電子帳簿保存法と保存要件

08 締結手続・電子契約・証拠管理

【応用実務】最終確認:2026年10月25日

一 いつ・誰が・何をするのか

電子契約で契約を締結すると、締結済みの契約書は電子データとして残ります。このデータは、税法の上でも保存の対象になります。

所得税と法人税の保存義務者は、取引情報を電磁的方式で授受する取引(電子取引)をしたときは、その取引情報を電磁的記録で保存しなければなりません(電子帳簿保存法7条)(注1)。取引情報とは、取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などに通常記載される事項をいいます(同法2条5号)(注2)。クラウドサービスで雇用契約書を授受した場合も電子取引に当たるとされているので(注3)、電子契約サービスで締結した取引の契約書も、電子取引の取引情報として保存の対象になります。

本稿で扱うのは、電子契約を導入するときに、契約書データの保存のしかたとして押さえておく範囲です。個別の事業者の保存方法が要件を満たすかどうかの判断や、税務調査への対応そのものは扱いません。


二 手順

1 紙に印刷して保存するだけでは足りない

令和3年度の税制改正で、電子取引のデータを印刷した書面などで保存する措置は廃止されました。印刷した書面は、保存すべき書類として扱われません(注4)。電子契約で締結した契約書は、電子データのまま保存します。

例外は、同じ内容の契約書を書面でも取り交わし、書面を正本とすることを社内などで取り決めている場合です。電子データと書面の内容が同じなら、書面の保存だけで足ります。ただし、電子データに書面を補うような情報が含まれていれば、両方を保存します(注5)。

2 改ざんを防ぐ措置をとる(真実性)

電子取引のデータは、次のいずれかの措置をとって保存します(施行規則4条1項)(注6)。

  1. タイムスタンプが付された後に取引情報を授受する
  2. 授受の後、速やかに(事務処理の規程があれば、業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
  3. 訂正や削除をするとその事実と内容が確認できるシステム、または訂正や削除ができないシステムを使って、授受と保存をする
  4. 正当な理由がない訂正と削除を防止するための事務処理の規程を定め、それに沿って運用し、規程を備え付ける

訂正前・削除前の内容と訂正・削除の内容が自動的に記録されるシステムを使っているなら、3の措置に当たり、4の事務処理の規程を定める必要はありません。同じサービスの利用者どうしの取引で、それぞれがサービス提供者とデータの訂正を防止する条項を含む契約をしている場合は、その方法も4の規程を定める方法として認められます(注7)。電子契約サービスを選ぶときは、どの措置に当たるかを事業者に確認しておきます。

3 見られるように、探せるようにしておく(可視性)

保存した場所に、パソコン、プログラム、ディスプレイ、プリンタとそれらの操作説明書を備え付け、データを画面と書面に整然とした形式と明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておきます(注8)。

さらに、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を条件として検索でき、日付と金額は範囲を指定でき、2つ以上の項目を組み合わせて検索できるようにしておきます(注8)。もっとも、税務職員からデータの提示や提出を求められたときに応じられるようにしていれば、範囲の指定と項目の組合せの機能は要りません(注6)。そのうえで、基準期間(通常は2年前)の売上高が5,000万円以下であるとき、または印刷した書面を日付と取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしているときは、検索機能の確保そのものが要りません(注9)。専用のソフトがなくても、ファイル名に日付・取引先・金額を規則的に付けてフォルダに整理する方法や、索引簿を作る方法で検索の要件を満たすことができます(注9)。

4 保存する場所と期間

データは、取引情報を書面で受け取ったとした場合に保存すべき場所に、書面を保存すべき期間、保存します(施行規則4条1項)(注6)。法人の場合、契約書などの書類の保存期間は原則7年で、欠損金が生じた事業年度などは10年です(注10)。

クラウドサービスで保存する場合や、サーバが海外にある場合でも、保存場所のパソコンから通信回線でつながっていて、速やかに画面と書面に出力できるなら、保存場所に保存されているものとして扱われます。バックアップの保存は法令上の要件ではありませんが、保存期間を通じて適切に保存するために望まれます(注11)。

5 要件どおりに保存できないとき

要件に従って保存できなかったことについて、税務署長が相当の理由があると認め、かつ、税務調査の際にデータと、それを印刷した書面の提示や提出に応じられるようにしている場合には、要件にかかわらずデータを保存することができます(施行規則4条3項)(注12)。この猶予措置は、令和6年1月1日以後の電子取引が対象で、印刷した書面だけを保存する対応は認められません。データそのものも保存し、提示できるようにしておく必要があります(注13)。


三 つまずきやすいところ

1 電子契約サービスを解約したらデータが取り出せない

電子契約サービスで締結した契約書は、事業者のサーバに保存されていることが多くあります。保存期間(法人なら原則7年)の途中でサービスを解約したり乗り換えたりすると、要件を満たす形でデータを保存し続けられるかが問題になります。

サービスを導入する段階で、締結済みのデータを要件を満たす形で取り出せるか、取り出したデータを自社のどこに移すかを確認しておきます。

2 契約書の保存期間と、紛争に備える期間は別

税法上の保存期間が過ぎても、契約上の権利義務が残っていれば、契約書は紛争の証拠として必要になります。何をいつまで残すかは、税法の保存期間とは別に、消滅時効などを考えて決めます。この点は、別稿「締結の記録を残す:あとで証拠になるもの」で扱います。


四 仕組みにする

社内で決めておく項目は次のとおりです。

決めておくこと中身
対象の範囲どの電子契約サービス・メールで授受した契約書を電子取引のデータとして保存するか
改ざん防止の措置施行規則4条1項のどの措置によるか(サービスのシステムによるか、事務処理の規程によるか)
保存場所と検索の方法サービス上か自社サーバか。ファイル名の付け方や索引簿
保存期間税法上の期間と、契約管理上の期間をそれぞれ決める
解約・乗換え締結済みのデータの取り出しと移管の手順
管理責任者規程の管理責任者と、規程を周知する対象

事務処理の規程によって改ざん防止の措置をとる場合、国税庁が規程のひな形を示しており、規程に沿った運用のために、電子取引の情報を扱う従業員とその管理者に規程の内容を周知することが重要だとしています(注14)。

電子契約の導入は、契約書の保存先が倉庫からサーバに移ることでもあります。サービスを選ぶ段階で、税法の保存要件と、契約管理の期間の両方を満たせるかを確かめておきます。

本稿で扱わなかったこと

スキャナ保存(紙で受け取った書類を読み取って保存する制度)は、別稿「契約書の通数と原本の管理:製本・保管・電子化」で、原本を廃棄してよいかという観点からだけ触れました。消費税法上の保存の扱いや、帳簿の電子保存は、本稿では扱っていません。

税務上の取扱いは個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては税理士にご確認ください。


参考文献等

註

(注1)電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律7条
(注2)同法2条5号
(注3)国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)問3
(注4)前掲注3・問5
(注5)前掲注3・問16
(注6)電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則4条1項。前掲注3・問18も参照
(注7)前掲注3・問34
(注8)前掲注6の施行規則2条2項2号、2条6項5号
(注9)前掲注3・問19
(注10)前掲注3・問17
(注11)前掲注3・問28。バックアップについては問17も参照
(注12)前掲注6の施行規則4条3項
(注13)前掲注3・問89
(注14)前掲注3・問33


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