連載シリーズ「広告規制違反FILE」では、消費者庁により公表された広告規制違反の摘発事例について、問題の広告表現と違反の理由、処分の内容などについて、弁護士が分かりやすく速報解説をしていきます。
各規制の具体的なNG例として、実際の広告表現で把握することができますので、是非ご参照ください。
命令概要
対象事業者の類型 | 太陽光発電機器業者 |
対象事業者の取扱商品 | 太陽光発電システム機器 |
課徴金納付命令の日 | 2025年6月5日 |
課徴金納付命令の内容 | 令和8年1月6日までに、9989万円を支払わなければならない |
公表資料URL【PDF】 | https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_250605_01.pdf |
問題視された表現
問題となった表現の概要
No.1表示(自社サイトのトップページ、「お知らせ」のページ)
- あたかも、令和4年に、「アフターフォローも充実の太陽光発電・蓄電池販売」、「安心して導入できる太陽光発電・蓄電池販売」、「知人に紹介したい蓄電池販売」の3項目において実際に実際に利用したことがある者又は知見等を有する者を対象にそれぞれ調査した結果、それぞれ第1位であるかのように示す表示をしていた
実際の表現
消費者庁が問題視した点
- この根拠は委託先業者によるものであるが、委託先業者による調査は、対象事業者の商品又はサービス実際に利用したことがある者か又は知見等を有する者かを確認することなく、対象事業者の印象を問うもので、客観的な調査に基づくものではなかった。
- また、当該調査結果を適切に引用したものでもなかった。
解説
今回の課徴金納付命令は、いわゆるNo,1表示について、「No.1」であることが真実である客観的な証拠がないとして、課徴金納付命令を行うものです。となる旨を判断するものです。
「No.1表示」とは、商品やサービスの優位性を示すために用いられる表現で、数値的な指標や顧客満足度などにおいて、他社と比較して最も優れていることを示唆するものです。消費者に分かりやすく、購買意欲を高める効果的な広告手法として広く利用されていますが、景品表示法の規制対象となるため、表示内容の根拠や比較対象の明確化など、適正な表示が求められます。
景品表示法には、No.1表示自体を規制する規定はありませんが、合理的な根拠のないNo.1表示は、その内容に応じて、優良誤認表示又は有利誤認表示として、景品表示法違反となります。
第五条(不当な表示の禁止)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
そして、この「合理的な根拠」があるといえるか否かについて、消費者庁は、No.1表示に合理的な根拠があり、適法であると言えるための条件について、「No.1 表示に関する実態調査報告書」で見解を明らかにしています。
具体的には以下の4つの要件を満たしていることが必要です。
要件1 | 比較する商品等が適切に選定されていること |
要件2 | 調査対象者が適切に選定されていること |
要件3 | 調査が公平な方法で実施されていること |
要件4 | 表示内容と調査結果が適切に対応していること |
No.1 表示は、これが商品等の内容の優良性又は取引条件の有利性を示す表示でありながら、合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となる。
主観的評価によるNo.1表示を行う場合、アンケート調査やヒアリング調査等を実施して、回答者(調査対象者)の有する感想、意見、見解等の主観的評価を調査する場合が多いと考えられるが、当該調査の結果が合理的な根拠と認められるためには、少なくとも次の①から④までを満たしている必要がある。① 比較する商品等が適切に選定されていること
消費者庁表示対策課|「No.1 表示に関する実態調査報告書」17頁
② 調査対象者が適切に選定されていること
③ 調査が公平な方法で実施されていること
④ 表示内容と調査結果が適切に対応していること
今回の表示は、
- 対象事業者の商品又はサービス実際に利用したことがある者か又は知見等を有する者か調査対象者による評価が「No.1」であるかのような表示がされておりながらが、調査対象者が、対象事業者の商品又はサービス実際に利用したことがある者か又は知見等を有する者ではなかったことから、調査対象者が適切ではないこと(要件2不充足)
- 表示内容と調査結果が適切に対応していなかったこと(要件4不充足)
の2点から、「合理的な根拠に基づかないNo.1表示」と判断されました。
まとめ
本記事では、2025年6月5日付けの太陽光発電機器業者に対する課徴金納付命令について速報解説をしていきました。
次回以降も、「広告規制違反FILE」では、消費者庁の公表した処分について、随時解説をしていきます。
摘発事例の表現を抑え、NGリストとして把握することで、自社の広告規制違反のリスクを回避しましょう。

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。