他人の動画やニュースをYouTubeに載せるのは違法?著作物の引用の適切な方法とは?

インターネット・IT関連法務

自社でメディアを作ったり、SNSを運用することが多くなった昨今、情報発信方法として、他人が発信している動画やニュースを切り取って、YouTubeに載せることがよく行われるようになっています。

このような行為について法律上問題となる可能性があるのが、著作権法違反です。

他人の動画やニュースを、自社のYouTubeに載せるのは違法なのでしょうか?違法とならない著作物の引用の方法などについてお伝えします。

他人が作成した動画やニュース映像などに発生する著作権

他人が作成した動画やニュース映像に発生している権利について確認しましょう。

著作権とは

著作権とは、作品を創作した人が有する権利で、作品がどう使われるかを決めることができる権利です。

ある作品を創作したとしても、他人が自由にこれを利用できるとすると、作品を創作した人が保護されず、文化が発展しなくなります。

そのため、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)という法律があり、作品に対する法的な保護を与えています。

著作権法で保護される著作物とは

著作権法で保護されるのは「著作物」とされています。

著作権法は著作物に対して各種法的な保護を与えています。

何が著作物にあたるか、著作権法第2条1号に規定が置かれ、第10条1項に例示がされているので確認してみましょう。

第二条(定義) この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

(略)

第十条(著作物の例示) この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物

(略)

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

例えば著作権法第10条1号に規定されている小説は、著作権法第2条の定義に即していうと、作者たる小説家の「思想又は感情を」物語などをまとめた文書によって「創作的に表現した」ものであつて、文芸に属するものであるといえます。

他人の動画やニュースは著作物にあたるのか

他人の動画やニュースは著作物にあたるのでしょうか。

たとえば、ある人が自分が作った歌を発表したとします。

これは「思想又は感情を」歌という形にするという表現方法によって「創作的に表現」したものであり、音楽の範囲に属するといえます。

また、この歌を歌う様子をSNSに投稿した場合、この動画は別途、
歌い手の「思想又は感情を」歌唱という表現方法を記録した動画によって(編集やエフェクトなどを施し)「創作的に表現」することとなり、この動画は、音楽の範囲に属する「映画の著作物」といえます。

以上より、他人がSNSやブログなどにアップロードした動画は著作物であるといえ、著作権法に基づく保護を受けるものであるといえます。

ニュースについては著作権法第10条2項の規定が問題となります。

第十条(著作物の例示) この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

(略)

2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

(略)

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

ニュース番組の動画はこの事実の伝達にすぎないと取られれば、著作物に該当しないといえそうです。

しかし、ニュース番組の動画については、取り扱う事実の取捨選択、ある事実についてどのような動画・音楽を使うかなどによって受け止められる印象が違ってくるものです。

そのため、思想又は感情を創作的に表現したものといえ、著作物にあたる場合がほとんどです。

著作物にあたる他人の動画やニュースのYouTubeでの無断使用の法的問題点

他人の動画やニュースの無断使用によって、どのような法的問題点が生じるのでしょうか。

著作者に認められる公衆送信権の侵害が発生する

著作物を創作した人のことを、著作権法では著作者といいます。

第二条(定義) この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(略)

二 著作者 著作物を創作する者をいう。

(略)

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

そして、著作者には著作権法で様々な権利が認められています。

第十七条(著作者の権利) 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。

(略)

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

著作者に認められている権利には様々な種類がありますが、他人の動画・ニュースの無断使用については次の権利が問題となります。

第二十三条(公衆送信権等) 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

他人の動画・ニュースをYouTubeで無断で使用することは、著作者の公衆送信権を侵害する行為となります。

著作者の公衆送信権を侵害した場合のペナルティ

他人の著作物をYouTubeで無断使用し、著作者の公衆送信権を侵害した場合のペナルティとして、次のものが挙げられます。

損害賠償

他人の著作物をYouTubeで無断使用したことによって、著作者に生じた損害について、賠償をする必要があります。

他人の著作物を無断使用することで、著作権者に経済的損害が生じることになります。

そのため、損害賠償請求がされることになります。

損害賠償請求については一般的に請求する側が全てを立証する必要があるのですが、著作権侵害については著作権法第114条のように損害額の推定規定があるなどで裁判がしやすい規定が置かれています。

差止請求

他人の著作物をYouTubeで無断使用した場合、差止請求を受けることになります。

第百十二条(差止請求権) 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

YouTubeで公開している動画の公開を停止するように求められ、これに応じる必要があります。

刑事罰

他人の著作物をYouTubeで無断使用した場合には刑事罰が規定されています。

第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

他人の動画・ニュースのYouTubeでの無断使用は、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はその両方という、非常に重い刑事罰の対象となりえるものです。

引用に該当する場合は著作権が制限され違法ではない

以上のように重要な権利である著作権ですが、著作権法で規定された「引用」に該当する行為は著作権が制限され違法とはされません。

著作権も制限されることがあることと関連して確認しましょう。

著作権が制限される場合がある

著作権が認められる場合、他人がその著作物を自由に利用することはできませんが、一定の場合には著作物を利用することができることが、著作権法30条以下に規定されています。

著作権者側から見たときには、著作権が制限されることから、著作権制限規定と呼ばれています。

次のような例が挙げられます。

  • 私的使用のための複製(著作権法第30条)
  • 教科用図書等への掲載(著作権法第33条)
  • 時事の事件の報道のための利用(著作権法第41条)
  • 裁判手続等における複製等(著作権法第41条の2)

YouTubeでの利用が引用にあたる場合には利用が認められる場合

YouTubeに他人の動画やニュースを載せる場合には、それが著作権制限規定の「引用」にあたる場合であれば、利用が認められます。

著作権法32条は、著作物の引用を行うことができる旨規定しています。

第三十二条(引用) 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

他人の著作物についての報道や批評・研究などをするためには、どうしても他人の著作物を引用する必要があります。

この引用を著作権によってできないとすると、著作物についての報道や批判・研究をできなくしてしまうものになり、著作権法の目的である文化の発展という観点から望ましくありません。

そのため、公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものである限りで、引用を認めています。

NHK(日本放送協会)もそのホームページで、引用の要件が満たされる場合には、許諾なく放送番組を用いることが可能である旨示しています。

参照:NHKウェブサイト:「教育・研究目的でのNHK番組の利用をお考えの方へ」

「引用」が認められる要件

では、「引用」が認められる要件にはどのようなものがあるでしょうか。

文化庁が公表している令和6年度著作権テキスト72頁において、著作権法32条に記載された引用が認められる要件は、次の4つと整理されています。

1.すでに公表されている著作物であること
2.「公正な慣行」に合致すること
3.報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
4.「出所の明示」が必要

参考:文化庁「令和6年度著作権テキスト

すでに公表されている著作物であること

すでに公表されている著作物であることが要件となります。

当然ですが、公表されているものでなければ引用はできないので、そもそも引用がされている時点で、すでに公表されている著作物であるのが通常です。

そのため、あまり問題となるわけではありません。

「公正な慣行」に合致すること

公正な慣行に合致することが要件となります。

「著作物の引用が妥当である」といえる場合であることや、何が引用部分なのかがわかるようにしておくことが必要となります。

引用を行う必然性がある場合であることこと、引用であることが明確になっていることが必要です。

言語の著作物である場合には、カギかっこなどで引用部分が明確になっている必要があります。

報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること

報道、批評、研究などの引用の目的上、正当な範囲内であることが必要です。

引用は、報道、批評、研究などの必要性に応じて、本来の著作権を制限して認められるものです。

そのため、正当な範囲内においてのみ認められます。

正当な範囲内と認めるための条件としては一般に以下の内容は必要であると考えられています。

  1. 引用するものとの主従の関係が明確であること
  2. 引用が必要最小限のものであること

※ なお、これらを「公正な慣行」に合致するか否かの問題と整理する見解や、「正当な範囲内」の要件とは別の独立の要件と考える見解など、整理の仕方は様々ですが、いずれにしてもこれらは適法な引用の要件と考えられています。

※※ 本記事では、文化庁の令和6年度著作権テキストに沿った整理の仕方で説明しています。

著作物にはいろんな形があるので、他人の動画やニュースが非常に短い場合には、その動画の全部を利用することも認められる場合があります。

 「出所の明示」が必要

引用したものの出所の明示が必要です。

他人の動画やニュースについて引用したことを示しつつ、その元の動画やニュースがあるURLを示すのが良いでしょう。

まとめ

このページでは、他人の動画やニュースをYouTube動画に利用することについてお伝えしました。
他人の動画やニュースは著作権法における著作物にあたり、無断で利用することで著作権侵害で違法になります。
もっとも、他人の動画やニュースでも、引用にあたる場合には、著作権の制限として違法とはなりません。
要件を満たしているかの判断が難しい場合には、弁護士に相談してみることをお勧めします。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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