インターネットで見つけた素敵な画像や面白い写真を、気軽に自分のSNSに投稿していませんか? 実はその行為、違法となる可能性があり、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれません。
本記事では、インターネット上の画像を勝手にSNSに掲載する行為の危険性について、著作権、肖像権、プライバシー権といった観点から詳しく解説します。
インターネット上の画像や写真を転載するのは違法?
インターネット上で公開されている画像だからといって、無断で自分のSNSに掲載しても問題ないとは限りません。むしろ、著作権、肖像権、プライバシー権といった権利を侵害し、違法となる可能性が高い行為です。
たとえ個人的に楽しむ目的であっても、権利者の許可なく画像を使用することは避けるべきです。特に、営利目的で利用する場合はより厳しい判断がされます。
著作権侵害の危険性
インターネット上の画像は、著作権によって保護されている場合がほとんどです。著作権とは、創作物を創作した人に与えられる権利のことです。写真、イラスト、絵画、漫画などのほか、文章や音楽、プログラムなども著作物に該当します。
これらの著作物を権利者の許可なく複製、改変、頒布することは著作権侵害となり、損害賠償請求や刑事罰の対象となる可能性があります。
肖像権侵害の危険性
肖像権とは、自分の容姿や姿態をみだりに撮影されたり、公開されたりしない権利です。インターネット上の画像に人物が写っている場合、その画像を無断でSNSに掲載することは肖像権侵害となる可能性があります。
特に、その人物が特定できるような形で掲載した場合や、不名誉な形で使用した場合などは、より深刻な問題となるでしょう。
プライバシー権侵害の危険性
プライバシー権とは、私生活上の情報をみだりに公開されたり、利用されたりしない権利です。インターネット上の画像が個人の私生活に関する情報を含んでいる場合、たとえ肖像権侵害に該当しなくても、プライバシー権侵害となる可能性があります。
例えば、自宅内や家族写真などを無断で公開することは、プライバシー権侵害にあたる可能性が高いです。また、画像に写っている人物が特定できない場合でも、背景や状況から個人が特定できるような情報が含まれている場合は、プライバシー権侵害となる可能性があります。
プライバシー権侵害については、こちらの記事で詳しく説明しています。
これらの権利侵害のリスクを理解し、インターネット上の画像を適切に利用することが重要です。
インターネットの画像を勝手にSNS掲載した場合の罰則・損害賠償
インターネット上の画像を無断でSNSに掲載した場合、どのような罰則や損害賠償のリスクがあるのでしょうか。著作権侵害、肖像権侵害、プライバシー権侵害それぞれの場合について解説します。
著作権侵害の場合
著作権法違反となる場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
第百十九条
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
また、権利者から民事訴訟を起こされ、損害賠償請求をされる可能性があります。損害賠償額は、画像の使用状況、侵害の規模、権利者の損害などを考慮して算定されます。例えば、営利目的で画像を使用した場合は、高額な損害賠償が請求される可能性が高くなります。
具体的な損害賠償額の算定方法は様々ですが、例えば、ライセンス料相当額や、侵害行為によって得られた利益相当額などが基準となることがあります。また、弁護士費用なども請求される場合があります。
肖像権侵害の場合
肖像権侵害とは、本人の承諾なく無断で写真や動画を撮影・公開し、その人の社会的評価を低下させる行為です。勝手にSNSに他人の顔写真などを掲載した場合、肖像権侵害に該当する可能性があります。
肖像権は、明確な法律で規定されている権利ではなく、判例によって認められている権利です。そのため、損害賠償請求が認められるかどうかは、個々のケースによって判断されます。
ただし、人格権侵害として慰謝料の支払いを命じられる可能性は十分にあります。慰謝料の額は、侵害の程度や被害者の精神的苦痛などを考慮して決定されます。
プライバシー権侵害の場合
プライバシー権侵害とは、個人の私生活に関する情報を、本人の同意なく公開することで、その人の平穏な生活を害する行為を指します。
画像自体に問題がなくても、その画像が撮影された状況や、画像に写っている人物の関係性によっては、プライバシー権侵害に該当する可能性があります。
例えば、私的な場面を盗撮した写真や、個人が特定できる情報を無断で公開した場合などが該当します。
プライバシー権侵害も肖像権と同様に、明確な法律があるわけではなく、判例によって認められています。そのため、損害賠償請求が認められるかどうかは、個々のケースによって判断されます。
しかし、精神的苦痛に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。慰謝料の額は、侵害の程度や被害者の精神的苦痛などを考慮して決定されます。
権利 | 罰則 | 損害賠償 |
---|---|---|
著作権 | 10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方 | ライセンス料相当額、侵害行為によって得られた利益相当額など |
肖像権 | なし(民事上の責任) | 慰謝料 |
プライバシー権 | なし(民事上の責任) | 慰謝料 |
SNSへの画像掲載でトラブルにならないための注意点
SNSで画像を気軽に投稿する機会が増えましたが、正しい知識がないまま画像をアップロードしてしまうと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
ここでは、SNSに画像を掲載する際の注意点について詳しく解説します。
引用元を明記すればOK? 著作権について
インターネット上で公開されている画像だからといって、自由に使用できるわけではありません。多くの画像には著作権が存在し、権利者の許可なく無断で使用することは著作権侵害にあたります。
引用元を明記するだけでは著作権侵害を免れることはできません。 著作権者の許諾を得ずに画像を利用できる場合は、著作権法上の引用の要件を満たしている場合など、限定的です。
例えば、公正な慣行に合致する引用であること、主従関係が明確であること、出典を明示することなど、いくつかの要件を満たす必要があります。これらの要件を満たしていない場合は、引用元を明記していても著作権侵害となる可能性があります。
なお、引用の適切な方法については、以下の法律記事で詳しく解説しています。
モザイク加工すればOK? 著作権・肖像権について
元の画像を加工したり、一部を切り抜いたりしたとしても、著作権侵害にあたる可能性があります。著作権は、アイデアや表現方法を保護する権利であり、単なる複製だけでなく、改変についても権利者の許可が必要です。
また、他人が写っている写真を加工してSNSに投稿する場合は、肖像権侵害にも注意が必要です。
肖像権とは、自分の容姿や姿態を無断で撮影・公開されない権利です。たとえ加工していても、顔がはっきりと認識できる場合は肖像権侵害となる可能性があります。
特に、悪意のある加工や、名誉を傷つけるような形で公開した場合は、より重い責任を問われる可能性があります。
X、Instagram、Facebookなど、SNSの種類による違い
X、Instagram、Facebookなど、各SNSの利用規約にも注意が必要です。各SNSは独自の利用規約を定めており、画像の投稿に関するルールもそれぞれ異なります。
それぞれのプラットフォームの利用規約をよく確認し、ルールに則って画像を投稿するようにしましょう。また、スクリーンショットを投稿する場合も、著作権や肖像権に配慮する必要があります。下記の表に主要なSNSの利用規約へのリンクをまとめました。
SNS | 利用規約 |
---|---|
X | X利用規約 |
Instagram利用規約 | |
Facebook利用規約 |
これらの規約に加えて、個々の投稿に適用される可能性のある特定のルールやガイドラインがある場合もあります。例えば、商用利用に関する制限や、特定の種類のコンテンツに関するポリシーなどです。
常に最新の情報を各プラットフォームで確認することが重要です。
スクリーンショット転載の違法性については下記の記事で解説しております。
インターネット上の画像を勝手にSNS掲載された時の対処法
あなたの画像がインターネット上で無断でSNSに掲載されているのを発見した場合、早急な対応が必要です。ここでは、具体的な対処法をステップごとに解説します。
各SNSの運営会社への通報
まずは、画像が掲載されているSNSの運営会社に通報しましょう。各SNSには、著作権侵害やプライバシー侵害に関する報告窓口が設けられています。正確な情報を提供することで、迅速な削除対応につながります。
通報時には、自分の権利が侵害されていることを明確に伝え、証拠となるスクリーンショットなどを添付しましょう。 無断転載された画像のURL、自分のアカウント情報、権利侵害の内容などを具体的に記載することが重要です。
発信者情報開示請求
SNS運営会社による削除対応が行われない場合や、加害者を特定して損害賠償請求などを検討する場合には、発信者情報開示請求を行うことができます。
発信者情報開示請求とは、インターネット上の権利侵害行為を行った者の氏名、住所、メールアドレスなどの情報を開示させるための手続きです。プロバイダ責任制限法に基づき、裁判所を通じて行います。
発信者情報開示請求を行うためには、権利侵害の事実を証明する証拠が必要となります。スクリーンショット、侵害された画像のURL、侵害行為が行われた日時などを記録しておきましょう。 弁護士に相談することで、スムーズな手続きが可能になります。
発信者情報開示請求については、下記の記事で詳しく解説しています。
損害賠償請求
権利侵害によって精神的苦痛を受けた場合や、金銭的な損害が発生した場合には、加害者に対して損害賠償請求を行うことができます。
請求金額は、権利侵害の内容や程度、被害の状況などを考慮して決定されます。
示談交渉や訴訟など、様々な手段がありますので、弁護士に相談して適切な方法を選択しましょう。 損害賠償請求を行う際には、権利侵害の事実、損害の内容、請求金額などを明確に示す必要があります。証拠となる資料を準備しておくことが重要です。
インターネット上の画像を安全に利用する方法
インターネット上で画像を安全に利用するためには、著作権・肖像権・プライバシー権などを侵害しないよう、適切な方法で画像を入手し使用することが重要です。ここでは、安全な画像利用のための具体的な方法を紹介します。
フリー素材・著作権フリー画像サイトの活用
フリー素材や著作権フリーの画像を提供するウェブサイトは、安全に画像を利用するための優れた選択肢です。これらのサイトで提供される画像は、基本的に無料で利用でき、商用利用が可能なものも多いです。ただし、サイトごとに利用規約が異なる場合があるので、必ず確認しましょう。利用規約をよく読んで、ライセンスの範囲内で使用することが重要です。
クリエイティブ・コモンズライセンスを理解する
クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)は、著作権者が作品を公開する際に、利用条件を明示するための国際的な枠組みです。 CCライセンスが付与された作品は、ライセンスの条件に従うことで、自由に利用することができます。
例えば、「CC BY」は著作権者の表示を条件に、商用利用を含むあらゆる利用が可能です。「CC BY-NC」は、非商用利用に限って利用が可能です。それぞれのライセンスの種類と意味を理解し、適切に利用することが重要です。
クリエイティブ・コモンズライセンスについて詳しくは、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのウェブサイトをご覧ください。
有料画像サイトの利用
高品質な画像を確実に利用したい場合は、有料画像サイトの利用がおすすめです。有料画像サイトでは、著作権処理が明確で、高解像度の画像を安心して利用できます。 また、特定のテーマや用途に特化した画像が豊富に揃っている場合もあります。予算に合わせて適切なサイトを選びましょう。
これらの方法を参考に、著作権・肖像権・プライバシー権などを尊重し、安全に画像を利用しましょう。
まとめ
インターネット上の画像をSNSに無断掲載することは、著作権、肖像権、プライバシー権の侵害となり、違法行為となる可能性があります。軽い気持ちで行った行為でも、高額な損害賠償を請求されるケースもあるため、安易な投稿は避けましょう。
もし自分の画像が勝手にSNSに掲載された場合は、各SNS運営会社への通報、発信者情報開示請求、損害賠償請求などの対処法があります。
正しく理解し、安全に楽しくSNSを利用しましょう。
プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。