eスポーツの盛り上がりとともに、企業のプロモーションとしてのゲーム大会や、ファンコミュニティによる自主大会など、ゲーム大会を開催したいというニーズは年々高まっています。ところが、ゲーム大会の開催には、著作権、賭博罪、景品表示法、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)といった複数の法分野の問題が横断的にかかわっており、設計を誤ると主催者が刑事責任を問われかねない領域でもあります。
日本のゲーム事業者でゲーム大会に関するガイドラインを公表している例はまだ少なく、大会の開催自体については個別の問い合わせを求める運用が多いのが現状です。その背景には、大会開催には刑法・風営法などの問題をクリアする必要があり、権利者側も安易にガイドラインで包括的に許諾しにくいという事情があります。
本記事では、ゲーム大会・eスポーツ大会の開催にかかわる主要な法的論点を整理し、主催者が押さえるべき設計のポイントを解説します。
ゲーム大会開催の法的論点——4つの柱
ゲーム大会の適法な開催のために検討すべき論点は、大きく4つあります。

- 著作権:大会でゲームを上映・配信することは著作物の利用に当たり、権利者の許諾が必要
- 賭博罪:参加費と賞金の設計次第では、賭博罪(刑法185条・186条)が成立するおそれ
- 景品表示法:賞金・賞品が「景品類」に該当すると、金額の上限規制がかかる
- 風営法:会場の設備・運営形態によっては風俗営業の許可が問題になる
以下、順に見ていきます。
著作権——大会でのゲーム利用には権利者の許諾が必要
大会でのプレイ画面の上映・配信は著作物の利用
ゲーム大会では、対戦の様子を会場のスクリーンに映し出したり、インターネットで配信したりすることが通常です。ゲームの映像は著作物であり、著作者は公に上映する権利(著作権法22条の2)や公衆送信権(同法23条)を専有していますから、これらの行為には原則として権利者の許諾が必要です。「自分で購入したゲームだから大会で自由に使える」というわけではありません。
ゲーム大会ガイドラインの登場
この点について近時注目されるのが、権利者が一定条件下でユーザーによるゲーム大会の開催を許容する「ゲーム大会ガイドライン」の公表です。ガイドラインが公表されているゲームについては、少なくともゲームの権利者との関係では、ガイドラインの条件を遵守したうえで大会を開催することが可能になります。
代表例が、任天堂が公表した「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」(2023年11月15日施行)です。同ガイドラインは、個人が主催する非営利・小規模のコミュニティ大会(オンラインは参加者300人以下、オフラインは200人以下)を対象に、次のような条件で大会開催を許諾しています。
- 参加費は1人あたり2,000円以内、観戦の入場料は1,500円以内(オフライン大会の場合)で、大会運営費用に充てる場合に限り徴収可能。参加費等の収入が運営経費を上回らないこと
- 賞品として現金・商品券・電子マネー等の金銭類は提供不可。賞品の総額にも上限(1大会あたり50万円相当以内等)が設定
- 大会名に任天堂のロゴやゲームタイトル等を含めないこと、任天堂がスポンサーではない旨の表示をすること

参加費を運営費用に限定し、金銭賞を禁止するこの設計は、後述する賭博罪・景品表示法のリスクを踏まえたものと理解できます。裏を返せば、権利者がガイドラインでこうした上限を設けているのは、条件を外れた大会運営が主催者自身の法的リスクに直結し得るからであり、主催者にとっては「守るべき安全ライン」を権利者が示してくれているものと捉えることができます。ゲーム大会ガイドラインは他社にも広がりつつあり、大会運営に特化したガイドラインを策定・公表する動きが続いています。
ガイドラインがない場合は個別に問い合わせる
ゲーム大会に関するガイドラインを公表している事業者はまだ限られており、多くのタイトルでは、大会の開催について個別の問い合わせが必要です。とくに、営利目的の大会(企業主催・スポンサー付き・入場料収入を伴うもの)は、ガイドラインの対象外とされていることがほとんどであり、権利者との個別契約が前提になります。企画の早い段階で権利者に確認することが、後戻りのない進め方です。
賭博罪——参加費と賞金の設計が最大のポイント
賭博罪の基本構造
刑法185条は、賭博をした者を50万円以下の罰金または科料に処すると定めています(一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは除外)。また、常習として賭博をした者は3年以下の拘禁刑(同法186条1項)、賭博場を開張して利益を図った者は3月以上5年以下の拘禁刑(同条2項)とされており、主催者側は「賭博場開張等図利罪」というより重い罪に問われるおそれがあります。
賭博とは、偶然の勝敗により財物・財産上の利益の得喪を争うことをいいます。ゲーム大会との関係で問題になる典型は、参加者から参加費を集め、それを原資として勝者に賞金を分配する設計です。この場合、参加者は「負ければ参加費を失い、勝てば他人の出した参加費を得る」関係に立つため、賭博に該当すると評価されるおそれが強くなります。ゲームの勝敗には技量が影響しますが、判例上、技量の要素があっても偶然性は否定されにくく、「実力のゲームだから賭博ではない」という理屈は通用しないと考えるべきです。
なお、刑法185条ただし書は「一時の娯楽に供する物」を賭けたにとどまる場合を処罰対象から除外していますが、これは飲食物のようなその場で消費される軽微なものを想定した例外であり、金銭を賭ける場合には金額の大小を問わず適用されないと解されています。「少額の参加費だから大丈夫」という考え方は危険です。
また、友人同士の私的な対戦であっても、金銭を賭ければ賭博罪の問題は生じ得ます。オンライン対戦で「負けた方が勝った方に送金する」といった約束をする行為も同様であり、大会という形式をとるかどうかは賭博罪の成否を左右しません。主催者としては、参加者同士が大会を舞台に私的な賭けを行うこと(いわゆるマネーマッチ)を規約で禁止しておくことも検討に値します。
安全な設計の基本形
実務上の基本形は、参加費と賞金の資金の流れを切断することです。

- 賞金・賞品は、参加費からではなく、主催者・スポンサーの資金から拠出する
- 参加費を徴収する場合は、会場費・機材費など大会運営の実費に充てる建て付けにする(任天堂ガイドラインが参加費の使途を運営費用に限定しているのは、この考え方と整合的です)
- 参加費無料の大会にすれば、賭博罪のリスクはさらに小さくなる
景品表示法——賞金は「景品類」に当たるか
景品類の定義と上限規制
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)2条3項は、「景品類」を、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品または役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するものと定義しています。景品類に該当すると、提供できる額に上限規制がかかります(一般懸賞では最高額は取引価額の20倍または10万円が上限など)。
ゲーム大会との関係では、ゲーム会社(またはその関連主体)が自社ゲームの大会で高額賞金を出す場合に、その賞金が「自己の供給する商品・役務の取引に付随する」景品類に当たるのではないか——つまり、賞金目当てにゲームを購入・課金させる誘引になっているのではないか——が問題とされてきました。かつて「日本のeスポーツ大会では高額賞金が出せない」と言われた原因がこの論点です。
消費者庁の見解——「仕事の報酬等」なら景品類に当たらない
この点については、消費者庁の見解が示されています。一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)による法令適用事前確認手続(ノーアクションレター)に対する消費者庁の回答(2019年9月3日付)において、eスポーツ大会における賞金の提供は、景品類の指定告示の運用基準にいう「仕事の報酬等と認められる金品の提供」に該当すると考えられ、その場合には景品類に当たらず、景品表示法の上限規制は適用されないという整理が示されました。
大会での競技は観客・視聴者に対するコンテンツの提供という「仕事」であり、賞金はその報酬と評価できる、という考え方です。もっとも、仕事の報酬と認められるためには、大会の規模・競技レベルとの均衡など実態が伴う必要があり、あらゆる大会の賞金が当然に規制外となるわけではありません。賞金設計に迷う場合は、個別に検討することをお勧めします。

参加無料・購入不要型の大会
なお、誰でも無料で参加でき、ゲームの購入や課金が参加条件になっていない大会であれば、そもそも「取引に付随」する提供に当たらず、景品類の問題は生じにくくなります。オープンなプロモーション大会を設計する場合の基本形です。
風営法——会場と運営形態によっては許可の問題も
風営法2条1項5号は、スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備を備えた店舗等で客に遊技をさせる営業(いわゆるゲームセンター営業)を風俗営業とし、許可制の下に置いています。
通常の単発のゲーム大会が直ちにこれに該当するわけではありませんが、たとえば、ゲーム機を常設した施設で反復継続的に客に遊技をさせる形態や、飲食を提供しながらゲームをさせる営業形態を伴う場合には、風俗営業の許可の要否が問題になり得ます。eスポーツ施設・ゲームバーなどの常設ビジネスと組み合わせて大会を企画する場合には、施設側の営業許可の状況もあわせて確認する必要があります。
また、深夜帯の営業や酒類の提供を伴うイベントでは、風営法上の深夜営業規制や飲食店営業の規制など、会場運営側の規制がイベント設計に影響することもあります。会場を借りて開催する場合には、会場側がどのような営業許可の下で運営されているかを確認し、大会の内容(時間帯・飲食提供・観客の滞在形態)がその範囲に収まるかをすり合わせておくとトラブルを避けられます。
主催者のためのチェックリスト
大会を企画する際は、最低限、次の点を確認してください。
- 著作権:対象タイトルにゲーム大会ガイドラインはあるか。ある場合、自分の大会は対象(規模・非営利性等)に収まっているか。ない場合・営利大会の場合は、権利者への個別確認を済ませたか。
- 賭博罪:参加費を賞金の原資にしていないか。参加費の使途は運営実費に限定されているか。
- 景品表示法:賞金・賞品の提供主体と大会の実態に照らし、景品類該当性を検討したか。高額賞金を出す場合、「仕事の報酬等」と評価できる実態があるか。
- 風営法:会場・運営形態が風俗営業(ゲームセンター営業等)に該当しないか。
- その他:未成年者の参加条件・保護者同意、配信を行う場合の配信ガイドラインとの関係、スポンサー契約・出演契約の整備。
ゲーム大会の適法性は「お金の流れ」と「許諾の範囲」で決まる
ゲーム大会・eスポーツ大会の開催それ自体を禁止する法律はありませんが、①ゲームの利用について権利者の許諾(ガイドラインまたは個別許諾)を確保すること、②参加費と賞金の資金の流れを切断して賭博罪の構造を作らないこと、③賞金の景品類該当性を検討すること、④会場・運営形態によっては風営法を確認すること——この4点を外すと、主催者自身が法的リスクを負うことになります。
逆にいえば、権利者のガイドラインの範囲内で、資金の流れを適切に設計すれば、コミュニティ大会から企業主催の本格的な大会まで、適法に開催する道筋は十分にあります。大会の企画段階での法的チェックや、権利者・スポンサーとの契約整備について不安のある方は、エンターテインメント・IT分野に詳しい弁護士に相談してみることをお勧めします。
プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。



