NFTの取引で問題となる実務対応とは?

インターネット・IT関連法務

デジタルアート・ゲーム・スポーツなどの分野で、ブロックチェーン技術を応用したNFTと呼ばれるものが活用されはじめています。

暗号資産・仮想通貨の分野でよく名前を聞くブロックチェーンですが、デジタルアートなどコピーされやすいものが、NFTによって唯一性を確保できることになり、取引が活発化しています。

そこでこのページでは、NFTについて、どのような法律が関係して、どんな実務的対応が必要になるかについて確認しましょう。

NFTとは

NFTとは、英語の「Non-Fungible Token」の頭文字を取ったもので、直訳すると「非代替性トークン」となり、『偽造・改ざん不能のデジタルデータ』であり、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一性を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能をもつ。』と説明されます。

参照:経済産業省「デジタル時代の規制・制度のあり方について」第4回産業構造審議会経済産業政策新機軸部会事務局説明資料

デジタルデータは複製・改ざんが容易でしたが、ブロックチェーン技術によって対象となっているデジタルデータが唯一性を持ち、取引履歴を追跡できる機能を持つようになり、取引が行いやすくなったため近年取引の対象として注目を集めています。

ブロックチェーン技術については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。

NFTに関する法律の規制

このNFTに関する法律の規制として、取引の対象となるものによって次のような法律の規制に関連するので、それぞれ確認しましょう。

暗号資産に当たる場合には資金決済法による規制を受ける

NFTはブロックチェーン技術によって実現されるもので、同じブロックチェーン技術によって実現される暗号資産は「資金決済に関する法律」(以下「資金決済法」)による規制を受けます。

暗号資産は、一般的には、非代替性のトークンではなく、代替可能なトークンであることが通常であるため、両者は異なるのが通常ですが、NFTは法律上の概念ではないため「暗号資産」と呼ぶのが適切かどうかはともかく、資金決済法の「暗号資産」の定義に該当するかは検討の必要があります。

暗号資産については、資金決済法2条1項14号で定められている次の2つの種類に該当する必要があります

  • 1号暗号資産
    • 不特定の者を相手方として代価の弁済に使用でき、かつ、不特定の者を相手に相互に交換できる
    • 電子的に記録され、移転することができる
    • 法定通貨又は通貨建資産ではない
  • 2号暗号資産
    • 不特定の者を相手に1号と相互に交換を行うことができる財産的価値

第二条(定義)第5項

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(次号に掲げるものに該当するものを除く。)

三 (略)

資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)

NFTは、通常、1号暗号資産の要件である、代価の弁済のために不特定相手に使用するものではないので、1号暗号資産には該当しません。

次に2号に該当するかですが、NFTの決済には1号の暗号資産を用いて取引されることから該当するかどうかが問題となるものの、金融庁の「事務ガイドライン」(16 暗号資産交換業者関係)によると、「1号暗号資産を用いて購入又は売却できる商品・権利等にとどまらず、当該暗号資産と同等の経済的機能を有する」ことが必要とされており、NFT自体は2号暗号資産にも該当しません。

2019年9月3日に公開された金融庁のパブリックコメントNo.4において「例えば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。」とされていることからも、2号暗号資産にも該当しないといえるでしょう。

【コメントの概要】
2号暗号資産について1号暗号資産と「同等の経済的機能を有するか」との基準を設けるべきではない。同等の経済的機能とならないような制限を加えることで、資金決済法に基づく規制の対象外になりかねない。

【金融庁の考え方】
物品等の購入に直接利用できない又は法定通貨との交換ができないものであっても、1号仮想通貨と相互に交換できるもので、1号仮想通貨を介することにより決済手段等の経済的機能を有するものについては、1号仮想通貨と同様に決済手段等としての規制が必要と考えられるため、2号仮想通貨として資金決済法上の仮想通貨の範囲に含めて考えられたものです。したがって、例えば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。 

金融庁のパブリックコメント

前払式支払手段にあたる場合には資金決済法の規制を受ける

資金決済法3条1項において、前払式支払手段として次の要件が挙げられています。

  • 金額又は物品・サービスの数量が記載・記録されていること
  • 記載・記録されている金額又は物品・サービスの数量に応ずる対価が支払われていること
  • 金額又は物品・サービスの数量が記載・記録されている証票等やこれらの財産的価値と結びついた番号・記号その他の符号が発行されること
  • 物品を購入・サービスの提供を受けるとき等に、証票等や番号・記号その他の符号が、提示、交付、通知等されることにより使用できるものであること

第三条(定義) 
この章において「前払式支払手段」とは、次に掲げるものをいう。

一 証票、電子機器その他の物(以下この章において「証票等」という。)に記載され、又は電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。以下この項において同じ。)により記録される金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。以下この号及び第三項において同じ。)に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される金額に応ずる対価を得て当該金額の記録の加算が行われるものを含む。)であって、その発行する者又は当該発行する者が指定する者(次号において「発行者等」という。)から物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの

二 証票等に記載され、又は電磁的方法により記録される物品等又は役務の数量に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される物品等又は役務の数量に応ずる対価を得て当該数量の記録の加算が行われるものを含む。)であって、発行者等に対して、提示、交付、通知その他の方法により、当該物品等の給付又は当該役務の提供を請求することができるもの

資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)

NFTが、発行者などの特定の者に対する支払手段としての経済的機能を有していなければ、4つめの要件を満たさないため、前払式支払手段には該当せず、資金決済法による規制を受けません。

為替取引に該当する場合には銀行法・資金決済法が問題に

NFTの取引が、為替取引に該当する場合には、銀行法・資金決済法が問題となります。

銀行法・資金決済法において「為替取引を行うこと」とは「顧客から,隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて,これを引き受けること,又はこれを引き受けて遂行することをいう」と されています。

NFTを保有している人に対して、直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みである場合には、銀行法・資金決済法における為替取引を行うことになります。

この場合、銀行業の免許または資金移動業者の登録・認可が必要です。

第二条(定義)

(略)

2この法律において「資金移動業」とは、銀行等以外の者が為替取引を業として営むことをいう。

(略)

資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)

同号にいう「為替取引を行うこと」とは,顧客から,隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて,これを引受けること,又はこれを引き受けて遂行することをいうと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷平成13年3月12日決定

集団投資スキーム持分に該当すれば金融商品取引法の規制を受ける

NFTが金融商品取引法における、集団投資スキーム持分に該当する場合には、金融商品取引法の規制を受けます。

金融商品取引法2条2項5号は、集団投資スキーム持分について定めており、NFTがこれに該当すると金融商品取引法における有価証券という取り扱いをうけます。

まず、金融商品取引法2条2項5号は、おおむね次のような要件を定めており、これに該当するものが、一般的に集団投資スキーム持分と呼ばれています。

  • 権利を有する者が金銭等を出資または拠出し、
  • 拠出された金銭等を充てて事業(出資対象事業)が営まれ、
  • 権利者が出資対象事業から生じる収益の配当または当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利を有する仕組み

第二条(定義)第2項第5項

五 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約、商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第三条第一項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第三条第一項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、次のいずれにも該当しないもの(前項各号に掲げる有価証券に表示される権利及びこの項(この号を除く。)の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)

イ 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利

ロ 出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする当該出資者の権利(イに掲げる権利を除く。)

ハ 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第一項に規定する保険業を行う者が保険者となる保険契約、農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第十号に規定する事業を行う同法第四条に規定する組合と締結した共済契約、消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)第十条第二項に規定する共済事業を行う同法第四条に規定する組合と締結した共済契約、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条第一項第十二号、第九十三条第一項第六号の二若しくは第百条の二第一項第一号に規定する事業を行う同法第二条に規定する組合と締結した共済契約、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の二第七項に規定する共済事業を行う同法第三条に規定する組合と締結した共済契約又は不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第二条第三項に規定する不動産特定共同事業契約(同条第九項に規定する特例事業者と締結したものを除く。)に基づく権利(イ及びロに掲げる権利を除く。)

ニ イからハまでに掲げるもののほか、当該権利を有価証券とみなさなくても公益又は出資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定める権利

金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)

NFTとの関係で問題になるのは、メタバース上の不動産についてのNFTを保有している場合に、その仮想不動産上の事業活動から得られる収益が分配される場合に、金融商品取引法2条2項5号に該当して、有価証券として取り扱われます

有価証券に該当する場合、その発行をすること、発行者自らが販売するためには、第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があります(金融商品取引法28条2項)。

また、有価証券に該当するNFTの販売や勧誘をする場合、第一種金融商品取引業の登録が必要です(金融商品取引法28条1項)。

「ガチャ」の方式でNFTを販売すると刑法に抵触する可能性がある

NFTはゲームやトレーディングカードなどの分野でも利用されます。

その販売にあたって、ランダムに封入されているパッケージとして販売する、いわゆる「ガチャ」の方式で販売することは、刑法における賭博罪に該当する可能性があります。

刑法185条は、賭博を禁じており、賭博をした方については賭博罪・186条1項の常習賭博罪が、賭博を開催した方については賭博場開張等図利罪が規定されています。

賭博とは次の2つの要件を満たすことをいいます。

  • 勝敗が偶然の事情により決定されること
  • その勝敗により財物・財産上の利益の得喪を争う

この点について、NFTについての議論ではないものの、平成28年9月20日付け消費者委員会「スマホゲームに関する消費者問題についての意見」では、「アイテム等を換金するシステムを事業者が提供しているような場合や利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合は、「財産上の利益」に該当する可能性があり、ひいては賭博罪に該当する可能性が高くなると考えられる」としています。

参照:消費者委員会「スマホゲームに関する消費者問題についての意見~注視すべき観点~」

NFTについての議論でいえば、経済産業省の資料において、当該NFTの二次流通マーケットが存在し、発行数に制限がある場合には賭博罪に該当する可能性があるのではないか?という検討がされています。

経済産業省 商務・サービスグループ サービス政策課 スポーツ産業室「スポーツ分野でのNFT/FTの可能性と課題」20頁

NFTによって換金が容易になった場合には、ガチャによる販売で賭博に該当することによって、ガチャを実施した側は賭博場開張等図利罪に問われる可能性があることに注意しましょう。

NFTを景品にする場合には景品表示法が問題になる

NFTに固有の問題ではないのですが、NFTを景品として提供する場合にも、景品表示法による規制に従う必要があります。

例えば、一般景品に該当する場合には、景品には次の上限があります。

  • 懸賞による取引価格が5,000円未満の場合:取引価格の20倍
  • 懸賞による取引価格が5,000円以上の場合:10万円
  • 景品の総額については:懸賞に係る売上予定総額の2%

NFTの取引に関する問題

NFTの取引についてはどのような法律問題があるのでしょうか。

NFTの権利内容

NFTはどのような権利内容なのでしょうか。

NFTといっても、紐づけられているデジタルコンテンツには、著作権・肖像権・パブリシティ権など様々なものがあります。

もっとも、NFTを譲渡しても著作権・肖像権・パブリシティ権などまで移転することは通常考え難く、NFTを譲り受けられた者に付与されるのは、ライセンス契約・利用許諾契約に基づいて利用する権利であるといえます。

NFTの基礎となる権利内容を移転するための法的構成

NFTの基礎となる権利内容の移転するための法律構成としては、次の2つの方法のいずれかによることになります。

  • 債権譲渡・契約上の地位の移転
  • ライセンス契約と終了

前者の場合、NFTの譲渡人が譲受人に対して、債権譲渡を行う・契約上の地位の移転を行う方法によります。

後者の場合は、著作権などの現権利者が、NFTを取得した人にライセンスを利用することを認める契約をし、NFTを手放したときにライセンスの利用権を停止する(あらたにNFTを譲り受けた人がライセンス利用権を獲得する)、という内容となります。

まとめ

本記事ではNFTについて、どのような法律と実務対応が必要かを中心にお伝えしました。

デジタルデータに唯一性を付与することができるNFTによって、従来コピーが容易であったデジタルデータの取引が容易になります。
もっとも、NFTとして取り扱うにあたって、法律によって規制される場合があり、ケースによっては刑事罰の対象となることもあります。

NFTは新しい分野で、ここでご紹介した以外にも新たに法規制の対象になったり、行政通達などで解釈が加えられることで取り扱いが変わる可能性もあります。
他方、NFTをはじめ、最新の技術と関係する法分野は日々あたらしく移り変わる上、専門的な知見がないと対応が困難です。

そのため、NFTの取り扱いをする場合には、当該技術に精通した弁護士に相談しながら行うことをお勧めします。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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