リベンジポルノの被害に遭われた方、あるいは不安を抱えている方は、一刻も早く適切な対応を取る必要があります。この記事では、リベンジポルノの定義から、具体的な法的措置、被害に遭った際の対処法、そして予防策までを網羅的に解説します。
まず、リベンジポルノとは何か、どのような法律が適用され、どのような罰則が科せられるのかを明確に示します。次に、被害に遭った場合の具体的な行動として、証拠保全の方法、拡散防止策、警察や弁護士への相談方法、そして検索エンジンやSNSへの削除依頼手順を詳しく説明します。
さらに、性犯罪被害者支援センターなどの相談窓口情報や、精神的なケアを受けるための情報を提供することで、被害者の方々が安心して相談できる体制を整えられるようサポートします。また、リベンジポルノの予防策についても解説し、被害の未然防止に貢献します。この記事を読むことで、リベンジポルノに関する正しい知識と適切な対処法を理解し、被害からの回復、そして未来への安心へと繋がる一歩を踏み出せるはずです。
リベンジポルノとは何か
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リベンジポルノは、同意なく撮影された、または同意があったとしても後に同意が撤回されたにもかかわらず、性的な画像や動画をインターネット上に拡散される行為です。
加害者は、元交際相手や配偶者である場合が多く、復讐や嫌がらせを目的として行われることが多いです。近年、スマートフォンやSNSの普及により、誰でも簡単に画像や動画を撮影・拡散できるようになったことから、リベンジポルノの被害は深刻化しています。
リベンジポルノの定義
リベンジポルノという言葉は、英語の”revenge porn”の直訳です。文字通りには「復讐ポルノ」を意味しますが、実際には復讐だけでなく、嫌がらせや脅迫、支配の手段として用いられることもあります。
日本の法律法務省では、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」において、「私事性的画像記録」を「性的な姿態を主たる内容とする画像又は映像(その複製を含む。以下同じ。)であって、当該画像又は映像に係る特定の個人を識別することができるもの」と定義しています。
この法律では、「私事性的画像記録」を提供することなどを犯罪として規定しています。
第二条(定義)
1 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成二十六年法律第百二十六号)
性的な画像や動画の拡散による被害
リベンジポルノの被害は、精神的な苦痛だけでなく、社会生活にも大きな影響を及ぼします。拡散された画像や動画は、インターネット上に半永久的に残ってしまう可能性があり、被害者は常に不安や恐怖に苛まれることになります。
また、被害者のプライバシーが侵害されるだけでなく、名誉が傷つけられ、社会的な信用を失うこともあります。 就職活動や人間関係にも悪影響を及ぼす可能性があり、深刻なケースでは、自殺に追い込まれる被害者もいます。
誰にでも起こりうるリベンジポルノ
リベンジポルノは、特定の人だけが被害に遭うものではありません。スマートフォンやSNSを利用する人であれば、誰にでも起こりうる問題です。特に、若年層は、インターネットやSNSに慣れ親しんでいる一方で、リスクに対する認識が低い傾向があるため、注意が必要です。
信頼していた相手に裏切られるという精神的なショックも大きく、被害者は深い傷を負うことになります。加害者は、親しい間柄であることを利用して、画像や動画を撮影することが多いため、被害者はより大きな精神的ダメージを受ける可能性があります。
以下の表は、リベンジポルノが誰にでも起こりうることを示す例です。
関係性 | 状況 |
---|---|
恋人 | 交際中に合意の上で撮影した動画を、別れた後に復讐のために拡散される。 |
配偶者 | 夫婦間のトラブルで、プライベートな画像をネット上に流出させられる。 |
友人 | 信頼していた友人に、秘密にしていた性的な画像を拡散される。 |
知人 | 盗撮やハッキングによって、性的な画像や動画を拡散される。 |
これらの例以外にも、様々な状況でリベンジポルノの被害が発生しています。自分だけは大丈夫と思わず、常にリスクを意識することが重要です。
リベンジポルノに関する法律と罰則
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リベンジポルノは、深刻な犯罪であり、関係する法律や罰則について理解することが重要です。加害者はもちろん、拡散に加担した人も処罰の対象となる可能性があります。
リベンジポルノを直接的に規制する法律としては、2014年に施行された「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(以下「、リベンジポルノ防止法」といいます。)があります。
この法律は、性的な画像や動画を本人の同意なく提供したり、頒布したりすることを禁じています。
私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科されます。
第三条(私事性的画像記録提供等)
1 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成二十六年法律第百二十六号)
リベンジポルノ防止法以外にも、状況によっては以下の法律が適用される可能性があります。
法律 | 概要 |
---|---|
刑法(名誉毀損罪) | 不特定または多数人が認識できる状態で、人の名誉を傷つける行為を罰します。 |
刑法(わいせつ電磁的記録等送信頒布罪) | わいせつな電磁的記録を意図的に送信または頒布する行為を罰します。 |
迷惑防止条例 | 各都道府県が定める条例で、リベンジポルノに該当する行為を規制している場合があります。 |
名誉毀損については、下記の記事でも詳しく解説しています。
リベンジポルノの被害に遭ったらどうするべきか
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リベンジポルノの被害に遭ってしまった場合、冷静さを保ち、適切な対応をすることが重要です。一刻も早く拡散を阻止し、精神的なダメージを最小限に抑えるために、下記の手順を参考にしてください。
証拠の保全方法
まずは証拠の保全が最優先です。拡散された日時、場所、URL、スクリーンショットなどを記録しましょう。加害者とのやり取り(メール、LINE、SNSのメッセージなど)も保存しておきましょう。これらは、後に加害者を特定し、法的措置を取る上で重要な証拠となります。
警察への相談
リベンジポルノは犯罪です。証拠を揃えて、最寄りの警察署に相談しましょう。警察に相談することで、捜査や加害者の特定、被害届の提出などの手続きを進めることができます。一人で悩まず、警察に相談することが重要です。
弁護士への相談
弁護士に相談することで、法的措置や損害賠償請求などの手続きについてアドバイスを受けることができます。
削除依頼の方法
検索エンジンからの削除依頼
Googleなどの検索エンジンに、拡散された画像や動画の削除を依頼することができます。各検索エンジンには、専用の削除依頼フォームが用意されています。検索結果から削除することで、被害の拡大を防ぐことができます。
SNSやウェブサイトからの削除依頼
拡散されたSNSやウェブサイトにも、直接削除依頼を提出することができます。各プラットフォームの利用規約やヘルプページを確認し、適切な手順に従って削除依頼を行いましょう。
SNSやサイト管理者が対応してくれない場合は、弁護士等の専門家に相談することで、裁判手続きにて削除可能な場合もあります。
SNSや検索結果からの削除については、下記の記事も参考にしてください。
精神的なケアを受ける
リベンジポルノの被害は、精神的なダメージが大きいため、専門機関によるカウンセリングや精神科医の診察を受けることをおすすめします。一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けることが重要です。 各都道府県に設置されている性犯罪被害者支援センターに相談することで、適切な支援を受けることができます。
リベンジポルノの予防策
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リベンジポルノの被害に遭わないためには、事前の予防が何よりも重要です。加害者にならないためにも、被害者にならないためにも、以下の点に注意しましょう。
性的な画像や動画の撮影・送信のリスクを理解する
スマートフォンやデジタルカメラで簡単に写真や動画が撮影できるようになった現代において、性的な画像や動画を安易に撮影・送信することは、大きなリスクを伴います。一度拡散されてしまうと、完全に削除することは非常に困難であり、自分だけでなく、相手の人生にも大きな影響を与える可能性があります。撮影・送信前に、そのリスクを十分に理解することが重要です。
特に、感情が高ぶっている時は冷静な判断ができなくなるため、注意が必要です。将来的なトラブルを避けるためにも、性的な画像や動画の撮影・送信は慎重に検討しましょう。また、相手が同意していない場合、撮影・送信することは違法行為となる可能性があります。相手の意思を尊重し、同意を得ることが不可欠です。
信頼できる相手とのみ共有する
たとえ同意の上で撮影したとしても、共有する相手は慎重に選ぶ必要があります。親しい友人や恋人であっても、将来の関係が悪化したり、データが流出したりする可能性はゼロではありません。本当に信頼できる相手かどうか、よく考えてから共有しましょう。
また、クラウドサービスやオンラインストレージに保存する際にも注意が必要です。セキュリティ対策が万全でない場合、不正アクセスによってデータが流出するリスクがあります。信頼できるサービスを選び、パスワード管理を徹底するなど、セキュリティ対策を強化しましょう。
同意のない撮影・拡散は犯罪であることを認識する
リベンジポルノは、同意のない撮影や拡散が犯罪となることを明確に示したものです。相手が同意していない場合、撮影・送信することはもちろん、既に撮影された画像や動画を拡散することも違法行為となります。このことをしっかりと認識し、加害者にならないように注意しましょう。
また、インターネット上での拡散は特に深刻な問題です。一度拡散されてしまうと、完全に削除することは非常に困難であり、被害は甚大なものとなります。安易な気持ちで拡散することは絶対にやめましょう。
デバイスのセキュリティ対策
スマートフォンやパソコンなどのデバイスは、適切なセキュリティ対策を行うことで、リベンジポルノのリスクを軽減できます。以下の対策を心がけましょう。
対策 | 内容 |
---|---|
パスワード設定 | 複雑なパスワードを設定し、定期的に変更しましょう。 |
OSやアプリのアップデート | 常に最新の状態に保ち、セキュリティの脆弱性を解消しましょう。 |
セキュリティソフトの導入 | ウイルスやマルウェアからデバイスを保護しましょう。 |
不用意なアプリのインストールを避ける | 信頼できる提供元からのみアプリをインストールしましょう。 |
これらの対策を講じることで、デバイスへの不正アクセスやデータの流出を防ぎ、リベンジポルノのリスクを低減することができます。
まとめ
リベンジポルノは、同意なく性的な画像や動画を拡散される深刻な犯罪です。この記事では、リベンジポルノの定義、関連法規、被害に遭った際の対処法、相談窓口、そして予防策について解説しました。
被害に遭った場合は、まず証拠を保全し、拡散の停止を求めましょう。警察や性犯罪被害者支援センター、弁護士などに相談することも重要です。
被害者への支援体制の強化と共に、一人ひとりがリベンジポルノのリスクを理解し、同意のない撮影や拡散は犯罪であることを認識することが大切です。自分自身を守るため、そして周りの人を守るためにも、リベンジポルノに対する正しい知識を持ち、予防策を講じることが重要です。
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プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。