有利誤認表示とは?これにならないためにはどうすれば良い?

インターネット・IT関連法務

事業活動においては、自己の商品、サービスを宣伝するための広告活動が欠かせません。

しかし、広告活動においては、一般消費者が適切に商品、サービスを選択できるように、その内容について法律により規制がなされています。

仮に規制に違反した場合には、法律上のペナルティがあるだけでなく、消費者からの評判が下落するなどのリスクも存在します。

このページでは、広告表示に対する規制のうち、「有利誤認表示」について、意義、要件や過去の違反事例、違反した場合のリスク、違反を未然に防ぐための方法についてお伝えします。

有利誤認表示とは

意義 

有利誤認表示(不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景品表示法」と言います)5条2号)とは、自己の供給する商品、役務の価格、取引条件について、実際のものよりも有利であると一般消費者に誤信させる表示をすること、または他の事業者の同種、類似の商品、役務よりも自己のものの方が有利であると一般消費者に誤信させる表示をすることを言います。簡単にいうと、「いつもよりお得ですよ」、「他者の製品よりお得ですよ」と表示しているにもかかわらず、実際には表示されているほどお得ではない場合が、有利誤認表示にあたります。

例えば、「月々○○円から車が買える!」とあたかも当該支払いのみで対象商品を購入できるかのように表示されているにもかかわらず、実際には上記支払の他に、頭金など別途の支払を要する場合、「安心5年保証」と記載し全ての対象商品に保証が適用されるかのように表示したにもかかわらず、実際は一定の条件を満たすもののみが対象である場合などが、有利誤認表示にあたります。

なお、故意に表示した場合はもちろん、誤って表示した場合であっても、景品表示法の規制対象となります。

第5条 (不当な表示の禁止)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

一 略
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 略

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
規制対象規制内容
価格の表示実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
同種、類似の商品、役務よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
取引条件の表示実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
同種、類似の商品、役務よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

有利誤認表示を規制する目的

景品表示法の目的は、「不当な表示による顧客の有印を防止」し、「一般消費者の利益を保護すること」です(景品表示法1条)。しかし、実際よりもお得であるとの表示が行われた場合、消費者の適正な選択を妨げ、消費者に対して損害をあたえることとなります。そこで、景品表示法は、有利誤認表示を規制することにより、消費者の商品又は役務の自主的かつ合理的な選択を確保することにより、消費者の保護を図っています

第1条 (目的)
 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

有利誤認表示の要件

「表示」であること

景品表示法の規制対象は、「表示」です。具体的には以下に該当するものが「表示」にあたります。(「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公正取引委員会告示第3号)。

  1. 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示 
  2. 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。) 
  3. ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似する物による広告及び陳列物又は実演による広告 
  4. 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告 
  5. 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。) 

これらの表示は、「顧客を誘引するための手段として」行われる必要があります。「顧客を誘引する」とは、新規の顧客に対するもののみならず、既存の顧客に対する取引の継続、増大のためのものも含みます。これらは、事業者の主観意図ではなく、受け手に対して客観的に顧客誘引の効果を持つものであるか否かで判断されます。

また、有利誤認表示による規制の対象となる者は、「事業者」です。「事業者」とは、営利を目的としているかどうかを問わず、経済活動を行っている者全てのことを言います。そのため、株式会社などの営利企業はもちろん、営利を目的としない協同組合なども、商品、役務を供給する事業について事業者にあたることとなります。

さらに、「表示」は、「自己の供給する商品又は役務の取引に関する事項について」行われなければ、規制の対象となりません。ここにいう「供給」とは、一般消費者に対して直接提供する小売店のみならず、商品の販売ルート上にあるメーカー、卸売事業者も含まれます。また、不動産仲介業者が、取り扱う不動産について表示を行う場合も、「自己の供給する商品」にあたります。

以上をまとめると、「表示」とは、「事業者」が自己の商品、役務の供給の際に顧客を誘引するために利用するあらゆる表現手段をいうと言えます。

第2条(定義)
この法律で「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいい、当該事業を行う者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項及び第三十六条の規定の適用については、これを当該事業者とみなす。
2(略)
3(略)
4 この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第二条の規定により、景品類及び表示を次のように指定する。
1 (略)
2 法第二条第四項に規定する表示とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、次に掲げるものをいう。

一 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示 
二 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。) 
三 ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似する物による広告及び陳列物又は実演による広告 
四 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告 
五 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)

不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件(昭和37年公正取引委員会告示第3号)

「商品又は役務の価格その他の取引条件」に関する表示であること

「価格その他の取引条件」とは、商品又は役務の内容そのものを除いた取引における条件の全てをいい、金額、数量、アフターサービスがこれにあたります。

「実際の者又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」であること

「誤認」とは、一般消費者が当該表示から受ける印象、認識と実際の価格、取引条件に差が生じることをいいます。

また、「一般消費者」とは、商品、役務について情報、知識の乏しい通常の消費者を言います。

「一般消費者」に「誤認」が生じる表示であるか否かの判断は、表示上の特定の文章、図表、写真等ではなく、表示内容全体から一般消費者が受ける印象、認識が基準となります(「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成12年6月30日参照))。そのため、表示されている個々の文章、図表などは客観的に正確なものであったとしても、強調されている文章や、図表の配置等、表示全体をみて一般消費者が実際と異なり「お得である」と認識する場合には、有利誤認表示にあたることとなります。

なお、条文上は、「表示」が「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」であることを求めているが、「一般消費者」が「誤認」する表示の場合には、自主的かつ合理的な選択を行うことはできないため、「一般消費者」が「誤認」する表示と認められれば、上記要件も満たすとされています。

要件説明
①「表示」「事業者」が自己の商品、役務の供給の際に顧客を誘引するために利用するあらゆる表現手段
②「商品又は役務の価格その他の取引条件」商品又は役務の内容そのものを除いた取引における条件の全て
③「実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」通常の一般消費者において、実際もしくは他社の商品、役務と比較して「お得である」と「誤信」させる表示であること

二重価格表示

有利誤認表示との関係でよく問題となる概念として、二重価格表示があります。

二重価格表示とは、事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高いほかの価格を併記して表示することをいいます。比較対照価格が適正な表示でない場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与えるため、有利誤認表示にあたることとなります。例えば、「通常4000円のところ、今だけ2980円!」と表示しているものの、4000円で当該商品を販売した実績がなく常に2980円である場合(4000円というのが見せるためだけの金額である場合)などが、有利誤認表示にあたる不当な二重価格表示にあたります。

過去の違反事例

株式会社ジェイコムウエストに対する措置命令(令和6年8月7日)

 株式会社ジェイコムウエストは、JCOM株式会社のウェブサイト上において以下のような表示を行ったことにより、有利誤認表示にあたるとして措置命令がなされました。

表示内容

株式会社ジェイコムウエストは、ウェブサイト上において「POINT 1 J:COMガスのまとめトク料金コースなら年間3,420円(税込)おトクに!」、「大阪ガスの一般料金をご契約中のご家庭で、毎月のガス使用量が16mを超える場合は、J:COMガスのまとめトク料金コースをご契約いただくとおトクになります。」等と表示することにより、あたかも、毎月のガス使用量が16mを超える場合のガス料金は、大阪瓦斯株式会社が提供する家庭用の都市ガスの小売供給のうち、「一般料金」と称するガス料金を適用する都市ガスの小売供給のガス料金より低額であるかのように表示していました。

実際の価格

しかし、本件役務のガス料金に適用される原料費調整単価が大阪ガスー般料金に適用される原料費調整単価を上回るため、月のガス使用量の多募にかかわらず、本件役務のガス料金は大阪ガスー般料金より高額でありました。

実際の表示

消費者庁|令和6年8月7日「株式会社ジェイコムウエストに対する景品表示法に基づく措置命令について」

違反した場合のリスク

調査

ある事業者が、有利誤認表示を行っている疑いが生じた場合、消費者庁又は都道府県は、事業者に対して、業務、財産に関する報告命令、帳簿書類などの提出命令、事業者の事務所などへの立入検査、関係者への質問検査を行うことができます(景品表示法25条1項)。

命令、検査に応じなかったものは、1年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

第25条
内閣総理大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者に対し、その業務若しくは財産に関して報告をさせ、若しくは帳簿書類その他の物件の提出を命じ、又はその職員に、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
(略)

第47条
第二十五条第一項の規定による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、当該違反行為をした者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

罰金

事業者が、有利誤認表示を行った場合、100万円以下の罰金が科されます(景品表示法48条2号)。

第48条
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。

一 (略)
二 自己の供給する商品又は役務の取引における当該商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

措置命令

調査の結果、有利誤認表示にあたるとされた場合、消費者庁又は都道府県は、事業者に対して、表示の差止め、違反表示が再び行われることを防止するために必要な事項、又はこれらの実施に関連する公示などの必要な事項を命ずることができます(景品表示法7条)。具体的には、一般消費者の誤認排除のための新聞広告等による公示、再発防止策の策定などが命じられることがあります。

措置命令に違反した場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます(景品表示法46条1項)。法人の場合には、3億円以下の罰金が科されます(景品表示法49条1項)。

また、措置命令の必要性が認められないと判断された場合であっても、景品表示法違反のおそれのある事業者に対しては、是正措置をとるよう指導がなされる場合があります。

第7条
内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。

一 (略)

第46条
措置命令に違反したときは、当該違反行為をした者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する
2 (略)

第49条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。

一第四十六条第一項三億円以下の罰金刑
二 (略)

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

課徴金納付命令

事業者が、有利誤認表示を行った場合、消費者庁は、当該事業者に対して、対象商品、役務の売上額の3%の課徴金を国庫に納付することを命じなければなりません(景品表示法8条)。これは、事業者に経済的不利益を負わせることにより、不当表示を抑止する目的の制度であり、違反が認められた場合には一部例外(景品表示法8条ただし書)を除き必ず発せられます。

第8条(課徴金納付命令)
事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき、又はその額が百五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

適格消費者団体による差止請求

不当表示は、多数の消費者に対して被害が拡大するおそれがあることから、景品表示法は、消費者契約法2条4項の適格消費者団体に対して、表示の差し止め、予防、消費者に対する不当表示の告示、その他必要な措置を採るよう、裁判所に請求することができます(景品表示法34条)。

第34条(差止請求権等)
消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体(以下「適格消費者団体」という。)は、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して次の各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

確約手続

令和6年10月1日から施行される改正景品表示法で新しく追加された手続として、「確約手続」が実施される可能性もあります。

確約手続は、以下の流れで実施される手続です。

  1. 違反の疑いがある場合、内閣総理大臣は違反の疑いの概要等を通知できる(法26条)
  2. 通知を受けたものは、問題点を是正するために必要な措置に関する計画(是正措置計画)を作成し申請可能(27条1項)
  3. 申請された是正措置計画が是正に十分なものと認める場合、その旨を内閣総理大臣が認定(法27条3項)
  4. 是正措置計画が認定された場合、措置命令や課徴金納付命令が発出されないことが確約される(法28条)

第28条(是正措置計画に係る認定の効果)
 第七条第一項及び第八条第一項の規定は、内閣総理大臣が前条第三項の認定(同条第八項の変更の認定を含む。次条において同じ。)をした場合における当該認定に係る疑いの理由となつた行為については、適用しない。ただし、次条第一項の規定による当該認定の取消しがあつた場合は、この限りでない。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

直罰

同じく、令和6年10月1日から施行される改正景品表示法では、優良誤認表示(景品表示法5条1号)や有利誤認表示(景品表示法5条2号)を行った事業者に対して、100万円以下の罰金を科すことができる直罰規定が導入されました。

第48条
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。

 一 自己の供給する商品又は役務の取引における当該商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき。
二 自己の供給する商品又は役務の取引における当該商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

未然に違反を防ぐ方法

一般消費者の立場に立って、表示を検討する

上記のように、有利誤認表示該当性は、一般消費者が、表示全体をみて実際よりお得であると誤信するか否かで判断されます。そのため、「事業者」としては、自己の供給する商品、役務の顧客と考えられる者の立場に立ち自己の表示全体から一般消費者がどのような印象や認識を持つかを考えることが必要です。そして、自己の商品、役務の実際の内容とくらべて、顧客に誤解されないよう、誤った情報や大げさな情報の表示を行わないことが、有利誤認表示違反を未然に防ぐことにつながります。

組織内において違反を防ぐための措置を講ずる

「事業者」は、表示について「適正に管理するために必要な体制の整備その他必要な措置を講じなければな」りません(景品表示法22条1項)。そして、景品表示法22条2項を受け、消費者庁は、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(以下「管理措置指針」と言います。)として、具体的な措置の内容を示しています(管理措置指針第4)。具体的には以下の通りです。

事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針

景品表示法の考え方の周知・啓発

事業者は、従業員などに職務に応じ景品表示法の周知、啓発を行うことが求められます。具体的には、都道府県、消費者団体などの社外講習会に参加することなどの措置が挙げられます。

法令遵守の方針等の明確化

事業者は、不当表示防止のための法令遵守の方針、遵守のための手続の明確化が求められます。具体的には、法令遵守の方針についての社内規定、行為規範の作成、周知などが挙げられます。

表示などに関する情報の確認

事業者は、「表示」をしようとする場合には、当該表示の根拠となる情報を確認することが求められます。具体的には、仕様書、企画書との整合性を確認することなどが挙げられます。

表示等に関する情報の共有

事業者は、その規模に応じて、表示に関連する各部門において不当表示を防止するために、必要に応じて情報を共有し確認できる体制を構築することが求められます。具体的には、電子共有ファイルを利用し、表示の根拠となる情報を閲覧できるようにしておくことが挙げられます。

表示等の管理するための担当者等を定めること

事業者は、表示に関する事項の適正を管理するために、表示を管理する担当者または担当部門をあらかじめ定めることが求められます。担当者の設置には、表示に関する監視監督権限をふよすること、複数名担当者を置く場合には権限の範囲が明確であること、担当者が景品表示法に関する一定の知識の習得に努めていること、担当者を社内において周知する方法が確立してることが求められます。

表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること

事業者は、表示の対象となる商品、役務が一般消費者に供給され続けると合理的に考えられる期間において、事後的にその適正を確認するために必要な措置を採ることが求められます。具体的には、根拠となる情報の記録、保存、問い合わせのライン確保などが挙げられます。

不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応

事業者は、景品表示法違反またはそのおそれがある事案が生じた場合、その事案に対処するため、当該事案に関する事実関係を迅速かつ正確に確認し、これに即して表示の削除などの措置を迅速適切に行うこと、及び再発防止策を講じることが求められます。

以上のような、管理措置指針を元に、社内において「表示」に関する規定、行動指針を作成、周知することが、景品表示法違反の未然の防止、あるいは違反時におけるレピュテーションリスクの軽減に役に立ちます。

第22条 (継続中の違反被疑行為に係る通知)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の規定に基づき事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において単に「指針」という。)を定めるものとする。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)

まとめ

このページでは、広告表示に対する規制のうち、「有利誤認表示」について、意義、要件や過去の違反事例、違反した場合のリスク、違反を未然に防ぐための方法についてお伝えしました。

不当表示について、正しく理解することで、リスクを負担することなく、広告活動を行うことができます。

自社の広告について、規制の対象となるか疑問に思った際には、お気軽に弁護士にご相談ください。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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