「婚前契約書とは何か」「なぜ必要なのか」疑問に思っていませんか? 結婚前に婚前契約書を作成する意義やメリット、具体的な内容、作成時の注意点まで、この記事で分かりやすく解説します。この記事を読むことで、婚前契約書が単なる手続きではなく、円満な結婚生活の基盤づくり、将来設計の共有、そして万が一のトラブル回避に役立つツールであることを理解できます。結婚前に抱く漠然とした不安を解消し、パートナーと安心して未来を描けるよう、婚前契約書の重要性について一緒に考えてみましょう。
婚前契約書とは
婚前契約書とは、結婚前に夫婦となる予定の二人が、結婚生活における様々な事項について、あらかじめ取り決めをしておく契約書のことです。法律で規定がある契約ではなく、法律上の定義も存在しません。

婚前契約書の定義
婚前契約書は、結婚前に将来の夫婦間で締結する契約であり、結婚生活に関する様々なルールや約束事を定めるものです。 結婚後の生活における紛争を予防し、円滑な関係を築くことを目的としています。
婚前契約書で決める内容
婚前契約書で決める内容は、法律で禁止されている事項以外であれば、基本的に当事者の自由です。 一般的には、以下のような内容が取り決められます。
事項 | 内容例 |
---|---|
財産 | 財産の管理方法婚姻費用財産分与 |
子ども | 離婚後の親権者・監護者離婚後の養育費面会交流 |
その他 | 家事分担離婚時の慰謝料宗教活動親族との付き合い方居住地氏名 |
特に財産に関する事項は、結婚後にトラブルになりやすい部分ですので、明確に決めておくことが重要です。 また、子どもに関する事項も、将来の紛争を避けるために、事前にしっかりと話し合っておくべきです。 その他、家事分担や生活費の負担など、日常生活に関する細かな取り決めも婚前契約書に含めることができます。
なぜ婚前契約書が必要なのか
結婚は人生における大きな転換期であり、喜びに満ちたスタートです。しかし、結婚生活は楽しいことばかりではなく、予期せぬトラブルが発生することもあります。近年、離婚率の増加や価値観の多様化に伴い、婚前契約書を検討するカップルが増えています。婚前契約書を作成することで、将来発生しうるトラブルを未然に防ぎ、円満な結婚生活を送るための基盤を築くことができます。

婚姻中のトラブル予防
結婚生活を送る上では、家事分担や生活費、子育てなど、様々な場面で意見の衝突が起こりえます。婚前契約書でこれらの事項を事前に取り決めておくことで、将来的な紛争を予防し、円滑なコミュニケーションを図ることができます。また、お互いの価値観や考え方を共有することで、より深い理解と信頼関係を築くことにも繋がります。
財産に関する透明性確保
結婚後の財産管理は、夫婦間でトラブルが発生しやすいデリケートな問題です。婚前契約書によって財産の管理方法を明確にすることで、お互いの財産に対する透明性を確保し、不信感を抱くことなく安心して生活を送ることができます。特に、どちらか一方に多額の財産がある場合や、事業を営んでいる場合には、婚前契約書の作成が有効です。
離婚紛争の回避
離婚という結末を迎える場合、親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料等、取り決めをするべき事項は多岐に渡ります。ケースによっては離婚協議それ自体に数年単位に時間を費やすこともあるのが現状です。そのため、離婚時にこれらの問題をどうするか予め決めておくことには、不要な離婚紛争を回避する上で非常に有用です。
特に、夫婦の一方が経営者である場合、婚前契約書が果たす役割は大きくなります。婚姻時に保有していた株は原則として財産分与の対象となりませんが、婚姻以降に増加した株式の価値増加分や婚姻以降に取得した株式自体は財産分与の対象です。これらについては特有財産となる旨を取り決めておくことは、自社の経営権を守ったり、膨大な財産分与金の支払を回避したりする上で有用な手段です。
項目 | 内容例 |
---|---|
婚姻費用 | 生活費の負担割合、住宅ローンや光熱費の支払い方法などを明確にする。 |
家事分担 | 家事の分担方法、家事代行サービスの利用有無などを決めておく。 |
子どもに関する事項 | 教育方針、習い事、進学先など、子育てに関する基本的な方針を共有する。 |
ペットに関する事項 | 飼育費用負担、世話の分担などを決めておく。 |
これらの事項を婚前契約書に盛り込むことで、結婚生活における様々なリスクを軽減し、より安定した関係を築くことができます。ただし、婚前契約書の内容は、強行法規に反する場合や、実務上の相場と著しく乖離している場合などは無効となる可能性があります。作成にあたっては、法律の専門家である弁護士に相談し、適切な内容で作成することが重要です。
婚前契約書のメリット
婚前契約書を作成することには、様々なメリットがあります。感情的になりやすい結婚前に、冷静に話し合い、契約書を作成することで、結婚生活を円滑に進めるための基盤を築くことができるでしょう。

お互いの価値観の確認
婚前契約書の作成を通して、結婚に関する価値観や考え方を共有することができます。例えば、家事の分担、子育ての方針、金銭感覚など、結婚生活を送る上で重要な事柄について話し合うことで、お互いの価値観の違いを認識し、すり合わせることができます。結婚前にこれらの事項を話し合っておくことで、結婚後のトラブルを未然に防ぐことに繋がります。
将来設計の共有
結婚後の生活設計、例えば、住居の購入、子どもの有無や教育方針、老後の過ごし方などについて、事前に話し合い、合意しておくことは非常に重要です。婚前契約書は、これらの将来設計を明確化し、共有するためのツールとなります。将来に対するビジョンを共有することで、結婚生活における目標や方向性を一致させることができます。
精神的な安心感
婚前契約書の存在は、結婚生活における精神的な安心感をもたらします。将来に対する不安や不透明感を軽減し、より安定した関係性を築くことができます。特に、金銭面や子育てに関する取り決めを明確にしておくことで、将来的なトラブル発生時の対応策を事前に準備しておくことができ、精神的な負担を軽減することに繋がります。
メリット | 詳細 |
価値観の確認 | 家事分担、子育て、金銭感覚など、結婚生活における重要な事柄について、事前に話し合い、価値観の相違点を明確にすることができます。 |
将来設計の共有 | 住居、子ども、老後など、将来の生活設計について、具体的な目標や計画を共有し、結婚生活の方向性を一致させることができます。 |
精神的な安心感 | 将来の不安や不透明感を軽減し、金銭面や子育てに関する取り決めを明確にすることで、精神的な安定を得ることができます。 |
結婚前にしっかりと話し合い、合意形成を行うことは、円満な結婚生活を送る上で非常に重要です。婚前契約書の作成は、そのための第一歩と言えるでしょう。
婚前契約書に盛り込むべき内容
婚前契約書には、将来的なトラブルを避けるために、様々な事項を盛り込むことができます。特に重要なのは、財産、子ども、その他生活に関する事項です。これらの事項を明確にしておくことで、結婚生活を円滑に進めることができます。

財産に関する事項
財産に関する事項は、婚前契約書の中でも特に重要な項目です。結婚前の財産、結婚後の財産、そして離婚時の財産分与について、事前に取り決めをしておくことで、将来的な紛争を未然に防ぐことができます。
特有財産の明確化
婚姻期間中に得た財産は共有財産となり、離婚時の財産分与で精算の対象となります。一方で、婚姻前に取得していた財産については特有財産として財産分与では考慮されません。婚前契約書で結婚時にお互いがどんな財産を持っていたのか明確にしておくと、離婚協議の際に大きな助けになるでしょう。
婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦が共同生活を送るために必要な費用のことです。食費、住居費、光熱費などが含まれます。婚前契約書では、婚姻費用の分担方法について、それぞれの収入や生活水準を考慮して決めておくことができます。
財産分与の割合
離婚する場合、夫婦で築き上げた財産は原則として2分の1ずつに分けられます。これを財産分与といいます。婚前契約書では、財産分与の割合について定めることもできます。ただし、具体的な夫婦の事情から、一方に著しく不利な内容は無効とされる可能性があります。
子どもに関する事項
子どもに関する事項は、将来子どもを持つことを考えている夫婦にとって非常に重要な項目です。親権、養育費、面会交流について、事前に取り決めをしておくことで、将来的な紛争を避けることができます。
親権
親権とは、未成年の子どもを監護教育する権利と義務のことです。離婚する場合、どちらが親権を持つのかを決める必要があります。婚前契約書で親権者を定めておくことはできますが、家庭裁判所は子の福祉を最優先に考えて親権者を決定するため、婚前契約書の内容が必ずしも尊重されるとは限りません。
養育費
養育費とは、子どもを育てるために必要な費用のことです。離婚する場合、親権を持たない親は、親権を持つ親に対して養育費を支払う義務があります。婚前契約書では、養育費の金額や支払い方法について定めることができます。ただし、養育費の金額は、子どもの年齢や生活水準、両親の収入などを考慮して算定されるため、婚前契約書の内容が必ずしも尊重されるとは限りません。
面会交流
面会交流とは、離婚後、子どもと別居する親が子どもと会う権利のことです。婚前契約書では、面会交流の頻度や方法について定めることができます。ただし、面会交流は子どもの福祉を最優先に考えて決められるため、婚前契約書の内容が必ずしも尊重されるとは限りません。
その他
上記以外にも、結婚生活における様々な事項を婚前契約書に盛り込むことができます。例えば、家事分担や離婚時の慰謝料などについても、事前に取り決めをしておくことで、将来的なトラブルを避けることができます。
家事分担
家事分担についても婚前契約書に盛り込むことができます。例えば、家事の分担割合や、家事代行サービスを利用する場合の費用負担などについて、具体的に定めておくことができます。
離婚時の慰謝料
離婚時に慰謝料が発生する場合、その金額や支払い方法についても婚前契約書で定めることができます。ただし、慰謝料請求権を放棄する内容の条項や明らかに過大・過少な金額を定める条項は無効となる可能性があります。
婚前契約書を作成する際の注意点
婚前契約書は、将来発生しうる紛争を予防し、円満な夫婦生活を送るための重要なツールです。しかし、作成にあたってはいくつかの注意点があります。しっかりと理解した上で作成を進めましょう。

専門家への相談
婚前契約書は法律に則って作成する必要があります。ご自身で作成することも可能ですが、法律の専門家ではない場合、内容に不備が生じる可能性があります。将来、婚前契約書の有効性が争われた際に、無効と判断されるリスクを避けるためにも、弁護士などの専門家に相談し、内容をチェックしてもらうことが重要です。
特に、財産分与や慰謝料など、法律に関連する条項については、専門家のアドバイスを受けることで、より明確で法的拘束力のある内容にすることができます。また、専門家に相談することで、自分たちでは気づかなかった点や、より良い方法を提案してもらえる可能性もあります。
公正証書について
婚前契約書は、私文書でも作成できますが、公正証書にすることも可能です。公正証書とは、公証役場で作成される公文書であり、高い証明力と法的効力を持つ文書です。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
私文書 | 手軽に作成できる | 証拠能力が低い、紛失・改ざんのリスク |
公正証書 | 高い証拠能力、紛失・改ざんのリスクが少ない、強制執行が可能(※条件あり) | 費用がかかる、手続きに時間がかかる |
公正証書にすることで、以下のメリットがあります。
- 高い証拠能力:公正証書は、その内容が真正であることが推定されるため、証拠としての信頼性が高いです。
- 紛失・改ざんのリスクが少ない:公証役場で原本が保管されるため、紛失や改ざんのリスクが低くなります。
なお、公正証書を作成していれば、金額と時期が確定している金銭債権については裁判を経ずに強制執行をすることが可能です。一般論として公正証書を作成する一番のメリットはこの点でしょう。しかしながら、婚前契約書で取り決めをする事項の多くは発生が未確定な離婚が条件になりますから、婚前契約書を公正証書で作成する意義は法律的にはあまりありません。
むしろ、ある種セレモニー的な要素を持たせることによって(公正証書を作成する場合には、当事者双方の前で、公証人が条項の読み上げ・確認を行います。)、それぞれが真剣に婚前契約と向き合うことになることが公正証書作成の最大のメリットと言えるでしょう。
まとめ

婚前契約書は、結婚前に夫婦となる二人の間で、財産や子どものことなど、将来起こりうる問題について事前に取り決めておくための契約書です。結婚生活における様々なリスクを軽減し、円滑な関係を築くために有効な手段となります。婚前契約書を作成することで、お互いの価値観や考え方を共有し、将来設計を明確にすることができます。また、万が一のトラブル発生時にも、事前に決めておくことで冷静な話し合いがしやすくなり、紛争を未然に防ぐ効果も期待できます。ただし、法的効力に疑義が出ないよう、専門家の意見も聞きながら適切な内容の定めにすることが重要です。