NFTのランダム型販売(有償ガチャ等)と賭博罪の関係とは?

インターネット・IT関連法務

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)市場では、購入時にどのNFTが当たるかが分からない「ランダム型販売」のモデルが広く採用されています。ゲームのガチャを下敷きにしたNFTガチャ、複数枚を1パックにまとめて販売するミステリーボックス、トレーディングカードのオリジナルパック(オリパ)をNFT化したものなど、その形は多様化しています。

一方で、こうしたランダム型販売については、刑法185条の賭博罪との関係が継続的に議論されてきました。ランダム性に金銭を投じる仕組みは、見方を変えれば「偶然の勝敗によって財産を得る行為」になり得るためです。NFT特有の事情としては、二次流通市場が活発で、当たり外れに大きな価値差が生まれやすいことが挙げられます。

本記事では、NFTのランダム型販売を企画する事業者向けに、賭博罪の構成要件と「射倖性」(しゃこうせい:偶然の事情に左右される利得の可能性)の意味を整理し、どのような設計をすればリスクを抑えられるかを解説します。

NFTのランダム型販売とは — 急増する販売モデルの整理

NFTガチャ・ミステリーパック・オリパ型販売の典型例

NFTのランダム型販売は、購入者がトークンに紐づくコンテンツを購入の段階では特定できず、購入後・開封後に何が当たったかが判明する販売モデルです。代表的な類型は次のとおりです。

第一の類型は、いわゆる「NFTガチャ」です。ソーシャルゲームのガチャと類似した発想で、1回または複数回の有償ガチャを引くと、ランダムに1枚のNFTが交付されます。NFTにはレアリティ(希少度)が設定され、確率に応じてレア度の高いNFTが当たることがあります。

第二の類型は、「ミステリーボックス」と呼ばれるパック販売型です。複数枚のNFTを1パックに詰めた状態で販売し、開封すると中身が判明します。トレーディングカードのブースターパックに近い設計です。

第三の類型は、トレカ業界で先行した「オリパ(オリジナルパック)」のNFT版です。販売者が自由にラインナップと当選確率を設計し、購入者は内容を知らずに購入します。NFT版オリパは、海外プラットフォーム上で展開される例も少なくありません。

なぜ「ランダム型」が市場で多用されるのか

ランダム型販売が選好される背景には、いくつかのビジネス上の理由があります。発行体(イシュアー)側にとっては、希少度の高いNFTを意図的に少数しか発行しないことで、コレクター需要を喚起しやすいという利点があります。購入者側にとっても、開封時の偶然性が娯楽要素として作用し、購入そのものをエンタメ化できます。さらに、レアなNFTが二次流通市場で高値で取引されることへの期待が、購入インセンティブを押し上げます。

しかし、まさにこの「ランダム性に対価を払う構造」と「当たり外れによる価値差」「二次流通による換金可能性」が組み合わさったとき、賭博罪との接点が現実味を帯びてきます。NFT事業者が法務リスクを抑えながら事業を進めるためには、まず賭博罪の要件を正確に理解しておく必要があります。

賭博罪の構成要件と「射倖性」の意味

賭博罪(刑法185条)の3要件

刑法185条は、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する」と定めています。一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは処罰されない、という但書もありますが、原則として賭博行為は犯罪とされています。

判例・通説は、賭博を「2人以上の者が、偶然の勝敗により、財物または財産上の利益の得喪を争うこと」と捉え、その成立要件を次のように整理しています。第一に、当事者の一方が勝てば財産を得て他方がこれを失うという、2人以上の者が得喪を争う関係にあること。第二に、賭けの対象が財物または財産上の利益(経済的価値のあるもの)であること。第三に、勝敗が「偶然の事情」によって決まることです。これら3要件をすべて満たす行為が「賭博」に該当し、これを反復継続的に行えば常習賭博罪(刑法1861項)、賭博場を開設すれば賭博場開張等図利罪(同条2項)となり、法定刑も重くなります

「偶然の勝敗」と「財産上の利害」

賭博罪の中核は、「偶然性」と「財産上の利害」の2点にあります。偶然性とは、当事者の主観的能力を超えた事情、すなわち努力や技能によって完全に制御できない要素を含む、という意味です。たとえばサイコロの目、抽選結果、確率的なガチャ当選などは典型的な偶然性です。

「財産上の利害」については、参加者全員に「失う可能性」と「得る可能性」の双方があることを要するというのが通説的理解です。すなわち、参加者が支払う金額に対して、何も得られない(または支払額未満しか得られない)可能性と、支払額を上回る価値のものを得る可能性の双方があるとき、「財産の得喪」を争う構造が成立します。

二次流通市場における換金性の問題

ここでNFT特有の論点として重要になるのが、二次流通市場の存在です。NFTはマーケットプレイスを通じて第三者に転売できるため、当たったNFTに二次流通価格が形成されると、購入者は実質的に「現金化」が可能になります。レア度の高いNFTが二次流通で購入価格の数倍〜数十倍で取引される一方、レア度の低いNFTがほぼ無価値で買い手が付かない、という状況が現実に発生しています。

このような状況下では、たとえ事業者が「NFTという物を販売しているだけで、賭けではない」と説明しても、購入者の実態としては「金銭を投じて偶然に支配された価値変動を引き受けている」状態に近づきます。射倖性、すなわち偶然の事情によって財産を得るチャンスを買っている、という性質が強まるほど、賭博罪に該当するリスクが高まると考えられています。

NFTランダム販売が賭博罪に該当しうる類型

ハズレが「無価値」または「マイナス」であるケース

NFTランダム販売の中でも特に賭博罪該当のリスクが高いのは、購入者が支払った金額に対して、何も得られない・あるいは支払額に著しく満たない価値しか得られない可能性が現実的に存在する設計です。

たとえば、「1回1万円のNFTガチャを引くと、当たれば二次流通で50万円相当の価値があるNFTが手に入るが、外れれば二次流通価格がほぼゼロのNFTしか得られない」という設計を考えます。この場合、購入者は「1万円を投じて、50万円相当のNFTを得る可能性」と「1万円を失ってほぼ無価値のNFTを引く可能性」の双方を引き受けており、財産の得喪を偶然の事情に委ねている構造が明確です。

二次市場での換金性が高く、購入者間で価値差が大きいケース

ハズレに何らかのNFTが交付されたとしても、二次流通市場での実勢価格が支払額を大きく下回るのであれば、実質的に「外れて損失を出した」状態と評価される可能性があります。重要なのは「事業者が公称している価値」ではなく、「市場で現実に成立する価値」です。マーケットプレイスにおける取引履歴・板状況・流動性によって、二次流通価格は事業者がコントロールできない形で形成されます。

そのため、二次流通価格が支払額を恒常的に下回るレア度のNFTが多数存在し、かつ希少度の高いNFTが支払額を大幅に上回って取引されるような設計は、「偶然による財産の得喪」という賭博罪の中核要件に近接します。

運営者・販売者の関与の度合い

賭博罪は、賭博行為そのものだけでなく、賭博場を開設し利益を図る行為(賭博場開張等図利罪)も処罰します。NFTランダム販売のスキームを企画・運営し、確率設計を行い、販売手数料や売上を得ている事業者は、仮にスキームが賭博と評価された場合、より重い同罪に問われる可能性があります。

「自社はプラットフォームを提供しているだけで、賭けの当事者ではない」という整理は、運営者が販売収益を直接得て、ガチャの仕組みを設計し、確率を管理している実態がある以上、通用しにくいと考えられます。

賭博罪を回避するための設計ポイント

ハズレを「等価のNFT」とする(一物一価の維持)

最も基本的かつ実効的な対策は、購入者が支払った金額に対して、当たり外れによらず実質的に同等の価値が常に得られる設計にすることです。

たとえば、ガチャの結果として交付されるNFTのレアリティに関係なく、二次流通価格がほぼ揃うように設計する、あるいは購入時に「ランダムに1枚のNFTを得る権利」ではなく「決まった集合の中のいずれか1枚を得る権利」として、集合内のNFTの市場価値差をあらかじめ小さく設計しておく、といったアプローチが考えられます。当たり外れによる経済的価値差が小さければ、「偶然による財産の得喪」という性質が薄れ、賭博罪の中核要件への該当性が下がります。

二次流通による換金性を技術的・契約的に制限する

二次流通市場における価格差が賭博該当性を高めるのであれば、二次流通そのものを制限することも一つの設計アプローチです。たとえば、転売不可(Soulbound)のNFTとして発行する、利用規約で二次流通を禁止する、特定マーケットプレイスのみで取引可能にし価格上限を設ける、といった方法があります。

ただし、Web3の文化として「NFTは自由に流通できることに価値がある」という前提が強いため、純粋なコレクション目的のサービスでは、二次流通制限はビジネスモデル自体と矛盾しかねません。実際には、二次流通は許容しつつ、当たり外れによる価値差を抑える設計(前項)と組み合わせるのが現実的です。

景品表示法・特定商取引法との重複確認

NFTランダム販売を設計するときは、賭博罪だけを見ていれば十分ではありません。当選確率の表示や景品提供の枠組みは景品表示法、通信販売としての表示義務や返品・キャンセル条件は特定商取引法の問題です。

特に、ソーシャルゲームのガチャをめぐっては、消費者庁が景品表示法の観点から「コンプガチャ」を規制した経緯があります。NFTガチャがコンプガチャと類似する構造を取り入れている場合、景品表示法上の問題が独立に発生し得ます。賭博罪との関係を整理する段階で、これら関連規制との整合性も併せて確認しておくことが重要です。

関連する法令との関係 — 風営法・景品表示法との交差

風俗営業等の規制と射倖性

賭博罪との接点を考えるとき、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)も視野に入れておく価値があります。風営法は、射倖性のある遊技を提供する営業を規制対象としており、パチンコ・スロット店などが代表例です。

NFTランダム販売は、現状の風営法の規制対象営業に直接該当するものではありませんが、サービスの態様が「店舗で射倖性のある遊技を提供する」形態に近づくと、解釈上の議論の余地が生じます。オンラインで完結するNFT販売であれば風営法の適用関係は限定的ですが、オフラインイベント・店舗での販売を組み合わせる場合は、当該態様が風営法の規制対象に該当しないかを別途検討する必要があります。

オリパ販売との比較(NFT版オリパとして整理)

トレーディングカードのオリパ(オリジナルパック)販売は、近年、賭博罪・景品表示法の観点から問題視されてきました。販売者が複数枚のカードを詰めたパックを販売し、当たれば高額カードを得られる仕組みは、ランダム性と価値差の両方を備えています。NFT版オリパは、この仕組みをトークン上に乗せ替えたものとして整理できます。

紙のカードと比べて、NFT版オリパは(1)価格情報が公開市場でリアルタイムに可視化されやすく、(2)二次流通が技術的に容易で、(3)当たり外れの価値差がデータとして残るという特徴があります。これらは、賭博罪該当性の判断要素である「換金性」「価値差の客観的把握」を強める方向に作用します。NFT版オリパを設計する事業者は、紙オリパ以上に慎重な制度設計が求められると考えられます。

海外プラットフォームでの販売・購入時の留意点

海外運営者によるNFTガチャの日本人向け販売

NFT市場は国境をまたいでおり、海外運営者が日本人向けにNFTガチャを販売している例も多く見られます。海外サーバーに置かれたサービスであっても、日本人向けに日本語で案内し、日本円建てまたは円換算が容易な暗号資産建てで決済を受けている場合日本の刑法が適用される可能性は否定できません。賭博罪は、日本国内で行為が一部でも行われていれば成立し得ると解されています。

海外発のサービスだから日本の規制は及ばない、という整理は実務上危険です。日本市場を積極的にターゲットにしている以上、日本法上の賭博罪リスクは事業判断に組み込むべきです。

国内ユーザーが海外サイトで購入する場合

逆に、日本国内のユーザーが海外運営のNFTガチャに参加する場合、ユーザー自身も賭博罪の被疑者となる可能性があります。賭博罪は単純賭博であっても処罰対象であり、海外サイトで行ったからといって免罪されるわけではありません。

事業者がプラットフォームとして国内ユーザーを誘引する場合、ユーザー側のリスクについても説明を行わないことが、後に景品表示法上の不実告知・誤認惹起の問題として浮上することがあります。特にNFTを「投資商品」「資産形成」と訴求する場合は、賭博性・投機性についての説明責任が一層問われます。

NFT事業者が賭博規制リスクを抑えるための実務チェックポイント

NFTのランダム型販売を企画する事業者は、サービス設計の段階で次の点を検証しておくことが望まれます。第一に、購入者が支払った金額に対して、当たり外れによらず実質的に同等の価値が得られる設計になっているか。第二に、二次流通市場で形成される実勢価格を踏まえて、「外れたら損失」と評価される構造になっていないか。第三に、運営者が確率設計や販売の中心的役割を担っていることが、賭博場開張等図利罪の構成要件に近づいていないか。第四に、景品表示法・特定商取引法・風営法といった隣接領域の規制と整合しているか。

NFT・Web3領域は、技術と法規制の間にギャップが生じやすく、グレーゾーンが残っている部分も少なくありません。サービス設計の初期段階で法的整理を行っておくことで、後からの設計変更や手戻りを避けられます。実際の検討にあたっては、設計案を具体化する前の段階から、専門家とともに賭博罪・景品表示法・特定商取引法といった複数法令との整合を確認しておくことをお勧めします。

なお、本記事は2026年6月時点の法令・解釈を前提とした一般的な情報提供であり、個別事案についての法的アドバイスではありません。具体的な事業設計のリーガルチェックについては、弁護士にご相談ください。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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