自動更新条項:意義と留意点

10 共通条項の条項別解説

【基礎実務】最終確認:2026年10月25日

一 この条項は何をしているのか

1 書かなければ、期間満了で終わる

期間を定めた契約は、期間が満了すれば終わります。更新の条項がなければ、続けたいときは改めて契約を結び直すことになります。

企業間の契約では、最初の契約締結時において、どの程度の期間の間、契約を継続するかが決まっていないことが多い(注1)。そこで、契約の有効期間を1年間(長くても数年間)程度としたうえで、その後に更新というかたちで契約を続けるか否かを当事者が決定できるような形で合意することが多くみられます(注1)。

更新条項は、契約期間を短期間で設定したうえで、その後に更新するか否かについてのオプションを当事者に付与することに意義があります(注1)。

更新条項のうち、特に、当事者がなんらの意思表示を行わない場合には自動的に契約が更新される旨を定めている条項を、自動更新条項と呼ぶこともあります(注2)。

2 自動更新は、誰のためにあるのか

更新条項には2通りの定め方があります(注3)。

定め方何もしないとどうなるか
自動更新を前提に、更新しない場合は相手方への意思表示等を要求する更新される
自動更新をしないことを前提に、更新する場合は相手方への意思表示等を要求する終わる

契約更新に係る管理コストの軽減のためには、前者の定め方が得策です(注3)。毎年の更新手続が要らなくなります。

もっとも、前者の場合には、後者の場合よりも、契約更新への期待は強くなりがちであり、継続的取引の終了の場合には注意が必要です(注3)。手間を減らす仕組みでも、取引の経過によっては更新拒絶が制限され、「終われない」仕組みになることがあります。

なお、ほとんどの更新条項は、契約当事者(の双方)からなんらかの意思表示がなければ更新される旨の自動更新条項を定めています(注4)。


二 よくある条項例

(更新) 第○条 本契約の契約期間は○年間とする。ただし、本契約期間が満了するまでに本契約を終了する旨の通知をしないときは、本契約は同一の条件で更新されるものとする。(注5)

この条項例には、次の3つが書かれていません(注5)。

  • 更新する手続(誰が、いつまでに、どんな方法で終了通知をするのか)
  • 更新後の期間
  • 2回目以降の更新の有無と条件

三で、順に見ます。


三 問題点

1 不要になった契約が、更新され続ける

よくあるのは、取引が実質的に終わっているのに、自動更新条項があるために契約書の効力だけが続いている状態です。

秘密保持義務や競業避止義務が付いていれば、それも続きます。反社条項の表明も続きます。保証金を差し入れていれば、返してもらえないまま置かれます。

更新を止めるには通知が要るのに、通知の期限が過ぎたことに気づく仕組みが社内にないと、止まりません。

2 更新拒絶の期限を過ぎて気づく

前記の条項例は「本契約期間が満了するまでに」としか書いていません。満了日の前日に通知しても間に合うことになります。

実務でよく見られるのは、1か月、3か月または6か月という期間です(注6)。継続的契約終了の制限の法理の存在や、実際に契約関係を終了させるにあたってはさまざまな対応が必要となることもあることから、3か月または6か月の期間を設けるものが多くみられます(注6)。

自社が通知する側から見れば、期限は遅いほうが助かります。相手方から通知される側から見れば、早いほうが次の手を打てます。この条項は、双方にとって同じ数字が有利にも不利にもなります。

3 条項どおりに通知しても、更新を止められないことがある

ここが、この条項のいちばん重い論点です。

自動更新が何度も行われてきたような継続的な契約関係が構築されている場合には、形式的な期間満了の時期が到来するとしても、契約当事者は契約が当然に更新されることを期待していることから、信義則(または権利濫用)の観点から、契約の更新拒絶権を行使するに当たっては、契約書に定められている更新条項に基づく更新拒絶権の要件を満たすと否とにかかわらず、更新拒絶を正当化する事由を備えるか、または、相当の予告期間を設ける必要があると判断される場合があります(注7)。継続的契約終了の制限の法理と呼ばれます(注7)。

裁判例で見ておきます。結婚式場での美容販売業務の委託契約について、委託者が更新拒絶をした事案です(注8)。

契約は期間7か月で、期間終了の3か月前までに更新拒絶の申出がなければ1年ずつ延長する自動更新条項が置かれていました(注8)。裁判所は、次のように述べています。

本件契約が,一定期間継続的に,Bにおいて,原告が結婚式場用の美容販売業務を行うという内容の契約であること,上記契約書第2条に本件契約の契約期間を7か月とした上で,双方に異議がない限り契約が自動継続するものとする旨のいわゆる自動更新条項が存在すること,原被告双方ともに,数年単位で契約が継続するものと考えていたこと,本件契約は,Bの会館建て替えに伴う2年6か月の休業期間を挟んで,約8年間継続されたこと,原告は,Bのリニューアルオープンに向けて多額の資本を投下していること……等の本件契約の事情からすれば,被告の本件更新拒絶の意思表示により契約終了の効果が生じるためには,契約を継続させることが当事者にとって酷であり,契約を終了させてもやむを得ない正当な理由があることを要し,正当な理由がない場合には,相当の予告期間を設けるか,または相当の損失補償をしなければならないと解すべきである(注8)

委託者は契約書の定める3か月前の期限より前(約5か月前)に通知していたのに、裁判所は正当な理由か、相当の予告期間か、損失補償を求めました。

この事案では、業務についてのクレームはあったものの、件数は年間約200件程度の結婚式・披露宴に比べて多いとはいえず、満足したという回答も存在するなどとして、正当な理由は認められませんでした(注8)。そのうえで、委託者は約5か月前に更新拒絶の意思表示をしていたものの、結婚式場用の美容販売業務という業務の性質上、次の契約の相手方を探したり退去したりする等の準備期間としては5か月では短いとして、相当な予告期間を設けたとはいえないとされています(注8)。

結論は、債務不履行として352万2085円の賠償です(注8)。


四 改善例

1 通知の期限・方法・効果を書き切る

改善例は、次の形です(注9)。

(更新) 第○条 本契約の契約期間は○年間とする。ただし、本契約期間が満了する○か月前に、当事者の一方、又は、双方から、相手方に対して、本契約を終了する旨の書面による通知をしないときは、本契約は同一の条件で1年間更新されるものとし、以後も同様とする。(注9)

二の条項例と比べると、4か所が足されています。「○か月前に」(期限)、「当事者の一方、又は、双方から」(誰が)、「書面による通知」(方法)、「1年間更新されるものとし、以後も同様とする」(更新後の期間と2回目以降)。

方法を書面に限るかどうかは、手間と明確さのどちらを取るかで決まります。更新拒絶の意思表示をする手間の軽減という意味では手段を限定しないほうがよいのですが、手段を限定しない場合には、メールや電話等により更新拒絶の意思表示を受けている場合等についても更新拒絶の意思表示としては有効になるため、更新拒絶の意思表示がなされたか否かが不明確になり、その点に関する紛争を誘発しかねません(注10)。

2 更新のたびに条件を見直す仕組みを入れる

「同一の条件で」と書けば、価格も数量も据え置きで延びます。長く続く契約では、これが不都合になることがあります。

そこで、更新のタイミングで条件を協議する旨を足す形が考えられます。

2 前項により本契約が更新される場合、甲および乙は、更新後の期間における対価その他の取引条件について、本契約期間が満了する○か月前までに協議するものとする。協議が調わないときは、従前の条件によるものとする。

末尾の「協議が調わないときは、従前の条件による」が要点です。これを書かないと、協議が調わないまま期間が満了したときに、更新後の対価や条件が決まりません。

3 自社が抜ける側に回ることを、締結時に想定しておく

三の3で見たとおり、契約書に書いた期限を守っても、更新拒絶が認められないことがあります。

いかなる場合に継続的契約終了の制限の法理により更新拒絶権の行使において正当化事由が必要か、またはどの程度の予告期間が必要かについては、契約の内容、契約がどの程度長い期間にわたって継続してきたのか、契約当事者が当該契約に基づく取引にどの程度依存しているか、契約当事者が契約の継続を前提として当該契約の履行のためにどの程度の投資を行っていたか等の諸般の個別事情を考慮して判断されるため、一概に判断することはできません(注7)。

条項の書き方で完全には防げません。できるのは、相手方が自社との取引に依存する形を作らないこと、相手方に自社との契約のための投資をさせるときは負担の分け方をあらかじめ決めておくことです。


五 書き分けの分岐:継続してほしい側と、いつでも抜けたい側

立場望ましい形
継続してほしい側(設備投資をした受託者、専属販売店など)自動更新を原則にする。更新拒絶の通知期限を長く(6か月)取る。方法を書面に限る
いつでも抜けたい側(発注者、買主)通知期限を短く(1か月〜3か月)する。方法を限定しない。中途解約条項も併せて置く
条件を毎年見直したい側四の2の協議条項を入れる。あるいは自動更新にせず、更新する場合に合意を要する形にする

通知期限の数字だけを交渉しても足りません。三の3で見たとおり、長く続いた契約では、書いた数字より実際の関係のほうが効きます。

落としどころとして使えるのは、期間に段階を付けることです。契約開始から3年間は更新拒絶に6か月前の通知を要し、それ以降は3か月前とする。あるいは、相手方が投資を回収する期間だけ長く取り、その後は短くする。数字を1つに決めようとすると、どちらかが呑めません。

そして、締結したら通知期限をカレンダーに落とします。この条項は、書いた時点ではなく、忘れた時点で問題になります。

本稿で扱わなかったこと

期間の始期・終期の書き方と、通知期限の数え方は、別稿「契約期間の始期・終期と期間の計算方法」が扱います。「満了の3か月前まで」が何月何日かは、そちらで決まります。

更新後の期間が書かれていない場合の処理は、別稿「更新後の期間・条件が定まっていない場合」が扱います。本稿の四の1で「1年間更新されるものとし」と書いた部分の裏返しです。

期間の途中で契約を終わらせる条項は、別稿「中途解約条項:留保しないとどうなるか」が扱います。

更新拒絶が認められるかという紛争そのものは、22章と27章の記事が扱います。更新条項の書き方と、更新拒絶が認められるかは別の問題です。

契約期間の管理をどう仕組みにするかは、22章の記事が扱います。


参考文献等

註

(注1)太田大三『契約書一般条項のポイント──ドラフトに効く、レビューに活きる』(商事法務、2026)8頁
(注2)同8頁
(注3)秦周平ほか編『契約書リーガルチェックのポイント──事例でみるトラブル条項例』(新日本法規出版、2020)設問7(自動更新の期間の定めが明確でなく、更新後の期間条件が問題となる場合)の解説1
(注4)前掲注1・12頁
(注5)前掲注3の設問7が掲げる条項例および問題点
(注6)前掲注1・12頁
(注7)同10頁
(注8)福岡地判平成16年8月2日(平成14年(ワ)第4358号、裁判所ウェブサイト)
(注9)前掲注3の設問7の改善例
(注10)前掲注3の設問7の解説3

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