連載シリーズ「プロトキ」では、プロスパイア法律事務所の弁護士等の専門家が、ニュースや時事問題について、法律の観点から解説をしていきます。
※本記事は、令和7年2月16日時点の情報に基づいて執筆されています。
今回は、「令和ロマン高比良くるまオンラインカジノ賭博を認め謝罪」というニュースについて、オンラインカジノ賭博とはそもそもどういうことなのか、日本において、海外のオンラインカジノにアクセスしゲームを行うのは違法なのか?、令和ロマン高比良くるまさんが逮捕されたり処罰されたりする可能性はあるのかなどを解説していきます。
ニュース概要「令和ロマン高比良くるまオンラインカジノ賭博を認め謝罪」について
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吉本興業に所属する人気お笑いコンビ令和ロマンの高比良くるまさんが、令和ロマンの公式YouTubeチャンネルにて、オンラインカジノをしていたことは事実であると説明する動画を投稿し、警視庁の任意の事情聴取を受けていたことを明らかにしたというニュースが各社によって報じられています。
各社の報道によれば、吉本興業に所属する複数のタレントがオンラインカジノで賭博をした疑いがあるとして警視庁から任意の事情聴取を受けている状況で、高比良くるまさんは、2019年の年末から2020年の年末ごろまでの1年間ほどの間、大学時代の知人から誘いを受け、その際、海外の口座から送金してオンラインカジノをやるのは違法ではないと説明を受けたために、違法ではないと考えていてこのようなことをしていたとのことです。
高比良くるまさんのほかにも、お笑いコンビとろサーモンの久保田かずのぶさんらも事情聴取を受けたとのことで、今回事情聴取を受けた多くのタレントは大筋で関与を認めつつ「(違法にはならない)グレーだと思っていた」などと説明しているとのことです。
参考:NHK|2025年2月15日「令和ロマン 高比良くるまさん オンラインカジノを認め謝罪」
参考:毎日新聞|2025年2月14日「令和ロマン・高比良さん、とろサーモン・久保田さんを任意聴取 オンラインカジノ疑惑」
参考:Yahooニュース|2025年2月16日「令和ロマン・高比良くるま オンラインカジノ賭博「事実です」 関与認め謝罪 警視庁から事情聴取も」
参考:YouTube|official令和ロマン【公式】「オンラインカジノ報道について」
本記事では、
- 日本在住の日本人が、(賭博が違法ではない)海外で運営されているオンラインカジノのサイトにアクセスし、オンラインカジノのゲームをプレイする行為が違法なのか
- 違法だとしても、「違法ではないと思っていた」ということで許されるのか
などの点について弁護士が解説します。
そもそもオンラインカジノとはどういうものか
オンラインカジノは、インターネットを通じてアクセスできる仮想のカジノです。リアルなカジノと同様に、様々なゲームを提供し、実際のお金を使って賭けを行うことができる場合がほとんどです。その仕組みは複雑で、様々な要素が絡み合って運営されています。
オンラインカジノの運営形態
オンラインカジノは、主に以下の要素によって運営されています。
ライセンスと規制
合法的なオンラインカジノは、運営するために必要なライセンスを取得しています。ライセンスは、マルタ共和国、ジブラルタル、キュラソー島など、オンラインカジノの運営に寛容な国や地域から発行されることが多いです。
これらのライセンスは、カジノが公正なゲームを提供し、プレイヤーの資金を安全に管理していることを保証する役割を果たします。
ライセンスの有無は、オンラインカジノを選ぶ上で非常に重要な要素です。 ライセンスのないカジノは、日本の法律だけでなく現地の法律を基準としても違法である可能性が高く、利用することでトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
ゲームの種類
オンラインカジノでは、様々な種類のゲームが提供されています。主なゲームの種類は以下の通りです。
ゲームの種類 | 説明 |
スロットマシン | リールを回転させてシンボルを揃えるゲーム。 |
テーブルゲーム | ブラックジャック、ルーレット、バカラ、ポーカーなど。 |
ライブカジノ | 実際のディーラーとリアルタイムでプレイできるゲーム。 |
スポーツベッティング | スポーツの試合結果を予想して賭けるゲーム。 |
ロト | 数字を選んで抽選結果を当てるゲーム。 |
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オンラインカジノと日本の法規制について
日本人プレイヤーがオンラインカジノ賭博を行うことの違法性
日本国内に住む日本人がオンラインカジノで賭博を行うことは、原則として違法とされています。これは、賭博行為自体を禁じる刑法185条および186条に基づくものです。
日本における賭博罪の概要
日本の刑法では、賭博行為を禁止しており、違反した場合には賭博罪として処罰される可能性があります。この賭博罪は、金銭や財産を賭けて偶然性の高いゲームを行うことを広く禁じています。オンラインカジノもこの賭博罪の対象となる可能性があります。
刑法185条と186条
刑法185条は、賭博をした者を処罰する規定で、50万円以下の罰金または科料が科せられます。一方、刑法186条は、賭博場を開張等した者をより重く処罰する規定で、3ヶ月以上5年以下の懲役となります。オンラインカジノ賭博が違法かどうかは、これらの条文が国外のオンラインカジノへの参加にも適用されるかの問題です。
条文 | 内容 | 罰則 |
刑法185条 | 賭博をした者 | 50万円以下の罰金または科料 |
刑法186条1項 | 常習として賭博をした者 | 3年以下の懲役 |
刑法186条2項 | 賭博場を開張等した者 | 3ヶ月以上5年以下の懲役 |
重要なのは、刑法185条は賭博をした「すべての人」に適用される可能性があるということです。つまり、ディーラーやカジノのオーナーだけでなく、プレイヤー側も処罰の対象になり得ます。
第百八十五条(賭博)
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。第百八十六条(常習賭博及び賭博場開張等図利)
刑法(明治四十年法律第四十五号)
1 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
賭博罪の適用範囲
賭博罪の適用範囲は、金銭や財産を賭ける行為全般に及びます。パチンコや競馬などの公営ギャンブルは、法律で例外的に認められていますが、オンラインカジノは現状ではこのような例外には該当しません。
そのため、オンラインカジノでの賭博行為は、賭博罪に該当する可能性が高いと考えられます。ただし、賭博罪の成立の条件となる「賭博をした」といえるためには、以下の3要件が必要とされています。
- 「偶然の勝敗」により(偶然性)
- 「財物又は財産上の利益」について(利益性)
- 「得喪を争うこと」(得喪性)
これらの要件を満たさない場合は、賭博罪は成立しません。
ただ、オンラインカジノでの賭博行為は、実際に金銭を賭けて行われる場合、基本的に1.2.3.の要件を満たし、「賭博罪」の「賭博をした」に該当する場合がほとんどです。
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海外のオンラインカジノと賭博罪の関係
サーバーの所在地と違法性
オンラインカジノのサーバーが海外にあり、現地の法律では合法的に運営されているという場合でも、日本国内からアクセスして賭博行為を行えば、その賭博行為には、日本の刑法が適用されます。
したがって、オンラインカジノの運営が合法か否か、オンラインカジノが海外のものかどうか、オンラインカジノへの送金は海外の口座から送金されるか、などにかかわらず、日本国内から行われたものであり、その行われた行為が賭博である限り、日本の賭博罪の対象となるということになりあます。
摘発事例と現状
過去には、日本国内から海外のオンラインカジノにアクセスして賭博を行い、逮捕された事例が存在します。警察庁も、海外のオンラインカジノでの賭博行為が、日本では犯罪になる旨を積極的に呼びかけています。
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検察庁によると、以下のような事例で実際に検挙がされているとのことです。
① 日本国内の自宅において、自宅に設置されたパーソナルコンピューターを使用して、海外の会社が運営するオンラインカジノサイトにインターネット接続し、同サイトのディーラーを相手方として賭博をした賭客を賭博罪で検挙。
② 日本国内の賭客を相手方として、日本国内の賭客の自宅等に設置されたパーソナルコンピューターから、海外に設置されたサーバー上のオンラインカジノサイトにアクセスさせ、金銭を賭けさせていた者を常習賭博、賭客を賭博罪で検挙。
③ 日本国内において、海外に設置されたサーバー上のオンライン賭博サイトを運営し、賭客に賭博をさせていた者を賭博開帳図利罪で検挙。
④ 海外のオンラインカジノサイト運営者から収納代行を請け負ったように装って、自身が管理する銀行口座に、同カジノサイトへの賭け金を入金させた者を組織犯罪処罰法違反で検挙。
⑤ 海外のオンラインカジノサイト運営者との間でアフィリエイト契約を結び、動画配信サイトなどで海外のオンラインカジノサイトを利用するように勧誘していた者を常習賭博幇助罪で検挙。
警察庁|オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!
オンラインカジノ賭博が違法だと知らなかった場合
オンラインカジノ賭博が違法だと知らなかった場合でも、犯罪が成立する可能性があります。法律上、「知らなかった」というだけでは、罪を免れることはできません。
犯罪の構成要件と故意
犯罪の成立には、「構成要件」への該当性と「故意」が必要となり、「故意」がない場合、客観的に行った行為が、刑法で定められた犯罪行為(構成要件を充足する行為)であっても犯罪が成立しないのが原則です。
例えば、他人の物を奪う行為は窃盗罪に該当する行為ですが、他人の物を自分の物であると思い込んで、誤って持ってきてしまった、という場合には、「他人の物を奪う」という窃盗罪に該当する行為は行っていても、故意がないので窃盗罪とはなりません。
賭博罪の場合、構成要件は「賭博行為を行うこと」であり、故意は「賭博行為をしているという認識」です。
しかし、「賭博行為を行っていること」自体を認識していれば、「賭博行為が違法であること」を認識していなかったとしても、故意が存在するという判断となります。
したがって、違法性を知らなくても、賭博行為をしているという認識があれば、故意は認められるということです。
違法だと知らなくても犯罪の成立を免れない
以上のとおり、賭博罪のような比較的単純な犯罪については、違法性の認識がなくても、故意が認められる可能性が高いです。つまり、たとえ「海外のサーバーに対してアクセスをする場合には日本の法律は適用されない」と考え、この行為の違法だと知らなかったとしても、「賭博行為をしている」という認識自体はあるため、賭博罪に該当する場合がほとんどです。
他方で、例えばオンラインカジノの仕組み自体を良く理解しておらず、「実際に金を賭けているとは思っていなかった」などの事情がある場合には、まさに「賭博行為をしている」ということを認識していなかったということになるため、故意がないとして、犯罪の成立が否定されることとなります。
したがって、軽い気持ちでオンラインカジノに参加することは避け、法律をよく理解した上で行動することが重要です。
高比良くるまさんは時効が成立しており、処罰される可能性が低い
公訴時効という制度
一般に「時効」と呼ばれているものとして、正式には「公訴時効」という制度があります。
これは、犯罪から一定期間が経過した場合には公訴を提起できないこととする制度で、定められた一定期間が経過しても起訴されていない者については、処罰がされないこととなります。
オンラインカジノを利用する行為の公訴時効
オンラインカジノをユーザーとして利用する行為は、前述のように単純賭博罪又は常習賭博罪に該当しますが、単純賭博罪や常習賭博罪は、いずれも「長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪」に該当するので、公訴時効は3年です。
第二百五十条
① 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年② 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年③ 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。
一 刑法第百八十一条の罪(人を負傷させたときに限る。)若しくは同法第二百四十一条第一項の罪又は盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第四条の罪(同項の罪に係る部分に限る。) 二十
二 刑法第百七十七条若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪 十五
三 刑法第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は児童福祉法第六十条第一項の罪(自己を相手方として淫行をさせる行為に係るものに限る。) 十二年④ 前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)
令和ロマン高比良くるまさんの行為にはすでに時効が成立している。
報道によれば、令和ロマン高比良くるまさんがオンラインカジノを利用していたのは、2019年の年末から2020年の年末ごろまでの1年間ほどの間とのことなので、このとおりの事実関係であれば、2023年の年末ごろには、3年が経過しており、公訴時効が成立しています。
したがって、オンラインカジノを利用していた時期が、報道のとおりであれば、高比良くるまさんは公訴時効の制度により処罰されません。
他のタレントについても、同様にオンラインカジノを利用していたのが公訴時効が成立する時期以前であれば、処罰されないこととなります。
まとめ
本記事では、ニュースや時事問題について、法律の観点から解説をする「プロトキ」の第8回として、「令和ロマン高比良くるまオンラインカジノ賭博を認め謝罪」のニュースを解説していきました。
簡単にまとめると以下のような内容です。
- オンラインカジノとは、海外で運営されるオンライン上で賭博ができるカジノであって、ライセンスを取得し、(現地の法律では)適法に運営されているものがある
- 日本の法律では賭博行為は犯罪である
- (現地の法律では)合法的に運営されている海外のオンラインカジノであっても、日本人が日本からこれに参加する場合には、単純に「日本で賭博行為をした」という判定となり、実際に摘発事例もある
- オンラインカジノの仕組みを理解しておらず「実際に金を賭けているとは思っていなかった」ということであれば別だが、単に「違法だと思っていなかった」というだけでは犯罪の成立は否定されない
- 令和ロマン高比良くるまさんの件については、すでに公訴時効が成立しており、処罰はされない可能性が高い
次回以降も、「プロトキ」では、ニュースや時事問題についてプロスパイア法律事務所の専門家が法的観点から解説をしていきます。
次回の更新をお楽しみにお願いいたします。
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プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。