レビュー

01レビューの手順を型にする【基礎実務】契約書のレビューを、通読・構造把握・リスク抽出・修正案の作成・説明の5段階に分ける方法を説明します。読みながら赤を入れる進め方がなぜ遅く、なぜ漏れるのかを、各段階で「何をしないか」の側から整理しました。02共通条項(一般条項)とは何か、なぜどの契約にも入るのか【基礎実務】契約類型が違っても同じ条項が並ぶのはなぜか。共通条項(一般条項)の輪郭、契約書の条項数の3割から5割を占めるという実務感覚、そして定型だからと読み飛ばされる構造的な理由を整理します。03契約書の骨格:表題・前文・本文・後文・別紙【入門】契約書は、表題・前文・本文・後文と署名欄・別紙の5つの部分でできています。部分ごとに何が書いてあるはずかを知っていれば、書いていないものにも気づけます。第1条から読み始める前に、当事者の数、作成通数、日付、別紙の有無を確かめて全体の地図を作る。契約書を読む最初の手順を整理します。04表題は契約の性質を決めない:「契約書」「覚書」「合意書」の違い【入門】「覚書だから拘束力が弱い」は誤解です。当事者間に法的な効果を生じさせる意思表示の合致があれば、表題が契約書でも覚書でも効果は変わりません。それでも表題を使い分ける理由と、決め方の順序を示します。05依頼を受け付ける:何を出してもらうか【基礎実務】契約書だけを渡されてレビューを始める前に、何を出してもらうか。取引の背景、どちらが作った契約書か、締切とその理由、決裁ライン、過去の同種契約の5つを押さえる方法と、依頼フォームの作り方を扱います。06共通条項の機能分類:リスク配分/手続/終了処理/紛争解決【基礎実務】共通条項を9つの機能グループに分ける方法と、その使い方を説明します。分類は整理のためではなく、契約書に何が欠けているかを見つけるための道具です。粗い4分類と細かい9分類を用意し、自社のひな型を並べ直す手順まで扱います。07条・項・号と、条文の引用の作法【入門】契約書は条・項・号の順に並び、項の中には本文・ただし書・柱書があります。「前項」と書くか「前項本文」と書くかで、引用の範囲が変わります。「前条」「次項」は条を足し引きすると指す先が黙って変わる。引用の表記を1通の中で揃え、条を追加・削除したら参照を確かめ直す。条文の住所の読み方と書き方を整理します。08「及び」「並びに」「又は」「若しくは」:どちらとも読める箇所を見つける【入門】「又は」なら並べたどれか1つで足り、「及び」なら全部がそろって初めて当たる。接続の語1つで、条項が働く範囲が変わります。「及び」は一番小さい接続、「又は」は一番大きい接続という使い分けと、読むときにまず「又は」を探す理由を整理し、どちらとも読める条項を号に分けて曖昧さを消す書き方を示します。09事業部門へのヒアリング:何を聞けば条項が決まるか【基礎実務】契約書のレビューに必要な情報を、事業部門からどう聞き取るか。「取引の全体を教えてください」では条項が決まりません。商流・支払・成果物・トラブル・力関係の5領域を、条項から逆算して聞く方法を扱います。10条項どうしの相互作用:条項は単独では動かない【応用実務】契約書の共通条項は、1つずつでは働きません。責任上限と違約金、解除と存続条項、期限の利益喪失と相殺と担保、完全合意と修正制限、通知と解除。代表的な5つの組み合わせで噛み合わせを確かめ、上限条項と全額賠償条項が並んだ契約を裁判所がどう読んだかを手がかりに、1条項を直したときに一緒に開く条項の一覧と、優先関係の書き方を整理します。11「その他」と「その他の」、「以上・以下・超・未満」:境目がどちらに入るか【入門】「その他の」の前の言葉は後ろの広い言葉の例示、「その他」の前後は並列。「以上・以下」は基準の数を含み、「超える・未満」は含まない。1字の違いで条項が拾う範囲が変わります。包括的な言葉が思ったより狭く読まれた裁判例と、金額の段階を「以下」と「を超え」で組んで重なりと抜けを防ぐ書き方を整理します。12自社の立場で読み替える【基礎実務】相手方から届いた契約書のひな型を、自社の立場で読み替える方法を説明します。条項を裏返して読む、相互条項に見えて片務的なものを見分ける、甲乙を入れ替えた版を作って読む、という3つの手順を扱います。13「前」「後」と「以前」「以後」:期間の起算【入門】「以前」「以後」は基準の日を含み、「前」「後」は含まない。「契約日から5日以内」は初日を数えず、「契約日から起算して5日以内」は初日から数える。1字の違いで期限が1日ずれます。期間の数え方を覚えるより、日付で書くか、起算日と休日の扱いを条項に書き込むほうが確実です。14抜けている条項を見つける技術:チェックリストと、取引からの逆算【基礎実務】相手方の契約書案は、相手方が必要と考えた条項でできています。書いてある条項の良し悪しは読めば分かりますが、書いていない条項は見えません。チェックリストと照らし合わせる方法と、取引の中身から逆算する方法を組み合わせて欠落を見つけ、どこまで埋めるかを分けて判断します。15法務がやりがちな失敗:形式的な指摘、過剰な保守、説明のない修正【入門】直した内容ではなく直し方に原因がある失敗が3つあります。文言の細部から入る形式的な指摘、あらゆる論点で最も有利な案を出す過剰な保守、結果だけを返す説明のない修正です。実務誌の事例と実務書のやりとりに即して、直し方を組み立て直します。16修正案の作り方と修正理由の書き方:法的根拠・取引上の実害・代替案【基礎実務】「当社に不利なため」とだけ書いた修正案は、同じ理由で元に戻されます。修正理由は、社内を動かす理由と相手方を動かす理由の二通りが要ります。相手方向けには、法的根拠・取引上の実害・代替案の3層で書く。削る・足す・書き換えるの使い分けと、修正履歴での見せ方もあわせて整理します。17定義条項の読み方:定義された語がどこで効くか【入門】定義された語は、本文で使われるたびに定義の中身をその条項に持ち込みます。定義語を一覧にし、本文のどこで使われているか、似た語が混ざっていないか、定義が引く別紙が正しいかを突き合わせる。「本製品」と「本商品」が混在した契約書をどう読むか、定義条項の読み方を整理します。18法務担当者は実際に何に悩んでいるか【入門】法務担当者の手が止まるのは、条項の中身が分からないときだけではありません。25社の法務担当者が自分の経験を書いた実務誌の特集から、時間がない・判断がつかない・通らない・一人法務・自信がないという5つの悩みを取り出し、それぞれをどう仕組みにしたかを整理します。19主語・時制・条件節の読み分け:義務者は誰か、いつ発生するか【入門】契約書を読むというのは、条文ごとに「誰が」「いつ」「何を」を取り出す作業です。5W1Hで条文を分解すると、主語のない文、条件の書かれていない義務、「するものとする」で強さのぼやけた文末が見えてきます。主語を補い、条件節を切り出し、義務・権利・裁量を見分ける読み方と直し方を整理します。20事業部門への説明:法的リスクと事業判断を分けて伝える【基礎実務】事業部門は、その契約を締結すべきだと考えて審査を依頼してきます。「リスクがあります」とだけ返せば、法務は取引を止める部署になります。踏めないリスクと、踏むかどうかを選べるリスクを分け、確率と大きさ、選択肢をそろえて渡す。判断は事業部門がし、その過程を記録に残す、という伝え方を整理します。21「ものとする」「するものとする」「努めるものとする」の差:義務の強さを決めているか【入門】「しなければならない」は端的な義務、「するものとする」はやや弱い義務、「努めるものとする」は努力義務。文末の言葉は義務の強さの目盛りですが、契約書では目盛りを決めないまま「ものとする」で終えている条文が少なくありません。在庫確保条項を例に、努力義務と法的義務で売主と買主の利害が逆になることと、義務にしたいなら中身を具体的に書くことを整理します。22どこまで直すか:譲れない・譲れる・どちらでもよい【基礎実務】気になる箇所に全部赤を入れた修正案は、相手方に「全部は飲めない」と思わせ、いちばん大事な1点も通りにくくします。修正したい箇所を、譲れない・譲れる・どちらでもよいの3つに仕分け、金額・確率・取引の重要度と力関係で判断し、譲る箇所を交渉の材料として使う方法を整理します。23債権法改正が契約実務に与えた影響の全体像:判断の材料が変わった【基礎実務】債権法改正で契約書はどう変わったか。実務書は「契約書の作成という場面では、大きな影響を及ぼす改正点は意外に少ない」としています。それでも意識して検討する必要が生じたのはなぜか。帰責事由・契約不適合・定型約款・消滅時効・譲渡制限特約の5つの変化と、その底に流れる「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」という判断枠組みを整理します。24特約条項(契約条項の一部適用を排除する条項)の使い方と事故【基礎実務】「第17条の条文を破棄する」と書いた特約で、売主は瑕疵担保責任を免れませんでした。消えるのは契約書の条項だけで民法までは消えないこと、特約の射程が目的物の一部にとどまること、義務を作る特約に期限がないときの扱いを、裁判例2件から追います。25別紙・仕様書・発注書との関係と優先順位条項:契約はどの文書でできているか【基礎実務】1つの取引の契約は、本文、別紙、仕様書、注文書を合わせた束でできていることが多く、読むときも束で読みます。別紙が付いているか、版は新しいか、基本契約と個別契約が食い違ったときにどちらが優先するか。優先順位の3つの定め方の長所と短所を踏まえ、契約を構成する文書の一覧を作って読む方法を整理します。26改正法の経過措置:どちらの民法が適用されるか【基礎実務】2020年4月1日より前に締結された契約には、いまも改正前民法が適用されます。ただし「施行日前の契約は全部旧法」ではなく、解除は契約締結日、債務不履行は債務の発生時、時効は債権の発生時、契約の成立は申込みの到達時と、論点ごとに基準時が違います。定型約款だけは遡って新法が適用されます。更新があった場合の扱いも含めて整理します。27最終案の審査と、締結後に法務がやること:差分を取るのが最後の仕事【基礎実務】レビューは修正案を出したら終わりではありません。交渉を経た最終版は、法務が出した修正案と同じとは限らないからです。自社の最終修正案と最終版を比較して差分を確かめ、交渉で直した条項と他の条項の噛み合わせ、別紙の版、体裁を確認し、交渉記録と一緒に保管する。締結前チェックリストの形で整理します。28Wordの変更履歴・比較を使ったレビュー実務:返す前に消すもの、残すもの【基礎実務】変更履歴は、修正を見せる道具であると同時に、見せるつもりのないものまで相手方に渡してしまう道具です。表示を「変更履歴なし」に切り替えても履歴は文書に残ります。比較機能で差分を取る、回ごとに色を分けて返す、送る前にドキュメント検査で内部コメントや作成者情報を消す。Wordでのレビューの作業手順を整理します。29自動更新条項:意義と留意点【基礎実務】契約書どおりに更新拒絶を通知しても、更新を止められないことがあります。約8年続いた業務委託契約で、5か月前の更新拒絶が「相当な予告期間とはいえない」とされた裁判例から、通知の期限・方法をどう書くか、そして書いても防げない部分を扱います。30AI契約審査サービスとの付き合い方:書いてあることと、起きうること【基礎実務】AI契約審査サービスが得意なのは、契約書に書いてあることの処理です。欠落条項や表記ゆれの洗い出しは任せられますが、この取引で何が起きうるかの判断は任せられません。修正案の文言というグレーゾーンの扱い方、1件の審査での手順、組織として導入するときのポイント、採用の最終判断を人に残す理由を整理します。31中途解約条項:留保しないとどうなるか【基礎実務】期間を定めた契約は、中途解約条項がなければ途中で抜けられません。期間の定めがある場合とない場合で出発点が逆になること、予告期間を「相当な」と書くと争いになること、そして請負641条・委任651条の任意解除権との関係を扱います。32更新後の期間・条件が定まっていない場合【基礎実務】「同一の条件で更新される」とだけ書くと、更新後が1年契約なのか期間の定めのない契約なのかが決まりません。終了に双方の合意を要する形で「以後も同様とする」を足すと、今度は終わりがなくなります。永久自動更新条項について、交渉された条項とされなかった条項で拘束力に差を付けた裁判例まで追います。33支払方法と振込手数料の負担:甲乙の書き違いと口座の変更【基礎実務】支払方法を書かなければ現金の持参、振込手数料を書かなければ買主の負担になります。条項に書いていても、「振込手数料は甲の負担とする」の甲が誰を指すのか、振込先の口座が変わったらどうするのかで争いが残ります。立場ごとの書き分けと改善例を示します。34相殺の基本と相殺予約:書かなくてもできることを、なぜ条項にするのか【応用実務】相殺は契約書に書かなくてもできます。それでも相殺の条項を置くのは、民法が求める「双方の債務が弁済期にあること」という要件を、契約で前倒しするためです。相殺予約が動かすもの・動かさないもの(法令上の相殺禁止、取適法)と、相殺する側・される側それぞれの書き方を整理します。35免責条項の限界:公序良俗・信義則【応用実務】免責条項の効力を正面から決める条文は民法にありません。故意・重過失・軽過失で扱いが分かれる理由、重過失の意味をめぐる二つの理解、そして除外を書かなかったときに条項全体が失われる構造を扱います。36消費者契約法による規制【応用実務】BtoCでは、免責条項は合理性ではなく類型で無効になります。全部免責・一部免責・サルベージ条項規制を条文で整理し、条項が不明確なときの3要件、条項使用者不利の原則、限定解釈がどこまで期待できるかを裁判例で追います。37割賦販売法・特定商取引法・独占禁止法による規制【応用実務】業法は、条項の合理性を審査せずに額の上限そのものを決めます。割賦販売法・特定商取引法の上限規制と抗弁の接続、書面交付義務とクーリング・オフ、独占禁止法の優越的地位の濫用、そして2026年に改称された取適法を整理します。38解約一時金・中途解約違約金条項の効力【応用実務】残存期間の全額を違約金とする条項は、どこまで残るのか。1年分は有効・3年2か月分は無効とした裁判例と、フランチャイズ契約の解約一時金を無効とした判断枠組みから、水準の目盛りと交渉での説明のしかたを扱います。39通知期間の設計【基礎実務】契約不適合の通知期間は、民法566条の1年、商法526条の6か月、そして消滅時効の二層構造でできています。起算点が買主の主観で決まってしまう問題と、短縮特約が売主の重過失で外れる場面を、条文と判旨、条項例で追います。40請負における修補・報酬減額・出来高請求【応用実務】請負の担保責任は2017年改正で規定が削られ、売買の規定を準用する形になりました。修補請求の限界、修補に代わる損害賠償の順序、報酬減額請求、そして仕事が途中で終わったときの出来高請求まで、削られた条文を契約書でどう戻すかを条項例で示します。41契約不適合責任を免除・軽減する条項の限界【応用実務】「一切の契約不適合責任を負わない」と書いても、売主が知りながら告げなかった事実には効きません(民法572条)。免除条項の限界と、全部免除が通らないときに事由を列挙して部分免除にする書き方を、条項例で示します。42列挙の網羅性:「その他これらに類する事由」をどう書くか【基礎実務】不可抗力条項の事由の列挙は、長ければよいものではありません。書いていない事象は不可抗力でないと読まれる危険と、「その他不可抗力」が列挙の色に染まる問題。原材料の高騰が入るかどうかと、供給側と支払側で望ましい書き方が正反対になることを、条項例で示します。43秘密情報から除外される情報【基礎実務】秘密保持条項のただし書は、条項の射程を後ろから削ります。除外事由5つの並べ方、立証責任をどちらに置くか、そして「法令に基づく開示」をここに入れてはいけない理由を整理します。44法令・行政機関からの開示要求への対応:捜査機関から求められたとき【応用実務】捜査機関や監督官庁から開示を求められたとき、秘密保持条項が判断の妨げになることがあります。除外事由に置くべきでない理由、通知義務を努力義務型にする理由、そして自社が紛争の当事者になったときの扱いを整理します。45再委託の扱い:個人データが二次先へ流れるとき【応用実務】委託先がさらに別の会社に出しているとき、委託元は何をすればよいのか。再委託先の事故が委託元の法違反と判断され得ること、条項を入れただけでは監督したことにならないこと、そして原則禁止型・事前通知型・事後報告型の使い分けを扱います。46著作者人格権不行使特約:書いても効かないことがある【応用実務】著作者人格権は譲渡できないので、実務は「行使しない」と約束させます。ところが不行使特約が契約書にあったのに氏名表示権については合意がなかったとされた裁判例と、特約がないのに同一性保持権の行使が認められなかった裁判例があります。どちらも決め手は慣行でした。47侵害が判明した場合の対応義務と費用負担:「解決し、または協力し」の「または」が争われた【応用実務】「自己の費用と責任で解決し、または協力し、一切迷惑をかけない」。この一文の「または」をめぐって主導権が争われ、買主が単独でライセンス契約を結んだ結果、過失相殺で7割が削られた事件があります。通知・情報提供・主導権・和解権限の書き分けを扱います。48再委託先の行為に対する責任:「一切の責任を負う」は何も足していない【基礎実務】「再委託先の行為について乙が一切の責任を負う」。この一文は、実は何も足していません。条項がなくても再委託先の落ち度は受託者の債務不履行だからです。ではレビューでどこを見るのか——再委託先を把握する手段と、それを実際に使うことです。49過怠約款:「2回分怠ったとき」の数え方【応用実務】「分割金の支払を2回分怠ったとき」。この書き方では、2回続けてなのか、通算2回なのか、一部弁済があったときはどうなのかが決まりません。一括請求の入口で止まらないように、回数と金額で条件を閉じる直し方を扱います。
06 契約審査・レビューの方法

レビューの手順を型にする

契約書のレビューを、通読・構造把握・リスク抽出・修正案の作成・説明の5段階に分ける方法を説明します。読みながら赤を入れる進め方がなぜ遅く、なぜ漏れるのかを、各段階で「何をしないか」の側から整理しました。
09 共通条項総論

共通条項(一般条項)とは何か、なぜどの契約にも入るのか

契約類型が違っても同じ条項が並ぶのはなぜか。共通条項(一般条項)の輪郭、契約書の条項数の3割から5割を占めるという実務感覚、そして定型だからと読み飛ばされる構造的な理由を整理します。
03 契約書を読む技術

契約書の骨格:表題・前文・本文・後文・別紙

契約書は、表題・前文・本文・後文と署名欄・別紙の5つの部分でできています。部分ごとに何が書いてあるはずかを知っていれば、書いていないものにも気づけます。第1条から読み始める前に、当事者の数、作成通数、日付、別紙の有無を確かめて全体の地図を作る。契約書を読む最初の手順を整理します。
10 共通条項の条項別解説

表題は契約の性質を決めない:「契約書」「覚書」「合意書」の違い

「覚書だから拘束力が弱い」は誤解です。当事者間に法的な効果を生じさせる意思表示の合致があれば、表題が契約書でも覚書でも効果は変わりません。それでも表題を使い分ける理由と、決め方の順序を示します。
06 契約審査・レビューの方法

依頼を受け付ける:何を出してもらうか

契約書だけを渡されてレビューを始める前に、何を出してもらうか。取引の背景、どちらが作った契約書か、締切とその理由、決裁ライン、過去の同種契約の5つを押さえる方法と、依頼フォームの作り方を扱います。
09 共通条項総論

共通条項の機能分類:リスク配分/手続/終了処理/紛争解決

共通条項を9つの機能グループに分ける方法と、その使い方を説明します。分類は整理のためではなく、契約書に何が欠けているかを見つけるための道具です。粗い4分類と細かい9分類を用意し、自社のひな型を並べ直す手順まで扱います。
03 契約書を読む技術

条・項・号と、条文の引用の作法

契約書は条・項・号の順に並び、項の中には本文・ただし書・柱書があります。「前項」と書くか「前項本文」と書くかで、引用の範囲が変わります。「前条」「次項」は条を足し引きすると指す先が黙って変わる。引用の表記を1通の中で揃え、条を追加・削除したら参照を確かめ直す。条文の住所の読み方と書き方を整理します。
03 契約書を読む技術

「及び」「並びに」「又は」「若しくは」:どちらとも読める箇所を見つける

「又は」なら並べたどれか1つで足り、「及び」なら全部がそろって初めて当たる。接続の語1つで、条項が働く範囲が変わります。「及び」は一番小さい接続、「又は」は一番大きい接続という使い分けと、読むときにまず「又は」を探す理由を整理し、どちらとも読める条項を号に分けて曖昧さを消す書き方を示します。
06 契約審査・レビューの方法

事業部門へのヒアリング:何を聞けば条項が決まるか

契約書のレビューに必要な情報を、事業部門からどう聞き取るか。「取引の全体を教えてください」では条項が決まりません。商流・支払・成果物・トラブル・力関係の5領域を、条項から逆算して聞く方法を扱います。
09 共通条項総論

条項どうしの相互作用:条項は単独では動かない

契約書の共通条項は、1つずつでは働きません。責任上限と違約金、解除と存続条項、期限の利益喪失と相殺と担保、完全合意と修正制限、通知と解除。代表的な5つの組み合わせで噛み合わせを確かめ、上限条項と全額賠償条項が並んだ契約を裁判所がどう読んだかを手がかりに、1条項を直したときに一緒に開く条項の一覧と、優先関係の書き方を整理します。
03 契約書を読む技術

「その他」と「その他の」、「以上・以下・超・未満」:境目がどちらに入るか

「その他の」の前の言葉は後ろの広い言葉の例示、「その他」の前後は並列。「以上・以下」は基準の数を含み、「超える・未満」は含まない。1字の違いで条項が拾う範囲が変わります。包括的な言葉が思ったより狭く読まれた裁判例と、金額の段階を「以下」と「を超え」で組んで重なりと抜けを防ぐ書き方を整理します。
06 契約審査・レビューの方法

自社の立場で読み替える

相手方から届いた契約書のひな型を、自社の立場で読み替える方法を説明します。条項を裏返して読む、相互条項に見えて片務的なものを見分ける、甲乙を入れ替えた版を作って読む、という3つの手順を扱います。
03 契約書を読む技術

「前」「後」と「以前」「以後」:期間の起算

「以前」「以後」は基準の日を含み、「前」「後」は含まない。「契約日から5日以内」は初日を数えず、「契約日から起算して5日以内」は初日から数える。1字の違いで期限が1日ずれます。期間の数え方を覚えるより、日付で書くか、起算日と休日の扱いを条項に書き込むほうが確実です。
06 契約審査・レビューの方法

抜けている条項を見つける技術:チェックリストと、取引からの逆算

相手方の契約書案は、相手方が必要と考えた条項でできています。書いてある条項の良し悪しは読めば分かりますが、書いていない条項は見えません。チェックリストと照らし合わせる方法と、取引の中身から逆算する方法を組み合わせて欠落を見つけ、どこまで埋めるかを分けて判断します。
01 契約法務という仕事

法務がやりがちな失敗:形式的な指摘、過剰な保守、説明のない修正

直した内容ではなく直し方に原因がある失敗が3つあります。文言の細部から入る形式的な指摘、あらゆる論点で最も有利な案を出す過剰な保守、結果だけを返す説明のない修正です。実務誌の事例と実務書のやりとりに即して、直し方を組み立て直します。
06 契約審査・レビューの方法

修正案の作り方と修正理由の書き方:法的根拠・取引上の実害・代替案

「当社に不利なため」とだけ書いた修正案は、同じ理由で元に戻されます。修正理由は、社内を動かす理由と相手方を動かす理由の二通りが要ります。相手方向けには、法的根拠・取引上の実害・代替案の3層で書く。削る・足す・書き換えるの使い分けと、修正履歴での見せ方もあわせて整理します。
03 契約書を読む技術

定義条項の読み方:定義された語がどこで効くか

定義された語は、本文で使われるたびに定義の中身をその条項に持ち込みます。定義語を一覧にし、本文のどこで使われているか、似た語が混ざっていないか、定義が引く別紙が正しいかを突き合わせる。「本製品」と「本商品」が混在した契約書をどう読むか、定義条項の読み方を整理します。
01 契約法務という仕事

法務担当者は実際に何に悩んでいるか

法務担当者の手が止まるのは、条項の中身が分からないときだけではありません。25社の法務担当者が自分の経験を書いた実務誌の特集から、時間がない・判断がつかない・通らない・一人法務・自信がないという5つの悩みを取り出し、それぞれをどう仕組みにしたかを整理します。
03 契約書を読む技術

主語・時制・条件節の読み分け:義務者は誰か、いつ発生するか

契約書を読むというのは、条文ごとに「誰が」「いつ」「何を」を取り出す作業です。5W1Hで条文を分解すると、主語のない文、条件の書かれていない義務、「するものとする」で強さのぼやけた文末が見えてきます。主語を補い、条件節を切り出し、義務・権利・裁量を見分ける読み方と直し方を整理します。
06 契約審査・レビューの方法

事業部門への説明:法的リスクと事業判断を分けて伝える

事業部門は、その契約を締結すべきだと考えて審査を依頼してきます。「リスクがあります」とだけ返せば、法務は取引を止める部署になります。踏めないリスクと、踏むかどうかを選べるリスクを分け、確率と大きさ、選択肢をそろえて渡す。判断は事業部門がし、その過程を記録に残す、という伝え方を整理します。
03 契約書を読む技術

「ものとする」「するものとする」「努めるものとする」の差:義務の強さを決めているか

「しなければならない」は端的な義務、「するものとする」はやや弱い義務、「努めるものとする」は努力義務。文末の言葉は義務の強さの目盛りですが、契約書では目盛りを決めないまま「ものとする」で終えている条文が少なくありません。在庫確保条項を例に、努力義務と法的義務で売主と買主の利害が逆になることと、義務にしたいなら中身を具体的に書くことを整理します。
06 契約審査・レビューの方法

どこまで直すか:譲れない・譲れる・どちらでもよい

気になる箇所に全部赤を入れた修正案は、相手方に「全部は飲めない」と思わせ、いちばん大事な1点も通りにくくします。修正したい箇所を、譲れない・譲れる・どちらでもよいの3つに仕分け、金額・確率・取引の重要度と力関係で判断し、譲る箇所を交渉の材料として使う方法を整理します。
02 契約の基礎理論

債権法改正が契約実務に与えた影響の全体像:判断の材料が変わった

債権法改正で契約書はどう変わったか。実務書は「契約書の作成という場面では、大きな影響を及ぼす改正点は意外に少ない」としています。それでも意識して検討する必要が生じたのはなぜか。帰責事由・契約不適合・定型約款・消滅時効・譲渡制限特約の5つの変化と、その底に流れる「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」という判断枠組みを整理します。
10 共通条項の条項別解説

特約条項(契約条項の一部適用を排除する条項)の使い方と事故

「第17条の条文を破棄する」と書いた特約で、売主は瑕疵担保責任を免れませんでした。消えるのは契約書の条項だけで民法までは消えないこと、特約の射程が目的物の一部にとどまること、義務を作る特約に期限がないときの扱いを、裁判例2件から追います。
03 契約書を読む技術

別紙・仕様書・発注書との関係と優先順位条項:契約はどの文書でできているか

1つの取引の契約は、本文、別紙、仕様書、注文書を合わせた束でできていることが多く、読むときも束で読みます。別紙が付いているか、版は新しいか、基本契約と個別契約が食い違ったときにどちらが優先するか。優先順位の3つの定め方の長所と短所を踏まえ、契約を構成する文書の一覧を作って読む方法を整理します。
02 契約の基礎理論

改正法の経過措置:どちらの民法が適用されるか

2020年4月1日より前に締結された契約には、いまも改正前民法が適用されます。ただし「施行日前の契約は全部旧法」ではなく、解除は契約締結日、債務不履行は債務の発生時、時効は債権の発生時、契約の成立は申込みの到達時と、論点ごとに基準時が違います。定型約款だけは遡って新法が適用されます。更新があった場合の扱いも含めて整理します。
06 契約審査・レビューの方法

最終案の審査と、締結後に法務がやること:差分を取るのが最後の仕事

レビューは修正案を出したら終わりではありません。交渉を経た最終版は、法務が出した修正案と同じとは限らないからです。自社の最終修正案と最終版を比較して差分を確かめ、交渉で直した条項と他の条項の噛み合わせ、別紙の版、体裁を確認し、交渉記録と一緒に保管する。締結前チェックリストの形で整理します。
06 契約審査・レビューの方法

Wordの変更履歴・比較を使ったレビュー実務:返す前に消すもの、残すもの

変更履歴は、修正を見せる道具であると同時に、見せるつもりのないものまで相手方に渡してしまう道具です。表示を「変更履歴なし」に切り替えても履歴は文書に残ります。比較機能で差分を取る、回ごとに色を分けて返す、送る前にドキュメント検査で内部コメントや作成者情報を消す。Wordでのレビューの作業手順を整理します。
10 共通条項の条項別解説

自動更新条項:意義と留意点

契約書どおりに更新拒絶を通知しても、更新を止められないことがあります。約8年続いた業務委託契約で、5か月前の更新拒絶が「相当な予告期間とはいえない」とされた裁判例から、通知の期限・方法をどう書くか、そして書いても防げない部分を扱います。
06 契約審査・レビューの方法

AI契約審査サービスとの付き合い方:書いてあることと、起きうること

AI契約審査サービスが得意なのは、契約書に書いてあることの処理です。欠落条項や表記ゆれの洗い出しは任せられますが、この取引で何が起きうるかの判断は任せられません。修正案の文言というグレーゾーンの扱い方、1件の審査での手順、組織として導入するときのポイント、採用の最終判断を人に残す理由を整理します。
10 共通条項の条項別解説

中途解約条項:留保しないとどうなるか

期間を定めた契約は、中途解約条項がなければ途中で抜けられません。期間の定めがある場合とない場合で出発点が逆になること、予告期間を「相当な」と書くと争いになること、そして請負641条・委任651条の任意解除権との関係を扱います。
10 共通条項の条項別解説

更新後の期間・条件が定まっていない場合

「同一の条件で更新される」とだけ書くと、更新後が1年契約なのか期間の定めのない契約なのかが決まりません。終了に双方の合意を要する形で「以後も同様とする」を足すと、今度は終わりがなくなります。永久自動更新条項について、交渉された条項とされなかった条項で拘束力に差を付けた裁判例まで追います。
10 共通条項の条項別解説

支払方法と振込手数料の負担:甲乙の書き違いと口座の変更

支払方法を書かなければ現金の持参、振込手数料を書かなければ買主の負担になります。条項に書いていても、「振込手数料は甲の負担とする」の甲が誰を指すのか、振込先の口座が変わったらどうするのかで争いが残ります。立場ごとの書き分けと改善例を示します。
10 共通条項の条項別解説

相殺の基本と相殺予約:書かなくてもできることを、なぜ条項にするのか

相殺は契約書に書かなくてもできます。それでも相殺の条項を置くのは、民法が求める「双方の債務が弁済期にあること」という要件を、契約で前倒しするためです。相殺予約が動かすもの・動かさないもの(法令上の相殺禁止、取適法)と、相殺する側・される側それぞれの書き方を整理します。
10 共通条項の条項別解説

免責条項の限界:公序良俗・信義則

免責条項の効力を正面から決める条文は民法にありません。故意・重過失・軽過失で扱いが分かれる理由、重過失の意味をめぐる二つの理解、そして除外を書かなかったときに条項全体が失われる構造を扱います。
10 共通条項の条項別解説

消費者契約法による規制

BtoCでは、免責条項は合理性ではなく類型で無効になります。全部免責・一部免責・サルベージ条項規制を条文で整理し、条項が不明確なときの3要件、条項使用者不利の原則、限定解釈がどこまで期待できるかを裁判例で追います。
10 共通条項の条項別解説

割賦販売法・特定商取引法・独占禁止法による規制

業法は、条項の合理性を審査せずに額の上限そのものを決めます。割賦販売法・特定商取引法の上限規制と抗弁の接続、書面交付義務とクーリング・オフ、独占禁止法の優越的地位の濫用、そして2026年に改称された取適法を整理します。
10 共通条項の条項別解説

解約一時金・中途解約違約金条項の効力

残存期間の全額を違約金とする条項は、どこまで残るのか。1年分は有効・3年2か月分は無効とした裁判例と、フランチャイズ契約の解約一時金を無効とした判断枠組みから、水準の目盛りと交渉での説明のしかたを扱います。
10 共通条項の条項別解説

通知期間の設計

契約不適合の通知期間は、民法566条の1年、商法526条の6か月、そして消滅時効の二層構造でできています。起算点が買主の主観で決まってしまう問題と、短縮特約が売主の重過失で外れる場面を、条文と判旨、条項例で追います。
10 共通条項の条項別解説

請負における修補・報酬減額・出来高請求

請負の担保責任は2017年改正で規定が削られ、売買の規定を準用する形になりました。修補請求の限界、修補に代わる損害賠償の順序、報酬減額請求、そして仕事が途中で終わったときの出来高請求まで、削られた条文を契約書でどう戻すかを条項例で示します。
10 共通条項の条項別解説

契約不適合責任を免除・軽減する条項の限界

「一切の契約不適合責任を負わない」と書いても、売主が知りながら告げなかった事実には効きません(民法572条)。免除条項の限界と、全部免除が通らないときに事由を列挙して部分免除にする書き方を、条項例で示します。
10 共通条項の条項別解説

列挙の網羅性:「その他これらに類する事由」をどう書くか

不可抗力条項の事由の列挙は、長ければよいものではありません。書いていない事象は不可抗力でないと読まれる危険と、「その他不可抗力」が列挙の色に染まる問題。原材料の高騰が入るかどうかと、供給側と支払側で望ましい書き方が正反対になることを、条項例で示します。
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秘密情報から除外される情報

秘密保持条項のただし書は、条項の射程を後ろから削ります。除外事由5つの並べ方、立証責任をどちらに置くか、そして「法令に基づく開示」をここに入れてはいけない理由を整理します。
10 共通条項の条項別解説

法令・行政機関からの開示要求への対応:捜査機関から求められたとき

捜査機関や監督官庁から開示を求められたとき、秘密保持条項が判断の妨げになることがあります。除外事由に置くべきでない理由、通知義務を努力義務型にする理由、そして自社が紛争の当事者になったときの扱いを整理します。
10 共通条項の条項別解説

再委託の扱い:個人データが二次先へ流れるとき

委託先がさらに別の会社に出しているとき、委託元は何をすればよいのか。再委託先の事故が委託元の法違反と判断され得ること、条項を入れただけでは監督したことにならないこと、そして原則禁止型・事前通知型・事後報告型の使い分けを扱います。
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著作者人格権不行使特約:書いても効かないことがある

著作者人格権は譲渡できないので、実務は「行使しない」と約束させます。ところが不行使特約が契約書にあったのに氏名表示権については合意がなかったとされた裁判例と、特約がないのに同一性保持権の行使が認められなかった裁判例があります。どちらも決め手は慣行でした。
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侵害が判明した場合の対応義務と費用負担:「解決し、または協力し」の「または」が争われた

「自己の費用と責任で解決し、または協力し、一切迷惑をかけない」。この一文の「または」をめぐって主導権が争われ、買主が単独でライセンス契約を結んだ結果、過失相殺で7割が削られた事件があります。通知・情報提供・主導権・和解権限の書き分けを扱います。
10 共通条項の条項別解説

再委託先の行為に対する責任:「一切の責任を負う」は何も足していない

「再委託先の行為について乙が一切の責任を負う」。この一文は、実は何も足していません。条項がなくても再委託先の落ち度は受託者の債務不履行だからです。ではレビューでどこを見るのか——再委託先を把握する手段と、それを実際に使うことです。
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過怠約款:「2回分怠ったとき」の数え方

「分割金の支払を2回分怠ったとき」。この書き方では、2回続けてなのか、通算2回なのか、一部弁済があったときはどうなのかが決まりません。一括請求の入口で止まらないように、回数と金額で条件を閉じる直し方を扱います。