「抽選で○名様に旅行をプレゼント」「ご購入者全員にオリジナルグッズを進呈」「SNSフォロー&リポストでAmazonギフトカード抽選」
こうしたキャンペーンを企画する際に、「この金額は大丈夫か」「この仕組みは適法か」と不安になる担当者は多いと思います。景品表示法による景品類規制は、表示規制と並んで、販促キャンペーンを見る上で不可欠の知識です。
本記事では、景品表示法による景品類規制の全体像、一般懸賞・共同懸賞・総付景品・オープン懸賞の区分と上限額、SNSキャンペーンで起きやすいトラブル、社内チェックのポイントを弁護士の視点で解説します。
景品類規制の全体像
景品表示法による景品類規制は、主に四つの区分で適用されます。それぞれで金額上限・総額規制が異なるため、キャンペーンを企画する最初に「どの区分に該当するか」を見極めることが出発点となります。

一般懸賞
「抽選」「クイズの正解者」「アンケート回答者の中から抽選」など、偶然性や特定の行為により当選者を決める方式の懸賞。個々の懸賞に適用される一般的カテゴリーです。
- 取引価額5,000円未満:景品最高額は取引価額の20倍まで
- 取引価額5,000円以上:景品最高額は10万円まで
- 景品総額は懸賞に係る売上予定総額の2%まで
共同懸賞
複数の事業者が共同で行う懸賞(商店街の合同抽選、業界団体によるキャンペーンなど)。一般懸賞よりも上限が緩めにされています。
- 取引価額に関わらず、景品最高額は30万円まで
- 景品総額は売上予定総額の3%まで
総付景品
「代金を支払った人全員に提供」「来店者全員に提供」など、取引を条件にもれなく提供される景品。
- 取引価額1,000円未満:景品最高額は200円まで
- 取引価額1,000円以上:景品最高額は取引価額の10分の2(20%)まで
オープン懸賞
商品・サービスの購入を条件としない懸賞。SNSフォロー&リポストキャンペーン、ウェブで誰でも参加できるクイズなどが該当します。これらには景品表示法上の金額上限は適用されません。
ただし、「店舗でアンケートを受け取るときに商品を購入した人」「有料メルマガの読者だけ」という条件をひとつでも付けると、たちまち「一般懸賞」のルール下に入ります。オープン懸賞の状態を保つためのデザインは、キャンペーン企画の最初にチェックすべきポイントです。
その他規制との関係

賭博規制との区別
偶然性により、金銭・財物その他の経済的な利益を与えるケースは、刑法(賭博罪)・風営法によるギャンブル規制も検討が必要になりうる点に注意が必要です。ポイント還元キャンペーンやゲーム中の抽選、イベントでの抽選と当選者への現金提供は、設計によっては賭博規制との関係を検討する必要があります。
資金決済法との関係
キャンペーンの景品として前払ポイントを提供する、「全員に使えるポイントを贈る」というキャンペーンにしている場合は、資金決済法上の前払式支払手段規制をチェックする必要があります。
SNSキャンペーンで起きやすいトラブル

「オープン」のつもりが「一般懸賞」になっている
「SNSでフォロー&リポストしてくれた方の中から抽選で、当社サービスを5名様に1ヶ月12,000円相当プレゼント」というキャンペーンは、新規のフォロワーであることのみを条件として、景品等がもらえる場合には、通常、オープン懸賞として取り扱われることになります。
しかし、そのような条件の達成によって懸賞に応募することが可能・容易になる場合などには、取引付随性のある懸賞に当たり、景品表示法の適用を受ける可能性があります。そのため、取引価額(1ヶ月分サービス価格)が5,000円以上なら10万円・未満ならその20倍まで、という上限規制をチェックする必要があります。
個人情報取得の適正性
キャンペーン参加者から取得した個人情報は、個人情報保護法上の「利用目的の明示」の範囲でしか使用できません。キャンペーン参加者をそのままメルマガの送付先に追加してしまう、というケースは設計次第では違反となり得ます。
ステマ規制との交錯
インフルエンサーにキャンペーンの拡散を依頼する際、PR表記を明示しないとステルスマーケティング規制の違反となります。ステマ規制(令和5年運用基準)の実務対応については以下の法律記事もあわせてご参照ください。
社内チェックポイント
キャンペーン企画を決裁に上げる際に、以下のチェックを社内フローに組み込んでおくと違反リスクを大幅に下げられます。

- キャンペーン区分:一般懸賞/共同懸賞/総付景品/オープン懸賞のどれに該当するか
- 取引価額の認定:1,000円未満か、5,000円未満か、それ以上か
- 景品金額の上限:個々の景品と総額の両方がルール内に収まっているか
- 個人情報の取扱い:利用目的と提供先の明示、保管期間
- 選考・発送フロー:トラブル時の対応・保管期間
特にキャンペーン規模が大きい場合は、景品の調達にも多額の費用がかかるため、実施前の外部弁護士によるレビューをデフォルト化した企業も多いです。
キャンペーン設計は「区分を選ぶよりも『適合させる』」視点で
ここまで、一般懸賞・共同懸賞・総付景品・オープン懸賞のルールとSNSキャンペーンで起きやすいトラブルを見てきました。キャンペーンを設計する際に重要なのは、「このキャンペーンはどの区分にしたいか」よりも、「実際にこの企画はどの区分に該当するか」を冷静に見極めることです。
オープン懸賞のつもりで設計したキャンペーンが、「ちょっとした条件追加」で一般懸賞に変身してしまうと、当初の予算計画と規制適合性の両方を全面見直しする事態となります。企画段階で「どの区分を狙うか」を決め、それと矛盾する仕様を予防的に除いておくことがチームで見るべきポイントです。
プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。




