「ものとする」「するものとする」「努めるものとする」の差:義務の強さを決めているか

03 契約書を読む技術

【入門】最終確認:2026年10月25日

一 この用語は何をしているのか

契約書の条文は、「〜する」「〜しなければならない」「〜するものとする」「〜するよう努めるものとする」と、文末がさまざまです。

立法技術のうえでは、一定の作為義務を表すには普通「しなければならない」を使い、これに近い意味で、表現がきつい場合の緩和表現として「するものとする」が使われることがあります(注1)。「するものとする」とした場合は「しなければならない」よりやや義務付けが弱く、合理的な理由があれば、それに従わないことも許されるという解釈の余地が生じます(注1)。

文末の言葉は、その条文が義務なのか、どれくらい強い義務なのかを示す目盛りです。契約書では、その目盛りを決めないまま「ものとする」で終えている条文が少なくありません。


二 3つの表現

1 「〜する」「〜しなければならない」

端的な義務です。法令では、行政庁に義務を課す場合でも、するべき内容が一義的であったり、より具体的であったりするときは、「しなければならない」がふさわしいといえます(注2)。行政機関に一定の行為を義務付ける規定は、国民に権利を与えているともいえるので、「しなければならない」の選択しかないように感じられます(注3)。

2 「〜するものとする」

じん肺法は、同じ条の中で「返還しなければならない」と「送付するものとする」を書き分けています。このように書き分けている場合には、当然異なる解釈を求めていると読めます(注1)。

「ものとする」には、義務を表す以外の使い方もあります。「国税及び地方税に次ぐものとする」のように語呂のために使う場合と、「適用があるものとする」のように、創設的な意味を持たせず念のために規定する趣旨で使う場合です(注3)。

3 「〜するよう努めるものとする」

努力義務です。売主が「できる限り在庫の確保に努める」とした在庫確保条項が努力義務規定であれば、在庫品を確保できなかった場合でも、確保に向けた努力をしていなかった場合などを除き、基本的に売主は損害賠償責任等を負いません(注4)。そのため、売主としては条項を変更する必要はなく、買主としては、努力義務規定を法的義務規定に変更する必要があります(注4)。

基本原則を定める条項でも、「公正な取引関係を常に維持するよう努めるものとする」という努力義務の形をとる例があります(注5)。目的条項や基本原則条項は、それ自体が直接に当事者の権利義務を定めるものではありませんが、契約の内容にかかわる重要な条項です(注5)。


三 問題点

1 「ものとする」に意味があるのか、ないのか

法令のように「しなければならない」と「するものとする」を書き分けていれば、違いに意味を読み取れます(注1)。ところが契約書では、ほとんどの条文が「ものとする」で終わっているひな型もあります。すべてが「ものとする」なら、書き分けから強弱を読み取ることはできません。

そうなると、義務の強さを決めるのは、文末よりも中身の具体性になります。数量も期限も書かれていない「確保するものとする」と、数量・場所・期限が書かれた「確保するものとする」とでは、同じ文末でも義務としての働きが違います。

2 努力義務にしたつもりが義務と読まれる、またはその逆

努力義務と法的義務は、どちらの立場に立つかで望ましい方向が逆になります。二の3の在庫確保条項では、売主にとっては努力義務のままがよく、買主にとっては法的義務にする必要がありました(注4)。

「協議するものとする」も、同じ曖昧さを抱えています。交渉が難航しそうな事項を「別途協議するものとする」のように具体的な処理方法を定めない条項にしたい、という相談を受けることがありますが、問題が起きてから解決するのは、事前に処理方法を合意しておくよりはるかに難しい場合が多いところです(注6)。問題が起きた場合の処理方法を「協議するものとする」とする条項は、できるだけ避けたほうがよいことになります(注7)。


四 改善例:義務なら、中身を具体的にして書く

義務にしたいなら、何を・いつまでに・どこで・誰の負担でするかまで書きます。文末も「しなければならない」にそろえておけば、義務であることがはっきりします。

在庫確保条項の買主側の変更例は、売主が「別途乙が定める数量の在庫を乙の指定する場所に確保し、乙から在庫の不足数量の通知があったときには、通知後5日以内に甲の費用負担において乙の指定する場所に不足数量と同数の商品の搬入を行うものとする」という形です(注4)。この例の文末は「ものとする」のままですが、数量・場所・期限・費用負担を具体的に書くことで、努力義務を法的義務に変えています。買主側からは、在庫品確保の方法が明確になるよう、諸条件を具体的に定めます(注4)。

意図書き方
必ずさせたい「〜しなければならない」+数量・期限・場所・費用負担
できるだけやってもらえればよい「〜するよう努める」
決めきれないので後で話し合う「協議する」とだけ書かず、協議が調わないときの扱いまで書く
権限を与える「〜することができる」

五 書き分けの分岐

自社の立場読むときの着眼点
その条文で義務を負う側努力義務にとどめられないか。「ものとする」で終わる義務の中身が具体的すぎないか
その条文で相手に義務を負わせる側努力義務になっていないか。数量・期限などの中身が書かれているか
基本原則・目的の条項直接の権利義務は定めないが、他の条項の解釈に影響する(注5)

曖昧さをあえて残すかどうかは、交渉上の判断です。その判断の仕方は、05章(契約書を作成する技術)で扱います。

本稿で扱わなかったこと

条文から「誰が」「いつ」「何を」を取り出す読み方は、別稿「主語・時制・条件節の読み分け:義務者は誰か、いつ発生するか」で扱いました。「誠実に協議する」という条項がどこまで義務になるかは、別稿「誠実協議条項に意味はあるか:格調を高めるだけの条項と、義務になる条項」が扱っています。


参考文献等

註

(注1)吉田利宏『新法令用語の常識〔第2版〕』(日本評論社、2022)49頁
(注2)前掲注1・50頁
(注3)前掲注1・51〜53頁
(注4)弁護士法人飛翔法律事務所編『実務必携 契約書チェックマニュアル』(商事法務、2024)182〜184頁
(注5)前掲注4・47頁
(注6)幅野直人『企業法務1年目の教科書 契約書作成・レビューの実務』(中央経済社、2024)33頁
(注7)前掲注6・63頁


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