SNSや動画プラットフォームのアカウントが突然凍結されると、収入も、これまで積み上げてきた発信の場も、一瞬で失われます。運営会社の問い合わせフォームから異議を申し立てても、返ってくるのは定型文だけ。そうなったとき、多くの方が「裁判で争えないのか」と考えます。
ところが、この種の紛争では、凍結が正当だったかどうかという中身の議論にたどり着く前に、二つの入口を通過しなければなりません。ひとつは「そもそも日本の裁判所で審理してもらえるのか」という国際裁判管轄の問題、もうひとつは「どの国の法律で判断されるのか」という準拠法の問題です。海外のプラットフォームの利用規約には、この二つがほぼ確実に、しかも運営会社に有利な形で書き込まれています。
アカウント凍結をめぐって、この入口論が正面から判断された裁判例があります。東京地方裁判所令和6年10月15日判決(令和4年(ワ)第28836号)です。X(旧Twitter)の利用者が運営会社を訴えたこの事件で、裁判所は日本の裁判所の管轄を認めながら、準拠法はカリフォルニア州法だとして請求を退けました。管轄では勝ち、準拠法で負けたのです。
この記事では、この判決を手がかりに、アカウント凍結を裁判で争おうとするときに何が待ち受けているのかを整理します。凍結の原因そのものについては別記事で解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
海外プラットフォームを訴えるときに立ちはだかる二つの入口
日本国内の会社が相手であれば、東京地方裁判所なり所在地の裁判所なりに訴えを起こし、日本の民法や契約法に基づいて審理してもらえます。ところが、X、YouTube、TikTok、Instagramといったサービスの運営主体はいずれも外国法人です。相手が外国法人になると、訴訟の前提が二段構えで変わります。

どこの国の裁判所で審理するのか(国際裁判管轄)
まず、日本の裁判所がその事件を審理する権限を持っているかが問題になります。これを国際裁判管轄といいます。民事訴訟法は、不法行為に関する訴えであれば不法行為があった地が日本国内にあるとき(民事訴訟法3条の3第8号)、外国会社に対する訴えであればその者の日本における業務に関するものであるとき(同条第5号)などに、日本の裁判所への提訴を認めています。
問題は、当事者の合意でこれを変えられるという点です。民事訴訟法3条の7第1項は「当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる」と定めており、利用規約に「本サービスに関する紛争は○○州の裁判所にのみ提起する」と書かれていれば、原則としてその合意が優先します。これを専属的管轄合意といいます。
どの国の法律で判断するのか(準拠法)
次に、仮に日本の裁判所で審理できるとしても、適用される法律が日本法とは限りません。法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます)7条は「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による」と定めています。利用規約に「本規約にはカリフォルニア州法が適用される」と書かれていれば、その合意によって準拠法はカリフォルニア州法になります。
日本の裁判所が外国法を適用して判断すること自体は、珍しいことではありません。ただし当事者の側は、その外国法の内容を主張し、立証しなければなりません。カリフォルニア州法上、どのような場合にサービス提供義務が生じ、どのような場合に一方的なアカウント停止が違法となるのか。それを日本の訴訟の中で組み立てる必要があるということです。
利用規約にはたいてい両方が書いてある
主要な海外プラットフォームの利用規約を読むと、この二つがセットで置かれています。実際、後述する東京地裁判決で問題になったXの利用規約には、次の二つの条項が含まれていました。
本規約およびユーザーと運営会社の間に発生する紛争には、準拠法の選択に関する規定を除き、カリフォルニア州法が適用される(準拠法合意)本規約または本サービスに係るあらゆる紛争は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ郡に所在する連邦裁判所または州裁判所に専属的に提起される(専属的管轄合意)
利用者がこの規約に同意している以上、そのままでは、日本に住むユーザーがサンフランシスコで訴訟をしなければならないことになります。現実的には、それは訴訟を諦めろというのとほとんど同じ意味です。
分水嶺となるのは「消費者」に当たるかどうか
この二つの入口を突破する鍵が、利用者が法律上の「消費者」に当たるかどうかです。
民事訴訟法3条の7第5項は、将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする管轄合意について、原則としてその効力を否定しています。効力が認められるのは、①消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起できる旨の合意であるとき、②消費者が自らその合意に基づいて提訴したとき、または事業者が提訴した場合に消費者がその合意を援用したとき、の二つの場合に限られます。
海外プラットフォームの利用規約にある「本国の裁判所に専属」という条項は、この①にも②にも当たりません。つまり、利用者が消費者に当たるのであれば、専属的管轄合意は効力を持たないことになります。そのうえで、民事訴訟法3条の4第1項により、訴えの提起の時または契約締結の時における消費者の住所が日本国内にあれば、日本の裁判所に提訴できます。
ここでいう「消費者」は、同項が「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)」と定義しています。消費者契約法2条1項の定義とほぼ同じ文言です。個人であっても、事業として、または事業のために契約の当事者となった場合には消費者ではない、という切り分けになります。逆にいえば、法人名義で開設したアカウントは、この定義上そもそも消費者に当たりません。企業の公式アカウントが凍結された場合には、この突破口は使えないということです。
インフルエンサーや配信者にとって、この切り分けは他人事ではありません。収益を得るために発信しているのだから事業のためではないか、と疑われる余地が常にあるからです。たとえば、個人名義のアカウントでPR案件の投稿を月に数本行っている、アフィリエイトリンクを貼っている、自分の物販サイトへの導線を置いている、といった事情は、いずれも「事業のために契約の当事者となった」という評価につながり得ます。
もっとも、後述する裁判例が示すとおり、こうした事情が一つでもあれば直ちに消費者でなくなる、という単純な話ではありません。判断されているのは、契約を締結した時点で、その契約が事業のためのものだったといえるかです。アカウント全体の使われ方の中で事業利用がどの程度の位置を占めていたのかが問われることになります。
なお、通則法11条1項の「消費者」も、民事訴訟法3条の4第1項とほぼ同じ文言で定義されています。ただし前者は準拠法の選択規則、後者は管轄の規則であり、保護が問題となる場面も与えられる保護の内容も異なります。そのため、両者の消費者概念を必ずしも同一に解する必要はないという見解もあり、この点は学説上の議論があるところです。
東京地裁令和6年10月15日判決 ― 「告知用」アカウントでも消費者と認められた
事案の概要
原告は投資家・作家として活動する個人で、平成19年4月からTwitter(現X)のアカウントを保有していました。平成30年7月24日頃、このアカウントが凍結され、ウェブページ上に凍結された旨の表示がされました。
原告は、この表示が自身の名誉権を侵害するとして不法行為に基づく慰謝料等330万円の支払を求めるとともに、利用契約に基づいて凍結の解除とサービスの提供を求めて提訴しました。被告は、利用規約の専属的管轄合意により日本の裁判所に管轄はないと争いました。
なお、Twitterのサービス提供主体は途中で複数回入れ替わっており、原告は令和2年1月1日に、変更後の提供主体との間であらためて利用契約を締結した形になっていました。消費者該当性を判断する基準時は、この令和2年1月1日となります。
事業性を示す事情はかなり揃っていた
裁判所が認定した事実を並べると、原告が「事業のために」アカウントを使っていたと評価されてもおかしくない材料が相当ありました。
- 投資家・作家として活動しており、プロフィール欄にもそう記載していた
- アカウント名に「告知用」の文言を入れていた
- 自らの執筆記事や対談記事を紹介するツイートを、少なくとも6件投稿していた
- そのうち4件は、一定期間、ホーム画面の最上部に固定するよう設定していた
- 「ゲーム&個人垢」として、別に個人用のアカウントを保有していた
裁判所自身も、こうした事情に照らせば「原告が本件アカウントを自らの執筆記事等の紹介のために利用していたといえる」とし、「そのような紹介を行うことは原告の知名度の上昇や収入の増加にもつながるから、事業に関連する行為といえる」と述べています。さらに、別に個人用アカウントを持っていたことも併せれば「自らの事業のために使用していたとも評価し得る」とまで言っています。
それでも消費者と認めた理由
にもかかわらず、裁判所は原告を消費者に当たると判断しました。理由として挙げられたのは次の三点です。
第一に、アカウントを開設して最初に投稿したツイートが、事業とは無関係の私生活に関するものであったこと。第二に、その後の投稿を見ても、執筆記事の紹介を行ったツイートはアカウント全体のツイートの一部にすぎず、事業と無関係のツイートを多数投稿していたこと。第三に、「告知用」のアカウントとは別に「ゲーム&個人垢」を持っていたとしても、両アカウントを明確に区別して使用していたとはいえないこと。
そのうえで裁判所は、原告は「本件アカウントにおいて、個人的なツイートを投稿する中で事業のためのツイートも投稿をしていた」と認定し、事業のために契約の当事者となったとは認められないと結論づけました。
実務的な読みどころ ― 混在型は消費者側に傾く
この判断から読み取れるのは、個人利用と事業利用が混ざっているアカウントは、消費者側に傾きやすいということです。「告知用」と名乗り、固定ツイートで自著を宣伝していてもなお消費者と認められたのですから、判断の重心は「事業に使った形跡があるか」ではなく「アカウント全体の使われ方の中で事業利用が主たる位置を占めているか」に置かれていると見るのが自然です。
なお、この判決は、デジタルプラットフォームの利用契約について国際裁判管轄上の消費者概念が正面から争われた、初めての公表事例であるとされています。
その結果、専属的管轄合意は民事訴訟法3条の7第5項により無効となり、原告の住所が日本国内にあることから、日本の裁判所の管轄が認められました。入口の一つ目は突破されたわけです。

管轄で勝っても、準拠法で負けることがある
ところが、この判決の結論は請求棄却でした。二つ目の入口である準拠法で、原告の主張が通らなかったからです。
通則法11条1項は「準拠法合意そのもの」を無効にする規定ではない
原告は、本件利用契約が消費者契約であることを前提に、通則法11条1項と消費者契約法10条によって準拠法合意は無効であり、消費者の常居所地法である日本法が準拠法になると主張しました。
裁判所はこれを退けました。理由は条文の構造にあります。通則法11条1項は、消費者契約について、選択された準拠法が消費者の常居所地法以外の法である場合であっても、「消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したとき」は、その強行規定の定める事項についてはその強行規定をも適用する、と定めています。
つまりこの条文は、準拠法の選択それ自体を無効にする規定ではなく、選択された準拠法に加えて、消費者の常居所地法の特定の強行規定を重ねて適用できるとする規定です。裁判所は「当事者による準拠法の選択及び変更(同法7条、9条)自体を何らかの強行規定により無効にできる旨定めた条項ではな」いとして、原告の主張を失当としました。
この点は、実務上とても重要です。消費者に当たるからといって準拠法が日本法になるわけではありません。もっとも、裏を返せば、消費者の側が「日本の消費者契約法の特定の条項を適用すべきである」という意思表示を明確に行えば、その強行規定については重ねて適用を求める余地があるということでもあります。準拠法合意を丸ごと潰しにいくのではなく、効かせたい強行規定を特定して重畳適用を求める、という組み立てが考えられるところです。
名誉毀損の特例(通則法19条)も、合意があると使えない
原告は、名誉権侵害を理由とする損害賠償請求については、名誉毀損の特例を定めた通則法19条により、被害者の常居所地法である日本法が準拠法になるとも主張しました。
これも通りませんでした。まず裁判所は、本件の準拠法合意が「本規約およびユーザーとTwitterの間に発生する紛争には」という広い文言になっていることから、利用契約に基づく請求だけでなく、不法行為法上の請求もこの合意の対象になると解釈しました。そのうえで、通則法19条は準拠法に関する合意がない場合に適用されるものと解される、として原告の主張を退けています。
利用規約の準拠法条項の文言が「本規約に関する紛争」に限定されているのか、「本規約およびユーザーと当社の間に発生する紛争」まで広げられているのかで、不法行為構成が使えるかどうかが変わり得るということです。凍結を争う前に、規約の準拠法条項の適用範囲を一語ずつ確認しておく必要があります。
日本法しか主張しなかった結果
こうして本件の準拠法はいずれの請求についてもカリフォルニア州法とされました。ところが原告は、日本法に基づく請求原因の主張しかしていませんでした。裁判所は「カリフォルニア州法に基づく主張を一切しないから、その主張は失当である」として、請求をいずれも棄却しています。
凍結の当否という本案の判断には、まったく立ち入らないまま終わったのです。アカウント凍結が正当だったかどうかは、この判決からは何も分かりません。この点は、判決の射程を誤解しないために押さえておくべきところです。
なお、学説からは、当事者と裁判所とで準拠法の判断に食い違いがある場合、裁判所には釈明権を行使して適用される準拠法に従った主張・立証を促すべき責務があり、これを怠ったまま当事者が手続保障の機会を奪われれば違法となるとの指摘があります。訴訟を進める側としては、裁判所からの釈明を待つのではなく、外国法が準拠法になり得る前提で主張を用意しておくのが安全です。

消費者に当たらないとされた事例と比べると、分かれ目が見えてくる
同種の争点について、その後いくつかの下級審裁判例が現れています。消費者性が認められた例と否定された例を並べると、判断の分かれ目が浮かび上がります。

消費者性が認められた例
東京地裁令和7年7月30日判決(令和6年(ワ)第24683号)は、同じくX(旧Twitter)と利用者との間の紛争で、利用者の消費者性を端的に認め、テキサス州裁判所を指定する専属的管轄合意条項を無効としました。プラットフォーム側が管轄条項の指定先を変更しても、利用者が消費者である限り結論は動かないことを示しています。
消費者性が否定された例
東京地裁令和7年5月19日判決(令和6年(ワ)第9527号)は、広告掲載サービスに関する紛争です。裁判所は、事業として開発したアプリを一般消費者に向けて提供するために行われた広告契約は、事業のために行った契約であるとして、原告の消費者該当性を否定しました。その結果、規約中の仲裁合意が有効とされ、訴えは却下されています。
東京地裁令和7年9月30日判決(令和6年(ワ)第29716号)は、外国法人が運営する動画サイトに動画を投稿していた利用者が、再生回数に応じた収益化を停止されたとして損害賠償を求めた事案です。原告は「サービスを利用する主たる目的は動画の視聴であって事業目的ではない」と主張しましたが、裁判所は、プログラム登録の前後を通じて動画の投稿を反復継続して行っていたことから、事業として動画を投稿していたと認められるとして、消費者該当性を否定しました。
分かれ目はどこにあるか
これらを並べると、次のような傾向が読み取れます。
契約の目的が収益獲得と直結していると、消費者性は否定されやすくなります。 広告契約や収益化プログラムへの登録は、それ自体が収益を得るための契約です。「動画を見るために登録した」という説明は、実際の投稿実績の前では通りにくくなります。
これに対し、SNSの一般的な利用契約は、契約それ自体が収益と結びついているわけではありません。 そのため、アカウントの使われ方全体を見て、事業利用が主たる位置を占めているかどうかで判断されることになります。冒頭の東京地裁令和6年10月15日判決が、事業性を示す事情を認めつつも消費者性を肯定したのは、この構造の違いによるものと理解できます。
投稿の反復継続性も効いています。 令和7年9月30日判決は、投稿を反復継続して行っていたことを事業性の根拠に据えました。専業に近い形で毎日投稿している配信者ほど、消費者性を否定される方向に傾く可能性があります。
なお、消費者該当性をいつの時点の事情で判断するかについては、契約締結時を基準とすべきという考え方が一般的です。もっとも、民事訴訟法3条の4第1項が「訴えの提起の時又は消費者契約の締結の時」の住所を管轄原因としていることから、訴え提起時までの事情も考慮してよいのではないかという指摘もあります(前掲・横溝評釈)。契約締結後に活動の性質が大きく変わった場合には、この点が争点になり得ます。
アカウントを凍結されたときに押さえておきたい実務上の手順
以上を踏まえて、実際に凍結されたときの手順を整理します。

第一に、凍結前後の利用実態を保全する
消費者該当性は、アカウントの使われ方の実態から判断されます。ところが凍結されてしまうと、自分の過去の投稿を確認することすらできなくなります。冒頭の東京地裁判決でも、契約締結時点でアカウントが既に凍結されていたため、裁判所は凍結前の投稿内容から遡って利用目的を推知するという手順を踏んでいます。
平時から、プロフィール欄の記載、固定投稿の設定、投稿の内容と頻度などを記録として残しておくことが、いざというときの立証を支えます。凍結された後であっても、検索エンジンのキャッシュ、アーカイブサービス、他の利用者による引用などから復元できる場合がありますので、早い段階で収集に着手してください。
第二に、契約の相手方を特定する
サービスの提供主体は、企業再編や地域ごとの子会社の設置によって入れ替わることがあります。冒頭の事件でも、提供主体は複数回変わっており、被告は「凍結当時の提供主体は自社ではない」という反論をしています。
誰との間で、いつ、どの版の規約に基づいて契約が成立しているのかを整理しないと、請求の相手方を誤るおそれがあります。規約の改定履歴が公開されている場合は、凍結時点とその前後の版を取得してください。
第三に、規約の管轄条項と準拠法条項を読む
その規約に管轄条項があるか、専属的なものか、どの国・州の裁判所を指定しているか。準拠法条項の適用範囲が「本規約に関する紛争」にとどまるのか、契約外の紛争まで及ぶ文言になっているか。仲裁条項が置かれていないか。これらの点は、提訴の可否を左右します。
仲裁条項がある場合は特に注意が必要です。前述の東京地裁令和7年5月19日判決では、消費者性が否定された結果、仲裁合意が有効とされて訴え自体が却下されています。
第四に、訴訟の前に異議申立てと任意交渉を尽くす
裁判所の判断を待つまでもなく、運営会社側の再審査によって凍結が解除される例は少なくありません。異議申立ての手続や、誤BANが問題となった事例における一次対応については、別記事で詳しく解説しています。
交渉の記録を残しておくことにも意味があります。任意の是正を求めたにもかかわらず対応がなかったという経緯は、その後の請求の組み立てにおいて重要な事実になります。
誤BANの事例については下記の記事をご参照ください。
第五に、提訴するなら外国法に基づく主張を想定しておく
管轄について消費者性が認められても、準拠法は外国法のままです。日本の裁判所で外国法を適用してもらう以上、その外国法の内容を主張・立証する必要があります。現地法に詳しい専門家の関与が必要になる場面も出てきます。
同時に、通則法11条1項に基づいて、日本の消費者契約法の特定の強行規定を重ねて適用すべき旨の意思表示を行うことも検討に値します。たとえば「理由の如何を問わずアカウントを停止できる」といった条項について、消費者契約法10条による無効を主張する余地があるかどうかは、事案ごとに慎重な検討を要するところです。
アカウントの「使い分け」が、凍結されたときに日本で戦えるかどうかを分ける
ここまで見てきたことを、実務の視点で言い直すと、次のようになります。
海外プラットフォームのアカウント凍結を裁判で争うには、専属的管轄合意と準拠法合意という二つの入口を越える必要があります。前者は、利用者が消費者に当たるのであれば民事訴訟法3条の7第5項によって無効にできる余地が大きいです。しかし後者は、消費者であっても無効にはならず、外国法が適用されたまま本案の審理に進むことになります。
そして、その分かれ目となる消費者該当性は、アカウントが実際にどう使われてきたかという、地味な事実の積み重ねで決まります。「告知用」という名前をつけていても、事業と無関係の投稿が多数を占めていれば消費者と認められる。逆に、収益化プログラムに登録して投稿を反復継続していれば、消費者ではないと判断される。プロフィールの体裁ではなく、投稿の中身と積み重ねが見られているということです。
興味深いのは、事業用と個人用でアカウントを分けていたことが、必ずしも有利にも不利にも働いていない点です。冒頭の判決では、別に個人用アカウントを持っていたことが「事業のために使用していたとも評価し得る」根拠として挙げられる一方、両者を明確に区別して使っていたとはいえないという認定によって、結局は消費者性を肯定する方向に働きました。分けるならば徹底して分ける、分けないならばそのままにする。中途半端な使い分けは、どちらの主張にも使われ得るということです。
もっとも、ここで整理した内容は、あくまで訴訟という最終手段に至った場合の見取り図です。実際には、凍結の原因を正確に把握し(ガイドライン違反なのか、著作権に関する申立てなのか、システム上の誤りなのか)、運営会社の異議申立て手続を適切に使うことで解決する場面のほうが多いのが実情です。訴訟はコストも時間もかかり、しかも入口論だけで年単位の期間を要することがあります。
アカウントが収入や事業の基盤になっている方ほど、凍結は事業継続そのものに直結します。異議申立てを尽くしても解決しない場合や、凍結によって具体的な損害が生じている場合には、早い段階で弁護士に相談してみることをお勧めします。
プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。





