ゲームのネタバレは違法?著作権侵害・不法行為になるケースとゲーム会社の対応を解説

インターネット・IT関連法務

発売直後のゲームのストーリーをまとめた記事、クリア後のムービーをつないだ動画、SNSでの「犯人は○○」という投稿——ゲームの「ネタバレ」は、インターネット上にあふれています。ネタバレを避けて新鮮な気持ちでプレイしたい人がいる一方で、映画やドラマではあらすじをすべて確認してから視聴する人も増えており、ネタバレに対する受け止め方はさまざまです。

では、法的にはどうでしょうか。SNSなどでは「ネタバレは適法」といった言説も見受けられますが、これは半分正しく、半分誤りです。ネタバレという行為それ自体を禁止する法律はないものの、その態様次第では著作権侵害が成立し、実際に「ネタバレサイト」の運営者が逮捕され、有罪判決を受けたと報道された事例も出ています。

本記事では、ネタバレがどのような場合に著作権侵害となるのか、著作権侵害に当たらない場合でも不法行為となる余地はあるのか、そしてゲーム事業者・投稿者それぞれが何に気をつけるべきかを解説します。

ネタバレを法的に考えるための前提

ネタバレの態様は幅広い

ひとくちに「ネタバレ」といっても、その態様は大きく異なります。

  • SNSや掲示板に「犯人は○○」といった短い文章を投稿する
  • ストーリーのあらすじや結末を、ある程度の分量の文章にまとめて投稿する
  • ゲームのストーリー全容を文字起こしし、画像とあわせて記事化して掲載する
  • ゲーム内のムービーやイベントシーンをつなぎ合わせた動画を投稿する

法的な評価は、この態様の違いによって大きく変わります。「ネタバレは適法か違法か」という二択で考えるのではなく、どのような形でゲームの内容を利用しているかに着目するのが出発点です。

関係する権利——著作権と営業上の利益

ネタバレとの関係で問題となる法的な利益は、大きく2つあります。第一に、ゲームという著作物についての著作権です。ゲームのムービー・映像・シナリオの文章は著作物として保護され、著作者は複製権(著作権法21条)、公衆送信権(同法23条)、翻案権(同法27条)などを専有しています。第二に、著作権でカバーしきれない場面で問題となる、ゲーム会社の営業上の利益です。後述のとおり、著作権侵害に当たらない行為も、一定の場合には民法上の不法行為となる余地があります。

著作権侵害となり得るネタバレの態様

ゲーム内ムービー・シーンをつないだ動画の投稿

ゲーム内のムービーやイベントシーンをつなぎ合わせた動画を投稿する行為は、ゲーム映像の複製(著作権法21条)および公衆送信(同法23条。アップロードによる送信可能化を含む)に当たり、原則として著作権者の許諾が必要です。

多くのゲーム会社は、ゲーム実況・配信を一定の条件で許容する「配信ガイドライン」を公表していますが、ストーリーの核心部分のムービーだけを抜き出してまとめるような投稿は、配信ガイドラインで許容されていないことが多く、その場合には著作権(複製権・翻案権・公衆送信権・送信可能化権など)の侵害となると考えられます。「実況・配信が広く認められているから、ムービーまとめも大丈夫だろう」という発想は危険です。

なお、著作権侵害は民事上の差止め・損害賠償の対象になるだけでなく、刑事罰の対象でもあります。著作権を侵害した者は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金に処され、またはこれが併科されます(著作権法119条1項)。後述のとおり、ネタバレをめぐって現実に逮捕・有罪判決に至った事例が報道されており、「ネタバレ程度で刑事事件にはならない」という認識は、もはや通用しなくなっています。

ストーリーの文字起こし——「ネタバレサイト」の逮捕・有罪判決事例

文章によるネタバレでも、規模と態様によっては刑事事件にまで発展しています。

一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の発表によれば、2024年10月、権利者に無断で映画などの著作物のストーリー全容を文字起こしし、関連画像とあわせて記事化して自社運営サイトに掲載していた「文字抜き出しサイト」(いわゆるネタバレサイト)の運営者らが、著作権法違反の疑いで逮捕されました。映画などの文字抜き出しサイトで運営者らが逮捕されたのは日本で初めてとされています。広告収益を目的として組織的に運営されていた事案です。

さらにその後、映画『ゴジラ-1.0』などの内容を文字で説明したネタバレ記事(3,000文字超)を自社サイトに投稿した行為について、東京地方裁判所が著作権侵害を認め、拘禁刑1年6月・執行猶予4年・罰金100万円の有罪判決を言い渡したと報道されています。映画の事例ではありますが、ストーリーの文字起こしによるネタバレが著作権侵害と評価され得ることを示すものであり、ゲームのネタバレ記事についても実務上の参考になると考えられます。

ネタバレも、行為態様次第で著作権侵害が成立する——これが近時の実務の到達点といえます。

「犯人は○○」型の短文投稿はどうか

では、SNSや掲示板に「犯人は○○」といった短い文章を投稿する行為はどうでしょうか。

著作権法が保護するのは「創作的な表現」であり、表現の背後にあるアイデアや事実そのものは保護しません(アイデアと表現の二分論)。「犯人は○○」という「ネタ」そのものは、アイデアの範疇に属する場合が多く、これを短く記述しただけでは著作権侵害は成立しづらいといえます。

ただし、ここにも限界があります。ある程度の分量で「ネタ」をまとめた場合——たとえばストーリー展開を場面ごとに詳細に記述し、セリフを引用しながら再現するような場合——には、創作的表現の利用として侵害が成立する可能性があります。短文なら常に安全、というわけではなく、量と再現度が増すほど著作権侵害のリスクは高まります。

また、著作権侵害に当たらない短文投稿であっても、それが特定の個人への嫌がらせとして執拗に行われるような場合(たとえば、ネタバレを避けたいと公言している配信者のコメント欄に結末を書き込み続けるような行為)には、業務妨害や不法行為など、著作権とは別の観点から問題となる可能性もあります。「著作権侵害でなければ何をしてもよい」わけではない点にも注意が必要です。

著作権侵害に当たらなくても不法行為になる場合

最高裁が示した枠組み——特段の事情がない限り不法行為にならない

著作権侵害が成立しない場合に、民法709条の不法行為として損害賠償を請求できるかについては、最高裁判例があります。最高裁平成23年12月8日判決(いわゆる北朝鮮事件・民集65巻9号3275頁)は、著作権法が「規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではない」と判断しました。

著作権法は、保護する利用と自由な利用の線引きを法律自身が定めた制度です。著作権法上は自由とされる利用行為を安易に不法行為で規制すると、この線引きが骨抜きになるため、原則として不法行為は成立せず、「特段の事情」がある場合に限って例外を認める、という枠組みです。

フリーライドに不法行為を認めた近時の裁判例

この「特段の事情」が認められた近時の例として、東京高裁令和6年6月19日判決(判例タイムズ1534号105頁)があります。著作物ではない市販のバンドスコア(楽譜)を模倣してインターネット上で無償公開したという事件で、裁判所は、制作に投じられた労力および費用などに対するフリーライド(ただ乗り)であるとして、営業上の利益の侵害を理由に不法行為に基づく損害賠償請求を認めました。

悪質なネタバレへのあてはめ

これらの判例・裁判例を前提とすると、ネタバレについても、悪質なもの——たとえばストーリーを楽しむことに価値の中心があるゲームについて、その内容を網羅的に公開して購入の動機を失わせるような態様——については、ゲームの制作に要した労力および費用などを大きく毀損する行為として、営業上の利益の侵害を理由に不法行為が成立する余地はあると考えられます。

著作権侵害の立証が難しいケースでも、法的に打つ手がまったくないわけではない、という点はゲーム事業者にとって重要です。

ゲーム事業者・投稿者それぞれの実務対応

ゲーム事業者の対応——ガイドラインでの線引きと周知

ゲーム事業者としては、まず、どこまでのネタバレを許容し、どこからを禁止するのかをガイドラインで明確にすることが出発点になります。

実務では、ゲーム実況・配信について「配信ガイドライン」を、イラストや同人誌などについて「二次創作ガイドライン」を公表する例が広がっています。近時は、大手ゲーム会社が自社著作物の二次創作を包括的に対象とするガイドラインを公表したり、配信ガイドラインと二次創作ガイドラインを統合したりする動きもあり、ユーザーが参照するルールを一本化する流れが見られます。ガイドラインの中で、ストーリー核心部分の配信禁止区間(いわゆるネタバレ配信の制限)や、発売後一定期間の配信制限を定める例も多くあります。

ガイドラインを定める際は、次のような点を具体的に決めておくと、ユーザーにとっても分かりやすく、事後対応の根拠にもなります。

  • 配信・投稿を許容する範囲(個人の実況配信は可、ムービーのみの切り出しは不可など)
  • ストーリー核心部分について、配信禁止区間や発売後の制限期間を設けるか
  • 収益化(広告・投げ銭等)を伴う配信の扱い
  • 違反があった場合の措置(削除要請・許諾の取消し等)

そのうえで、公式アカウントなどでネタバレへの配慮を呼びかけ、禁止される投稿態様を周知しつつ、悪質なものについては、削除請求や損害賠償請求、刑事告訴といった法的な対応も検討すべきでしょう。前記のネタバレサイト逮捕事例のように、権利者側が業界団体(CODA等)と連携して刑事手続に至るルートも現実に機能し始めています。

また、実際に悪質なネタバレ投稿を発見した場合には、感情的に即応する前に、①投稿・サイトの証拠保存(URL・日時を含むスクリーンショットや魚拓)、②態様の評価(著作権侵害に当たるか、不法行為構成の余地か)、③手段の選択(プラットフォームへの削除申請、投稿者への警告、発信者情報開示請求、刑事告訴)という順序で検討するのが定石です。とくに証拠保存は、投稿が削除されてしまうと後から補うことができないため、最優先で行う必要があります。

投稿者・配信者の心構え

ユーザー・配信者の側では、次の点に注意が必要です。

  • 公式ガイドラインを確認する:配信ガイドライン・二次創作ガイドラインで、配信禁止区間や禁止態様(ムービーのみの切り出し等)が定められていないかを、投稿前に確認する。
  • 量と再現度に注意する:短い感想の範囲を超えて、ストーリーを網羅的に文字起こししたり、ムービーをまとめたりする投稿は、著作権侵害となる可能性が高い。広告収益目的で組織的に行えば、刑事事件化のリスクも現実的なものになる。
  • 「適法だからよい」とは限らない:著作権侵害に当たらない投稿でも、コミュニティのマナーとしてネタバレ配慮の表記(ネタバレ注意の明示・発売直後の自粛など)が求められる場面は多い。公式がネタバレへの配慮を呼びかけている場合は、それに沿った行動が無用なトラブルを避ける。

ネタバレの適法・違法は「態様」で決まる——ラインを知ることが最善の防御

ゲームのネタバレは、それ自体を禁止する法律がない一方で、①ムービーをつないだ動画投稿やストーリーの網羅的な文字起こしは著作権侵害となり得る(逮捕・有罪判決の報道事例あり)、②「犯人は○○」のような短文はアイデアの範疇として侵害となりにくいが、量と再現度が増せばリスクは高まる、③著作権侵害に当たらなくても、悪質なフリーライド型のネタバレには不法行為が成立する余地がある——という3層で整理できます。

ゲーム事業者にとっては、ガイドラインによる線引きの明示と周知、そして悪質事案への法的対応の使い分けが実務の柱になります。自社タイトルの悪質なネタバレ・無断投稿への対応や、配信・二次創作ガイドラインの整備を検討している方は、コンテンツ法務に詳しい弁護士に相談してみることをお勧めします。



本記事の担当

プロスパイア法律事務所
代表弁護士 光股知裕

損保系法律事務所、企業法務系法律事務所での経験を経てプロスパイア法律事務所を設立。IT・インフルエンサー関連事業を主な分野とするネクタル株式会社の代表取締役も務める。企業法務全般、ベンチャー企業法務、インターネット・IT関連法務などを中心に手掛ける。

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