SNSなりすましは犯罪?罰則・判例から見る法的リスクと具体的な対策

風評被害対策法務

SNSでのなりすまし被害は、近年増加傾向にあり、誰もが被害者にも加害者にもなり得る身近な問題です。乗っ取り、偽アカウントでの誹謗中傷など、その手口も巧妙化しています。本記事では、SNSなりすましの詳細と対策を解説します。

この記事を読むことで、SNSなりすましによるリスクを正しく理解し、適切な対応方法や被害防止のための知識を学ぶことができます。安心してSNSを利用するために、ぜひ最後までお読みください。

SNSなりすましの定義と種類

SNSなりすましとは、他人の名前や写真などを無断で使用し、その人物になりすましてSNSアカウントを作成・運用したり、既存アカウントを不正に操作したりする行為です。なりすましの対象は個人に加え、企業や団体も含まれます。なりすましは、迷惑行為や様々な犯罪に発展し得るため、その定義と種類を正しく理解することが重要です。

アカウントの乗っ取り

アカウントの乗っ取りとは、不正に他人のアカウントにアクセスし、パスワードなどを変更してアカウントの所有権を奪う行為です。乗っ取られたアカウントは、なりすまし目的で悪用されやすく、犯罪に繋がることがあります。乗っ取りの手口としては、フィッシング詐欺やパスワードリスト攻撃などが挙げられます。

なりすましアカウントの作成

なりすましアカウントの作成とは、実在する人物や団体になりすまして、新規にアカウントを作成する行為です。プロフィールなどをコピーして、本人を装います。なりすましアカウントは、誹謗中傷などに悪用される危険性があります。特に著名人や企業のなりすましは、大きな影響力を持ち、社会的な混乱を招く可能性も懸念されます。

なりすましによる投稿やメッセージ送信

乗っ取ったアカウントやなりすましアカウントは、あたかも本人であるかのように投稿やメッセージを送信する行為によく使われます。デマや誹謗中傷を拡散したり、友人に金銭を要求したりするなど、様々な悪質な行為が行われます。また、DMで個人情報を聞き出そうとすることもあり、注意が必要です。

SNSなりすましは、その手口も巧妙化しており、被害に遭わないためには、正しい知識と対策が必要です。

SNSなりすましは犯罪? 適用される法律

SNSなりすましは、場合によっては刑事罰の対象となる深刻な行為です。どの法律が適用されるのか、具体的な事例と共に見ていきましょう。

偽計業務妨害罪

競合他社の従業員になりすまして、顧客に虚偽の情報を流し、契約を破棄させるといったケースが該当します。偽計業務妨害罪は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科せられます。 (刑法233条)

名誉毀損罪

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。例えば、なりすましアカウントで、対象者が犯罪を犯したかのような虚偽の情報を投稿するといった行為が該当します。名誉毀損罪は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられます。 (刑法230条1項)

侮辱罪

なりすましの投稿で、相手を蔑むような言葉や表現を用いた場合に適用される可能性があります。名誉毀損罪よりも要件が広く、抽象的な表現であっても侮辱と認められる場合があります。侮辱罪は、1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金、又は拘留若しくは科料に処せられます。 (刑法231条)

脅迫罪

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合に成立します。SNSなりすましで、相手を脅迫するようなメッセージを送ったり、なりすましたアカウントで脅迫的な投稿を行うといった行為が該当します。脅迫罪は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処せられます。 (刑法222条)

不正アクセス禁止法

他人のIDやパスワードを不正に利用して、正当なアクセス権限を持たずにコンピュータシステムにアクセスする行為を禁じています。他人のアカウントを乗っ取って不正にログインする行為などがこれに該当します。不正アクセス禁止法違反は、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科せられます。(同法11条)

ケースによっては、著作権法、個人情報保護法などに抵触する可能性もあります。SNSなりすましは軽い気持ちで行ってはいけないものであり、重大な法的責任を負うリスクを理解しておく必要があります。

SNSなりすましによる損害と法的リスク

SNSなりすましは、被害者にとって深刻な損害と法的リスクをもたらします。個人だけでなく企業も標的となり、その影響は多岐にわたります。以下では、被る可能性のある損害について詳しく解説します。

主な個人の損害

SNSなりすましによって、個人と企業及び団体は、様々な損害を被る可能性があります。

経済的損害

なりすましによって、詐欺に遭う、ネット通販で不正利用されるなどの経済的損害が発生する可能性があります。また、なりすまされたアカウントがオンラインバンキングなどに登録されている場合、不正送金などの被害に繋がる可能性も懸念されます。

企業の場合は、なりすましによって、偽のキャンペーンによる損失、風評被害による売上減少など、経済的な損害が発生する可能性があります。その損害は、企業の経営を圧迫する可能性があります。

精神的損害

なりすましによる誹謗中傷などを受け、精神的な苦痛を味わう可能性があります。不特定多数の人に見られるSNSで、自分の偽アカウントが作られ、事実無根の情報を拡散されることは、大きな精神的ダメージとなります。 また、人間関係が悪化するケースも考えられます。

社会的損害

なりすましによって、社会的な信用を失い、孤立する可能性があります。特に、なりすましによって虚偽の情報が拡散された場合、周囲からの誤解や偏見を受ける可能性が高まります。 また、就職活動や昇進に悪影響を及ぼすケースも考えられます。

ブランドイメージの毀損

なりすましアカウントが公式アカウントを装い、不適切な発言や情報を発信することで、芸能人などの個人や企業のブランドイメージが大きく損なわれる可能性があります。一度失ったブランドイメージを回復するには、多大な時間と労力が必要となります。

信頼喪失

なりすましによって仕事上の信用を失うケースも考えられます。また、企業はなりすましによる顧客情報の漏洩により、顧客の信頼を失う可能性があります。顧客の信頼を失うことは、企業の存続にも関わる重大な問題です。

これらの損害は、決して軽視できません。適切な対策を講じることで、リスクを軽減することが重要です。

SNSなりすまし 事例から学ぶ

ここでは、事例を通して、なりすまし問題の深刻さと法的リスクについて理解を深めましょう。

著名人へのなりすまし事件

著名人のなりすましは、その影響力から大きな損害を与える可能性があります。ある芸能人のSNSアカウントを乗っ取り、ファン女性に卑猥なDMを送信した事例では、犯人は不正アクセス禁止法の疑いで逮捕されました。著名人の場合、経済的損害だけでなく、社会的信用やイメージの失墜といった深刻な損害が発生するため、高額な賠償金が請求されるケースも見られます。

一般人へのなりすまし事件

一般人へのなりすまし事件も後を絶ちません。SNS上での嫌がらせは、現実世界での生活にも大きな影響を与え、事例によっては刑事罰が科される可能性もあります。詳しくは警察庁のサイバー事案に関する相談窓口で情報収集することをお勧めします。

ネットいじめ・リベンジポルノ関連の事例

近年増加しているのが、ネットいじめやリベンジポルノに関連したなりすましです。加害者が被害者のアカウントになりすまし、わいせつな画像や動画を拡散するといった卑劣な手口も報告されています。このようなケースでは、リベンジポルノ防止法違反などの重い罪も問われるケースがあります。被害者は深刻な精神的苦痛を味わい、社会生活にも大きな支障をきたす可能性があり、早期の法的対応が重要です。

詳しくは下記の記事も参考にしてください。

企業へのなりすまし事件

ある企業の公式アカウントになりすまし、偽のキャンペーン情報を発信して顧客から個人情報を不正に取得した事例では、不正競争防止法違反や詐欺罪が適用される可能性があります。企業は、自社のブランドイメージを守るため、なりすまし対策を徹底する必要があると言えるでしょう。また、なりすましによって経済的な損失を被った場合、損害賠償請求を行うことも可能です。

なりすましの種類適用される可能性のある法律想定される損害
著名人へのなりすまし名誉毀損罪、偽計業務妨害罪経済的損害、社会的信用の失墜、イメージの毀損
一般人へのなりすまし名誉毀損罪、侮辱罪、ストーカー規制法違反、偽計業務妨害罪精神的苦痛、社会生活への支障、経済的損害
企業へのなりすまし不正競争防止法違反、詐欺罪、偽計業務妨害罪ブランドイメージの毀損、顧客の信頼喪失、経済的損失

これらの裁判例から、SNSなりすましは決して軽視できない犯罪であることが分かります。被害に遭わないために、日頃から適切な対策を講じることが重要です。また、万が一被害に遭ってしまった場合は、速やかに法的対応を検討しましょう。

SNSなりすましへの法的対応

SNSなりすまし被害に遭った場合、泣き寝入りするのではなく、適切な法的対応を取ることで、加害者を特定し、損害賠償を求めることができます。主な法的対応は以下の通りです。

発信者情報開示請求

SNSなりすましの加害者を特定するために、まず行うべきなのが発信者情報開示請求です。これは、プロバイダやSNS運営会社に対して、書き込みを行った人物のIPアドレス、氏名、住所などの情報を開示するように求める手続きです。発信者情報開示請求を行うには、裁判所への申し立てが必要となります。 

下記の記事などを参考に、必要な情報を集めましょう。

損害賠償請求

加害者が特定できたら、損害賠償請求を行うことができます。SNSなりすましによって受けた損失に対して、金銭的な賠償を求めることができます。請求額は事例によって異なりますが、弁護士に相談することで適切な金額を算定することができます。損害賠償請求は、加害者に対して直接行うことも、裁判所を通じて行うことも可能です。 

刑事告訴

SNSなりすましの行為が、刑法違反になる場合、刑事告訴を行うことができます。刑事告訴とは、捜査機関(警察)に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求めることです。告訴が受理されれば、警察が捜査を行い、検察が起訴するかどうかを判断します。起訴されれば、裁判が行われ、有罪判決が確定した場合、加害者は刑罰を受けることになります。 

これらの法的対応は、単独でも可能ですが、専門知識が必要な場合が多いため、弁護士相談をお勧めします。弁護士に相談することで、適切な法的対応を選択し、円滑に手続きを進めることができます。また、示談交渉や裁判手続きなどを任せることも可能です。

SNSなりすましへの具体的な対策

SNSなりすましの被害に遭わないためには、事前の対策が重要です。アカウントのセキュリティ強化はもちろんのこと、日頃からSNS利用における意識を高めることも大切です。以下に具体的な対策をまとめました。

パスワードの強化

パスワードは、推測されにくい複雑なものを設定しましょう。8文字以上で、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせるのがおすすめです。また、同じパスワードを複数のサービスで使い回すのは避けましょう。パスワード管理ツールを利用するのも有効です。

二段階認証の設定

二段階認証を設定することで、パスワードが漏洩した場合でも不正アクセスを防ぐことができます。多くのSNSで二段階認証があるため、必ず設定しましょう。SMS認証や認証アプリなど、自分に合った方法を選択できます。設定方法は各SNSのヘルプページなどを参照ください。

不審なリンクやアプリに注意

フィッシング詐欺など、偽のログインページに誘導しパスワードを盗み取ろうとするケースがあります。知らない人からのリンクや、非公式・非公認なアカウントからのリンクはクリックしないようにしましょう。また、信頼できないアプリをインストールしないことも重要です。アクセス権限にも注意し、不必要な権限を要求するアプリはインストールしないようにしましょう。

プライバシー設定の見直し

SNSのプライバシー設定及び公開範囲を適切に設定しましょう。個人情報やプライベートな投稿は、信頼できる人にのみ公開するように設定することで、なりすましのリスクを軽減できます。各SNSのプライバシー設定について理解し、適切な設定を行いましょう。

定期的なアカウントチェック

自分のアカウントが不正利用されていないか、定期的にチェックしましょう。身に覚えのない投稿やメッセージがないか確認し、不審な点があればすぐにパスワードを変更するなどの対策を取りましょう。

なりすましアカウントを発見した場合の対処法

もし自分のなりすましアカウントを発見した場合は、以下の手順で対応しましょう。

手順内容
1.SNSの運営会社に通報する 各SNSにはなりすましアカウントの通報機能があります。スクリーンショットなどの証拠を添付して通報しましょう。
2.周囲に報告する 友人や家族、職場などに、なりすましアカウントの存在を知らせ、誤解を防ぎましょう。
3.証拠を保存する なりすましアカウントのスクリーンショットや、被害を受けた場合の記録などを保存しておきましょう。

これらの対策を講じることで、SNSなりすましのリスクを大幅に減らすことができます。安全にSNSを楽しむためにも、ぜひ実践してみてください。

まとめ

SNSなりすましは、個人だけでなく企業にも甚大な被害をもたらす深刻な犯罪です。この記事では、なりすましのケース、そして具体的な対応・対策について解説しました。なりすましは、様々な法律に抵触する可能性があります。

被害に遭ってしまった場合は、発信者情報開示請求を行い、法的措置を検討しましょう。また、事前にセキュリティ対策を徹底することが重要です。安心してSNSを楽しむためにも、今回紹介した内容を参考に、セキュリティ意識を高め、適切な対応を心がけてください。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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