X(旧Twitter)などのSNSで自分のツイートがスクショされ、許可なく勝手に拡散されるケースが増えています。自分の発言が意図せず拡散されることへの不安や、悪意のある拡散によって炎上してしまうリスクもあり、実際に「違法ではないのか?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ポスト(ツイート)のスクショ転載は法的にどのような場合に違法となるのか、違法となるケースと違法とならないケースを具体的に解説していきます。また、違法なスクショ転載から身を守るための対策方法も紹介します。
ポストのスクショ、違法になるケース・ならないケース
違法になるケース
著作権法違反
ポストは、短い文章であっても著作物とみなされ、著作権法で保護されます。無断でスクショを転載することは、著作権者の許諾を得ていない限り、著作権侵害にあたる可能性があります。特に、以下のようなケースでは注意が必要です。
- 個人のブログ記事やニュースサイトの記事など、引用元が明確に示されている場合でも、無断転載は著作権侵害にあたる可能性があります。
- X(旧Twitter)の規約では、ツイートの埋め込みは認められていますが、スクショの無断転載は認められていません(参照:X(旧Twitter)サービス利用規約)。
上記認定事実によれば,原告投稿……は,140文字以内という文字数制限の中,……事実に基づき,当該事実についての感想を口語的な言葉で端的に表現するものであって,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
東京地裁令和4年12月10日判決
文化庁のウェブサイトでは、著作権に関する情報を詳しく掲載しています。著作権について詳しく知りたい方は、以下のリンクを参照してください。
参照:文化庁HP「著作権」
肖像権侵害
ポスト(ツイート)に写っている人物の承諾を得ずにスクショを転載した場合、肖像権侵害にあたる可能性があります。肖像権とは、人が自分の姿や写真を自由に使う権利のことです。
そのため、たとえ自分が撮影した写真であっても、被写体となっている人物の承諾なしに、その写真を公開したり、商業利用したりすることはできません。
特に、以下のようなケースでは、肖像権侵害にあたる可能性が高くなります。
- 商業目的で利用する場合
スクショを転載して広告収入を得たり、商品やサービスの宣伝に利用したりする場合には、肖像権侵害にあたる可能性が高くなります。これは、商業目的で利用する場合には、被写体となる人物の経済的な利益を害する可能性が高くなるためです。 - 被写体となる人物の名誉やプライバシーを侵害する場合
スクショを転載することで、被写体となる人物の社会的な評価を低下させたり、私生活の平穏を害したりする場合には、肖像権侵害にあたる可能性が高くなります。これは、肖像権には、自分の姿を無断で利用されないことによって、自己の人格を保護する側面もあるためです。
名誉毀損罪・侮辱罪
ポスト(ツイート)の内容やスクショの転載方法によっては、名誉毀損罪や侮辱罪にあたる可能性があります。名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為をいいます。
一方、侮辱罪とは、事実を摘示せずに、公然と人を侮辱する行為をいいます。
これらの誹謗中傷に該当するか否かの基準については以下の記事を参照ください。
違法にならないケース
引用の範囲内
ポスト(ツイート)を引用の範囲内で利用する場合、違法とはなりません。著作権法では、一定の条件を満たせば、著作物を引用として利用することが認められています(著作権法第32条)。
第三十二条(引用)
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
引用として認められるためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
1. | すでに公表されている著作物であること |
2. | 「公正な慣行」に合致すること |
3. | 報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること |
4. | 「出所の明示」が必要 |
これらの要件を満たさない場合は、引用として認められず、著作権侵害にあたる可能性があります。
「引用」として認められる範囲について詳しくは以下の法律記事をご参照ください。
特に、「公正な慣行」や「引用の目的上正当な範囲」については、判断が難しい場合もあるため、注意が必要です。
例えば、ポスト(ツイート)の内容を改変したり、ポスト(ツイート)の一部だけを抜き出して利用したりする場合は、引用として認められない可能性があります。
この点について、X(旧Twitter)において、他人のポストをスクリーンショットに撮影し、その画像を添付して別のポストをした行為につき、著作権侵害に該当するか否かが争われた裁判例では、X(旧Twitter)社の規約上の「リツイート(リポスト)であれば適法だが、それ以外の引用方法は認めていない」というルールは、あくまでもがX(旧Twitter)社とユーザーとの取り決めに過ぎず、「引用」の要件の「公正な慣行」そのものになるわけではない、として、スクリーンショットの添付による方法も、状況次第では、「引用」として適法となりうる、と判断しました(知財高裁令和5年4月13日判決)。
そもそも本件規約は本来的にはツイッター社とユーザーとの間の約定であって、その内容が直ちに著作権法上の引用に当たるか否かの判断において検討されるべき公正な慣行の内容となるものではない。
また、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が本件規約違反に当たることも認めるに足りない。
他方で、批評に当たり、その対象とするツイートを示す手段として、引用リツイート機能を利用することはできるが、当該機能を用いた場合、元のツイートが変更されたり削除されたりすると、当該機能を用いたツイートにおいて表示される内容にも変更等が生じ、当該批評の趣旨を正しく把握したりその妥当性等を検討したりすることができなくなるおそれがあるのに対し、元のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする場合には、そのようなおそれを避けることができるものと解される。
そして、弁論の全趣旨によると、現にそのように他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートするという行為は、ツイッター上で多数行われているものと認められる。
以上の諸点を踏まえると、スクリーンショットの添付という引用の方法も、著作権法32条1項にいう公正な慣行に当たり得るというべきである。
知財高裁令和5年4月13日判決
公共の利害に関する事柄
ツイートの内容が公共の利害に関する事柄であり、スクショの転載が社会的に正当な目的のために必要と認められる場合には、違法とはならないことがあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 政治家の不正行為を告発するツイートを、証拠としてスクショで転載する場合
- 企業の不祥事を告発するツイートを、注意喚起のためにスクショで転載する場合
ただし、これらの場合でも、スクショの転載が名誉毀損罪や侮辱罪にあたる可能性はありますので、注意が必要です。
また、スクショの転載が社会的に正当な目的のために必要と認められるかどうかは、個々のケースごとに判断されるため、慎重に検討する必要があります。
違法なスクショ転載から身を守るには?
そもそもスクショを撮らせない(鍵アカウントにする)
- 鍵アカウントは、設定を変更するだけで簡単に利用できます。
- ただし、フォロワー以外の人には自分の投稿内容が見えなくなるため注意が必要です。
ポスト削除依頼
- X(旧:Twitter)では、報告対象のポスト上部のアイコンから「ツイートを報告」を選択し手続きを行うことができます。
- なお、Instagramでは、コンテンツの近くのドロップダウンメニューに表示されるリンクを使用して報告又はヘルプセンターから手続きを行うことができます。
Twitter:ツイートを報告するには
Instagram:違法なコンテンツの削除リクエスト
予防策
具体的な予防策
対策 | 内容 |
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個人情報の書き込みを控える | 住所や電話番号などの個人情報は、スクショ転載による悪用リスクが高いです。むやみに書き込むことは避けましょう。 |
発信内容に注意する | 誹謗中傷やわいせつな情報は、違法となる可能性が高くなります。また、炎上につながりやすく、スクショ転載のリスクも高まります。 |
ウォーターマークを入れる | 画像や動画に自分のアカウント名などのウォーターマークを入れることで、転載の抑止力になります。 |
まとめ
この記事では、X(旧Twitter)におけるスクショ転載の違法性について解説しました。ポスト(ツイート)のスクショは、著作権法違反、肖像権侵害、名誉毀損罪・侮辱罪に該当する可能性があり、場合によっては法的責任を問われる可能性があります。
一方で、引用の範囲内や公共の利害に関する事柄に該当する場合には、違法とならないケースもあります。
自身の投稿内容が違法なものでないか不安な場合や、スクショによる晒し行為の被害にあわれている方は、まずは弁護士に違法な場合に該当するか相談されるのが良いかと思います。
プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。