第Ⅰ部 入口

この部は3つの章でできています。章を選んでください。

03 契約書を読む技術

契約書の骨格:表題・前文・本文・後文・別紙

契約書は、表題・前文・本文・後文と署名欄・別紙の5つの部分でできています。部分ごとに何が書いてあるはずかを知っていれば、書いていないものにも気づけます。第1条から読み始める前に、当事者の数、作成通数、日付、別紙の有無を確かめて全体の地図を作る。契約書を読む最初の手順を整理します。
01 契約法務という仕事

契約書は何のためにあるのか:合意の証拠・紛争の予防・履行の設計

契約は契約書がなくても成立します。それでも契約書を作るのは、合意の証拠になり、紛争を予防し、そして平時の取引そのものを設計するからです。契約書があれば安心という誤解を解き、3つ目の機能(履行の設計)を軸に、この連載が何を扱うかを示します。
02 契約の基礎理論

契約自由の原則とその限界:4つの自由と、その外側

契約自由の原則は、締結の自由・相手方選択の自由・内容決定の自由・方式の自由の4つに分かれます。2017年改正でこのうち3つが条文になり、同時に「法令に特別の定めがある場合を除き」「法令の制限内において」という限界も条文に書かれました。4つの自由それぞれがどこで制限されるかを、条文と実務書の記述で整理します。
02 契約の基礎理論

任意規定と強行法規:「書かなければどうなるか」

契約書から条項を1つ削っても、その部分は空白になりません。民法や商法が当てはまるルールを用意しているからです。任意規定と強行規定の見分け方、任意規定の2つの働き方、そして任意規定が消費者契約法10条や定型約款の規定で条項を測る基準として使われていることを整理し、条項を読むときの3つの問いにまとめます。
01 契約法務という仕事

戦略法務・予防法務・臨床法務:契約法務はどこに立つか

同じ契約書をめぐる仕事でも、取引の形を決める段階(戦略法務)、条項を詰める段階(予防法務)、揉めてからの段階(臨床法務)ではやっていることが違います。3分法を時系列と役割分担に重ね、いま自分がどこにいるかを見極めて次の手を決めるための記事です。
03 契約書を読む技術

条・項・号と、条文の引用の作法

契約書は条・項・号の順に並び、項の中には本文・ただし書・柱書があります。「前項」と書くか「前項本文」と書くかで、引用の範囲が変わります。「前条」「次項」は条を足し引きすると指す先が黙って変わる。引用の表記を1通の中で揃え、条を追加・削除したら参照を確かめ直す。条文の住所の読み方と書き方を整理します。
03 契約書を読む技術

「及び」「並びに」「又は」「若しくは」:どちらとも読める箇所を見つける

「又は」なら並べたどれか1つで足り、「及び」なら全部がそろって初めて当たる。接続の語1つで、条項が働く範囲が変わります。「及び」は一番小さい接続、「又は」は一番大きい接続という使い分けと、読むときにまず「又は」を探す理由を整理し、どちらとも読める条項を号に分けて曖昧さを消す書き方を示します。
02 契約の基礎理論

典型契約という発想:民法の13類型と現実の取引

民法に「業務委託契約」という契約はありません。名前のある契約は13種類で、そのどれに当たるかで適用される規定が変わります。典型契約が何のためにあるのか、混合契約や現実類型をどう扱うのか、見極めた結果を契約書にどう書き込むのかを整理します。
01 契約法務という仕事

契約書ができるまで:取引開始から締結までの流れ

商談から締結まで、契約書ができる工程を追います。法務が呼ばれるのは取引が成立する可能性が出てきた段階で、そのときには条件の多くが決まっています。叩き台をどちらが出すかが結果を左右すること、交渉過程の記録が後で効くことを、実務書の記述に即して整理します。
01 契約法務という仕事

「これ、法的に問題ない?」に何を返すか

廊下で「これ、法的に問題ないですか」と聞かれたときに何を返すか。質問している側が知りたいのは、たいてい法的な問題の有無ではなく進めていいかどうかです。段階・期限・心配していることの3点を確かめてから答える型と、即答すべき場面の切り分けを整理します。
03 契約書を読む技術

「その他」と「その他の」、「以上・以下・超・未満」:境目がどちらに入るか

「その他の」の前の言葉は後ろの広い言葉の例示、「その他」の前後は並列。「以上・以下」は基準の数を含み、「超える・未満」は含まない。1字の違いで条項が拾う範囲が変わります。包括的な言葉が思ったより狭く読まれた裁判例と、金額の段階を「以下」と「を超え」で組んで重なりと抜けを防ぐ書き方を整理します。
02 契約の基礎理論

意思表示の瑕疵:錯誤・詐欺・強迫

「そんなつもりではなかった」という主張はいつ通るか。2017年改正で錯誤は無効から取消しになり、動機の錯誤には「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき」という要件が明文化されました。前提事実を契約書に書いておくことと表明保証条項が、同じ問題を扱っていることまで整理します。
03 契約書を読む技術

「前」「後」と「以前」「以後」:期間の起算

「以前」「以後」は基準の日を含み、「前」「後」は含まない。「契約日から5日以内」は初日を数えず、「契約日から起算して5日以内」は初日から数える。1字の違いで期限が1日ずれます。期間の数え方を覚えるより、日付で書くか、起算日と休日の扱いを条項に書き込むほうが確実です。
01 契約法務という仕事

法務がやりがちな失敗:形式的な指摘、過剰な保守、説明のない修正

直した内容ではなく直し方に原因がある失敗が3つあります。文言の細部から入る形式的な指摘、あらゆる論点で最も有利な案を出す過剰な保守、結果だけを返す説明のない修正です。実務誌の事例と実務書のやりとりに即して、直し方を組み立て直します。
02 契約の基礎理論

無効・取消し・条件と期限

契約が「効かない」と言うとき、無効・取消し・条件未成就・期限到来のどれかで扱いが変わります。誰が主張できるか、いつまで主張できるか、渡したものをどう戻すか。条件付きの契約を書くときに決めておく4点と、分離可能性条項・期限の利益喪失条項が民法のどこを埋めているかまで整理します。
02 契約の基礎理論

契約の当事者:代理と代表

会社は自分で押印できないので、必ず誰かが会社のために押します。その権限には代表と代理があり、支配人や、事業に関する特定の事項の委任を受けた使用人にも法律上の権限があります。部長名で締結された契約をどう扱うか、委任状で何を確かめるかまで、条文に即して整理します。
03 契約書を読む技術

定義条項の読み方:定義された語がどこで効くか

定義された語は、本文で使われるたびに定義の中身をその条項に持ち込みます。定義語を一覧にし、本文のどこで使われているか、似た語が混ざっていないか、定義が引く別紙が正しいかを突き合わせる。「本製品」と「本商品」が混在した契約書をどう読むか、定義条項の読み方を整理します。
01 契約法務という仕事

法務担当者は実際に何に悩んでいるか

法務担当者の手が止まるのは、条項の中身が分からないときだけではありません。25社の法務担当者が自分の経験を書いた実務誌の特集から、時間がない・判断がつかない・通らない・一人法務・自信がないという5つの悩みを取り出し、それぞれをどう仕組みにしたかを整理します。
03 契約書を読む技術

主語・時制・条件節の読み分け:義務者は誰か、いつ発生するか

契約書を読むというのは、条文ごとに「誰が」「いつ」「何を」を取り出す作業です。5W1Hで条文を分解すると、主語のない文、条件の書かれていない義務、「するものとする」で強さのぼやけた文末が見えてきます。主語を補い、条件節を切り出し、義務・権利・裁量を見分ける読み方と直し方を整理します。
02 契約の基礎理論

双務契約に特有の効力:同時履行・危険負担

相手が払わないのに渡さなければならないか。同時履行の抗弁権(民法533条)は、履行遅滞・判決主文・強制執行の3つの場面に効きます。危険負担(民法536条)は2017年改正で債務消滅構成から履行拒絶権構成に変わりました。契約書で支払と引渡しの順序を決めるときの視点まで整理します。
01 契約法務という仕事

契約法務の学び方:何をどの順で読むか

条文・実務書・裁判例をどの順で読むか。条項を読むときは実務書から入って条文に戻り、制度を学ぶときは条文から入る。実務書だけでは足りない理由を、契約書の条項が要件事実に対応しているという点から説明し、調べ先を固定する方法まで整理します。
03 契約書を読む技術

「ものとする」「するものとする」「努めるものとする」の差:義務の強さを決めているか

「しなければならない」は端的な義務、「するものとする」はやや弱い義務、「努めるものとする」は努力義務。文末の言葉は義務の強さの目盛りですが、契約書では目盛りを決めないまま「ものとする」で終えている条文が少なくありません。在庫確保条項を例に、努力義務と法的義務で売主と買主の利害が逆になることと、義務にしたいなら中身を具体的に書くことを整理します。
02 契約の基礎理論

債権法改正が契約実務に与えた影響の全体像:判断の材料が変わった

債権法改正で契約書はどう変わったか。実務書は「契約書の作成という場面では、大きな影響を及ぼす改正点は意外に少ない」としています。それでも意識して検討する必要が生じたのはなぜか。帰責事由・契約不適合・定型約款・消滅時効・譲渡制限特約の5つの変化と、その底に流れる「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」という判断枠組みを整理します。
03 契約書を読む技術

別紙・仕様書・発注書との関係と優先順位条項:契約はどの文書でできているか

1つの取引の契約は、本文、別紙、仕様書、注文書を合わせた束でできていることが多く、読むときも束で読みます。別紙が付いているか、版は新しいか、基本契約と個別契約が食い違ったときにどちらが優先するか。優先順位の3つの定め方の長所と短所を踏まえ、契約を構成する文書の一覧を作って読む方法を整理します。
02 契約の基礎理論

改正法の経過措置:どちらの民法が適用されるか

2020年4月1日より前に締結された契約には、いまも改正前民法が適用されます。ただし「施行日前の契約は全部旧法」ではなく、解除は契約締結日、債務不履行は債務の発生時、時効は債権の発生時、契約の成立は申込みの到達時と、論点ごとに基準時が違います。定型約款だけは遡って新法が適用されます。更新があった場合の扱いも含めて整理します。
02 契約の基礎理論

消滅時効の全体像と契約実務への影響:協議の合意という道具

債権の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年の二重の期間になりました。中断・停止は更新・完成猶予に組み替えられ、協議を行う旨の合意(民法151条)という新しい道具も生まれています。合意書の作り方、権利の特定の程度、契約書にあらかじめ書いても意味がない理由まで整理します。