使い方まで、実例を交えながら詳しく説明していきます。

インフルエンサーの企業案件における商品紹介と法的リスク

インフルエンサーマーケティングは、企業がインフルエンサーに商品やサービスを紹介してもらうことで、消費者に訴求する効果的なマーケティング手法です。

しかし、SNSでの商品紹介には、法的リスクが伴うことを理解しておく必要があります。法規制を遵守せず、不適切な商品紹介を行うと、企業とインフルエンサーの双方に法的責任が生じる可能性があります。適切な商品紹介を行うためには、関連法規の理解と、企業との綿密な連携が不可欠です。

なぜSNSでの商品紹介で法的リスクが発生するのか

SNSでの商品紹介は、広告と同様に消費者の購買行動に影響を与えるため、景品表示法や薬機法などの法律の規制対象となります。

また、著作権や肖像権、商標権などの知的財産権にも配慮する必要があります。これらの法律に違反した場合、損害賠償請求や業務停止命令などの法的措置を受ける可能性があります。

さらに、企業イメージの低下やインフルエンサーとしての信頼失墜といったリスクも伴います。

景品表示法とステルスマーケティング(ステマ)

景品表示法は、消費者に誤認を与えたり、不当に誘引したりする行為を規制する法律です。SNSでの商品紹介においては、優良誤認表示や有利誤認表示不当表示などに該当しないよう注意が必要です。

特に、ステルスマーケティング(ステマ)は、企業から報酬や提供を受けているにもかかわらず、それを隠して一般消費者の口コミを装う行為であり、景品表示法違反に該当する可能性が高い行為です。消費者に広告であることを明確に伝える必要があります。

表示の種類内容
優良誤認表示実際よりも優良であると誤認させる表示効果が実証されていないダイエットサプリを「痩せるサプリ」と紹介する
有利誤認表示実際よりも取引条件が有利であると誤認させる表示限定価格で販売していない商品を「今だけ限定価格!」と紹介する
その他の不当表示(指定告示)消費者の誤認混同を生じさせるおそれがあるものとして指定されたもの「りんごジュース」という名称だが、りんごの果汁が入っていない商品に「無果汁」などの注意書きを付けずに販売する。
広告らしくない広告について「PR」と付けずに表示する。

参考:消費者庁 景品表示法に関するFAQ

薬機法と健康食品・化粧品の広告

薬機法は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などの品質、有効性、安全性を確保するための法律です。健康食品や化粧品をSNSで紹介する場合、効能効果を謳う表現は厳しく規制されています。

例えば、「シミが消える」「ニキビが治る」といった表現は、医薬品医療機器等法(旧薬事法)違反となる可能性があります。効果効能を謳う表現ではなく、使用感や感想を中心に紹介する必要があります。

参考:厚生労働省 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

著作権・肖像権・商標権への配慮

SNSで商品紹介をする際には、著作権、肖像権、商標権などの知的財産権にも注意が必要です。無断で他人の写真やイラスト、音楽を使用することは著作権侵害にあたります。

また、許可なく他人の顔写真や動画を掲載することは肖像権侵害にあたる可能性があります。さらに、他社の商標を無断で使用することも商標権侵害となります。

これらの権利を侵害しないよう、素材の使用には十分な注意が必要です。必要に応じて、権利者から許諾を得るようにしましょう。

参考:文化庁 著作権制度の概要

インフルエンサーがSNSで商品紹介をする際に注意すべき点

インフルエンサーがSNSで商品紹介を行う際、様々な法的リスクや炎上リスクを回避するために、いくつかの注意点を守ることが重要です。

ここでは、特に注意すべき点を詳細に解説します。

企業案件であることの明示

最も重要なのは、投稿が企業案件であることを明確に開示することです。ステルスマーケティング(ステマ)は消費者の信頼を失うだけでなく、景品表示法違反となる可能性があります。明確なPR表記は必須です。

PR表記の例

  • #PR
  • #提供
  • #広告
  • (PR)
  • 【企業案件】

これらの表記は、投稿の冒頭、もしくはキャプションの冒頭に記載することが推奨されます。

また、投稿内容によっては、動画内や画像内にも表記が必要です。曖昧な表現は避け、消費者が一目で企業案件と理解できるよう明示しましょう。表記の位置やサイズ、フォントも見やすさに配慮する必要があります。

ステルスマーケティングの問題については、以下の法律記事でも解説していますので、ぜひご参照ください。

体験談に基づいた正直な感想

商品やサービスを実際に体験し、その正直な感想を伝えることが重要です。

体験していない商品の紹介や、効果を誇大に表現することは、消費者を欺く行為であり、法的リスクにつながる可能性があります。良い点だけでなく、気になる点や改善点も正直に伝えることで、フォロワーからの信頼獲得につながります。

過剰な表現や虚偽の内容を避ける

商品の効果や効能を過剰に表現したり、事実と異なる内容を記載することは避けなければなりません。

特に、健康食品や化粧品に関する広告は、薬機法の規制対象となるため、厳密な表現が求められます。科学的根拠のない効果効能を謳ったり、体験談を事実のように伝えることは、法的リスクを伴います。

薬機法で禁止されている表現例

  • 痩せる
  • シミが消える
  • 病気が治る

これらの表現を用いる場合は、適切なエビデンスに基づいた表現に置き換える必要があります。

例えば、「痩せる」ではなく「体重管理をサポートする」といった表現が適切です。表現に迷う場合は、弁護士や薬剤師などの専門家に相談することをお勧めします。

ハッシュタグの適切な使用

ハッシュタグは、投稿の可視性を高める上で有効なツールですが、不適切な使用は思わぬトラブルにつながる可能性があります。商品名やブランド名を含むハッシュタグを使用する際は、権利者の許可を得ているか確認する必要があります。

また、誤解を招くようなハッシュタグや、炎上につながる可能性のあるハッシュタグの使用は避けるべきです。

PR表記の位置やフォント

PR表記は、フォロワーが一目で認識できるよう、適切な位置に、適切なフォントサイズで表示する必要があります。投稿の冒頭、またはキャプションの冒頭に記載することが一般的です。

また、動画広告の場合は、動画内にも表示する必要があります。小さすぎるフォントや、背景に紛れて見にくいフォントは避けるべきです。消費者が容易に認識できるよう、視認性に配慮することが重要です。

プラットフォーム推奨されるPR表記の位置
Instagramキャプションの冒頭、フィード投稿の場合は画像内、ストーリーズの場合は画面上部に表示
X(旧Twitter)ポスト(ツイート)の冒頭
YouTube動画内および概要欄に表示
TikTok動画内およびキャプションに表示

各プラットフォームのガイドラインも参考にしながら、適切な表記を心がけましょう。

例えば、景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックは、参考になるでしょう。

消費者庁|景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック

契約内容の確認とリスク管理

インフルエンサーとして企業案件で商品紹介を行う際、契約内容の確認とリスク管理は非常に重要です。契約トラブルや法的問題に巻き込まれないよう、事前の準備と適切な対応を心がけましょう。

企業との契約における注意点

企業との契約は、将来的なトラブルを避けるための重要なステップです。

契約書の内容をしっかりと理解し、不明点があれば必ず確認しましょう。口約束だけで済ませず、書面での契約を交わすことが大切です。

契約内容の確認ポイント

契約書には、様々な項目が含まれています。以下のポイントに特に注意して確認しましょう。

項目内容
報酬報酬額、支払い方法、支払い時期などを明確に確認しましょう。
業務内容投稿内容、投稿回数、投稿期間、ハッシュタグの使用など、具体的な業務内容を確認しましょう。
権利関係投稿したコンテンツの著作権や使用権に関する規定を確認しましょう。
守秘義務企業秘密や未公開情報の取り扱いに関する規定を確認しましょう。
違約事項契約違反があった場合のペナルティや損害賠償に関する規定を確認しましょう。
契約期間契約の開始日と終了日を明確に確認しましょう。
解除条件どのような場合に契約が解除されるのかを確認しましょう。

契約内容に不明点や疑問点がある場合は、契約締結前に企業担当者に確認し、納得した上で契約を締結することが重要です。

また、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。

トラブル発生時の対応策

万が一、企業との間でトラブルが発生した場合、冷静な対応が必要です。感情的な行動は避け、まずは契約内容を確認し、企業担当者と話し合いを行いましょう。

トラブル解決の手順

  1. 契約内容の確認:トラブルの内容が契約違反に該当するかどうかを確認します。
  2. 企業との連絡:トラブルの内容を企業担当者に伝え、解決策を協議します。
  3. 記録の保管:メールやメッセージのやり取りなど、トラブルに関する記録を保管しておきます。
  4. 専門家への相談:話し合いで解決できない場合は、弁護士などの専門家に相談します。

トラブル発生時の対応は状況によって異なりますが、早期解決のためにも迅速かつ適切な行動が重要です。証拠となる資料を保管することも忘れずに行いましょう。

弁護士や専門家への相談

契約内容の確認やトラブル発生時の対応に不安がある場合は、弁護士や専門家への相談が有効です。専門家は、法的な観点から適切なアドバイスを提供してくれます。

特に、契約内容が複雑な場合は、専門家への相談を強く推奨します。専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑え、安心して活動することができます。

契約に関するトラブルは、後に大きな問題に発展する可能性があります。事前の対策と適切な対応を心がけることで、リスクを軽減し、インフルエンサー活動を持続的に行うことができるでしょう。

まとめ

インフルエンサーがSNSで商品紹介を行う際、企業案件か否かに関わらず、景品表示法、薬機法、著作権法など、様々な法律に抵触するリスクが存在します。
特に、ステルスマーケティング(ステマ)や健康食品・化粧品の誇大広告は重大な法的責任を負う可能性があります。
企業案件の場合は、企業との契約内容をしっかりと確認し、不明な点は弁護士等の専門家に相談することが重要です。
また、PR表記の明示や体験談に基づいた正直な感想を伝えるなど、消費者に対して透明性のある情報発信を心がけるべきです。

フォロワーからの信頼を維持し、法的リスクを回避するためにも、適切な商品紹介を行うよう努めましょう。
これらのリスクを理解し、適切な対応策を講じることで、安全かつ効果的な商品紹介を実現できるでしょう。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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