「フリー素材って自由に使えるんでしょ?」と考えていませんか?実は、フリー素材にも著作権があり、商用利用や営利目的での使用にはルールがあります。うっかり規約違反をしてしまうと、著作権トラブルに発展する可能性も。
本記事では、そんなリスクを回避するために、フリー素材の正しい探し方と利用規約の確認ポイントを分かりやすく解説します。
フリー素材の定義や種類、商用利用と営利目的の違いといった基本的な知識から、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスやロイヤリティフリーなどのライセンスの種類、よくあるトラブル事例と回避策まで網羅的に解説。この記事を読めば、安心してフリー素材を活用し、ビジネスや創作活動に役立てることができます。
例えば、YouTubeの動画制作に使えるフリーBGMを探している方、ブログ記事に掲載するフリー画像を探している方、チラシに使えるフリーイラストを探している方など、様々なシーンで役立つ情報が満載です。安心してフリー素材を使えるようになり、クオリティの高いコンテンツ制作を実現しましょう。
フリー素材とは何か 商用利用と営利目的の違いを理解する
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フリー素材という言葉はよく耳にしますが、その定義や利用範囲について正しく理解しているでしょうか? 特に「商用利用」と「営利目的」の違いは混同されがちです。
フリー素材の基本的な意味から、商用利用と営利目的の違い、そして著作権との関係について解説します。
フリー素材の定義
フリー素材とは、無料で利用できる素材のことを指します。画像、イラスト、動画、音楽など、様々な種類の素材が存在します。ただし、「無料」だからといって、著作権がないというわけではなく、自由に使えるわけではないことに注意が必要です。フリー素材には、それぞれ利用規約が定められており、「その範囲内での利用であれば、利用料は無料」ということを意味するのがほとんどです。
商用利用と営利目的の違い
「商用利用」と「営利目的」は、どちらもお金が関わる点で共通していますが、その範囲は異なります。商用利用とは、商品やサービスの宣伝、販売促進などを目的とした利用を指します。一方、営利目的とは、利益を得ることを目的とした利用を指します。つまり、商用利用は営利目的の一部といえます。
項目 | 説明 | 例 |
---|---|---|
商用利用 | 商品やサービスの宣伝、販売促進などを目的とした利用 | 企業のウェブサイト、広告、パンフレットなど |
営利目的 | 利益を得ることを目的とした利用 | 販売目的のグッズ作成、有料コンテンツの作成など |
例えば、企業が自社ウェブサイトにフリー素材の画像を使用するのは商用利用にあたります。また、フリー素材を使って作成したグッズを販売するのも営利目的の利用です。
フリー素材の中には、商用利用が許可されているものと、許可されていないものがあります。利用規約をよく確認することが重要です。
無料で使えるからといって著作権がないわけではない
フリー素材は無料で利用できますが、著作権がないという意味ではありません。著作権は、著作者の権利を守るためのものです。フリー素材にも著作権が存在しますし、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)も存在しています。
第十九条(氏名表示権)
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
(略)
第二十条(同一性保持権)
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
利用規約によっては、クレジット表記(著作権者の表示)が必要な場合もあります。また、素材の改変が禁止されている場合もあります。フリー素材を利用する際は、必ず利用規約を確認し、著作権を侵害しないように注意しましょう。
サイトによって利用規約が異なるため、個別に確認することが重要です。
フリー素材を探す上での注意点 利用規約の確認ポイント
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フリー素材サイトによって利用規約は大きく異なります。著作権トラブルを避けるため、利用前に必ず確認しましょう。確認を怠ると、後々大きな問題に発展する可能性があります。利用規約は、各フリー素材サイトに必ず記載されています。たいてい「利用規約」「Terms of Use」「Terms and Conditions」などの名称で掲載されているので、ダウンロード前に目を通す習慣をつけましょう。
著作権表示が必要なケース
フリー素材の中には、著作権表示(クレジット表記)が必須のものがあります。クレジット表記が必要な場合、指定された形式で、適切な場所に表示する必要があります。
例えば、「Photo by ○○ on ○○」のような形式で、素材提供者の名前やサイト名などを表示します。表記方法や表示場所については、各サイトの利用規約で確認しましょう。表記を忘れてしまうと、著作権侵害になってしまう可能性があるので、注意が必要です。
加工の可否
フリー素材の加工の可否も、サイトによって異なります。自由に加工できるもの、トリミングなどの軽微な加工のみ許可されているもの、一切の加工が禁止されているものなど、様々です。
例えば、人物写真の加工については、肖像権の問題も絡んでくるため、特に注意が必要です。利用規約で加工の範囲を確認し、許可されていない加工は行わないようにしましょう。
商用利用・営利目的での利用制限
フリー素材の中には、商用利用や営利目的での利用が制限されているものがあります。特に、無料で配布されている素材の場合、商用利用が禁止されているケースも多いので注意が必要です。
商用利用とは、商品やサービスの販売、広告、宣伝など、営利を目的とした利用を指します。商用利用を検討している場合は、利用規約で明確に許可されているかを確認しましょう。
禁止事項
フリー素材サイトでは、素材の再配布や販売、公序良俗に反する利用など、禁止事項が定められています。これらの禁止事項に違反すると、利用停止や法的措置を取られる可能性があります。利用規約をよく読んで、禁止事項を理解した上で利用しましょう。
確認ポイント | 詳細 | 注意点 |
---|---|---|
著作権表示 | 必要かどうか、表記方法、表示場所 | 表記忘れに注意 |
加工 | 可否、加工範囲(トリミング、色調変更など) | 過度な加工はNG |
商用利用 | 許可されているか | 無料だからといって商用利用OKとは限らない |
禁止事項 | 再配布、販売、公序良俗に反する利用など | 違反すると法的措置を取られることも |
これらの注意点を守り、利用規約をしっかり確認することで、フリー素材を安全に利用することができます。
フリー素材を安全に利用するためのライセンスの種類
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フリー素材を利用する際には、それぞれの素材に設定されているライセンスを正しく理解することが重要です。ライセンスによって利用範囲が規定されており、誤った利用は著作権侵害につながる可能性があります。主なライセンスの種類と、その内容について詳しく見ていきましょう。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)は、著作物をより自由に流通させるために作られた国際的なライセンスです。作者が著作権を保持したまま、作品を一定の条件下で利用することを許可するものです。CCライセンスにはいくつかの種類があり、組み合わせによって利用条件が異なります。
CC BY(表示)
原作者のクレジット表示 を必須条件として、商用利用を含め自由に利用、複製、改変、再配布が可能です。
CC BY-SA(表示-継承)
原作者のクレジット表示が必須 で、改変した場合は同じライセンスを適用 しなければなりません。商用利用を含め、自由に利用、複製、改変、再配布が可能です。
CC BY-ND(表示-改変禁止)
原作者のクレジット表示が必須 で、改変は禁止されています。商用利用を含め複製、再配布は可能です。
CC BY-NC(表示-非営利)
原作者のクレジット表示が必須 で、非商用利用に限られます。複製、改変、再配布は可能です。
CC BY-NC-SA(表示-非営利-継承)
原作者のクレジット表示が必須 で、非商用利用に限られ、改変した場合は同じライセンスを適用 しなければなりません。複製、改変、再配布は可能です。
CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止)
原作者のクレジット表示が必須 で、非商用利用に限られ、改変は禁止されています。複製、再配布は可能です。
ライセンス | 表示 | 改変 | 商用利用 | 継承 |
---|---|---|---|---|
CC BY | 必須 | 許可 | 許可 | – |
CC BY-SA | 必須 | 許可(継承) | 許可 | 必須 |
CC BY-ND | 必須 | 禁止 | 許可 | – |
CC BY-NC | 必須 | 許可 | 禁止 | – |
CC BY-NC-SA | 必須 | 許可(継承) | 禁止 | 必須 |
CC BY-NC-ND | 必須 | 禁止 | 禁止 | – |
参照:クリエイティブ・コモンズ・ジャパン公式サイト|クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
ロイヤリティフリー
ロイヤリティフリーとは、著作権使用料(ロイヤリティ)を支払わずに何度も利用できる ことを意味します。ただし、ロイヤリティフリーだからといって著作権フリーではないため、利用規約をよく確認する必要があります。
利用回数や期間、利用範囲などに制限がある場合 もあります。また、商用利用が可能な場合も多いですが、必ずしも保証されているわけではありません。それぞれの素材提供サイトの利用規約を確認しましょう。
フリー素材利用でよくあるトラブル事例と回避策
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フリー素材は手軽に利用できる反面、利用規約を守らないことで思わぬトラブルに発展する可能性があります。著作権侵害で訴訟問題に発展するケースも少なくありません。ここではよくあるトラブル事例と、その回避策を具体的に解説します。
クレジット表記のミス
フリー素材の中には、クレジット表記(著作権者の表示)が必要なものがあります。表記が必要にもかかわらず、表記を忘れていたり、間違った表記をしてしまうと、著作権侵害とみなされる可能性があります。
表記忘れ
うっかり表記を忘れてしまうケースです。素材サイトによっては、表記方法が細かく指定されている場合があります。「著作権者名」「サイト名」「素材ID」など、必要な情報を正しく表記しましょう。表記場所についても、分かりやすい場所に記載することが重要です。
表記誤り
著作権者名を間違えたり、サイトURLを誤って記載してしまうケースです。表記内容をよく確認し、正確に表記しましょう。特に、アルファベットの大文字・小文字の誤りや、スペルミスには注意が必要です。
回避策としては、ダウンロード時に利用規約を必ず確認し、必要な表記をメモしておくことが有効です。また、素材を利用した後に、表記が正しく行われているか再度確認することも重要です。
加工範囲を超えた改変
フリー素材の中には、加工を許可しているものもありますが、加工の範囲が制限されている場合もあります。例えば、色変更やトリミングのみ許可されている素材を、大幅に改変して別のイラストのように使用してしまうと、著作権侵害となる可能性があります。
過度な加工
元の素材のイメージを大きく損なうような加工は避けましょう。例えば、人物写真の顔の部分だけを切り取って別の画像に合成する、イラストの主要なパーツを削除するといった行為は、著作権侵害とみなされる可能性があります。
禁止されている加工
素材サイトによっては、特定の加工を禁止している場合があります。例えば、「商用利用の場合、色変更禁止」といった規約がある場合、その規約に従う必要があります。利用規約をよく確認し、許可されている範囲内で加工を行いましょう。
回避策としては、利用規約をよく確認し、許可されている加工の範囲を理解することが重要です。不明な点がある場合は、素材提供者に問い合わせることをおすすめします。
規約違反による利用停止
フリー素材サイトの利用規約に違反した場合、アカウントの停止や、素材の利用停止となる可能性があります。規約違反には、以下のような行為が該当します。
違反行為 | 内容 |
---|---|
再配布・販売 | ダウンロードしたフリー素材を、そのまま別のサイトで配布したり、販売する行為。 |
素材の権利の主張 | フリー素材の著作権を自身のものだと主張する行為。 |
公序良俗に反する利用 | わいせつ物や差別的な表現を含むコンテンツにフリー素材を利用する行為。 |
利用規約で禁止されている用途での利用 | アダルトコンテンツやギャンブル関連のコンテンツにフリー素材を利用するなど、規約で禁止されている用途で利用する行為。 |
回避策としては、利用前に必ず利用規約を確認し、規約の内容を遵守することが重要です。また、定期的に利用規約が更新されていないか確認することも大切です。不明な点があれば、素材提供者に問い合わせるようにしましょう。
まとめ
商用利用・営利目的でフリー素材を使う際に重要なのは、利用規約をよく確認し、正しく利用することです。フリー素材とは、無料で利用できる素材ですが、必ずしも著作権フリーではありません。利用規約には、クレジット表記の必要性、加工の可否、商用利用の制限など、様々なルールが定められています。これらのルールを守らないと、著作権侵害となり、トラブルに発展する可能性があります。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスやロイヤリティフリーなど、ライセンスの種類によって利用条件が異なります。例えば、CC BYライセンスは著作権者の表示が必要ですが、加工や商用利用は可能です。一方、CC BY-NCライセンスは非営利目的でのみ利用が許可されています。それぞれのライセンスの特徴を理解し、目的に合った素材を選ぶことが大切です。
フリー素材サイトで公開されている利用規約をよく読んで、ライセンスの種類や利用条件を確認し、適切な素材を選び、正しく利用することで、著作権トラブルを回避し、安心してフリー素材を活用できます。
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プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。