連載シリーズ「広告規制違反FILE」では、消費者庁により公表された広告規制違反の摘発事例について、問題の広告表現と違反の理由、処分の内容などについて、弁護士が分かりやすく速報解説をしていきます。
各規制の具体的なNG例として、実際の広告表現で把握することができますので、是非ご参照ください。
命令概要
対象事業者の類型 | マスクの販売事業者 |
対象事業者の取扱商品 | マスク |
課徴金納付命令の日 | 2025年3月21日 |
課徴金納付命令の内容 | 6589万円の支払い |
公表資料URL【PDF】 | https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms210_250321_01.pdf |
問題視された表現
問題となった表現の概要
- 新聞紙面広告において、「立体マスク30枚セット3,600円(税抜)」、「本日の広告の有効期限5日間」と表示をした
実際の表現

消費者庁が問題視した点
「あたかも、当該広告掲載日から5日間に限り、3,600円(税別)で、他に負担すべき費用はなく、本件商品を購入できるかのように示す表示をしていた。」
「本件商品を1セット購入する場合には、3,600円(税別)の他に送料や手数料を負担する必要があるものであり、当該広告掲載日から5日間を経過した後も当該条件で本件商品を購入することができるものであった。」
解説
今回の課徴金納付命令は、埼玉県により令和2年6月11日に発令されていた措置命令が発令されていた件について続く命令です。
景品表示法は、「不当表示」として、以下の3種類の広告を規制しています。
- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- その他一般消費者に誤認されるおそれがある表示として内閣総理大臣の指定するもの
第五条(不当な表示の禁止)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
そして、本件では、このうち、第2号の有利誤認表示に該当すると判断されました。
有利誤認表示は、以下の要件を満たす場合にこれに該当すると考えられています。
要件1 | 商品又は役務の価格その他の取引条件に関する表示であること |
要件2 | 実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示 |
本件では、
広告掲載日から5日間に限るという条件であれば、送料や手数料などの負担がなく、商品の取引条件について、有利であるかのような表示であったとして、有利誤認表示であると判断されました。
なお、送料などについては、表示の下部部分に小さく記載がされており、全く表示がなかったわけではありませんでした。
しかし、このように小さく表示をするだけで、一見してわからないような表示の仕方で、かつ「3,600円(税別)」部分を強く強調していることから、「他に負担すべき費用はなく、本件商品を購入できるかのように示す表示」であると認定されました。
本件が、新型コロナウイルスの蔓延していた時期のものであり、マスク需要が強いタイミングでの訴求で、消費者に対する影響度が大きかったことも判断の厳しさに影響があった可能性はあるかと思います。
有利誤認表示については、以下の法律記事でも解説していますので、参考までにご参照ください。
まとめ
本記事では、2025年3月21日付けのマスクの販売事業者に対する課徴金納付命令について速報解説をしていきました。
次回以降も、「広告規制違反FILE」では、消費者庁の公表した処分について、随時解説をしていきます。
摘発事例の表現を抑え、NGリストとして把握することで、自社の広告規制違反のリスクを回避しましょう。

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。