オンラインゲームをはじめ、現在のゲームビジネスでは、ゲームの購入やプレイのためにアカウントの作成(会員登録)が求められることがほとんどです。ゲームタイトルを提供する事業者や家庭用ゲーム機のメーカーは、ユーザーに対して自社のゲームアカウント(会員資格)を発行し、メールアドレスやニックネームなどの会員情報を大量に保有・管理しています。
こうした会員情報は、個人情報保護法の「個人情報」に当たるのでしょうか。当たるとすれば、事業者にはどのような義務が生じるのでしょうか。また、ゲームでは子どものプレイヤーが多いという特有の事情があり、「本人の同意」を誰から取るのかという難しい問題もあります。さらに、会員に新作タイトルの案内メールを送るときには、個人情報保護法とは別に特定電子メール法などのメール配信規制もかかわってきます。
本記事では、ゲームアカウントの会員情報をめぐる個人情報保護法の基本と、メールアドレス・ニックネーム・プレイデータそれぞれの「個人情報」該当性、子どもの会員情報の取扱い、プロモーションメールの規制までを整理して解説します。
ゲームアカウントの会員情報に個人情報保護法が適用される理由
会員情報として取得される情報
インターネットが普及する前は、ゲームビジネスと個人情報の関わりは限定的でした。事業者が顧客から直接個人情報を取得する機会は、アンケートや修理対応のための住所氏名など、ごく限られていたためです。
現在は状況がまったく異なります。ほとんどのオンラインゲームは、アカウントを作成しなければ遊ぶことができず、事業者は会員情報という形で、メールアドレス、ニックネーム(プレイヤー名)、生年月日、決済関連情報、さらにはプレイ履歴に至るまで、多様な顧客情報を継続的に取得することになります。
個人情報保護法の「個人情報」の定義
個人情報保護法2条1項は、「個人情報」を、生存する個人に関する情報であって、①氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)、または②個人識別符号が含まれるもの、と定義しています。
重要なのは、会員情報という「かたまり」が一律に個人情報に当たる・当たらないと決まるわけではなく、問題となるケースごとに、この定義に該当するかを個別具体的に検討するほかないという点です。氏名や住所の登録を求めるゲームであれば会員情報は通常「個人情報」を含みますが、メールアドレスとニックネームしか取得しないゲームでは、後述のとおり判断が微妙になります。
「個人情報」に当たると何が変わるのか
事業者が「個人情報」に当たる会員情報を取得し、データベース化して事業に利用すると、通常、その事業者は個人情報保護法上の「個人情報取扱事業者」(同法16条2項)に該当し、同法が定める各種の義務を負います。
ゲームビジネスとの関係で実務上とくに重要なのは、次の2つです。
- 利用目的の通知・公表(同法21条1項):個人情報を取得した場合、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知または公表しなければなりません。実務では、プライバシーポリシーやアカウント登録画面に利用目的を記載して対応することが一般的です。
- 第三者提供の制限(同法27条1項):あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供することは原則としてできません。ゲーム関連アカウントでは、会員登録の際に本人の同意を得る機会があるため、実務上はこの登録時に同意を取得することが多いと考えられます。

メールアドレス・ニックネーム・プレイデータの「個人情報」該当性
メールアドレスは個人情報に当たるか
ゲームの会員登録では、住所氏名までは求めず、連絡手段としてメールアドレスの登録だけを要求する設計が少なくありません。この場合の会員情報は「個人情報」に当たるのでしょうか。
個人情報保護委員会の「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」(令和7年7月1日更新。以下「ガイドラインQ&A」)は、メールアドレスのユーザー名およびドメイン名から特定の個人を識別することができる場合(例:kojin_ichiro@example.comのような氏名を含むアドレス)には、そのメールアドレスはそれ自体が単独で個人情報に該当するとしています(Q1-4)。それ以外の場合は個別の事例ごとの判断となりますが、他の情報と容易に照合することにより特定の個人を識別できる場合には、あわせて全体として個人情報に該当することがあるとされています。
実務上の問題は、会員のメールアドレスを1件ずつ目視で「識別できる・できない」と分類して管理することが現実的でないことです。事業者としては、メールアドレスを含む会員情報は、会員のプライバシーにも配慮して、「個人情報」を含む可能性があるものとして取り扱うことが望ましいと考えられます。
なお、個人情報に該当しないメールアドレスも、通常は「個人関連情報」(個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のいずれにも該当しない、生存する個人に関する情報。同法2条7項)に該当するというのが個人情報保護委員会の見解です(ガイドラインQ&AQ8-2)。個人関連情報にも第三者提供の制限(同法31条)などの規制があるため、「個人情報でなければ自由に扱える」わけではない点に注意が必要です。
ニックネーム(プレイヤー名)・IDは個人情報に当たるか
オンラインゲームの会員情報には、ゲーム内で使用するニックネーム(プレイヤー名)やIDが含まれることが少なくありません。
この点についてガイドラインQ&Aは、オンラインゲームにおける「ニックネーム」および「ID」が公開されていても、通常は特定の個人を識別することはできないため、個人情報には該当しないとしています(Q1-9)。ただし、次の2つの留保が付いています。
- ニックネームまたはIDを、自ら保有する他の情報と容易に照合することにより特定の個人を識別できる場合には、個人情報に該当し得る
- 例外的にニックネームやIDから特定の個人が識別できる場合(有名なニックネーム等)には、個人情報に該当する
前者の留保は実務上重要です。ゲーム運営事業者は通常、会員情報(個人情報に該当し得るもの)を保有しており、ニックネームやIDをその会員情報と容易に照合できる立場にあります。そのため、運営事業者自身にとっては、ニックネームやIDも「個人情報」に該当し得ることになります。
後者の「有名なニックネーム」については、ゲーム実況や配信などでニックネームの知名度が上がっていくと、会員登録当時には個人情報に該当しなかったニックネームが、ある時点以降、個人情報に該当するようになる可能性も指摘されています。ニックネームの該当性は固定的ではなく、変わり得るものとして扱う必要があります。
プレイデータは個人情報に当たるか
ユーザーがゲームをプレイする中で記録される情報(プレイデータ)——たとえば釣りゲームで釣った魚の記録、課金直前の行動履歴など——は、ユーザーにとっても事業者にとっても価値のあるデータです。ランキングの公開のようなゲーム体験の向上にも、事業分析にも活用できます。
個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、個人情報に該当する事例として「個人情報を取得後に当該情報に付加された個人に関する情報」を挙げています。また、「個人に関する情報」は氏名・住所等の識別情報に限られず、個人の身体、財産、職種、肩書等の属性に関する事実、判断、評価を表す全ての情報を含むと解説されています。
この解釈を前提とすると、ゲームのプレイデータを、個人情報である会員情報に紐付けて(付加して)管理する場合、そのプレイデータは原則として「個人情報」に当たり得ると考えられます。仮に個別具体的な検討の結果「個人情報」に該当しないと考えられる場合でも、その内容によっては、プライバシーに配慮して個人情報に準じて取り扱うことが望ましいでしょう。

子どもの会員情報と「本人の同意」
子どもの同意は誰から取るのか
成人向けのゲームでない限り、子どものプレイヤーは少なくなく、タイトルによっては子どもがメインの顧客となり得ます。ゲームサービスの運営において、子どもの会員情報の取扱いは避けて通れない問題です。
最大の課題は、個人情報保護法が要求する「本人の同意」の取得です。同法には、子どもが「本人」に該当する場合の同意について特段の規定がありませんが、ガイドライン(通則編)は、「本人の同意」に関して、未成年者などが同意したことによって生ずる結果について判断できる能力を有していない場合は、親権者や法定代理人等から同意を得る必要があるとしています。
ポイントは、未成年者であることのみで一律に法定代理人等の同意が必要になるのではなく、「同意によって生ずる結果を判断できる能力」の有無で判断される建て付けになっていることです。
「12歳から15歳まで」という目安
では、何歳以下の子どもについて法定代理人等の同意が必要なのでしょうか。ガイドラインQ&Aは、対象となる個人情報の項目や事業の性質等によって個別具体的に判断されるべきとしつつ、一般的には「12歳から15歳までの年齢以下」の子どもについて、法定代理人等から同意を得る必要があると考えられるとしています(Q1-62)。
つまり、法定代理人等の同意が必要となる具体的な年齢は一律には決まらず、個別のサービスによって異なることになります。
実務上の年齢設計の考え方
明確な年齢基準が法令上存在しない以上、実務では各社が自ら基準を設計する必要があります。考え方としては、たとえば次のような選択肢があります。
- 民法の原則に合わせる設計:民法上、18歳未満の者(未成年者)の法律行為は取り消すことができるため(民法5条2項)、課金要素があるゲームでは、18歳未満の会員に対して一律に法定代理人等の同意を求める運用。個人情報関係の同意年齢と課金関係の同意年齢を区別すると利用者にとっても事業者にとっても複雑になるため、両者を揃えるという発想です。
- 個人情報保護委員会の解釈を参考にした設計:未成年者取消しを意識する必要が小さい完全無償のゲームサービスなどで、たとえば16歳未満に法定代理人等の同意を要求し、17歳・18歳には要求しない(本人から同意を得る)という仕組み。

なお、法定代理人等の同意が必要な子どもの年齢を「対象となる個人情報の項目や事業の性質等によって、個別具体的に判断」することに関する裁判例として、横浜地裁相模原支部平成17年1月25日判決(平成15年(ワ)第363号)があります。この事案では、サッカー教材の撮影対象となった16歳(高校2年生)の本人について、映像の中で氏名が呼ばれていることなど「個人情報の内容等」に照らしても、本人がすでに親権者とは独立してその開示につき自ら判断可能な年齢に達していたと認定されています。
会員へのプロモーションメールと特定電子メール法
「特定電子メール」とは
自社のゲームアカウントに登録している会員はゲーム愛好家であり、潜在顧客としても魅力的です。そこで事業者は、会員に対して新作ゲームタイトルなどの情報提供(プロモーション)を行うことがありますが、このとき注意が必要なのが特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)です。
同法が規制する「特定電子メール」とは、送信者(営利目的の団体・営業を営む個人)が「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として」送信する電子メールをいいます(同法2条2号)。広告宣伝そのものでなくても、広告宣伝のウェブサイトへ誘導することが送信目的に含まれるメールも規制対象になる点に注意が必要です。
一方、規制対象となる「電子メール」は、総務省令で定める通信方式——SMTP(いわゆる通常のEメール)とSMS(電話番号宛てメッセージ)——を用いるものに限られます(同法2条1号)。したがって、ゲーム内での告知、アプリのプッシュ通知、ウェブサイトでの告知、郵便のダイレクトメールなどは、同法の規制対象外です。
オプトイン規制と同意記録の保存義務
特定電子メール法の中核は、あらかじめ同意した者等に対してのみ特定電子メールを送信できるという「オプトイン方式」です(同法3条1項)。ゲーム関連アカウントの会員に送信する場合、通常は、会員登録時などにあらかじめ同意を得て送信することになります。
同意の取得方法について、総務省・消費者庁「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」は、利用規約への同意と一体で取得する場合の注意点を示しています。規約中の広告メール送信に関する記載が極めて小さい文字で書かれている場合や、長大な利用規約をスクロールしないと気付けない場所に記載されている場合などは、受信者が認識できるように表示されているとはいえないとされており、利用規約を用いた同意取得には一定の制約があります。
さらに、同法は「同意があったことを証する記録」の保存を義務づけており(同法3条2項)、保存方法・保存期間は同法施行規則4条に詳細に定められています。ゲーム関連アカウントの場合、同意取得時に示したウェブ画面の構成(定型的な事項)の保存を検討することになります。
また、同意を得た後でも、受信拒否(オプトアウト)の通知を受けたときは、原則としてその後の特定電子メールの送信は禁止されます(同法3条3項)。
特商法の電子メール広告規制
特定電子メール法とは別に、特定商取引法(特商法)も、通信販売の商品・役務について、消費者があらかじめ承諾しない限り電子メール広告を送信することを原則禁止しています(同法12条の3第1項)。承諾の記録の作成・保存義務もあり(同条3項)、承諾後でも消費者が拒絶の意思を表示した場合はその後の送信が禁止されます(同条2項)。
ゲーム内アイテムの販売など通信販売に当たる要素を含むゲームビジネスでは、特定電子メール法と特商法の両方の規制を満たすメール配信体制を設計する必要があります。なお、相手方の請求・承諾を得て送信される電磁的記録(いわゆるメールマガジン)の一部に広告を掲載する場合等は、特商法の規制の適用除外とされています(同法施行規則29条1号)。
適法に同意を取得・保存することが難しい場合には、プロモーションの方法を、特定電子メール法の規制対象外である手段(プッシュ通知など)に限定することも考えられます。逆にいえば、特定電子メールを送信したい場合には、ゲームアプリやウェブサイトの開発段階から、同意取得画面や記録保存の仕組みを含めた法対応を意識しておく必要があります。

ゲーム事業者が実務で押さえるべきチェックポイント
ここまでの内容を、実務対応の観点から整理します。
- 取得項目の棚卸し:会員登録で取得する情報(メールアドレス・ニックネーム・生年月日・決済情報等)と、プレイ中に取得する情報(プレイデータ)を洗い出し、個人情報に該当し得るものを特定する。判断が微妙なものは「個人情報を含む可能性があるもの」として扱う方向で設計する。
- プライバシーポリシーの整備:利用目的を特定して通知・公表する(個人情報保護法21条1項)。プレイデータの分析利用や第三者提供の予定があるなら、その旨を明確に記載し、必要な同意を登録時に取得する設計にする。
- 子どもの同意フローの設計:自社ゲームの性質(課金の有無・想定年齢層・取得する情報の項目)を踏まえ、法定代理人等の同意を求める年齢ラインを設定する。課金要素があるゲームでは、未成年者取消し(民法5条2項)への対応と揃えて18歳未満を基準とすることも検討に値する。
- メール配信体制の確認:広告宣伝メールの送信について、オプトイン同意の取得方法(利用規約一体型の場合は表示の明瞭性)、同意記録の保存、オプトアウト対応の仕組みを確認する。特商法の電子メール広告規制への対応も忘れない。
会員情報の設計は「登録画面」から始まる——ゲームアカウント管理の勘所
ゲームアカウントの会員情報をめぐる法規制は、①その情報が「個人情報」に当たるか(メールアドレス・ニックネーム・プレイデータごとの個別検討)、②誰からどのように同意を取るか(とくに子どもの会員)、③会員への情報提供にどの規制がかかるか(特定電子メール法・特商法)という3つの層で整理できます。
いずれも共通するのは、サービス開始後に後付けで対応するのが難しく、アカウント登録画面・プライバシーポリシー・同意取得フローといった「入口」の設計段階で決まってしまう問題だということです。ゲームアプリやウェブサイトの開発段階から、取得する情報の範囲と同意の設計を法務観点で検討しておくことが、結局は手戻りの少ない進め方になります。
自社のゲームやアプリの会員情報の取扱い、プライバシーポリシーや利用規約の整備に不安のある方は、インターネット・IT分野に詳しい弁護士に相談してみることをお勧めします。
プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕
損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。



