立会人型と当事者型:どちらを選ぶか

08 締結手続・電子契約・証拠管理

【基礎実務】最終確認:2026年10月25日

一 どういう場面か:相手方から電子契約サービスを指定された

契約の内容がまとまり、相手方から「弊社の電子契約サービスで送ります」と連絡が来る。自社も別の電子契約サービスを契約している。こうした食い違いは珍しくなく、営業担当者が相手方から自社と異なるサービスの利用の可否を聞かれることはよくあります(注1)。

ここで判断することは2つあります。相手方のサービスで締結してよいか、そして、その契約に立会人型の電子署名で足りるかです。後者を判断するには、電子署名の2つの型の違いを押さえておく必要があります。


二 何を見るか

1 立会人型と当事者型の違い

電子署名は、大きく当事者型と立会人型に分けられます。当事者型は、契約する当事者本人の電子証明書と秘密鍵を使って署名するものです。立会人型は、当事者本人の電子証明書や秘密鍵はなく、サービス事業者のサーバの電子証明書と秘密鍵で署名するものです(注2)。

立会人型の基本的な流れは、①利用者がサーバにログインし、②署名する電子文書をアップロードし、③サーバが利用者を確認した旨を記載し、④サーバのデジタル署名を生成する、というものです。立会人が契約当事者を確認し、本人が契約の意思を示したことを書き留めて立会人が押印するのに似ていることから、この名前があります。第三者型、事業者型と呼ばれることもありますが、同じものです(注3)。

当事者型立会人型
当事者の電子証明書発行が必要。相手方も発行を受ける原則として発行不要
本人であることの担保認証局が本人確認をして発行した電子証明書と電子署名メール認証(とパスワード等)
改ざんされていないことの担保当事者の電子証明書・電子署名事業者の電子証明書・電子署名
電子署名法3条の推定及ぶ及ぶ場合もある
使い勝手双方が同じ事業者と契約し、事前に電子証明書の発行を受ける必要がある送信者だけが事業者と契約していればよく、受信者は契約不要

(注4)

当事者型は信頼性が高く、印鑑でいえば実印にたとえられます。立会人型は使い勝手がよく普及しており、2020年に政府のQ&Aで立会人型も一定の場合に利用者の電子署名と認められることが示されてから、証拠力の点でも当事者型に近づいているといえます(注4)。

2 電子証明書の有無

立会人型では、当事者本人の名義の電子証明書はそもそも発行されません(注5)。電子証明書は、電子署名をした者が誰かを示すもので、印鑑証明書に相当します(注6)。電子証明書がない以上、署名した利用者が契約の名義人本人であることは、別の方法で示すことになります。

当事者型でも、電子証明書の発行元によって信頼性は変わります。主務大臣の認定を受けた認定認証業務は、戸籍や住民票と写真付きの公的証明書で本人を確認したうえで電子証明書を発行するので、電子証明書記載の本人が署名したことを証明できます。認定を受けていない認証業務の場合は、どのような身元確認をしたかを別に示す必要があり、訴訟で証明すべき事項が増えます(注7)。

3 電子署名法3条の推定が働くか

立会人型でも、一定の要件を満たせば3条の推定は得られると考えられます。ただし、推定を得るには「本人による」電子署名であることを示さなければならず、立会人型ではここが難しくなり得ます。立会人型ではメールの到達確認のような簡易な身元確認で済ませていることが多く、サービスの利用者と契約当事者が同一人物であることを示しにくいからです(注8)。

当事者型の電子証明書の発行時には相当厳格な身元確認が行われるのが一般的です。利用開始時の身元確認が厳格なら訴訟での本人の特定は容易ですが、手間と時間がかかります。簡易なら利用は楽ですが、訴訟での本人の特定に一定のコストがかかる可能性があります(注9)。フリーメールのアドレスしか手がかりがないような場合には、本人が誰か特定できないこともあり得ます(注10)。

立会人型か当事者型かの違いは、署名した人が契約の名義人本人だと後から示す手間を、締結の前に払うか、紛争になってから払うかの違いです。

なお、3条の推定の実務上の重要性はそれほど大きくないとする見方もあります。押印の推定(民事訴訟法228条4項)も実際に争われると役に立たない場合があり得ることから、3条の推定効の要否はコストやオペレーションの円滑さの観点から検討すべきだ、というものです(注11)。いずれにしても、成立の真正は3条の推定だけで判断されるわけではなく、締結の経緯を裏付ける証拠も立証手段になります(注12)。

4 相手方のサービスに合わせられるか

相手方のサービスを使うかどうかは、署名の型とは別に検討します。社内規程で、一定のセキュリティチェックを経たクラウドサービスしか使えない会社があります。自社にその規程があれば相手方のサービスは使えないことがあり、相手方にその規程があれば自社のサービスは使えないことがあります(注13)。

契約書の管理の面では、運用の手順が固まっている自社のサービスを使うのが望ましいといえます。権限のない者による締結を防ぐという自社のガバナンスの面では、自社が契約していないサービスを使う可能性があるなら、その場合も想定して運用規程を作っておくべきです(注13)。


三 直し方

自社と相手方のサービスが違う場合の対応には、①自社のサービスを使う、②相手方のサービスを使う、③両方のサービスを使う、④紙など電子契約以外の方法で締結する、の4つがあります(注14)。手順の一例は次のとおりです(注15)。

  1. 相手方のサービスが、自社のセキュリティチェックを通っているかを確認する。通っていなければ、自社のサービスの利用を求め、応じてもらえなければ紙で締結する
  2. 通っていれば、自社のサービスを使う方法と、両方のサービスを使う方法の両方を提案し、相手方の希望を聞く
  3. 両方とも断られたら、相手方のサービスだけで締結する

③の両方を使う方法では、同じ契約を自社のサービスでも相手方のサービスでも締結し、それぞれが自分のサービスで作られた電子ファイルを原本として保管します。同じ内容の契約を2つ結んだのではなく、契約は1つであることを明らかにするため、後文を次のように直すことが考えられます(注14)。

本契約の成立を証するため、本書を電磁的に作成し、甲乙合意を証する電磁的措置を「XXXサイン」及び「YYYサイン」上において執った上、双方保管するものとする。(注14)

相手方のサービスで締結する場合でも、署名する人は確認します。立会人型のサービスでメールアドレスによる認証を使い、代行者が自分のメールアドレスで署名すると、署名代行をしたことが相手方から明らかに分かります。代行者名義の電子署名を無効とする考え方もあるので、名義人自身が署名する形に変えてもらうのが望ましい対応です(注5)。


四 相手方への説明のしかた

相手方が電子契約に応じない理由が、使い方が分からないことにあるなら、操作方法を丁寧に説明します。法的なリスクを懸念しているなら、自社が電子契約に対応する社内規程を整備するなど、リスクを排除する体制が整っていることを簡単に説明します(注16)。

逆に、相手方が立会人型で送ってきたが、自社としては重要な契約なので当事者型を求めたい場合もあります。重要な契約書に用いる電子署名が信頼性の低い電子証明書によるものであってはならないので、そのときは相手方に信頼性の高い電子証明書に基づく電子署名を求めるべきです。これは、重要な契約書に認印を押してきた相手方に実印を求めるのと同じことです(注17)。

本契約は取引金額が大きいため、弊社の社内規程上、実印での押印か、それに相当する電子証明書に基づく電子署名をお願いしております。○○サイン(当事者型)での締結、または紙での締結にご協力いただけますでしょうか。


五 どこまで直すか:重要な契約だけ当事者型にする

どの方式を選ぶかは、対象の文書の重要性で決めます。紙の契約書でどの印章を使っているかに基づいて、電子署名の方式と電子証明書を決めていくのがよいでしょう(注18)。実務でも、原則は立会人型を使い、非常に重要な文書には当事者型(または紙)を使う使い分けが一般的といえます(注4)。

紙で使っている印章対応する電子署名・電子証明書
会社代表者の実印(印鑑証明書を付ける)商業登記に基づく電子証明書、認定認証業務の電子証明書による当事者型
社内で管理する役職者印信頼できる特定認証業務の電子証明書による当事者型
担当者の認印立会人型

(注19)

相手方のサービスでも立会人型でも構わない契約と、当事者型か紙でなければ困る契約を、締結の前に社内で線引きしておくことが、交渉の場で迷わないための準備になります。どの契約を重要とするかは、紙の時代に実印と印鑑証明書を求めていた契約が目安になります。

本稿で扱わなかったこと

電子署名法2条・3条の要件そのものは、別稿「電子署名法の枠組み:2条と3条」が扱います。電子契約サービスを社内でどう選び、誰にアカウントを持たせ、どう規程に落とすかは、別稿「電子契約サービスの選択と社内規程」で扱います。相手方が紙でしか応じない場合に、自社だけ電子で締結する方法の可否も、本稿では扱っていません。


参考文献等

註

(注1)柴山吉報=高岸亘編著『経験者が語るQ&A電子契約導入・運用実務のすべて』(中央経済社、2021)259頁
(注2)宮内宏『Q&A電子契約入門』(中央経済社、2022)74頁
(注3)前掲注2・81〜82頁
(注4)前掲注1・73〜75頁
(注5)幅野直人『企業法務1年目の教科書 契約書作成・レビューの実務』(中央経済社、2024)103〜104頁
(注6)前掲注2・58頁
(注7)前掲注2・71〜72頁
(注8)前掲注2・85頁
(注9)前掲注2・93頁
(注10)前掲注2・95〜96頁
(注11)前掲注1・73頁、116頁
(注12)総務省・法務省・経済産業省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」(令和2年9月4日。令和6年1月9日一部改定〔デジタル庁・法務省〕)問6
(注13)前掲注1・257〜258頁
(注14)前掲注1・256〜257頁
(注15)前掲注1・258頁
(注16)前掲注1・255頁
(注17)前掲注2・90〜91頁
(注18)前掲注2・97〜98頁
(注19)前掲注2・70頁、97〜98頁


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