合同会社型DAOとは?法改正で令和6年4月から設立可能に?

インターネット・IT関連法務

「DAOって聞いたことあるけど、実際にはどんなもの?」「合同会社型DAOって何か新しいビジネスチャンスなの?」 そんな疑問をお持ちのあなたへ。

この記事では、金融商品取引法の定義に関する内閣府令が改正されたことによって、令和6年4月から設立が可能になる「合同会社型DAO」について分かりやすく解説します。

従来のDAOとの違いやメリット・デメリット、設立手続きから活用場面、将来展望まで、この記事を読めば合同会社型DAOのすべてが理解できます。 Web3時代の新しい組織形態である合同会社型DAOの可能性について、一緒に探っていきましょう。

DAOとは

DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略称で、日本語では「自律分散型組織」と訳されます。現状、DAOの定義を巡っては様々な議論がありますが、広くコンセンサスの取れた明確な定義はありません

デジタル庁は、「ブロックチェーン技術やスマートコントラクトを活用し、中央集権的な管理機構を持たず、参加者による自律的な運営を目指す組織形態のこと」としています。

引用:デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」30頁)

DAO自体についての詳細は、以下の記事にて解説していますので、是非ご参照ください。

DAOのメリット

  • 従来の組織構造のような中央集権的な意思決定ではなく、参加者全員で意思決定を行うため、透明性が高く、民主的な運営が実現できます。
  • 地理的な制約がなく、インターネットを通じて世界中の人々が参加できるため、多様なスキルやアイデアを持つ人材を結集できます。
  • スマートコントラクトによって自動化された運営が可能となるため、従来の組織運営に伴うコストや時間を削減できます。

DAOのデメリット

  • DAOは新しい概念であり、法規制や税制などが未整備な部分もあるため、法的リスクや不確実性が伴います。
  • 意思決定プロセスが複雑になる場合があり、迅速な対応が求められる場面では、非効率になる可能性があります
  • 参加者全員が技術的な知識を持っているとは限らないため、技術的な理解の不足が課題となる場合があります。

DAO組織の分類

DAOは、その組織形態によって以下の4つに分類されます。

  1. 任意団体型DAO
  2. 認定/非認定NPO法人型DAO
  3. 合同会社型DAO
  4. 営利型DAO

それぞれのDAO形態は、その目的や利益分配の有無、利益分配の制限の有無などによって、適切なものを選択する必要があります。

引用:日本DAO協会「協会が想定するDAOの4分類」(イベントレポート「合同会社型DAO」とは?弁護士macによる「合同会社型DAO」の解説イベントを開催しました)

合同会社型DAOとは

合同会社型DAOが設立できるようになった法改正の概要

令和6年4月22日に金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(令和六年内閣府令第四十九号)が施行され、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(平成五年大蔵省令第十四号)が改正されました。

これは、トークン化された合同会社等の社員権について、一定の場合には通常の合同会社等の社員権と同等の規制とするための所要の改正を行うものです。

具体的には、これまで、合同会社の社員であるDAOメンバーに対して付与するために社員としての地位を表章するためのトークンであるEquity tokenを発行しようとした場合、一項有価証券に該当することとなっていました。

しかし、有価証券の定義について規定した金融商品取引法第2条第3項には、「(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)」との記載があり、この「内閣府令で定める場合」として、一定の場合のEquity tokenが内閣府令に追記されたため、合同会社が社員権をデジタル化し、このデジタル社員権を使ったインターネット上での社員募集をすることができるようになった、ということになります。

第二条(定義)

1 (略)

(略)

3 この法律において、「有価証券の募集」とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(これに類するものとして内閣府令で定めるもの(次項において「取得勧誘類似行為」という。)を含む。以下「取得勧誘」という。)のうち、当該取得勧誘が第一項各号に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利、特定電子記録債権若しくは同項各号に掲げる権利(電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示される場合(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)に限る。以下「電子記録移転権利」という。)(次項及び第六項、第二条の三第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第一号及び第二号に掲げる場合、当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(電子記録移転権利を除く。次項、第二条の三第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合に該当するものをいい、「有価証券の私募」とは、取得勧誘であつて有価証券の募集に該当しないものをいう。

(略)

金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)

第九条の二(電子記録移転権利から除かれる場合)

法第二条第三項に規定する内閣府令で定める場合は、次の各号いずれかに該当する場合とする。

一 次に掲げる要件の全てに該当する場合

 当該財産的価値を次のいずれかに該当する者以外の者に取得させ、又は移転することができないようにする技術的措置がとられていること。

(1)適格機関投資家
(2)令第十七条の十二第一項第一号から第十一号まで又は第十三号に掲げる者
(3)企業年金基金であって、金融商品取引業等に関する内閣府令(平成十九年内閣府令第五十二号)第二百三十三条の二第二項に定める要件に該当するもの
(4)金融商品取引業等に関する内閣府令第二百三十三条の二第三項に定める要件に該当する個人
(5)金融商品取引業等に関する内閣府令第二百三十三条の二第四項に定める者

 当該財産的価値の移転は、その都度、当該権利を有する者からの申出及び当該権利の発行者の承諾がなければ、することができないようにする技術的措置がとられていること。

二 法第二条第二項第三号に掲げる権利が当該財産的価値に表示される場合において、その財産的価値の全てが次に掲げる要件のいずれかに該当するとき。

イ 当該財産的価値を業務を執行する社員(当該権利を有する者が社員となる合名会社、合資会社又は合同会社が行う事業に係る業務執行の決定について同意をするか否かの意思を表示し、かつ、当該事業の全部又は一部に従事する者に限る。)以外の者に取得させ、又は移転することができないようにする技術的措置がとられていること。

ロ 当該財産的価値に表示される権利を有する者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又はイに規定する事業に係る財産の分配を受けることがないこと。

2 前項の規定により同項第一号イ(3)から(5)までに規定する金融商品取引業等に関する内閣府令第二百三十三条の二第二項から第四項までの規定を適用する場合には、同条第二項中「第六十二条第一項第一号ロ(1)から(8)までに掲げるもの」とあるのは、「第六十二条第一項第一号ロ(1)から(8)までに掲げるもの及び暗号資産」とする。

金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(平成五年大蔵省令第十四号)(下線部が改正部分)

合同会社では、出資者=社員になるので、この仕組みを活用すれば実質的に、インターネット上で資金調達が行えるようになります

合同会社型DAOの特徴

従来のDAOとの違い

従来のDAOは、法律上の裏付けがない任意団体として運営されることが一般的でした。そのため、以下のような課題がありました。

  • 法的責任の不明確さ
  • 資金調達の難しさ
  • 社会的な信用力の低さ

合同会社型DAOは、これらの課題を解決するために、合同会社という法人格を取得したDAOです。法人格を取得することで、以下のようなメリットがあります。

  • 法律上の責任が明確になる
  • 資金調達が容易になる
  • 社会的な信用力が高まる

また、従来のDAOでは、意思決定はトークン保有者によって行われることが一般的でしたが、合同会社型DAOでは、社員総会による意思決定が義務付けられています。これは、法的な責任を明確にするためです。ただし、社員総会の運営方法は、定款で自由に定めることができます。例えば、オンラインで開催することや、トークンを用いた投票を行うことも可能です。

他の法人との違い

合同会社型DAOは、株式会社や一般社団法人などの他の法人と比較して、以下のような特徴があります。

項目合同会社型DAO株式会社一般社団法人
設立の容易さ容易やや複雑容易
運営の柔軟性高い低い中程度
資金調達の容易さ高い高い低い
社会的信用力中程度?高い低い
  • 設立の容易さ
    合同会社型DAOは、株式会社と比較して、設立コストが低く、設立が容易です。
    ※ただし、株式会社や一般社団法人と異なり、まだ世の中に浸透しきっていない制度であるため、対応できる専門家を発見する難易度は高いかも知れません。
  • 運営の柔軟性
    合同会社型DAOは、株式会社や一般社団法人と比較して、運営の柔軟性が高いです。これは、定款の自由度が高いことからルールの決定が柔軟に行えるためです。例えば、社員総会の開催方法や議決権の割合などを自由に決めることができます。
  • 資金調達の容易さ
    合同会社型DAOは、株式会社と同様に、資金調達の容易さというメリットがあります。これは、株式や社員権を発行することで、不特定多数の者から資金を調達することができるためです。また、社員権がトークン化されることで、理論上は、24時間365日、継続的な資金調達が可能になります。インターネット上で出資が出来る場が創出され、現在は存在しない様々な資金調達の場面が起こり得るかと思います。一方、一般社団法人は、原則として、不特定多数の者から資金を調達することができません。
  • 社会的信用力
    合同会社型DAOは、株式会社と比較して、社会的な信用力が低い傾向があります。これは、合同会社型DAOが新しい制度であり、まだ社会的に認知されていないためです。しかし、今後、合同会社型DAOの設立事例が増加していくことで、社会的な信用力も高まっていくと予想されます。
    理屈上は、意思決定プロセスが、ブロックチェーン上に記録されることで、第三者による検閲が可能になることから、将来的には株式会社よりも社会的信用力の高い制度となる可能性もあり得るかと思います。

合同会社型DAOのメリット

合同会社型DAOには、以下のようなメリットがあります。

  • 透明性と公平性の向上
    ブロックチェーン技術を用いることで、組織の意思決定や資金の流れが透明化され、改ざんが困難になります。これは、組織運営の透明性を高め、関係者間の信頼関係を構築する上で重要となります。
  • 資金調達の柔軟性
    トークン発行による資金調達は、従来の方法よりも低コストで、グローバルな投資家へのアクセスを可能にします。
  • 参加のしやすさ
    インターネットを通じて、地理的な制限なく誰でもDAOに参加し、プロジェクトに貢献することができます。
  • 新しいビジネスモデルの創出
    従来の組織形態では難しかった、自律分散型の組織運営や、トークンエコノミーを活用した新しいビジネスモデルを構築することができます。

合同会社型DAOのデメリット

合同会社型DAOには、以下のようなデメリットもあります。

  • 法整備の遅れ
    DAOは新しい概念であり、法整備が追いついていない部分があります。法的な解釈や規制の適用について、まだ不明確な点が多いのが現状です。
  • 技術的なハードル
    DAOへの参加や運営には、ブロックチェーンやスマートコントラクトなどの技術に関する知識が必要となる場合があります。
  • セキュリティリスク
    DAOは、ブロックチェーン技術の脆弱性や、スマートコントラクトの欠陥など、セキュリティ上のリスクも抱えています。
  • ガバナンスの難しさ
    DAOは、分散型組織であるため、意思決定のプロセスが複雑化し、合意形成に時間がかかる場合があります。

これらのデメリットを踏まえた上で、合同会社型DAOの導入を検討する必要があります。

合同会社型DAO設立に必要な手続き

合同会社型DAO設立の準備段階

  1. 事業アイデアの具体化
    合同会社型DAOを設立するにあたって、まずはどのような事業を行うかを明確にする必要があります。これは、従来の合同会社を設立する場合と同様です。
    DAOとしての特徴を活かせる事業領域としては、例えば以下のようなものが考えられます。
    • 分散型金融(DeFi)
    • NFTを用いたサービス
    • 地域活性化プロジェクト
    • クリエイターエコノミー

これらの事業領域において、DAOという分散型組織のメリットをどのように活かせるのか、具体的な事業内容を検討する必要があります。

  1. メンバー集め
    事業アイデアを形にするためには、共にプロジェクトを進めていくメンバーが必要です。
    合同会社型DAOの場合、メンバーは大きく分けて以下の3つの立場に分かれます。
    • 業務執行社員:DAOの運営の中核を担うメンバー
    • その他の社員:出資を行い、DAOの意思決定に参加するメンバー
    • 社員ではないメンバー:DAOの活動に貢献し、報酬を得るメンバー

それぞれの立場における役割や責任、報酬などを明確に定義し、共感してくれるメンバーを集めることが重要です。

  1. 運用ルールの策定
    合同会社型DAOの設立において、最も重要なプロセスの一つが、DAOの運営に関する詳細なルールを定めることです。
    具体的には、以下の4つの規約を策定する必要があります。
    • 定款:組織の基本的なルールを定める
    • 総会規約:社員総会の運営方法を定める
    • トークン規約:発行するトークンの詳細を定める
    • 運営規約:DAOの日常的な運営方法を定める

これらの規約は、DAOの根幹をなすものであり、後々のトラブル防止のためにも、綿密に作成する必要があります。

合同会社型DAO設立の手続き

  1. 定款の作成・認証
    合同会社型DAOを設立するには、まず、定款を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
    定款には、以下の事項を記載する必要があります。
    • 会社名
    • 事業目的
    • 社員の氏名または名称および住所
    • 社員の出資の目的およびその価額
    • 業務執行社員の氏名または名称
    • 公告の方法

これらの事項に加え、合同会社型DAOの運営に関する事項についても定款に記載する必要があります。
例えば、以下のような事項が考えられます。

    • トークンの発行に関する事項
    • DAOの意思決定方法に関する事項
    • 利益配分に関する事項

定款は、後から変更することも可能ですが、変更手続きには時間と費用がかかるため、設立時にしっかりと内容を検討しておくことが重要です。
なお、日本DAO協会により、合同会社型DAOの定款ひな型が公開されています。
こちらを参考にするなどして、定款を作成し、認証を受けましょう。
日本DAO協会:定款
日本DAO協会:合同会社型DAO定款ひな型(Googleドキュメント)

  1. 資本金の拠出
    定款の作成・認証が終わったら、次は、社員が出資を約束した資本金を、業務執行社員が指定する銀行口座に振り込みます。
    資本金は、事業を行うために必要な資金であり、その額は定款で定めます。
    合同会社型DAOの場合、資本金の額に制限はありませんが、事業内容や規模などを考慮して、適切な額を定める必要があります。
  2. 設立登記の申請
    資本金の拠出が完了したら、設立登記の申請を行います。
    設立登記の申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局に対して行います。
    申請に必要な書類は、以下のとおりです。
    • 設立登記申請書
    • 定款
    • 資本金の額を証明する書面
    • 業務執行社員の就任を承諾したことを証明する書面
    • 印鑑届出書
    • 登録免許税の納付書

これらの書類を法務局に提出すると、通常2週間程度で設立登記が完了します。

合同会社型DAO設立後の手続き

  1. トークンの発行
    合同会社型DAOの設立が完了したら、トークンの発行を行うことができます。
    トークンは、DAOの運営に様々な形で利用することができ、例えば、以下のような使い方が考えられます。
    • DAOのガバナンストークンとして利用する
    • DAOのサービス内で利用できるユーティリティトークンとして利用する
    • 資金調達のために投資家に販売する

トークンの発行は、技術的に複雑なプロセスとなる場合もあるため、専門知識を持った企業に依頼することも検討する必要があります。

  1. DAOの運営開始
    トークンの発行が完了したら、いよいよDAOの運営を開始することができます。
    DAOの運営は、事前に定めた運用ルールに基づいて行われます。
    具体的には、以下のような活動を行います。
    • DAOの事業に関する意思決定
    • DAOの事業に関する業務執行
    • DAOのメンバーへの報酬の支払い
    • DAOの会計処理
  2. DAOの運営は、従来の組織運営と比べて、新しい課題や困難に直面することもあるでしょう。
    しかし、DAOのメリットを最大限に活かすことで、従来の組織では実現できなかったような、革新的なサービスやプロジェクトを生み出すことができる可能性を秘めています。

上記は一般的な合同会社型DAO設立の手続きの流れであり、個別のケースによって異なる場合があります。
合同会社型DAOの設立を検討する際は、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

合同会社型DAOが活用される場面

不動産分野における合同会社型DAOの活用

従来の不動産投資の課題

  • 高額な投資資金が必要
  • 複雑な契約や手続き
  • 投資判断に必要な情報の不足
  • 流動性の低さ

合同会社型DAOによる解決

  • 少額からの投資:トークン化による不動産の細分化により、少額からの投資が可能になる
  • 透明性と信頼性の向上:ブロックチェーンによる取引履歴の記録により、透明性と信頼性が向上する
  • 流動性の向上:トークンの売買による、従来の不動産投資よりも高い流動性

具体的な活用例

  • 不動産の共同所有:複数の投資家で共同出資して不動産を購入し、賃貸収入をトークンホルダーに分配する
  • 不動産開発:DAOを通じて資金調達を行い、不動産開発プロジェクトを推進する

シェアハウス運営

  • 入居者による共同運営:従来のシェアハウス運営では、運営会社が入居者の意見を反映しにくい側面があった。合同会社型DAOを導入することで、入居者はトークンを通じて議決権を持つことができ、運営方針やルール決定に積極的に参加することができる。
  • 透明性の確保:家賃や共益費などの収支状況をブロックチェーン上で公開することで、透明性を確保し、入居者間の信頼関係を構築することができる。
  • コミュニティ活性化:貢献度に応じてトークンを付与する仕組みを導入することで、入居者の積極的なコミュニティ活動や運営への参加を促進することができる。

具体的な活用例

地域活性化

従来の地域活性化の課題

  • 資金調達の難しさ
  • 人材不足
  • 情報発信力の弱さ

合同会社型DAOによる解決

  • 新たな資金調達手段:トークン発行による資金調達により、従来よりも容易に資金を調達することができる
  • 地域外からの参加促進:オンラインでの参加が容易になるため、地域外からの人の関心を集め、人材不足の解消につなげることができる
  • 地域の魅力発信:DAOの活動やプロジェクトを通じて、地域の魅力を効果的に発信することができる

具体的な活用例

  • 観光促進:地域の魅力を発掘し、観光客向けサービスと連携したトークンを発行することで、観光客誘致と地域経済の活性化を図る
  • 特産品開発:DAOを通じて資金調達を行い、地域の特産品開発やブランディングを推進する

教育分野における合同会社型DAOの活用

従来の教育機関の課題

  • 意思決定の非効率性
  • 資金調達の難しさ
  • 学生のモチベーション維持の難しさ

合同会社型DAOによる解決

  • 学生の意見反映:学生もDAOのメンバーとして参加することで、意見を反映しやすくなる。より良い教育環境やカリキュラム作りに貢献できる。
  • 透明性の確保:資金調達の透明性を高め、資金の使い道を入学者や保護者が把握しやすくなる。
  • 学習意欲の向上:貢献度に応じてトークンを付与することで、学生の学習意欲を高め、能動的な学びを促進する。

具体的な活用例

【iU】情報経営イノベーション専門職大学|それ、あたらしい?それ、おもしろい?
ビジネス、ICT、グローバルコミュニケーションを学びイノベーションを起こす人材を育てる大学、iUの情報を発信します。オープンキャンパス情報や学部案内・入試情報など最新情報をご覧頂けます。

NPO・NGO

  • 透明性と信頼性の向上:寄付金などの資金の流れをブロックチェーン上で公開することで、透明性を確保し、寄付者からの信頼獲得につなげることができる。
  • 参加者によるガバナンス:DAOを通じて、活動への参加や意思決定を促進し、より民主的な組織運営を実現することができる。
  • 活動資金の効率的な運用:トークンエコノミーの導入により、活動資金を効率的に運用し、活動の持続可能性を高めることができる。

具体的な活用例

  • Charity DAO:寄付プラットフォームにDAOの仕組みを導入し、寄付金の透明性を高め、寄付者が資金の使い道を追跡できるようにした事例。
What is a Charity DAO? – Guides – Lobby

DAOの社会実装を促進する要因

  • 法整備の進展:日本でも合同会社型DAOが解禁されたように、世界各国でDAOに関する法整備が進められており、法的安定性が高まっている。
  • 技術の進化:ブロックチェーン技術の進化により、DAOの構築や運用がより容易になっている。
  • 社会的なニーズの高まり:従来の組織やシステムに対する課題意識が高まる中、より透明性が高く、参加型の組織形態であるDAOへの期待感が高まっている。

まとめ

合同会社型DAOは、従来の組織形態では解決が難しかった様々な課題に対して、新たな可能性を提示する革新的な組織モデルと言えるでしょう。上記で紹介した事例は、合同会社型DAOの活用可能性を示すほんの一部の例です。今後、様々な分野で合同会社型DAOが活用され、社会に大きなインパクトをもたらすことが期待されます。

合同会社型DAOの将来展望

合同会社型DAOを取り巻く現状と課題

2024年4月の法改正(内閣府令改正)により、日本国内で設立可能になった合同会社型DAOは、従来の組織形態やDAOの概念に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。しかし、その一方で、新たな課題も浮上しています。

  • 法制度の整備
    現在の法制度は、合同会社型DAOの革新的な性質を十分に捉えきれていない部分があり、今後、実務運用を通じて明らかになる課題や、新たなニーズに対応するための法整備が求められます。具体的には、トークン発行や取引に関する規制、DAOの意思決定プロセスにおける法的責任の明確化、DAOの解散や清算に関する手続きの整備などが挙げられます。
  • 社会的な理解と受容
    合同会社型DAOは、まだ新しい概念であり、社会一般の理解度が低いのが現状です。そのため、従来の組織形態に比べて、信頼性や透明性を確保するための取り組みがより重要となります。DAOの活動内容やガバナンス構造を積極的に公開し、ステークホルダーとのコミュニケーションを密にすることで、理解と信頼を醸成していくことが求められます。
  • セキュリティとガバナンス
    ブロックチェーン技術を基盤とする合同会社型DAOは、サイバー攻撃や不正アクセスなどのセキュリティリスクにさらされています。また、分散型自律組織であるがゆえに、適切なガバナンス体制を構築し、組織運営の透明性と責任体制を確保することが重要となります。

合同会社型DAOの普及に向けた展望

これらの課題を克服し、合同会社型DAOが広く普及していくためには、以下のような展望が考えられます。

  • ユースケースの拡大と成功事例の創出
    合同会社型DAOは、その特性から、従来の組織形態では難しかった、新しいビジネスモデルや社会実装の可能性を秘めています。例えば、地域活性化、クリエイティブ産業、社会貢献など、多様な分野での活用が期待されます。これらの分野で具体的なユースケースを創出し、成功事例を積み重ねていくことが、合同会社型DAOの普及を促進する上で重要となります。
  • エコシステムの成熟
    合同会社型DAOの設立・運営を支援するサービスやツール、専門知識を持った人材など、エコシステム全体の成熟が不可欠です。また、DAO同士の連携や、企業や行政との協業なども促進することで、新たなイノベーションや価値創出が期待されます。
  • グローバルな連携と標準化
    合同会社型DAOは、国境を越えた活動やコミュニティ形成を促進する可能性を秘めています。国際的な連携を強化し、法制度や技術標準の harmonization を図ることで、グローバルな規模での普及と発展が期待されます。

合同会社型DAOがもたらす未来

合同会社型DAOは、単なる新しい組織形態を超えて、社会全体の在り方や価値観に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

  • 分散型社会の実現
    中央集権的な組織構造から脱却し、より自律的で分散的な社会の実現が期待されます。個人が組織やコミュニティに積極的に参画し、その意思決定や価値創造に貢献することで、より公正で透明性の高い社会システムを構築できる可能性があります。
  • 新しい経済圏の創出
    トークンエコノミーの拡大と、分散型金融(DeFi)などの新しい金融サービスの登場により、従来の経済システムとは異なる、新しい経済圏が生まれる可能性があります。DAOはその中心的な役割を担い、よりオープンでアクセスしやすい経済活動を実現する可能性を秘めています。
  • 社会課題の解決
    従来の組織や政府では解決が難しかった社会課題に対して、DAOが新たなアプローチを提供する可能性があります。例えば、環境問題、貧困、教育格差など、世界共通の課題に対して、国境や組織の枠を超えた取り組みが促進されることが期待されます。

合同会社型DAOは、まだ発展途上の概念であり、その未来には不確実な要素も少なくありません。しかし、その潜在能力の大きさ、社会に与えるインパクトの大きさを考えると、今後の動向から目が離せません。

まとめ

本記事では、令和6年4月から設立が可能になる「合同会社型DAO」について解説しました。DAOは、自律分散型組織という新しい組織形態であり、透明性や公平性の高さ、迅速な意思決定などがメリットとして挙げられます。

一方で、法的な位置づけが不明確であることや、技術的な複雑さなどが課題となっていました。合同会社型DAOは、改正有限責任事業組合法により、DAOの課題であった法的な問題を解決し、より安心して事業運営を行うことを可能にするものとして期待されています。

合同会社型DAOは、従来のDAOと比較して、法的な責任の所在が明確であり、また、他の法人形態と比較して、設立や運営が簡易であるという特徴があります。そのため、今後、スタートアップ企業やコミュニティなど、幅広い分野での活用が期待されます。ただし、合同会社型DAOは、まだ新しい制度であるため、今後の法改正や運用状況によっては、予期せぬリスクが発生する可能性もある点は留意が必要です。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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