電気通信事業法の届出電気通信事業者の届出の方法について解説

インターネット・IT関連法務

電気通信事業法の届出は、携帯電話会社やインターネットプロバイダだけの話ではありません。利用者同士がメッセージをやり取りできるWebサービスやアプリ、MVNO、有料の公衆無線LANなども、内容によっては事業を始める前に総務大臣への届出が必要になります。一方で、SaaSや情報配信サイトのように、電気通信事業には当たるものの届出は不要とされているサービスもあり、線引きは分かりにくいのが実情です。

本記事では、届出が必要かどうかの見分け方から、届出の方法(届出書の様式、添付書類、提出先)、届出後に必要となる手続、届出をしなかった場合の罰則までを、電気通信事業法の現行条文と総務省の「電気通信事業参入マニュアル」に沿って整理します。内容は2026年10月時点の法令・公表資料に基づいています。

届出電気通信事業者とは:電気通信事業法上の位置づけ

「電気通信役務」と「電気通信事業」の定義

届出の要否を考える出発点は、電気通信事業法(以下「法」)2条の定義です。

  • 電気通信役務:電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること(法2条3号)
  • 電気通信事業:電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(法2条4号)
  • 電気通信事業者:電気通信事業を営むことについて、法9条の登録を受けた者及び法16条1項の届出をした者(法2条5号)

ここでいう「電気通信設備」には、光ファイバや基地局だけでなく、サーバや端末機器も含まれます。総務省の「電気通信事業参入マニュアル[追補版]」(以下「追補版」)は、クラウドを利用して物理的な設備を自ら置かない場合でも、実質的に同等の機能を有していれば「電気通信設備を用いて」に当たると説明しています。自社でサーバを持たないWebサービスであっても、それだけで対象外になるわけではありません。

登録と届出の違い

電気通信事業を営もうとする者は、原則として総務大臣の登録を受ける必要があります(法9条)。ただし、設置する電気通信回線設備の規模・区域が総務省令で定める基準を超えない場合などは登録の対象から外れ(同条ただし書)、登録を受けるべき者以外の者は届出を行うことになります(法16条1項)。

総務省令の基準は、①端末系伝送路設備の設置区域が一の市町村(特別区を含み、指定都市では区・総合区)の区域を超えないこと、②中継系伝送路設備の設置区間が一の都道府県の区域を超えないこと、の両方を満たすことです(電気通信事業法施行規則〔以下「施行規則」〕3条1項)。整理すると次のとおりです。

電気通信回線設備必要な手続
設置しており、上記①②のいずれかを超える登録(法9条)
設置しているが、上記①②の範囲内届出(法16条1項)
設置していない(他社回線の再販、サーバ等のみで提供する場合など)届出(法16条1項)

Webサービスやアプリの事業者の多くは回線設備を自ら設置しないため、問題になるのは基本的に「届出」です。なお、かつての「第一種電気通信事業」「第二種電気通信事業」という区分はすでに廃止されており、現在の参入手続は登録と届出の二本立てになっています。

参照すべき総務省の資料

総務省は、手続の概要を示す「電気通信事業参入マニュアル」、届出等の要否の考え方と事例を示す「追補版」、該当性を平易に確認できる「電気通信事業参入マニュアル(追補版)ガイドブック」を公表しています。いずれも総務省ウェブサイトの「電気通信事業参入・変更手続の案内」から入手できます。様式や記載例もこのページに掲載されているため、実際に手続をする際は最新版を確認してください。

届出が必要なサービスと不要なサービスの見分け方

判断の基本的な流れ

追補版は、おおむね次の順序で判断する考え方を示しています。

  1. 電気通信役務に当たるか(電気通信設備を他人の通信の用に供しているか)
  2. 「他人の需要に応ずるため」の「事業」か(自社の本来業務の手段にすぎない場合や、他のサービスに付随するにすぎない場合は、電気通信事業に当たらない)
  3. 「営む」といえるか(電気通信役務の提供で利益を上げようとしているか。名目上無料でも、広告収入などで実質的に利益を得ようとする場合は含まれうる)
  4. 適用除外(法164条1項)に当たらないか

4の適用除外は、①専ら一の者に電気通信役務を提供する事業、②同一の構内・建物内に設置した設備や、線路のこう長の総延長が5キロメートルに満たない設備による事業(施行規則59条)、③他人の通信を媒介しない電気通信役務を、電気通信回線設備を設置することなく提供する事業の3つです。③は条文の号数から「第三号事業」と呼ばれ、登録も届出も要りません。

実務上の分かれ目は、「他人の通信を媒介する」かどうかです。追補版は、他人の依頼を受けて、情報の内容を変更することなく伝送・交換し、隔地者間の通信を取り次いで完成させることを「媒介」とし、オンラインサービスについては、情報の加工・編集を行わず、かつ通信の宛先として受信者を指定する場合に該当すると整理しています。

届出が必要とされている例

追補版で「登録又は届出が必要」とされている主な例は次のとおりです。

  • 利用者間のメッセージ(メール、チャット、オンライン会議など)を媒介する機能を提供するサービス
  • 他の電気通信事業者の回線・サービスの再販(MVNOなど)
  • 有料の公衆無線LAN(無料でも広告収入などで実質的に利益を得ようとする場合を含む)
  • 転送電話サービス、電話等の受付自動代行サービス
  • コンテンツの媒介(CDNを含む)

注意したいのは、SaaS、ECモール、フリマアプリ、SNSのように本体は第三号事業に当たるサービスでも、利用者間のメッセージを媒介する機能(ダイレクトメッセージなど)を備えている場合は届出が必要とされている点です。機能追加のタイミングで届出が必要になることがあります。

届出が不要とされている例

反対に、追補版で届出不要とされている例には次のものがあります(いずれも回線設備を設置していない場合)。

  • ソフトウェアのオンライン提供(SaaS、ASP)
  • 各種情報のオンライン提供(ニュース、天気予報など)
  • オンラインストレージ
  • ECモール・ネットオークション・フリマアプリの運営、電子掲示板、SNS(メッセージ媒介機能がないもの)

また、小売業者が自社商品を販売するECサイトやネットバンキングのように、自社の本来業務を遂行する手段として通信を用いるにすぎないものは、そもそも電気通信事業に当たらないとされています。

大規模な検索サービス・SNSの扱い(令和5年6月16日施行の改正)

令和4年の法改正(令和5年6月16日施行)により、第三号事業の例外として、「検索情報電気通信役務」と「媒介相当電気通信役務」が設けられました(法164条1項3号ロ・ハ、同条2項4号・5号)。前年度の月間利用者数の平均が1,000万以上である分野横断的な検索サービスや、主として不特定の利用者間の交流を目的とするSNS等がこれに当たります(施行規則59条の3第4項・5項)。

ただし、届出が必要になるのは総務大臣から指定(告示)を受けた者に限られ、指定を受けた日から1か月以内に届け出る仕組みです(法164条1項3号、法16条2項)。規模の要件からして、対象となる事業者はごく一部です。

電気通信事業の届出の方法:様式・添付書類・提出先

届出のタイミングは「事業開始前」

法16条1項は「電気通信事業を営もうとする者」に届出を求めており、総務省の案内でも提出時期は事業開始前とされています。届出書には事業開始予定年月日を記載します。届出は、許可や登録のように行政の審査・処分を待つ手続ではありませんが、書類に不備があると補正が必要になるため、サービス開始日から逆算して余裕をもって準備するのが安全です。

届出書と添付書類

届出は、電気通信事業届出書(施行規則様式第8)に、次の書類を添えて行います(法16条1項、施行規則9条1項・2項)。

書類内容
届出書(様式第8)氏名・名称、住所、法人の代表者氏名、電話番号・メールアドレス、業務区域、電気通信設備の概要(事業用電気通信設備を設置する場合)、事業開始予定年月日など
ネットワーク構成図(様式第3)提供するサービスの設備・接続の構成を図示したもの
提供する電気通信役務に関する書類(様式第4)提供する役務の種類を示すもの
法人の場合定款、登記事項証明書(総務省の案内では、定款は写しでよく、登記事項証明書は省略可とされています)
個人の場合住民票の写し

総務省のダウンロードページには、回線非設置事業者・回線設置事業者それぞれの届出書の記載例や、MVNO、インターネット関連サービスなど役務別の様式第3・第4の記載例が掲載されています。ネットワーク構成図は、どこからどこまでが自社の設備・役務なのかを示す資料であり、サービスの仕組みを整理する作業そのものが、届出の要否や役務の種類の確認にもつながります。

なお、2026年5月27日以降、自ら設置する回線設備等を用いて基礎的電気通信役務を提供する事業者については、その業務区域等の記載も求められています(法16条1項3号・5号)。様式や記載事項は改正されることがあるため、提出前に総務省の最新の様式を確認してください。

提出先と提出方法

届出は、届出者の住所を管轄する総合通信局(沖縄県は沖縄総合通信事務所)を経由して行います(施行規則69条2項)。法人は本店所在地、個人は住所で管轄が決まり、たとえば東京都に本店がある法人は関東総合通信局が提出先です。ドメイン名電気通信役務に係る届出は、総務省本省が窓口になります。

提出方法について、総務省の案内は次のように説明しています。

  • 書面を管轄の総合通信局等へ提出する。申請・届出書類は信書に当たるため、宅配便やメール便では送れない
  • 郵送の場合は、返信用封筒(切手を貼り、宛先を記載したもの)を同封する
  • 一部の手続はe-Gov電子申請に対応しており、電気通信事業の届出も対象手続として案内されている
  • 電磁的方法による提出も可能とされており、詳細は提出先の総合通信局等に相談する

届出後の通知と費用

届出があると、総務大臣から届出者に届出番号が通知されます(施行規則9条15項)。総務省の案内でも、手続後に通知書が送付されるとされています。

費用については、追補版に「新規の登録の場合は、登録免許税の納付が必要」との記載がある一方、届出について手数料や登録免許税の納付を求める記載は、総務省のマニュアルや届出案内には見当たりません。

届出後に必要となる手続と電気通信事業者としての規律

変更・承継・休廃止の届出

届出は一度出せば終わりではなく、届出内容や事業に変動があるたびに手続が必要です。主なものは次のとおりです。

場面手続・時期根拠・様式
氏名・名称、住所、代表者、電話番号・メールアドレスの変更変更後、遅滞なく届出法16条3項、様式第6
業務区域・電気通信設備の概要の変更変更前に届出(軽微な変更は事後)法16条4項、様式第9(軽微な変更は様式第7)
提供する電気通信役務の変更変更後、遅滞なく報告施行規則10条、様式第10
事業の全部譲渡・合併・分割・相続による承継承継後、遅滞なく届出法17条2項、様式第11
事業の全部又は一部の休止・廃止休止・廃止後、遅滞なく届出法18条1項、様式第12・第12の3
合併以外の事由による法人の解散清算人等が遅滞なく届出法18条2項、様式第12の5

本店移転や代表者変更の登記をしたときに、総合通信局への変更届が漏れるケースは少なくありません。登記変更時のチェックリストに組み込んでおくと安心です。総務省は、届出電気通信事業者を対象に届出内容の現状確認(実態調査)も実施しています。

通信の秘密の保護など全事業者に共通する規律

電気通信事業者には、検閲の禁止(法3条)、通信の秘密の保護(法4条)、利用の公平(法6条)といった基本的な規律が適用されます。通信の秘密を侵した場合は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、電気通信事業に従事する者が侵した場合は3年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金の対象です(法179条)。メッセージの内容だけでなく、通信の相手方や日時といった情報の取扱いも問題になりうるため、ログの取得・利用の設計には注意が必要です。

また、業務の方法に通信の秘密の確保上の支障がある場合などには、総務大臣が業務改善命令を出すことができ(法29条1項)、事業に関する報告徴収・立入検査の規定もあります(法166条)。

利用者保護・事故報告・定期的な報告

提供するサービスの内容に応じて、次のような規律も関係します。

  • 利用者保護:総務大臣が指定する電気通信役務については、契約前の提供条件の説明(法26条)、契約成立時の書面交付(法26条の2)、苦情等の処理(法27条)、不実告知等の禁止(法27条の2)などが定められています。対象となる役務は告示で指定されるため、自社サービスが該当するかを確認します。
  • 事故報告:通信の秘密の漏えいや総務省令で定める重大な事故が生じたときは、理由・原因とともに遅滞なく総務大臣に報告しなければなりません(法28条1項)。総務省のマニュアルでは、速やかな第一報と30日以内の詳報の提出が案内されています。
  • 定期的な報告:契約数など定期的・定型的な報告は、電気通信事業報告規則に基づいて求められます。対象事業者や期限は役務の種類によって異なるため、同規則と総務省の案内で確認してください。
  • 特定利用者情報:利用者数が多い役務を提供し総務大臣の指定を受けた事業者には、情報取扱規程の届出などの規律が加わります(法27条の5以下)。

届出をしなかった場合の罰則と、混同しやすい制度

無届出・虚偽届出の罰則

法16条1項の届出をせず、又は虚偽の届出をして電気通信事業を営んだ場合は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になります(法185条1号)。法人の代表者や従業者が業務に関して違反したときは、行為者のほか法人にも罰金刑が科されます(法190条2号)。なお、登録が必要な事業を登録を受けずに営んだ場合は、3年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金又はその併科と、より重く定められています(法177条)。

届出後の手続を怠った場合にも制裁があります。承継の届出(法17条2項)や休廃止の届出(法18条1項)をせず、又は虚偽の届出をした場合は30万円以下の罰金(法188条1号)、氏名・住所等の変更届(法16条3項)をせず、又は虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料(法193条1号)です。このほか、総務大臣は、法令等に違反した者の氏名等を公表できるとされています(法167条の2)。

外部送信規律(法27条の12)は届出の要否とは別の問題

Cookie等を用いて利用者の端末から外部に情報を送信させる場合の通知・公表等を定める、いわゆる外部送信規律(法27条の12)は、電気通信事業者だけでなく、届出が不要な第三号事業を営む者にも適用されます(法164条3項)。対象は、ブラウザやアプリを通じて提供される一定の役務(メッセージ媒介、SNS・掲示板・動画共有、検索、ニュース等の情報提供など)です(施行規則22条の2の27)。

つまり、「届出が不要=電気通信事業法は無関係」ではありません。第三号事業であっても、取扱中の通信についての検閲の禁止・通信の秘密の保護(法164条3項)と、外部送信規律への対応は別途検討が必要です。

外国法人等の場合

外国の法人等も、日本国内で電気通信役務を提供する場合に加え、外国から日本国内にある者に対して提供する場合には、電気通信事業法の適用を受けます。総務省のマニュアルは、日本語でサービスを提供している、決済通貨に日本円がある、国内向けに広告・販売促進を行っているといった事情があれば、国内向けの提供意図が明らかと判断されうるとしています。

外国法人等が届出をする場合は、国内における代表者又は代理人を定めて届出書に記載し(法16条1項2号)、処分の通知等を受領する権限を与えたことを証する書類(様式第2の2)などを添付します(施行規則9条1項7号・8号)。提出先は、国内代表者等の住所を管轄する総合通信局等です。

届出の前に確認しておきたい実務上のチェックポイント

サービスの機能を「通信の流れ」で棚卸しする

届出の要否は、サービス名や業種ではなく、個々の機能における情報の流れで決まります。次の点を機能ごとに確認すると整理しやすくなります。

  • 利用者Aから利用者Bへ、宛先を指定して情報を届ける機能があるか(DM、チャット、メール転送、通話など)
  • その際、事業者は情報の本質的な内容を加工・編集していないか
  • 回線やサービスを他社から仕入れて再販していないか
  • 有料か、無料でも広告等で実質的に利益を得る設計か
  • 提供先は不特定の利用者か、専ら一の者か

たとえば、マッチングサービスで会員同士がアプリ内でメッセージを送り合える場合や、予約管理SaaSに店舗と顧客とのチャット機能を追加する場合は、メッセージ媒介機能として届出の要否を検討すべき典型例です。

判断に迷うときの確認先

追補版・ガイドブックの事例に当てはまらないサービスも少なくありません。その場合は、管轄の総合通信局等の電気通信事業担当課に、サービスの仕組みを示す資料を用意して相談する方法があります。総務省は追補版に掲載する事例の募集も行っており、解釈は事例の追加によって順次明確化されています。開発段階の仕様が固まる前に確認しておくと、リリース直前の手戻りを避けやすくなります。

届出後の社内体制

届出をしたあとは、①届出事項の変更管理(商号・本店・代表者・連絡先・役務内容)、②通信の秘密に関わる情報の取扱いルール、③事故発生時の報告フロー、④報告規則に基づく報告の要否の確認、を担当者とともに決めておくことが重要です。届出番号や届出書の控えは、取引先から提示を求められることもあるため、すぐ取り出せるように保管しておきましょう。

電気通信事業の届出は「自社サービスが他人の通信を媒介するか」の見極めから始まる

届出電気通信事業者になるための手続そのものは、様式第8の届出書にネットワーク構成図などを添えて、管轄の総合通信局に事業開始前に提出するというもので、書類の種類も多くはありません。難しいのは手続よりも、自社サービスが「他人の通信を媒介する」ものか、第三号事業として届出不要にとどまるのかという入口の判断です。特に、既存サービスへのメッセージ機能の追加は、届出が必要になるきっかけとして見落とされやすい場面です。

また、届出は出発点にすぎず、届出後は変更・休廃止の届出、通信の秘密の保護、事故報告といった規律が継続的に適用されます。届出が不要な場合でも、外部送信規律などは別に確認が必要です。

届出の要否やサービス設計との関係で判断に迷う場合は、総務省のマニュアル・事例を確認したうえで、総合通信局や弁護士に相談してみることをお勧めします。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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