No.1表示・最上級表示はなぜ危ない?合理的根拠資料の作り方

インターネット・IT関連法務

「業界No.1」「顧客満足度第1位」「売上シェアトップ」「最高峰の品質」「世界唯一の技術」こうしたNo.1表示・最上級表示は、消費者の購買意欲を強く動かす反面、景品表示法違反の最頻出論点でもあります。消費者庁による措置命令の公表事案を見ると、毎年のように何らかのNo.1表示が違反として問題視されており、業種を問わず処分の対象となっています。

問題は、No.1表示そのものが直ちに違法ではない、という点にあります。客観的な調査に基づき、調査内容と表示事項が一致し、表示方法が適切であれば、No.1表示は適法に行えます。しかし、この「適法に行うための3要件」を満たせていない事例が圧倒的に多いというのが実態です。

本記事では、No.1表示・最上級表示が景品表示法上問題となる理由、適法とするための3要件、違反となる典型パターン、そして合理的根拠資料の作り方・保管・更新管理までを実務目線で解説します。広告制作・出稿の現場で「このNo.1表示は出してよいか」を判断するためのチェック軸として活用してください。

No.1表示が景品表示法上問題となる理由

優良誤認・有利誤認との関係

No.1表示は、景品表示法の二大不当表示類型である優良誤認表示(5条1号)と有利誤認表示(5条2号)の両方にまたがり得る点が特徴です。

「顧客満足度No.1」「品質No.1」のように商品の品質・性能を訴求するNo.1表示は、優良誤認の論点となります。一方、「業界最安値」「シェアNo.1」のように価格や取引条件に関わるNo.1表示は、有利誤認の論点となります。多くのNo.1表示は両者の中間に位置するため、社内チェックでは「どちらの類型から評価すべきか」を最初に判断する必要があります。

優良誤認に該当する可能性があるNo.1表示の場合、景品表示法7条2項の不実証広告規制が適用されます。消費者庁から合理的根拠資料の提出を求められた場合、事業者は15日以内に資料を提出しなければならず提出できなければ違反と「みなされ」ます。No.1表示は不実証広告規制の対象となりやすい類型の代表格です。

公正取引委員会・消費者庁ガイドラインの位置づけ

No.1表示の取扱いについては消費者庁表示対策課が示したNo.1表示に関する実態調査報告書(令和6年9月26日)と、その後の運用実務が事実上のガイドラインとなっています。

消費者庁表示対策課No.1表示に関する実態調査報告書(令和6年9月26 日)

同報告書は、No.1表示が適法と認められるための要件として、概ね次の3点を示しています。

  1. 客観的な調査に基づくこと
  2. 調査結果を正確かつ適切に引用すること
  3. 「No.1」と表示する事項と調査内容が一致していること

この3要件は、その後の措置命令事例でも判断基準として参照されており、実務上「No.1表示の3要件」として広く認識されています。本記事の以降のセクションでは、この3要件を一つひとつ実務目線で掘り下げていきます。

合理的根拠の3要件──各要件の実務的なポイント

要件1:客観的な調査に基づくこと

第1の要件は、No.1の根拠となる調査が客観的なものであることです。具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 信頼できる第三者機関による調査(市場調査会社、業界団体、公的機関等)
  • 事業者が自ら実施した社内調査でも、合理的な方法で行われたもの

社内調査でも適法となり得ますが、その場合は調査設計の合理性が厳しく問われます。サンプルサイズが小さすぎる、調査対象者の選定にバイアスがある、設問が誘導的、回答収集方法が偏っている、といった調査は「合理的な方法」とは認められません。

調査の客観性を担保するためには、可能な限り第三者機関に委託することが望ましく、社内調査で済ませる場合も「外部から検証可能な調査設計書・調査票・サンプリング記録」を保管することが必須です。

要件2:調査結果を正確かつ適切に引用すること

第2の要件は、調査結果を表示の中で正確かつ適切に引用することです。具体的には、表示の中またはその近傍に、以下の情報を明示する必要があります。

  • 調査対象(誰を、どの範囲で調査したか)
  • 調査期間(いつ調査したか)
  • 調査機関(どこが調査したか)
  • 調査方法(どのように調査したか)

これらの「出典情報」が表示されていない、または小さすぎて読めない、別ページに記載されており消費者が容易に確認できない、という場合は「適切な引用」とは認められません。

特に問題が多いのが、テレビCMやウェブ広告のメインビジュアルに大きく「No.1」と表示しながら、出典情報を画面下に極小フォントで一瞬だけ表示する、という運用です。動画系媒体では出典表示の視認性が確保されているかを必ずチェックしましょう。

要件3:「No.1」と表示する事項と調査内容が一致していること

第3の要件は、表示するNo.1の内容と、根拠となる調査内容が一致していることです。たとえば「売上シェアNo.1」と表示するなら売上シェアの調査、「顧客満足度No.1」と表示するなら顧客満足度の調査である必要があります。

実務でつまずきやすいのは、調査と表示の対応が「ずれている」ケースです。

  • 「ユーザー数No.1」の調査結果を「シェアNo.1」と表示
  • 「特定機能の評価No.1」の調査結果を「総合評価No.1」と表示
  • 「使ってみたいサービスNo.1」の調査結果を「人気No.1」と表示
  • 「20代女性の評価No.1」の調査結果を世代を限定せずに表示

これらはいずれも、調査と表示の対応が崩れているため、第3要件を満たさず違反となるリスクがあります。

違反となる典型パターン

調査対象者の選定にバイアスがある

最も多いパターンが、調査対象者の選定にバイアスがあるケースです。たとえば「業界満足度No.1」と表示しながら、調査対象が自社の有料サービス契約者のみであった、というケースは典型的に問題となります。自社サービスを継続利用している時点で満足度が高いことが推認されるため、調査結果に強い選定バイアスがかかっています。

「業界」「全体」「全ユーザー」を訴求するなら、調査対象も「業界全体・全体・全ユーザー」をカバーしていなければなりません。母集団の設計と表示文言の整合性を、調査設計の段階で必ず検証しましょう。

自社利用者のみへのアンケート

上記と関連しますが、「顧客満足度No.1」を自社サービス利用者のみに対して行ったアンケートで取得するケースも頻出パターンです。この場合、競合他社のサービスとの比較がそもそも調査に含まれていないため、「No.1」を称する根拠が不在となります。

「顧客満足度No.1」と訴求するなら、自社と競合複数社のサービス利用者を含む母集団に対して、共通の評価軸で満足度を聞く調査が必要です。

調査時期と表示時期のズレ

調査が古すぎる、または調査結果と表示開始時期にズレがある、というケースも違反リスクが高い類型です。一般的には、調査時点から表示時点までの期間が長期にわたると、市場環境の変化により調査結果が陳腐化している可能性が高くなります。

実務的には、調査時点から1年以内を一つの目安として、それを超える場合は更新調査を実施するか、表示を取り下げるかの判断が必要です。継続的にNo.1表示を使う場合は、年1回の更新調査を予算化することも検討に値します。

「自社調べ」の限界

調査出典として「自社調べ」とだけ表示するケースも、慎重に扱う必要があります。「自社調べ」自体が直ちに違法というわけではありませんが、調査の客観性・合理性を担保する追加情報(調査対象、期間、方法、サンプル数等)の併記がなければ、第2要件を満たさないと判断されるリスクがあります。

「自社調べ」を使う場合は、その隣に「2026年4月実施、20-50代男女500名、インターネット調査」等の出典情報を必ず併記し、社内に詳細な調査設計書を保管しておきましょう。

合理的根拠資料の作り方──実務手順

調査企画段階で揃えるべきもの

No.1表示の根拠資料を後から整えることは極めて困難です。広告に「No.1」を入れることが決まった段階で、以下を必ず文書化してください。

  • 訴求したいNo.1の文言(例:「20代女性が選ぶスキンケアブランドNo.1」)
  • 調査の目的・仮説
  • 調査対象の定義(年齢、性別、地域、母集団の範囲)
  • 比較対象とする競合の特定(どのブランド・サービスを比較するか)
  • 調査方法(インターネット調査、電話調査、対面調査等)
  • 評価軸の定義(満足度、購入意向、認知度等の操作的定義)
  • サンプルサイズの設計根拠

これらが揃った状態で外部調査会社に依頼する、または社内で調査を実施することで、調査結果と表示文言の整合性が事後的に揺らがなくなります。

調査実施段階で揃えるべきもの

実際に調査を行う段階では、以下を物理的・電子的に保管できる形で確保します。

  • 調査設計書(外部委託の場合は契約書・提案書)
  • 調査票(回答画面のスクリーンショットを含む)
  • サンプリング記録(対象者をどう抽出したか)
  • 回答の生データ
  • 集計結果のローデータと加工後データ
  • 統計的検定の結果(必要に応じて)

外部委託する場合は、調査会社との契約書に「生データを含む全資料を事業者側に納品すること」「3年以上の保管義務」を明記することが望まれます。サマリーレポートだけでは不実証広告規制への対応が困難となるため、生データの取得は必須です。

保管段階でのルール化

調査資料は、出稿日から少なくとも3年間、不実証広告規制の運用実態を考慮するとできれば5年間保管することが望まれます。保管場所は、担当者の個人PCではなく、共有ストレージ・部門共有フォルダに格納し、フォルダ命名規則・アクセス権限を明確にしておきます。

担当者の異動・退職時に資料が散逸するケースが実務上最も多い失敗パターンです。広告のNo.1表示は数年にわたり継続使用されることが多いため、担当者交代があっても根拠資料が確実に引き継がれる仕組みを社内ルールに組み込んでください。

No.1表示の更新・継続使用のリスク管理

No.1表示は、一度作って終わりではなく、継続的なリスク管理が必要な領域です。市場環境の変化、競合の動向、調査結果の陳腐化により、当初は適法だった表示が時間の経過とともに違反リスクを帯びるためです。

実務的には、以下のような運用ルールを社内で定めると効果的です。

  • No.1表示を使用する商品・サービスごとに「使用開始日」「直近の調査日」「次回更新予定日」を一覧化
  • 調査の有効期間は原則1年、長くとも2年を上限とする
  • 競合の動向(新サービス参入、シェア変動)を四半期ごとにモニタリング
  • 担当部署を明確にし、更新責任者を1名以上アサイン

これらのルールが運用されていない状態でNo.1表示を継続すると、「過去には適法だったが、現在は違反状態」という事態が生じやすくなります。社内のチェック頻度を仕組み化しておくことが、長期的なリスク回避の本質です。

No.1表示は「広告効果の高さに比例した根拠資料の厚みで運用する」

ここまで、No.1表示・最上級表示について、景品表示法上の3要件、違反となる典型パターン、合理的根拠資料の作り方・保管・更新管理を見てきました。改めて強調したいのは、No.1表示は他の広告表現に比べて消費者への訴求力が圧倒的に強い分、それに比例した厚みの根拠資料を伴っていなければ違反リスクが直結するという構造です。

「No.1」という強い言葉を使うのであれば、調査設計、調査実施、根拠資料の保管、更新管理という4つの段階それぞれで、第三者が見ても合理的と評価できる仕組みを整えることが必要です。逆に言えば、これらの仕組みを整える体力がない訴求は、No.1表示ではなく別の表現(「人気」「定番」「ロングセラー」等、客観的根拠を要しない表現)に置き換えることも一つの選択肢です。

景品表示法のNo.1表示規制は、判断軸自体は3要件とシンプルですが、実際の表現に当てはめると判断が分かれるケースが多く存在します。グレーゾーンの事案、特に新規プロダクトでのNo.1訴求を検討する場面では、調査企画の段階で専門家に相談する関係を持っておくことが、後から修正不可能な事態を避ける最短距離です。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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