昨今、自社の商品、サービスを広告する手段として、アフィリエイト広告が利用されることが多くなっています。
アフィリエイト広告は、初期費用が安いなど、広告として魅力的な側面が認められますが、一方で誇大広告やステルスマーケティングなど、不当な表示の温床にもなっているため、さまざまな法律により規制の対象となっています。
このページでは、アフィリエイト広告に対する規制をご説明して、リスクを回避した効果的なアフィリエイト広告の方法をお伝えします。
アフィリエイト広告とは?
意義
アフィリエイト広告とは、広告される商品やサービスの提供者(以下「広告主」といいます。)以外の者(以下「アフィリエイター」と言います。)が、アフィリエイターの運営するwebサイト、ブログなどにおいて、バナー広告や、販売元サイトのリンクを掲載することで、広告主の商品、サービスを宣伝を行うことをいいます。
アフィリエイターは、自己のwebサイトに掲載したバナー広告やリンクを消費者がクリックし、広告主のサイトや商品等の販売サイトにおいて、商品購入や申し込みなどが行われた場合に、成功報酬を得ることになります。
広告主は、アフィリエイターと直接契約することもありますが、アフィリエイトサービスプロバイダ(以下「ASP」と言います。)と呼ばれる業者を介して広告を依頼する場合もあります。
このように、アフィリエイト広告は、広告主以外のものが商品、サービスを宣伝していること、成功報酬型の広告であることを特徴とする広告です。
利点
広告主が思いつかないような新しいアイデアや消費者目線での広告が期待できる
アフィリエイト広告では、広告内容についてアフィリエイターが主体的に関わって作成されます。そのため、広告主が自ら広告を作成する場合とくらべて新しいアイデアが期待できます。
また、アフィリエイト広告は、自己のサイトにリンクを貼ることにより行うことができるため、一般の消費者が副業として行うことも多いです。そのため、消費者の目線からの広告を期待することができます。消費者の目線に近い広告は、消費者の求める情報を的確に伝えられる点で、広告主にとって利益となります。これに加えて、消費者においても、商品の比較に有益な情報を得ることができます。
初期費用が安く、効果が高い
アフィリエイト広告は、成功報酬型の広告であるため、広告主としては広告にかかる初期費用を安く済ませることができます。
また、アフィリエイト広告は、直接広告主のサイトや販売元サイトにアクセスすることが可能な広告であるため、購買行動の喚起、新規顧客の獲得などに大きな効果を発揮します。
以上のような利点から、アフィリエイト広告は、大企業はもちろんのこと、中小企業やスタートアップ事業者などにも大きな需要が認められます。実際に、アフィリエイト広告の市場規模は、2019年度において約3100億円でしたが、2024年度には約5000億円となっており、年々成長しています。
問題点
広告主による広告内容の管理が行き届きにくい
アフィリエイト広告において、広告主はアフィリエイター、もしくはASPに業務を委託し、アフィリエイターが広告物を作成、掲示することとなります。そのため、広告内容や掲載方法について、広告主が詳細を把握せずに、広告がなされているケースが多く見られます。
このように、管理が十分でないため、アフィリエイト広告は、消費者に誤認を生じさせるような広告がなされるおそれが高いです。
アフィリエイターによる虚偽、誇大な広告が行われやすい
アフィリエイト広告は成功報酬であることから、アフィリエイターが報酬を得るためには、掲示したバナー広告やリンクから、消費者が広告主、販売元のサイトへアクセスしなければなりません。そのため、アフィリエイターとしては、報酬を得るために、商品について虚偽の記載や誇大な記載を行うインセンティブが働きやすいといえます。
したがって、アフィリエイト広告は、内容虚偽の広告ないし誇大な広告により、消費者に誤認を与えるおそれが高いです。
アフィリエイト広告であるか否かの判断がつきにくい
さらに、アフィリエイト広告は、上記のように消費者に近い者が広告の主体となります。そのため、一般の人が単に商品、サービスの感想をインターネット上に掲載しているのか、広告を目的として情報が掲載されているのかが判然としないことがあります。
このような、一見して広告とわからないものは、ステルスマーケティングと呼ばれ、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)により規制されています。
ステルスマーケティングに関して課される規制の内容や、それに対する対応については、以下の法律記事をご参照下さい。
特徴 | ・広告主以外で、消費者に近い者が商品、サービスを宣伝している ・成功報酬型の広告である |
利点 | ・消費者目線に立った新たな広告が期待できる ・初期費用が安く、広告の効果が高い |
問題点 | ・広告主の管理が行き届かなく、不当な内容の広告がなされるおそれがある ・アフィリエイターが成果を求め、虚偽ないし誇大な広告がなされるおそれがある ・そもそも、広告か、商品レビューかの判断がつきにくい |
アフィリエイト広告に対する規制
景品表示法
規制内容
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、「表示」、すなわち、「事業者」が自己の商品、役務の供給の際に顧客を誘引するために利用するあらゆる表現手段について、その内容が消費者に誤認を与えるものでないことを要求しています。
アフィリエイト広告も、商品、サービスの宣伝のために用いられるものであるため、景品表示法の規制の対象となります。
具体的には、主に以下の3つを不当表示として禁止しています。
規制①:優良誤認表示
商品、サービスの「品質、規格、その他の内容」について、実際のものや、類似する他者の商品と比較して「著しく優良である」と表示すること(景品表示法5条1号)
例:中古車販売において、実際の走行距離は150kmであり、修復歴があるにもかかわらず、「走行距離95km、修復歴なし」と記載することにより、あたかも、実際よりも中古車が有料であるかのように表示する場合
規制②:有利誤認表示
商品、サービスの「価格、その他の取引条件」について、実際のものや、類似する他者の商品と比較して「著しく有利である」と表示すること(景品表示っ法5条2号)
例:「月々○○円から車が買える!」とあたかも当該支払いのみで対象商品を購入できるかのように表示されているにもかかわらず、実際には上記支払の他に、頭金など別途の支払を要する場合
規制③:指定告示によるもの
上記のほか、内閣総理大臣により指定されたもの(景品表示法5条3号)
現在指定されているものは以下の7つです。
- 無果汁の清涼飲料水についての表示(昭和48年公取委告示第4号)
- 商品の原産国に関する不当な表示(昭和48年公取委告示第34号)
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示(昭和55年公取委告示第13号)
- 不動産のおとり広告に関する表示(昭和55年公取委告示第14号)
- おとり広告に関する表示(平成5年公取委告示第17号)
- 有料老人ホームに関する不当な表示(平成16年公取委告示第3号)
- 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年3月28日内閣府告示第19号)
このうち、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」がいわゆるステマ規制といわれているものです。
第五条(不当な表示の禁止)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
責任を負う者
景品表示法により規制される主体は、「自己の供給する商品又は役務の取引に関する事項について」表示を行う事業者です(景品等表示法5条柱書)。
アフィリエイターは責任を負うか
アフィリエイト広告において、アフィリエイターは、宣伝の対象となる商品やサービスを自ら供給する者でありません。
そのため、広告主と共同して商品を供給していると認められる特段の事情がある場合を除いて、アフィリエイターは、景品表示法により規制される主体に含まれません。
特段の事情が認められる例としては、広告主と出資会社やコンサルタント会社が連携共同して通信販売を行い、一体となって事業活動を行っていると認められる場合などが挙げられます。
広告主は責任を負うか
広告主は、自ら積極的にアフィリエイト広告の内容を決定した場合はもちろん、アフィリエイターにその内容の決定を委ねた場合であっても、表示内容の決定に関与しているものとして、景品表示法により規制される主体となります。
したがって、アフィリエイト広告の内容に、上記のような景品表示法に違反する内容の表示が認められた場合、広告主が違反行為をしたものとして、措置命令(景品表示法7条1項)等の責任を負うこととなります。
規制内容 | ①実際の商品、類似の商品と比較して特に優れていると表示すること ②実際の商品、類似の商品と比較してお得であると表示すること ③その他、指定されたもの |
責任を負う者 | 原則として、広告主アフィリエイターは、広告主と共同して商品を供給していると認められる特段の事情がある場合のみ |
特定商取引法
特定商取引に関する法律(特定商取引法)は、通信販売において、商品の「性能、内容」などについて、「著しく事実に相違する」表示、実際のものよりも「著しく優良」又は「有利」であると誤認させる表示を禁止しています(特定商取引法12条 誇大広告等の禁止)。
特定商取引法の規制の対象となる「通信販売」とは、通信機器や情報処理に用いられる機器を利用する方法などにより商品の売買、サービスの提供を行うことをいいます(特定商取引法2条2項)。アフィリエイト広告は、インターネット上での商品、サービスの販売を宣伝するものであるため、特定商取引法の規制の対象となります。
責任を負う主体は、商品、サービスの提供を行うもの、すなわち広告主であり、アフィリエイターは、原則として、責任を負いません。
第二条
(略)
2 この章及び第五十八条の十九において「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。
(略)第十二条(誇大広告等の禁止)
特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約又は当該役務の役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
健康増進法
健康増進法は、「食品として販売に供する物に関する広告その他の表示」を行う場合、「健康の保持増進の効果」について、「著しく事実に相違する表示」、「著しく人を誤認させるような表示」を禁止しています(健康増進法65条1項)。
例えば、医薬品として承認されていないにもかかわらず、「○○の予防に効果的!」などと表示する場合が、上記に違反する表示となります。
上記規制は、「何人」にも適用されるため、食品の広告を内容とするアフィリエイト広告を行う場合には、広告主だけでなく、ASPやアフィリエイターも、健康増進法により規制される主体となり得ます。
第六十五条(誇大表示の禁止)
健康増進法(平成十四年法律第百三号)
1 何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
2(略)
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
薬機法もまた、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品」の広告を行う場合、「名称、製造方法、効能、効果又は性能」について誇大な広告を禁止しています(薬機法66条1項)。
例えば、ある商品について、医薬品として承認された効能効果に「肩こり」は含まれていないにもかかわらず、「この商品は肩こりに効きます!」との表示を行う場合が、上記規制に違反する表示となります。
上記規制もまた、「何人」にも適用されるため、食品の広告を内容とするアフィリエイト広告を行う場合には、広告主だけでなく、ASPやアフィリエイターも、健康増進法により規制される主体となり得ます。
以上から、アフィリエイト広告においてその内容に責任を負う者は広告主であり、アフィリエイターは、広告主と共同して商品を供給していると認められる特段の事情が認められる場合、もしくは、食品、医薬品等を内容とする場合にのみ責任を負うこととなります。
第六十六条(誇大広告等)
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)
1 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
(略)
違反事例
株式会社T.Sコーポレーションに対する措置命令
株式会社T.Sコーポレーションは、ASPを介したアフィリエイト広告において以下のような表示を行ったことが、優良誤認表示にあたるとして、景品表示法上の措置命令を受けました。
表示内容
同社は、「『有名大学がマウス実験で実証』 医療関係者も勧める『90%がフサフサになった育毛剤』がヤバイ!」、「悩んでいたのがウソのように、たった2ヶ月で髪がフサフサになったんです!!!」等と、表示することにより、あたかも、商品を使用するだけで、商品に含まれる成分の作用により、短期間で、外見上視認できるまでに薄毛の状態が改善されるほどの発毛効果が得られるかのように示す表示をしていました。
実際の効果
消費者庁は、景品表示法7条2項により、上記表示を裏付ける合理的な根拠を示す資料を求めたものの、裏付けに十分といえる資料の提出はありませんでした。
実際の広告
重要な点
「当該広告はアフィリエイト広告であって、株式会社T.Sコーポレーションが直接作成したものではなく、アフィリエイターが作成したものに過ぎない」という点について、消費者庁は、以下のように判断しました。
「T.Sコーポレーションは、本件商品の販売に関し、ブログその他のウェブサイトの運営者(以下「アフィリエイター」という。)が当該ウェブサイトに当該アフィリエイター以外の者が供給する商品又は役務のバナー広告等を掲載し、一般消費者がバナー広告等を通じて広告主の商品又は役務を購入したり、購入の申込みを行ったりした場合など、あらかじめ定められた条件に従って、アフィリエイターに対して、広告主から成功報酬が支払われる「アフィリエイトプログラム」と称する広告手法を用いているところ、T.Sコーポレーションは、アフィリエイトプログラムを実現するシステムをサービスとして提供する「アフィリエイトサービスプロバイダー」と称する事業者を通じて、本件商品に係る本件アフィリエイトサイト①及び本件アフィリエイトサイト②の表示内容を自ら決定している。 」
消費者庁|株式会社T.Sコーポレーションに対する景品表示法に基づく措置命令について
広告主がアフィリエイト広告契約を締結する際の注意点
不当、誇大な表示がなされないよう社内において管理上の措置を構築する
景品表示法は、事業者に対して、表示を適正に管理するために必要な体制の整備その他必要な措置を講じることを求めています(景品表示法22条1項)。また、消費者庁は、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」として、具体的な措置の内容を示しています。
参考:事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針
もっとも、同指針は、広告主が自ら広告をする場合を念頭において作成されたものであり、アフィリエイト広告を念頭に置いて定められたものではありません。
そこで、アフィリエイト広告を利用する広告主は、同指針に加えて以下のような措置を社内で構築することが求められます。
- アフィリエイト広告における責任は広告主が負うこととなることの周知
- アフィリエイト広告の担当者の選任、研修
- アフィリエイト広告を行う前に、その内容の確認を行うことの徹底
- アフィリエイト広告について、広告であることを明記する
- 定期的なアフィリエイト広告の確認
- 表示の根拠となる情報、資料の保存
- 消費者に向けた相談窓口の設置
- 違反が認められた場合の迅速な対応
契約書の条項
広告主が、ASPやアフィリエイターと、アフィリエイト広告の契約を締結する際には、未然に不当な表示を防ぐために、あるいは不当な表示がなされた場合に迅速に対応できるように、以下のような条項について明記する必要があります。
- ASPに対し、アフィリエイト広告のリーガルチェックを求める条項
- 広告を掲載する前に、広告主がその内容を確認することを可能とする条項
- 表示に関し、根拠となる資料の保管に関する条項
- 広告であることの明記を求める条項
- 違反が認められた場合に、削除、修正を求めることを可能とする条項
- 違反により、広告主に損害が生じた場合における賠償責任に関する条項
まとめ
このページでは、アフィリエイト広告について、その意義や、規制、アフィリエイト広告を行う場合の注意点をお伝えしました。
アフィリエイト広告では、広告主がその内容の責任を負うため、その管理を怠ると、社会的信用を毀損するなどのリスクが生じます。
規制について適切に理解し、アフィリエイト広告の管理をしっかり行うことが、効果的な広告活動につながります。
プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。