印紙税:課税文書の判定

08 締結手続・電子契約・証拠管理

【基礎実務】最終確認:2026年10月25日

一 問題の所在:この契約書に印紙は要るか

契約書のドラフトやレビューをしていると、事業部門から「この契約書に印紙は要りますか」と聞かれます。印紙税は文書の作成に対して課される税で、1通あたりの額は小さくても、ひな形や定型的な文書を大量に使う会社では大きな額になります(注1)。

印紙を貼らなかったからといって、契約の効力に影響はありません。しかし、印紙を貼らないことは納税義務違反になり、過怠税が課されます(注2)。

本稿で扱うのは、契約書の書き方によって課税文書に当たるかどうか、どの号に当たるかが変わるという点です。個別の文書の税額の計算や、税務調査への対応は扱いません。


二 制度の枠組み

1 課税文書の判定(20の号)

印紙税は、印紙税法別表第一の課税物件の欄に掲げる文書に課されます(2条)。そのうち非課税とされる文書を除いたものが「課税文書」で、その作成者が納税義務を負います(3条1項)。2者以上が共同して作成した文書は、連帯して納める義務を負います(3条2項)(注3)。

課税文書に当たるのは、次の3つをすべて満たす文書です(注4)。

  1. 別表第一の課税物件表に掲げる文書である(1号から20号までのいずれかの事項が記載されている)
  2. 当事者の間で、その課税事項を証明する目的で作成されている
  3. 非課税文書(印紙税法5条)に当たらない

契約書であれば必ず印紙が要るわけではありません。課税文書に当たる契約書だけに、印紙の貼付が義務付けられています(注5)。契約書で問題になることが多いのは、次の号です(注6)。

号文書契約書での例
1号不動産・無体財産権・営業などの譲渡、土地の賃借権の設定・譲渡、消費貸借、運送に関する契約書不動産売買契約書、金銭消費貸借契約書
2号請負に関する契約書工事請負契約書、システム開発契約書(請負型)
7号継続的取引の基本となる契約書(契約期間が3か月以内で更新の定めのないものを除く)売買取引基本契約書、代理店契約書
15号債権譲渡または債務引受けに関する契約書債権譲渡契約書

1号と2号は記載された契約金額によって税額が変わり、記載された契約金額が1万円未満のものは非課税です。7号は1通4,000円です(注7)。税額は改正されることがあるので、国税庁の印紙税額一覧表で確かめます。

2 契約書の表題ではなく内容で判定する

印紙税法上の「契約書」は、次のように定義されています。

この表の第一号、第二号、第七号及び第十二号から第十五号までにおいて「契約書」とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含む。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」という。)を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。(注8)

名称は問われません。「覚書」「合意書」など「〜契約書」とされていない文書でも、具体的な記載内容によって課税文書になります(注9)。逆に、表題が「業務委託契約書」でも、内容が請負なら2号文書に当たり、準委任なら2号文書には当たりません(注10)。ただし、準委任であっても、売買に関する業務などを継続して委託する基本契約で、委託する業務の範囲や対価の支払方法を定めるものは、継続的取引の基本となる契約書(7号文書)に当たります(注11)。印紙税の判定でも、表題は文書の性質を決めません。表題と契約の性質の関係は、別稿『表題は契約の性質を決めない:「契約書」「覚書」「合意書」の違い』で扱いました。

申込書や注文書は、通常は申込みの内容を記載した文書なので契約書に当たりませんが、相手方の申込みに対する承諾の事実を証明する目的で作成される場合は契約書になります。基本契約に基づく申込みで一方の申込みにより自動的に契約が成立するとされているもの、見積書など相手方が作成した文書に基づく申込みであることが記載されているもの、当事者双方の署名・押印があるものは、原則として契約書に当たります(注12)。

3 記載金額の考え方

1号・2号のように記載金額で税額が決まる文書では、どの金額を基準にするかが問題になります。1つの文書に同じ号の金額が2つ以上あれば合計額が記載金額になり、異なる号の金額が並んでいれば、所属する号を決めたうえでその号に係る金額を記載金額とします(注13)。

4 貼らなかった場合(過怠税)

作成の時までに印紙税を納付しなかった場合、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額が、過怠税として徴収されます。調査を受ける前に自主的に申し出た場合は、納付しなかった額にその1割を加えた額になります。印紙を貼っても消印をしなかった場合は、消されていない印紙の額面金額と同額の過怠税が徴収されます(注14)。過怠税は、法人税の損金にも所得税の必要経費にも算入できません(注15)。


三 解釈:どの号に当たるか迷う場面

1 売買・請負・委任の区別

売買と請負の要素を併せ持つ製造物供給契約は多く、請負と準委任の区別がはっきりしない契約もあります。売買・請負・委任のどれに当たるかで、課税文書になるかどうかも税率も変わるので、この区別は印紙税法上とくに重要です。この区別は民法の整理を前提に、売買と請負は所有権の移転と仕事の完成のどちらに重きを置いているか、請負と委任は仕事の完成と一定の目的に従った事務処理のどちらを目的とするかに着目して、当事者の意思を踏まえて判断します(注16)。

契約中心になる給付印紙税
売買目的物の所有権の移転目的物が不動産など一定のものなら1号、継続的取引の基本契約なら7号
請負仕事の完成仕事の内容を問わず2号
委任・準委任一定の目的に従った事務処理2号文書には当たらない。売買に関する業務などを継続して委託する基本契約は7号(注11)

(注16)

2 1つの文書が2つ以上の号に当たる場合

1つの文書が2つ以上の号に当たる場合でも、税額を合算するのではなく、どれか1つの号に所属を決め、その号の税だけを負担します(注17)。所属の決め方は別表第一の通則3に定められています。たとえば1号文書と2号文書の両方に当たる文書は1号文書とされますが、契約金額をそれぞれに区分でき、2号の金額が1号の金額を上回るときは2号文書になります(注18)。

機械の製作請負とその機械の運送を1つの契約書で定めると、運送に関する契約書(1号)と請負に関する契約書(2号)の両方に当たります。金額を区分せずに書けば1号文書ですが、請負と運送の金額を区分して書き、請負の金額が運送の金額を超えていれば2号文書になります(注19)。

3 変更契約書と写し

課税文書に当たる契約の内容を変更する契約書は、重要な事項を変更するものであれば、課税文書になります。重要な事項は印紙税法基本通達の別表第2に一覧になっており、請負契約書であれば、請負の内容、期日、契約金額、単価、支払方法、契約期間などが挙がっています(注20)。契約書の写しでも、当事者の署名・押印や正本との割印があれば課税文書になります。ただし、写しを持っている当事者だけが署名・押印したものは除かれます(注21)。この点は、別稿「契約書の通数と原本の管理:製本・保管・電子化」で扱いました。

4 外国の会社との契約

印紙税法は日本の法律で、印紙税は文書の作成に課されるので、文書の作成が国外で行われれば日本の印紙税の対象になりません。契約書を郵送し合って署名する場合、国内で署名した後に国外で署名するもの(最終の作成場所が国外)は課税されず、国外で署名した後に国内で署名するものは課税されます(注22)。署名の先後で結論が変わるので、署名欄に日付欄を設けて先後関係を明らかにしておくことも考えられます(注22)。


四 契約実務への還元

1 条項の書き方で号が変わることがある

三で見たとおり、契約の性質や金額の書き方によって、課税文書かどうか、どの号に当たるかが変わります。対価の合計額は同じでも、2つの取引の対価を区分して書くか、まとめて書くかで印紙税額が変わり得るので、契約書の対価の記載方法は、印紙税の扱いも念頭に置いて検討します(注19)。

印紙税を節約するために契約の実態と違う書き方をすることはできません。取引の実態に即して契約の類型を契約書の上で明確にしておくことが、結果として印紙税の判定も安定させます。

逆の方向にも注意が要ります。印紙税法上の契約書に当たらない文書は、契約の成立を証明する力も弱くなり得るので、どのような位置付けの文書を作りたいのかを意識してドラフトやレビューをする必要があります(注23)。申込書や注文書で対応して印紙税を抑える実務もありますが(注12)、それが契約の成立を証明する場面で弱みにならないかを、あわせて考えます。

2 誰が負担するか

納税義務を負うのは課税文書の作成者で、共同で作成した契約書なら当事者が連帯して納める義務を負います(注3)。実務では当事者数分の契約書を作り、印紙代を折半することが多くあります(注2)。契約書で負担者を定めても、国に対する納税義務は変わりません。この点は、別稿『印紙代・登記費用の負担条項:当事者間の取り決めと、国に対する義務は別』で扱いました。

本稿で扱わなかったこと

電子契約で締結した場合の印紙税は、別稿「電子契約と印紙税」で扱います。号ごとの税額の詳細、不動産売買契約書と建設工事の請負契約書の軽減措置は、本稿では扱っていません。国税庁の印紙税額一覧表で最新の額を確認してください。

税務上の取扱いは個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては税理士にご確認ください。


参考文献等

註

(注1)北村導人=柴田英典=望月賢「契約書と印紙税」(取引法務担当者が知っておきたい会計・税務の知識・第12回・完)NBL1214号(2022)70頁
(注2)幅野直人『企業法務1年目の教科書 契約書作成・レビューの実務』(中央経済社、2024)108〜109頁
(注3)印紙税法2条・3条
(注4)弁護士法人飛翔法律事務所編『実務必携 契約書チェックマニュアル』(商事法務、2024)340頁。前掲注1・71頁の表1も参照
(注5)前掲注4・340頁
(注6)前掲注1・71頁の表2、秦周平ほか編『契約書リーガルチェックのポイント──事例でみるトラブル条項例』(新日本法規出版、2020)第1章コラム「税務上の留意点」1(1)
(注7)印紙税法別表第一
(注8)印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則5
(注9)前掲注4・344頁
(注10)前掲注1・72頁
(注11)印紙税法施行令26条2号
(注12)前掲注4・343頁。前掲注1・72〜73頁も参照
(注13)前掲注1・76頁の表7。印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則4も参照
(注14)印紙税法20条1項〜3項
(注15)前掲注4・342頁
(注16)前掲注1・74頁の表5
(注17)前掲注1・74頁
(注18)印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則3ロ
(注19)前掲注1・74〜76頁
(注20)前掲注4・344頁
(注21)国税庁「印紙税法基本通達」19条2項
(注22)前掲注1・73〜74頁の表4。前掲注4・345頁も参照
(注23)前掲注1・73頁注7


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