アプリゲームのガチャは賭博にならないの?違法となるのはどんなとき?

インターネット・IT関連法務

スマートフォン向けゲームでは、お金を払ってランダムにキャラクターやアイテムを手に入れる「ガチャ」が広く使われています。お金を払い、何が出るかは運次第という仕組みは、賭博によく似ています。「ガチャは違法な賭博ではないのか」という疑問を持つ方は少なくありません。

結論からいえば、一般的なアプリゲームの有料ガチャは、刑法の賭博罪には当たらないと理解されています。ただし、これはガチャという名前が付いていれば常に適法という意味ではありません。アイテムを換金できる仕組みを組み込んだり、いわゆるコンプガチャを実施したりすれば、刑法や景品表示法に違反することがあります。

本記事では、ガチャが賭博に当たらないと説明される理由と、違法となり得る設計、景品表示法や業界の自主ルールとの関係を整理します。

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アプリゲームのガチャはなぜ「賭博」にならないとされているのか

賭博罪(刑法185条)の3要件のおさらい

刑法185条は、賭博をした者を50万円以下の罰金又は科料に処すると定めています。賭博とは、一般に、偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為をいうと解されています。分解すると、(1)偶然の勝敗、(2)財物・財産上の利益、(3)得喪を争う関係の3つです。1つでも欠ければ、賭博には当たりません。

ガチャは、何が出るかがランダムに決まるため、(1)の偶然性は否定できません。そのため、(2)と(3)をどう評価するかが問題になります。

なお、ガチャが賭博罪に当たらないと明言した法令や最高裁の判例があるわけではありません。以下は、行政機関の公表資料や実務上の一般的な説明を整理したものです。

「得喪を争う」関係があるか

得喪を争うとは、勝った者が財産を得て、負けた者が財産を失うという関係が当事者の間にあることです。当事者の一方が財産を失う危険を負っていなければ、賭博には当たらないと解されています。

ガチャでは、利用者は対価を支払えば、必ず何らかのアイテムの提供を受けます。事業者は、販売価格に見合うものとしてアイテムを提供しており、どのアイテムが出ても代金を受け取ることに変わりはありません。レア度の高いアイテムが出たからといって、事業者が財産を失うわけでもありません。このため、ガチャは「対価を支払ってデジタルコンテンツの提供を受ける取引」であって、財産の取り合いではないと説明されています。

ガチャで得られる「アイテム」の換金性の問題

もう一つの説明は、ゲーム内アイテムが(2)の財産上の利益に当たるかという点です。

内閣府消費者委員会は、平成28年9月20日の「スマホゲームに関する消費者問題についての意見」で、電子くじ(ガチャ)で得られたアイテムを換金する仕組みを事業者が提供している場合や、利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合には、財産上の利益に当たる可能性があり、賭博罪に該当する可能性が高くなるという考え方を示しています。

逆にいえば、ゲームの中でしか使えず、換金の手段がないアイテムは、賭博罪でいう財産上の利益とは評価されにくいということです。多くのゲームが利用規約でアイテムやアカウントの譲渡・換金を禁止しているのは、この点と関係しています。

「一時の娯楽に供する物」の例外

刑法185条ただし書は、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは処罰しないと定めています。ゲーム内アイテムは娯楽のためのものだから、この例外に当たるという説明がされることもあります。

もっとも、一時の娯楽に供する物とは、関係者がその場ですぐに娯楽のために消費するような物(飲食物など)を指すとされています。長く保有して使い続けるアイテムがこれに当たるかは明らかではありません。このただし書だけに頼ってガチャの適法性を説明するのは、心もとないと考えておくべきです。

賭博罪との関係—RMT・換金性が論点

公式に換金できない設計が前提

以上のとおり、ガチャが賭博に当たらないという説明は、獲得したアイテムを換金する仕組みがないことを前提にしています。事業者がアイテムやゲーム内通貨を現金や電子マネーで買い取ることはなく、利用者同士の売買も規約で禁止されている、という設計です。

この前提が崩れると、説明も成り立たなくなります。ガチャの結果次第で、支払った額より多くの金銭を得る人と、失う人が出てくるからです。

RMT(リアルマネートレード)との関係

RMTとは、ゲーム内のアイテムやアカウントを、ゲームの外で現金で売買することです。多くの事業者は規約でRMTを禁止していますが、外部のサイトで取引が行われている例は珍しくありません。

規約に反するRMTが利用者の間で行われているというだけで、事業者のガチャが賭博になるわけではありません。ただし、前記の消費者委員会の意見は、利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合にも賭博罪に該当する可能性が高くなるとしています。事業者としては、規約で禁止するだけでなく、不正な取引を検知してアカウントを停止するなど、換金目的の利用を実際に抑える運用を続けることが、賭博罪との距離を保つうえで意味を持ちます。

NFTやブロックチェーンゲームの場合の特殊性

NFTを使ったガチャやブロックチェーンゲームでは、手に入れたアイテムを市場で売買できることが前提になっています。換金できないことを理由にした説明は使えません。

この分野では、2022年10月12日に、日本暗号資産ビジネス協会や日本ブロックチェーン協会など5団体が「NFTのランダム型販売に関するガイドライン」を公表しています。同ガイドラインは、NFTが交付されない「ハズレ」を設けない限り、購入者は支払額に相当する価値のNFTを得ているとして、原則として得喪を争う関係は生じないと整理しています。一方で、販売会社が二次流通市場で自ら買取価格を設定して買い取ることは避ける必要があるとしています。

これは業界団体の整理であり、当局が同じ立場を採ることを保証するものではないと、ガイドライン自身が断っています。従来のアプリゲームのガチャと同じ感覚で設計できる領域ではないことに注意が必要です。

違法になりうるガチャの設計類型

コンプガチャ(複数アイテム揃え型)

コンプガチャとは、有料ガチャで出る特定の複数種類のアイテムをすべて揃えると、別のアイテムなどがもらえる仕組みです。消費者庁は平成24年5月18日に、これが景品表示法に基づく告示で禁止されている「カード合わせ」に当たるとの考え方を公表し、同年7月1日から改正後の運用基準が施行されました。

これは賭博罪ではなく、景品表示法の問題です。詳しくは次の章で説明します。

アイテムを直接換金可能とするもの

ガチャで得たアイテムやゲーム内通貨を、事業者自身が現金や現金同等物に交換する仕組みを設けると、賭博罪に当たる可能性が高くなります。ガチャの結果によって、利用者が支払額を上回る金銭を得たり、下回る金銭しか回収できなかったりするためです。

この場合、利用者に賭博罪(刑法185条)が成立し得るだけでなく、事業者には賭博場開張等図利罪(刑法186条2項、3月以上5年以下の拘禁刑)が問題になります。

事業者が二次流通に関与し、買取りを行うもの

事業者が公式のマーケットを設けること自体が直ちに違法となるわけではありません。前記のNFTに関するガイドラインも、販売会社が二次流通市場を運営し、手数料を得ること自体は問題ないとしています。

問題になるのは、事業者が自ら買取価格や転売価格を設定して、ガチャで出たアイテムを買い取ったり売ったりする場合です。この場合、事業者と利用者の間で、アイテムの価値と支払額との差を取り合う関係が生じ得るためです。

景品表示法による規制—コンプガチャ規制の歴史と現在

2012年の消費者庁見解とコンプガチャの規制

景品表示法は、事業者が商品やサービスの取引に付随して提供する「景品類」について、内閣総理大臣が制限や禁止をできると定めています(同法4条)。これに基づく告示(懸賞による景品類の提供に関する事項の制限)の第5項は、「カード合わせ」の方法による景品類の提供を、金額にかかわらず全面的に禁止しています。

カード合わせとは、2種類以上の文字や絵などを表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法で景品類を提供することです。もともとは、菓子のおまけカードを全種類集めると景品がもらえる、といった販売方法を想定した規制でした。

コンプガチャが「カード合わせ」に当たる理由

消費者庁の整理は次のとおりです。まず、有料ガチャで直接手に入るアイテムは、取引の対象そのものであり、景品類には当たりません。一方、特定のアイテムを揃えた人に追加で提供される別のアイテムは、有料ガチャという取引に付随して提供される経済上の利益であり、景品類に当たります。そして、異なる種類のアイテムの組合せを条件とする点が、カード合わせに当たるというものです。

したがって、禁止されているのはガチャそのものではありません。消費者庁も、景品表示法は射幸心をあおる行為そのものを規制するものではないと説明しています。同じアイテムを複数集める仕組みは、異なる種類の組合せではないため、原則としてカード合わせに当たりません。反対に、名称が「ビンゴ」などであっても、仕組みが同じであればカード合わせに当たります。

違反した場合は、消費者庁による措置命令(同法7条)の対象になり、措置命令に違反すると2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が科されます(同法46条)。

景品類の最高額・総額規制

ゲームの中で、有料の取引に付随して抽選でアイテムなどを配る企画を行う場合は、通常の懸賞規制にも注意が必要です。一般懸賞では、景品類の最高額は取引価額の20倍(上限10万円)、総額は懸賞に係る売上予定総額の2%までとされています。購入者全員に提供する総付景品では、取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2が上限です。

ガチャ表示に関する自主規制と業界ルール

確率表示の自主ルール

2026年10月時点で、ガチャの提供割合(確率)の表示を一律に義務づける法律は日本にはありません。確率表示は、業界団体の自主ルールによって広まったものです。

日本オンラインゲーム協会(JOGA)は、2012年8月に「ランダム型アイテム提供方式における表示および運営ガイドライン」を公表し、2016年4月に改訂版を施行しました。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)も、有料ガチャで取得できるすべてのアイテムとその提供割合を表示することを原則とするガイドラインを定めています。加盟していない事業者にとっても、事実上の標準として参照されています。

確率を誤って表示した場合のリスク

確率を表示する以上、その内容は正確でなければなりません。実際より高い確率を表示したり、出現しないアイテムを出現するかのように表示したりすれば、景品表示法が禁止する不当表示(同法5条の優良誤認表示・有利誤認表示)に当たり得ます。

実際に、表示していた出現確率と実際の確率が異なっていたとして、消費者庁がゲームの運営会社に措置命令や課徴金納付命令を出した例が報じられています。課徴金の額は、対象となる売上額の3%が原則です(同法8条)。さらに、令和6年10月1日施行の改正により、故意に優良誤認表示・有利誤認表示をした者に対する100万円以下の罰金が新設されています(同法48条)。

海外の規制状況

海外では、日本より踏み込んだ規制を置く国があります。ベルギーでは、2018年に賭博規制当局が一部のゲームのルートボックス(ガチャに相当する仕組み)を賭博に当たると判断しました。韓国では、確率型アイテムの確率情報の表示を義務づける改正法が2024年3月に施行されています。海外にゲームを配信する場合は、配信先ごとの確認が欠かせません。

設計者・運営者が確認すべきリスクポイント

賭博罪該当リスクの確認

賭博罪との関係では、(1)事業者がアイテムを買い取ったり換金したりする仕組みがないか、(2)利用者間の売買を規約で禁止し、実際に取り締まっているか、(3)対価を支払っても何も得られない「ハズレ」がないかを確認します。イベントの賞品として換金性の高いもの(電子マネーなど)を出す場合や、他社のポイントと交換できるようにする場合も、同じ観点での検討が必要です。

景品表示法該当リスクの確認

景品表示法との関係では、(1)異なる種類のアイテムを揃えることを条件に別の利益を与える仕組みがないか、(2)表示している確率やラインナップが実際の設定と一致しているか、(3)「確率アップ」「期間限定」などの表示が実態と合っているかを確認します。確率設定の変更やイベントの追加のたびに、表示との食い違いが生じやすいため、変更時の確認手順を決めておくことが有効です。

特定商取引法・資金決済法・未成年者への対応

有料ガチャはインターネットを通じた有償の役務提供であり、特定商取引法の通信販売に当たります。販売価格や支払時期などの表示(同法11条)に加え、申込みの最終確認画面での表示(同法12条の6)にも対応が必要です。

ガチャを回すための有償のゲーム内通貨は、資金決済法の前払式支払手段に当たることがあります。未使用残高が基準額を超えると、届出や発行保証金の供託といった義務が生じます。

未成年者が親の同意なく高額の課金をした場合、契約が取り消される可能性があります(民法5条)。年齢確認や、年齢に応じた課金上限の設定は、消費者トラブルを防ぐうえで基本的な対策です。

換金性の遮断と正確な表示がアプリゲームのガチャを適法に保つ

アプリゲームのガチャが賭博に当たらないと説明できるのは、利用者が対価に見合うアイテムを必ず受け取り、そのアイテムを換金する仕組みがないからです。換金の仕組みを持ち込まないこと、コンプガチャに当たる設計を避けること、確率を正確に表示することの3つが、刑法と景品表示法の両面から適法性を支えています。

裏を返せば、買取りやポイント交換の導入、NFT化、異なる種類のアイテムを揃えるイベントの追加といった変更は、いずれもこの前提に触れます。新しい企画を追加するときこそ、設計を見直す機会になります。

新規にゲーム事業を企画する場合や、既存サービスの仕組みに不安がある場合は、弁護士に相談してみることをお勧めします。

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本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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