連載シリーズ「プロトキ」では、プロスパイア法律事務所の弁護士等の専門家が、ニュースや時事問題について、法律の観点から解説をしていきます。
※本記事は、令和6年12月17日時点の情報に基づいて執筆されています。
今回は、招待制SNS「mixi2」がリリースされたというニュースについて、招待制SNSの招待リンクを他のSNSやブログ等で一般公開するのは法的に問題ないのか、弁護士の目線から解説していきます。
ニュース概要「招待制SNS『mixi2』がリリース」について
12月16日、株式会社MIXIが招待制SNSアプリ「mixi2」をリリースしました。
参考:MIXIが新SNS「mixi2」リリース 懐かしの「足あと」や「マイミク」は未実装(KAI-YOU) – Yahoo!ニュース
参考:新SNS「mixi2」誕生 招待制で投稿字数は「ミクシィ」 | 毎日新聞
参考:「mixi2」は、X移住先の本命か? mixi古参ユーザーもどっぷりハマった、久しぶりの「平和なSNS」(1/3 ページ) – ITmedia NEWS
すでに友人等への送信だけでなくXやInstagram等の他のSNSにて、mixi2の招待リンクが貼られている状況が散見されます。
そのような状況のなか、こちらの記事では、
「mixi2の招待リンクを他のSNSやブログ等で一般公開するのは法的に問題ないのか」
という点について弁護士が解説します。
mixi2について
mixi2は、かつて一世を風靡したSNS「mixi」の再来として期待を集める招待制ソーシャルネットワーキングサービスです。
mixi2は、現代のSNSのトレンドを取り入れつつ、mixiの特徴であった「コミュニティ」や「イベント」といった機能も備え、広く深く交流することができる設計となっています。
また、安心な場をつくっていきたいという考えから完全招待制となっているのも特徴です。
招待制SNSとは
招待制SNSとは、既存ユーザーからの招待がないと参加できないクローズドなソーシャルネットワーキングサービスです。一般のSNSとは異なり、限られたコミュニティ内で情報交換や交流が行われます。
招待制SNSの特徴
招待制SNSは、不特定多数のユーザーが参加するオープンなSNSとは異なる特徴を持っています。主な特徴は以下の通りです。
特徴 | 詳細 |
---|---|
クローズドなコミュニティ | 招待された人のみが参加できるため、閉鎖的で質の高いコミュニティが形成されやすいです。参加者間の親密度が高く、より深い繋がりを築ける傾向があります。 |
参加者の質の高さ | 招待制であるため、参加者層がある程度限定され、共通の興味や価値観を持つ人々が集まりやすいです。 |
特別なステータス | 招待されたメンバーのみが参加できるという特別感や限定感が、ユーザーのステータス向上に繋がるとされています。 |
安心感 | オープンなSNSに比べて、不特定多数のユーザーとの関わりがないため、安心して利用できます。誹謗中傷やプライバシー侵害のリスクも軽減されます。 |
これらの特徴から、招待制SNSは、特別なコミュニティへの所属感や安心感を求めるユーザーに人気があります。また、情報の質の高さや、参加者同士の密な繋がりも魅力となっています。
招待制SNSの具体例
招待制SNSとしては、過去に以下のようなSNSが存在しました。
clubhouse
2020年4月に米国企業アルファ・エクスプレーション(Alpha Exploration)社からリリースされた音声特化型の完全招待制SNSです。
テキストではなく音声でのやりとりとなる点、1ユーザー2人までしか出せない招待コードによる完全招待制のSNSである点が人気を集めました。
その後、2021年の7月に招待制を廃止し、誰でも参加できるSNSに変わりました。
Bluesky
2023年2月にTwitter(現X)の旧CEOであったJack Patrick Dorsey(ジャック・ドーシー)氏によってリリースされた分散型SNSです。
当初は招待制SNSでしたが、2024年2月に招待制を廃止し、誰でも参加できるSNSになりました。
招待リンクについて
招待制SNSへの参加方法として「招待リンク」や「招待コード」という方式がよく用いられます。
URLやコードを招待したい人に共有しリンクをクリックしたり登録の際にコードを使用することでSNSの登録ができるシステムです。
今回のmixi2でも招待リンクの方式が採用されており、招待リンクが他のSNSやブログ等でも公開され拡散されています。
では、招待制SNSの招待リンクを一般公開するのは法的に問題ないのでしょうか?
招待リンクの一般公開と法的問題
招待制SNSの招待リンクを一般公開した場合、様々なリスクが考えられます。限定されたコミュニティであるがゆえのメリットが失われるだけでなく、運営側とのトラブル、法的問題に発展する可能性も懸念されます。
実際上の問題点
法的問題とは別の問題として、招待リンクがSNS等で一般公開されることで、以下のような実際上の問題は生じます。
コミュニティの質の低下
招待制SNSは、招待リンクによって参加者を限定することで、一定の質を保ったコミュニティ形成を目指しています。
しかし、招待リンクが一般公開されると、誰でも容易に参加できるようになり、コミュニティの質が低下するリスクがあります。
例えば、良好な人間関係や活発な情報交換が損なわれたり、荒らし行為やスパムの増加といった問題が発生する可能性も考えられます。
運営側とのトラブル
招待リンクの一般公開は、運営側の意図しないユーザーの急増を招き、サーバー負荷の増大や管理コストの増加につながる可能性があります。
また、招待制というシステム自体が崩壊し、運営側のブランドイメージや収益モデルに悪影響を与えることも懸念されます。
法的問題点
招待リンクの一般公開を禁止する法律はない
招待制SNSの招待リンクや招待コードの取扱いについて規定した法律はなく、特に何かの法律に違反して違反となるわけではありません。
利用規約違反となる場合がある
多くの招待制SNSでは、利用規約において招待リンクの取り扱いについて明記しています。
例えば、招待リンクの販売や無許可での公開を禁止しているケースもあります。
これらの規約に違反した場合、アカウントの停止や法的措置といった厳しいペナルティが科される可能性があります。規約違反は重大なリスクを伴うため、招待リンクの取り扱いには十分な注意が必要です。
mixi2における招待リンクの取り扱い
mixi2の招待リンクを他のSNSやブログ等で一般公開する行為の是非を判断するには、まずmixi2の利用規約を確認する必要があります。利用規約は、サービス提供者と利用者の間で締結される契約であり、利用者はサービスを利用する際にその内容を遵守する義務を負います。
mixi2の利用規約には、招待リンクの取り扱いについて具体的にどのような規定が設けられているのでしょうか。
mixi2の利用者に適用される利用規約
mixi2を利用する際には、以下のように2つの利用規約への同意を求められます。
また、mixi2 利用規約では、以下の通り、mixi2 利用規約だけでなく、MIXI IDアカウント利用規約が適用されることが規定されています。
第4条(会員登録)
mixi2 利用規約
1. 本サービスを利用するには、弊社が提供するMIXI IDアカウントで会員登録していただく必要があります。MIXI IDアカウントは別途登録が必要で、MIXI IDアカウント利用規約が適用されます。
(略)
したがって、確認すべき利用規約は、mixi2 利用規約とMIXI IDアカウント利用規約の2つです。
招待リンクをSNS等で公開した場合の利用規約上の処理
招待リンクに関する規定はない
いずれの利用規約においても、招待リンクの取り扱いに関する規定は、定められていません。
関係する規定は以下の2つ
「関係する諸規定」として別のルールが適用される可能性
mixi2 利用規約第1条2項では、以下のように、利用規約だけでなく、「別途定める諸規定」が本規約の一部を構成すると定められています。
第1条(規約の適用)
mixi2 利用規約
1. (略)
2. 本規約とは別に弊社が別途定める利用規約および諸規定は本規約の一部を構成し、本サービス利用時には、本サービスを利用する方(以下、「利用者」といいます。)は、全ての規約へ同意するものとします。
(略)
具体的には、SNSごとにコミュニティガイドラインのような形で規定が定められる場合があり、このようなコミュニティガイドラインも規約の一部として扱われるため、コミュニティガイドライン違反が、規約違反と同様に扱われるということです。
この場合、コミュニティガイドラインに違反すると、「本規約に違反した場合」としてアカウントが削除される可能性があります。
第12条(会員登録削除)
mixi2 利用規約
1. (略)
2. 弊社は、利用者が次の各号に掲げるいずれかに該当する場合には、弊社の判断によって、会員登録を強制的に削除して本サービスの利用をお断りすることがあります。
(1) (略)
(2) 本規約に違反した場合
(略)
ただし、現時点ではmixi2では、上記の利用規約2点を除いてコミュニティガイドラインのような規約類は作成・公開されておらず、現時点ではこれに該当することはないかと思います。
「その他弊社が不適切であると判断する行為」とされる可能性
mixi2 利用規約では、「その他弊社が不適切であると判断する行為」が、禁止行為として挙げられています。
第13条(禁止行為)
mixi2 利用規約
利用者の本サービスの利用にあたって、弊社は以下の行為を禁止します。利用者がこれらの禁止行為を行った場合、利用者に通知することなく、弊社は該当する内容を削除することができ、また、禁止行為を行った利用者の利用を制限もしくは強制会員登録削除することができるものとします。ただし、弊社は、当該内容を削除する義務を負うものではなく、削除および利用制限等の処分について弊社は説明の義務を負わないものとします。
(略)
33. その他弊社が不適切であると判断する行為
そのため、招待リンクをSNS等で一般公開するのは、クローズドなSNSに知り合いを招待するという招待リンクの趣旨に反しており、不適切である、として、禁止行為に該当すると運営により判断される可能性があります。
しかしながら、mixi2のサービス画面上では、特に招待リンクの公開を止めるような記載や注意書きは見受けられず、むしろ、招待リンクを発行すると、「SNSやLINEで招待しよう!」というメッセージや、各種SNSでのシェアボタンが表示されるなど、mixi2側がSNSでのシェアを予定しているような表示があります。
このような状況からすれば、SNSでの招待リンクの一般公開が「その他弊社が不適切であると判断する行為」に該当すると判断される可能性は低いものと思われます。
まとめ
招待制SNS「mixi2」の招待リンクを、他のSNSやブログ等で一般公開することの法的リスクについて解説しました。
結論としては、
- 招待リンクの一般公開は、法律で規制されているものではなく、利用規約の問題
- 現状のmixi2の利用規約では、特に招待リンクが規制されている様子はない
- とはいえ、招待リンクを一般公開することで、コミュニティの質の低下等の事実上の問題はあるので、注意は必要
という状況です。
次回以降も、「プロトキ」では、ニュースや時事問題についてプロスパイア法律事務所の専門家が法的観点から解説をしていきます。
次回の更新をお楽しみに!