法定利率と約定利率:改正民法の変動利率と、利率を書いておく理由

10 共通条項の条項別解説

【基礎実務】最終確認:2026年10月25日

一 問題の所在:遅延損害金を書かないとどうなるか

取引基本契約の支払条項に、遅延損害金の定めがなかったとします。買主が代金の支払を3か月遅らせました。売主は、遅れた分の損害を請求できるでしょうか。

できます。金銭の給付を目的とする債務の不履行については、損害賠償の額は法定利率によって定まり、債権者は損害の証明をする必要がなく、債務者は不可抗力を抗弁にできません(民法419条)。遅延損害金の条項がなくても、法定利率による遅延損害金は当然に発生します。売買については、買主は目的物の引渡しの日から代金の利息を支払う義務を負い、代金の支払に期限があるときは、その期限が到来するまでは利息を支払わなくてよいとされています(民法575条2項)。その利率は別途合意されない限り、その利息が生じた最初の時点の法定利率です(注1)。

問題は、その法定利率が何%なのか、です。2020年4月1日に施行された改正民法は、法定利率を年5%から年3%に引き下げ、そのうえで3年ごとに見直す変動制を採りました(注2)。年5%の固定だった時代は、利率を書かなくても利率は一つでした。いまは、いつの時点の法定利率が適用されるのかを確かめないと、利率が決まりません。

本稿は、この変動制の仕組みを確認し、契約書に約定利率を書いておくことの意味を、利率の高低とは別の角度から整理します。


二 制度の枠組み

1 法定利率の変動制

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率によります(民法404条1項)。法定利率は年3%とし(同条2項)、法務省令で定めるところにより、3年を一期として、一期ごとに変動します(同条3項)。

変動制の仕組みは、次のとおりです(注2)。

  • 法定利率は当初年3%とし、3年を1期として3年ごとに見直す。当初は令和2年4月1日から令和5年3月31日までが第1期
  • 直近で法定利率を変更した期の基準割合と比べて1%以上の変動が生じた場合に、法定利率を1%単位で変動させる
  • 基準割合は、各期の初日の属する年の6年前の1月から前々年の12月までの5年間の各月の短期貸付けの平均利率で、法務大臣が告示する

改正前の法定利率が市中金利を大きく上回っていたので引き下げ、今後の市中金利の変動との乖離を避けるために、3年ごとの見直しと1%以上の変動を要件とする仕組みにしました(注2)。極めて緩やかな変動制を採用することで意見の一致を見た、というのが立法の経緯です(注2)。

法制審議会の部会では、法定利率が使われる3つの場面を同じ利率にしてよいのかも議論されました。利息を払う合意はしたが利率を定めなかった場面、遅延損害金の利率を定める場面、中間利息控除の利率を定める場面の3つです(注2)。改正前はいずれも5%でしたが、この3つを同じ利率とする取扱いには強い疑問が示され、外国の法制のように、遅延損害金については履行を強制するための要素を上乗せした利率にすべきだという意見もありました(注2)。結論として、民法は3つの場面を同じ法定利率で扱う形を維持しました(注2)。遅延損害金に履行を促す要素を持たせたいなら、それは契約で書くほかない、ということです。

2 いまの法定利率

法務省は、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの第3期について、基準割合を年0.4%と告示しました(令和7年法務省告示第73号)(注3)。第1期の基準割合(0.7%)からの変動が1%未満のため、第3期も法定利率は年3%のまま変わりません(注3)。

期間法定利率
令和2年3月31日まで年5%
令和2年4月1日〜令和5年3月31日(第1期)年3%
令和5年4月1日〜令和8年3月31日(第2期)年3%
令和8年4月1日〜令和11年3月31日(第3期)年3%
令和11年4月1日以降未確定(変動の可能性あり)

(注3)

改正前は、商行為によって生じた債務には年6%の商事法定利率がありましたが、この規定(改正前商法514条)は削除されました(注2)。商取引でも、法定利率は年6%から年3%に変わっています(注2)。

3 金銭債務の特則:いつの法定利率か

遅延損害金について、民法419条1項は、損害賠償の額は債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める、と定めています。改正前は単に「法定利率によって定める」とだけ書かれていましたが、改正で基準時が明記されました(注4)。

遅延損害金の算定は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率によるもので、事後的に法定利率が変動しても影響を受けません(注4)。

同条ただし書は、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率による、と定めています。


三 解釈:変動制が契約実務に与えた影響

1 個別の債権の利率は、途中で変わらない

変動制と聞くと、支払が遅れている間に法定利率が上がれば遅延損害金も上がる、と考えがちです。そうはなりません。

元本債権が存続している間に法定利率に変動があっても、利息が生じた最初の時点の法定利率によります(利息は日々生じるので、最初に利息が生じた日の法定利率に固定する趣旨です)。そのため、個別の事案で事後的に適用される法定利率が変わることはなく、利息計算の実務への影響は軽微です(注2)。

2 ただし、債権ごとに利率が違ってくる

一方で、企業の債権管理には影響がありえます(注4)。ある特定の債権の遅延損害金の利率は、その債権が存続している限り変動しません。個別の債権ごとに、遅滞に陥った時点の法定利率で定まります(注4)。

その結果,特定の時点におけるすべての債権を見たときには,法定利率が4%の期に新たに遅滞した債権の遅延損害金は4%であるが,法定利率が3%の期に遅滞に陥った債権の遅延損害金は3%のままであるから,特定の時点では遅延損害金が3%の債権と4%の債権が併存することになる。(注4)

金銭請求訴訟を起こすときは、請求債権がどの時点で遅滞に陥ったのかを確認し、その時点の法定利率で請求することになります。理論上、企業の債権管理においては、債権ごとに遅延損害金の利率を把握する必要があります(注4)。

いまのところ法定利率は3期続けて年3%なので、この問題は表面化していません。しかし、令和11年4月1日以降の法定利率は未確定です(注3)。変動が起きた時点で、継続的な取引の未収金を大量に抱えている会社は、遅滞に陥った時期ごとに利率が異なる債権を管理することになります。

3 施行日前の債権には、改正前の利率が残る

経過措置にも注意が要ります。施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合の遅延損害金の法定利率は、なお従前の例によります(改正法附則17条3項)(注5)。利息についても、施行日前に利息が生じた場合は従前の例により、施行日以後に生じる部分も5%のままとされています(附則15条1項)(注5)。

基準になるのは、契約を結んだ日ではありません。委任契約で受任者が委任者に引き渡すべき金銭を自己のために費消した場合を例にとると、利息は費消した日から生じるので、その債権の利率は費消した日の法定利率になり、委任契約の締結日が基準となるのではありません(注5)。遅延損害金も同じで、民法419条1項は遅滞の責任を負った最初の時点を基準にしています。2020年3月31日以前に遅滞に陥った債権を今も回収している場合、その遅延損害金は従前の規定によって計算します。民事の債権なら年5%(改正法附則17条3項)、商行為によって生じた債権なら旧商法514条の年6%です(民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律4条3項)。


四 契約実務への還元

1 約定利率を定める意味

利息の約定利率を定めていて、それが法定利率を超えるときは、民法419条1項ただし書により、遅延損害金もその約定利率で計算されます。これとは別に、遅延損害金の率そのものを合意することもでき、その合意は損害賠償額の予定(民法420条)として扱われます。

別段の合意がなければ法定利率が遅延損害金の利率になるので、当事者間で利率を変える場合は、契約書に明記すべきです(注6)。将来、法定利率が変動するリスクがあるので、契約書において具体的に定めておくのが望ましいところです(注6)。

約定利率を書く理由は、ふつう、法定利率より高くして支払を促すことです。企業間取引では、法定利率より高い利率を設定するケースが多いところです(注6)。改正前は民事法定利率年5%、商事法定利率年6%という市中金利より相当高い利率だったので、遅延損害金の条項を置かなくても足りました。しかし、いまは年3%なので、法定利率を適用すると低額の遅延損害金しか発生せず、履行を遅延したことによる痛みを感じさせることができません(注6)。

年14.6%は、国税の延滞税の本則の割合です(国税通則法60条2項)。実際の延滞税は、納期限までの期間と納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間は年7.3%が本則で、さらに租税特別措置法の特例(同法94条1項)により、本則より低い割合が適用されています。この年14.6%を用いる例もありますが、法改正や金利情勢も踏まえて検討すべきです(注1)。遅延損害金には、増額して履行を促すだけでなく、支払を渋る相手との交渉で、遅延損害金を放棄する代わりに元金だけでも支払うよう求める交渉材料として使えるという面もあります(注6)。しかし、もう一つの理由、つまり法定利率の変動リスクへの対応は、利率を高くするかどうかとは関係がありません。

2 法定利率の変動を追わなくてよくなる

約定利率を書いておくと、いつの時点の法定利率が適用されるかを確かめる必要がなくなります。

三の2で見たとおり、法定利率が変動すると、遅延損害金の利率は債権ごとに、遅滞に陥った時点の法定利率で決まります(注4)。条項に「年3%」と書いておけば、どの期に遅滞しても利率は年3%で、請求する側も支払う側も、遅滞の時期を特定して法定利率を確かめる作業が要りません。

遅延損害金の率は、法定利率より低い率を合意することもでき、その場合も、将来法定利率が上がったからといって当然に法定利率に置き換わるわけではありません。利率の水準や起算日の決め方は、別稿「遅延損害金条項の設計:利率の水準・起算日・上限」が扱います。

金額の差も見ておきます。1,000万円の代金の支払が90日遅れた場合、年3%なら遅延損害金はおよそ7万3,973円、年14.6%ならおよそ36万円です(1,000万円×利率×90日÷365日で計算)。取引の規模が大きく、遅れが長いほど、利率を書くかどうかの差は広がります。

3 書き分けの目安

立場約定利率の考え方
代金を受け取る側(売主・受託者)法定利率より高い利率を書く。変動を追う手間もなくなる
代金を支払う側(買主・委託者)利率を書かせるなら低めに抑える交渉になる。書かなければ法定利率に委ねることになり、将来の変動の影響を受ける
継続的取引で未収金が多く発生する会社利率を書いておくと、将来法定利率が変動した場合でも債権ごとの利率管理が要らなくなる

条項例は年3%、売主側の変更例は年14.6%、買主側の変更例は年2%です(注6)。銀行貸付が低金利で行われてきた時代なので、利率を低率に設定したいという買主からの変更にも合理性があります(注6)。利率の水準、起算日、消費者契約での上限など、遅延損害金の条項そのものの書き方は、別稿「遅延損害金条項の設計:利率の水準・起算日・上限」で扱います。

本稿で扱わなかったこと

逸失利益などの損害賠償の額を定める際の中間利息控除も、法定利率の変動制の影響を受けますが(注2)、契約条項の問題ではないので扱っていません。

約定利率の上限(消費者契約法、利息制限法との関係)は、別稿「遅延損害金条項の設計:利率の水準・起算日・上限」で扱います。


参考文献等

註

(注1)阿部・井窪・片山法律事務所編『契約書作成の実務と書式〔第3版〕』(有斐閣、2025)60頁
(注2)大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編『実務家のための 逐条解説新債権法』(有斐閣、2021)100〜104頁
(注3)法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」(令和7年3月31日公表)
(注4)前掲注2・136〜137頁(コラム「債権ごとの遅延損害金の利率の管理」を含む)
(注5)前掲注2・708〜710頁
(注6)弁護士法人飛翔法律事務所編『実務必携 契約書チェックマニュアル』(商事法務、2024)59〜61頁、および同36頁のQ24


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