所属クリエイターのコンプライアンス違反で会社が損失を被る前に!適切な対応と予防策

インフルエンサー法務

所属クリエイターのコンプライアンス違反は、企業にとって大きな損失をもたらす可能性があります。

本記事では、陥りやすい事例を紹介し、違反の対応策・予防策を解説します。これを読むことで、企業は最小限のリスクで、安全で健全な事業活動を継続する方法を理解できます。クリエイターの育成・管理に携わる方や、企業経営者、法務担当者は必見の内容です。

コンプライアンス違反の種類と所属クリエイターが陥りやすい事例

ここでは、クリエイターが陥りやすいコンプライアンス違反の種類と事例を紹介します。

著作権侵害

特にデジタルコンテンツの取り扱いには注意が必要です。著作権フリーのものを使う場合でも、利用規約の確認が重要です。

画像・動画の無断使用

画像や動画を、権利者の許可なく使用することは著作権侵害にあたります。たとえ加工を加えたとしても、著作権は元の権利者に帰属します例えば、他社の広告素材などを無断で使用できません。

音楽の無断使用

音楽の無断使用も著作権侵害です。YouTubeなどの動画コンテンツで、認可外の音楽を無断で使用すると、動画の削除、アカウント停止の可能性があります。

他者のコンテンツの盗用

他者のブログ記事や書籍の一部などの無断使用も著作権侵害です。参考にする場合は、内容を要約し、自分の言葉で表現する必要があります。また、適切な方法で引用元を明示する必要があります。

文化庁ー著作権概論などを参考に、正しい引用方法を理解しておきましょう。

名誉毀損・侮辱罪

SNSの発達により、クリエイターの発言が炎上し、企業の評判を落とす事例が増えています。

SNS上での不用意な発言

プライベートアカウントであっても、特定の個人や団体を誹謗中傷する発言、事実に基づかない噂を広める行為は、名誉毀損や侮辱罪に該当する可能性があります。

競合他社への誹謗中傷

競合他社の製品やサービスを、事実無根の内容で批判することも名誉毀損にあたります。

不正競争防止法違反

営業秘密の漏洩

新製品の情報や顧客リストなど、企業の競争力を左右する重要な情報は、営業秘密として厳重に管理する必要があります。これらの情報を競合他社に漏洩した場合、不正競争防止法違反に問われる可能性があります。

競合他社への引き抜き行為

組織的に競合他社の従業員を引き抜く行為も、不正競争防止法違反に該当する可能性があります。特に、競合他社の営業秘密を不正に取得する目的で引き抜きを行った場合は、厳しい罰則が科せられる可能性があります。

参考)経済産業省のウェブサイト

景品表示法違反

広告表現や商品・サービスの説明において、事実と異なる内容や誇大な表現を用いることは景品表示法違反にあたります。

過剰な広告表現

「No.1」など客観的な根拠のない優良性を示す表現は、景品表示法違反に該当する可能性があります。

根拠のない効果効能の表示

健康食品や化粧品などにおいて、科学的根拠のない効果効能を表示することも景品表示法違反です。

消費者庁のウェブサイトでは、景品表示法の具体的な事例を確認できます。

個人情報保護法違反

個人情報の取り扱いには、細心の注意が必要です。個人情報保護委員会のウェブサイトで、個人情報保護法に関する詳細な情報を確認できます。

個人情報の不正取得・利用

本人の同意なく個人情報を取得したり、利用目的の範囲を超えて個人情報を利用することは、個人情報保護法違反にあたります。

個人情報の漏洩

顧客情報や従業員の個人情報などを、外部に漏洩した場合、企業の信用は大きく失墜します。

違反の種類事例関連法令
著作権侵害他者のコンテンツの無断使用・盗用著作権法
名誉毀損・侮辱罪SNS上での不用意な発言、誹謗中傷刑法
不正競争防止法違反営業秘密の漏洩、競合他社への引き抜き行為不正競争防止法
景品表示法違反過剰な広告表現、根拠のない効果効能の表示景品表示法
個人情報保護法違反個人情報の不正取得・利用、個人情報の漏洩個人情報保護法

これらのコンプライアンス違反は、企業に深刻な損失を与える可能性があります。

所属クリエイターのコンプライアンス違反による会社の損失

所属クリエイターのコンプライアンス違反は、様々な損失をもたらします。

金銭的損失

コンプライアンス違反による金銭的損失は、多岐に渡ります。これらの損失は、会社の経営を圧迫し得るものです

損害賠償請求

クリエイターの違法行為により被害が生じた場合、会社は被害者から損害賠償を請求される可能性があります。特に、高額な損害賠償請求は、会社の財務状況を悪化させる大きな要因となります。例えば、他人の写真を無断使用した場合、使用料や損害賠償を請求される可能性があります。 

違約金の発生

契約上、コンプライアンス違反により違約金を支払う場合があります。契約内容によっては、多額の違約金が発生し、会社の収益に大きな影響を与える可能性があります。例えば、納品物に著作権侵害がある場合、契約が解除され、違約金を請求される可能性があります。

ブランドイメージの低下による売上減少

コンプライアンス違反は、会社のブランドイメージを著しく低下させ、売上減少に繋がります。イメージの回復は難しく、長期間に渡って売上減少に苦しむ可能性があります。

信用失墜

コンプライアンス違反は、会社の信用失墜に繋がり、事業継続に深刻な影響を与える可能性があります。一度失った信用の回復は非常に困難です。

社会的制裁

コンプライアンス違反がメディア等で報道されることで、会社の評判は大きく傷つき、事業活動に支障をきたす可能性があります。厳しい批判により、会社は事業活動を縮小せざるを得なくなる場合があります。

取引停止

コンプライアンス違反で取引先の信頼を失った場合、取引停止もあり得ます。主要な取引先との取引が停止した場合、会社の収益に大きな影響を与え、事業継続が困難になり得ます。

投資家からの信頼喪失

上場企業の場合、コンプライアンス違反は投資家からの信頼喪失に繋がり、株価下落のリスクがあります。株価下落は、会社の資金調達を困難にし、事業展開に支障をきたす可能性があります。

損失の種類内容影響
損害賠償請求被害者への賠償金の支払い財務状況の悪化
違約金の発生契約違反による違約金の支払い収益の減少
ブランドイメージ低下企業イメージの悪化売上減少、顧客離れ
社会的制裁メディア等による批判、不買運動事業活動への支障
取引停止取引先との取引停止収益減少、事業継続の危機
投資家からの信頼喪失株価下落、資金調達困難事業展開の停滞

コンプライアンス違反が発覚した場合の適切な対応

コンプライアンス違反への対応を誤ると、状況が悪化します。冷静な状況判断と、組織的対応が重要です。

事実確認と証拠保全

まず、関係者からの報告・通報内容や、客観的な証拠に基づいて事実確認を行います。証拠は法的措置や再発防止策の検討において重要であるため、改ざんや紛失を防ぐために適切に保全しましょう。例えば、スクリーンショットは原本の保管が重要です。また、証拠の収集・保全は、プライバシー・個人情報の配慮が必要です。

関係各所への連絡

事実確認後、即刻関係各所への連絡を行います。一般的に、経営層、取引先、被害者などが該当します。内容として、違反の事実・状況、今後の対策などを伝える必要があります。風評被害の防止には、迅速かつ正確な情報伝達が重要です。また、社内の情報共有も徹底し、二次被害発生を防ぐ必要があります。

クリエイターへの聞き取り調査

事実確認と並行で、違反行為をしたクリエイターの聞き取り調査を実施し、違反の動機、経緯、状況などを詳細に確認します。クリエイターの供述と証拠を照合し、事実関係を慎重に判断する必要があります。必要に応じて、弁護士などの同席を求めるなど環境の整備も重要です。

再発防止策の検討

コンプライアンス違反の発生後は、再発防止策の策定が重要です。再発防止策は、組織全体のコンプライアンス体制の強化も考慮して検討する必要があります。また、策の効果の検証と、継続的な改善も重要です。

法的措置の検討

違反の内容によっては、法的措置を検討する必要があります。法的措置の実施は、違反の重大性、影響範囲などを総合的に判断して決定します。法的措置の検討は、弁護士などの専門家に相談することが重要です。

対応内容注意点
事実確認と証拠保全メール、チャットログ、契約書などの証拠を収集・保全プライバシーや個人情報保護に配慮
関係各所への連絡法務部、広報部、経営層、関係部署、取引先、被害者への連絡迅速かつ正確な情報公開
クリエイターへの聞き取り調査違反の動機、経緯、状況などを詳細に確認クリエイターの人権に配慮
再発防止策の検討コンプライアンス研修の実施、社内規定の整備など組織全体のコンプライアンス体制の強化
法的措置の検討民事訴訟、刑事告訴、行政処分など弁護士などの専門家に相談

適切な対応を取り、損害を最小限に抑えましょう。

所属クリエイターのコンプライアンス意識を高めるための予防策

効果的な予防策を講じることで、企業はリスクを軽減し、クリエイターと共に持続的な成長を実現できるでしょう。

コンプライアンス研修の実施

定期的なコンプライアンス研修の実施は、クリエイターの意識向上に不可欠です。研修内容は、クリエイターが業務で関わる事項を網羅する必要があります。

効果的な研修内容例

  • 著作権法等の関連法規の基礎知識
  • SNS利用の注意点

クリエイターの職種や担当業務に合わせた研修内容のカスタマイズも重要です。例えば、Webデザイナーには著作権や肖像権に関する研修を重点的に行うなど、業務内容に即した研修の実施が望ましいです。

社内規定の整備と周知徹底

明確な社内規定を策定し、クリエイターに周知することも重要です。また、規定は定期的に見直し、最新の情報に更新する必要があります。社内ポータルに掲載するなど、情報へのアクセス性を高める工夫も重要です。

社内規定に含めるべき項目

項目内容
著作物の取り扱い著作権の帰属、利用許諾、二次利用に関するルール
SNS利用公式アカウントの運用ルール、個人アカウントでの発言に関するガイドライン
情報管理顧客情報、営業秘密などの機密情報の取り扱い
ハラスメント防止パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントなどの防止策

相談窓口の設置

コンプライアンスに関する相談窓口の設置は、問題の早期発見・解決につながります。相談窓口は、法務部や人事部など、専門知識を持つ担当者が対応することが望ましいです。また、匿名相談を可能にするなど、相談しやすい環境を整備することも重要です。適切なサポートは、クリエイターのコンプライアンス違反の防止に繋がります。

定期的なモニタリング

クリエイターの活動のモニタリングは、コンプライアンス違反の早期発見に繋がります。例えば、制作物のチェックは潜在的なリスクを把握できます。また、モニタリング結果に基づいた改善策の構築は、コンプライアンス違反の発生を抑制できます。

事例の共有

コンプライアンス違反の事例を共有することで、クリエイターの意識向上を図ることができます。具体的な事例を学ぶことで、何が問題で、どのような対応が必要なのかを理解しやすくなります。その際、個人情報や企業秘密の保護に十分配慮する必要があります。

これらの施策の実施は、クリエイターの創造性を尊重しつつ、企業価値の向上に繋げることが重要です。

コンプライアンス違反を未然に防ぐための契約書のポイント

契約書は、コンプライアンス違反の予防のために重要なツールです。ここでは、特に重要な点を解説します。

著作権の帰属に関する明確な規定

著作権の帰属は、トラブルの回避に最も重要な項目です。契約書には、著作物の種類著作権の帰属先利用許諾の範囲などを明確に記載しましょう。口頭の合意だけでは、認識の齟齬が生じるリスクがあります。例えば、会社の商品化権・販売権などを明記します。また、二次利用や著作権表記についても規定しておくべきです。

著作物利用許諾契約における注意点

クリエイターの著作権の利用を制限する場合、利用範囲の明確化が必要です。例えば、クリエイターの制作物を会社が商品化・販売する権利のみを持つのか、などを具体的に記述しましょう。契約期間や更新条件についても明記しておくと、トラブルを防止できます。

秘密保持義務に関する規定

企業秘密など、業務上知り得た情報の秘密保持義務を定めることは、情報漏洩リスクの低減に不可欠です。秘密情報の範囲、守秘義務の期間違反時の罰則などを具体的に記載しましょう。特に、SNS等による情報漏洩の対策に、情報発信に関するガイドラインを設けることも有効です。

参考例)特許庁 秘密保持契約書

競業避止義務に関する規定

競業避止義務とは、退職後一定期間、同業他社で就業することを制限するものです。会社のノウハウや顧客情報などの保護に重要な規定です。ただし、職業選択の自由を不当に制限しないために、期間地域職種などを合理的な範囲で定める必要があります。また、退職後の生活保障の観点から、適切な対価を支払うことが必要です。

競業避止義務の有効性

競業避止義務の有効性は、制限の必要性合理的な範囲対価の有無などを総合的に判断して決定されます。そのため、契約書の作成時は、これらの要素を十分に考慮することが重要です。

違反時の罰則に関する規定

コンプライアンス違反発生時の罰則は、抑止力となり、違反の予防が期待できます。罰則の内容は、違反の程度に応じて定める必要があります。また、罰則を科す際の手続きについても明記することが重要です。

損害賠償額の算定

損害賠償額は、実際に発生した損害に基づき算定されます。そのため、契約書には、損害の範囲や算定方法を明記することが望ましいです。また、違約金を定める場合は、公序良俗に反しない合理的な範囲で定める必要があります。

契約書は、トラブル発生時の解決策となるだけでなく、信頼関係を構築するための基盤となります。最新の情報を確認し、必要に応じて契約内容を見直すことで、より安全で円滑な業務運営を実現できるでしょう。

まとめ

所属クリエイターのコンプライアンス違反は、企業にとって大きな損失をもたらす可能性があります。その違反の予防策は、クリエイターの意識向上に大きく貢献します。また、明確な規定を定めた契約書の作成も重要です。本記事上の対策を講じることで、安全で健全な創作活動を支援することができます。企業は、クリエイターの才能を最大限に活かすために、コンプライアンス体制の構築に積極的に取り組むべきです。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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