一 どういう場面か:更新の条項が、更新後を書いていない
自動更新条項をレビューしていて、次の形に出会うことがあります。
(更新) 第○条 本契約の契約期間は○年間とする。ただし、本契約期間が満了するまでに本契約を終了する旨の通知をしないときは、本契約は同一の条件で更新されるものとする。(注1)
更新されることは書いてあります。しかし、更新されたあといつまで続くのかが書いてありません。「同一の条件で」が期間まで含むのかどうかも、読み方が割れます。
もう1つ、よく見るのがこの形です。
第○条 本契約の有効期間は、○年○月○日から1年間とする。ただし、甲および乙は、別途協議のうえで、本契約を更新することができるものとする。(注2)
こちらは、更新するかどうかが協議に委ねられています。協議が調わなければ期間満了で終わるのが帰結ですが(注2)、条項には書いてありません。
どちらも、条項はあるのに、期間満了後の契約がどうなるかを条項から読み取りにくい形です。1つ目は更新後の期間が、2つ目は協議が調わなかったときの帰結が書かれていません。この記事は、その見方と直し方を扱います。
二 何を見るか
1 更新後の期間が定まっているか
自動更新条項が存在しても、更新後の期間が明示されていない場合があります(注3)。
そのような場合の更新後の契約期間の考え方には争いがあります(注3)。
| 考え方 | 帰結 |
|---|---|
| 契約書に記載されていた契約期間と同一の条件で更新後の契約も更新される | 当初の契約期間と同じ期間ずつ更新が繰り返される |
| 更新後の契約には期間の定めが記載されていないため、更新後は期間の定めのない契約となる | 期間の定めのない契約として、解約の申入れで終わらせられる(賃貸借であれば民法617条) |
最終的な判断としては、契約締結時や更新以降の状況等の当事者の意思を合理的意思解釈により決定されると思われます(注3)。
解釈により更新後の期間につき判断がなされるのは予測可能性を欠くため、更新された後の契約期間を明示するべきです(注3)。
なお、更新後が期間の定めのない契約になるかどうかは、中途解約ができるかどうかにも直結します。期間の定めがなければ解約の申入れで抜けられるのが原則、あれば抜けられないのが原則だからです。
2 2回目以降の更新について書かれているか
1回目の更新をすることを定めてはいるが、2回目以降の更新をするか否か、また、更新するとしてどのような条件、期間で更新するかが記載されていない場合があります(注3)。
そのような場合には、2回目以降は更新をしない趣旨なのか、あるいは、2回目以降も同一の条件等で更新するのか不明確になります(注3)。そのため、2回目以降についても、更新するか否か及びその条件等を明確にする必要があります(注3)。
条項の末尾に「以後も同様とする」の一言があるかどうかを見ます。
3 条件が「別途協議」になっていないか
一の2つ目の形です。更新するかどうかを協議に委ねると、協議が調わなかったときの帰結を条項から読み取れず、期間満了の間際に争いの種になります。
協議で更新すると書くこと自体が誤りではありません。毎年条件を見直したい取引では、そのほうが実態に合います。足りないのは、協議が調わなかったときの帰結です。
4 永久に続く形になっていないか
自動更新条項に「以後も同様とする」を足しても、一方からの通知で更新を拒める定めであれば、終わらせることはできます。問題は、終了に双方の合意を要する形になっている場合です。文言どおり読めば、当事者間の合意がない限り契約は永続的に自動更新されることになります。
この点を正面から扱った裁判例があります。ソフトウェアのライセンス契約とサポート契約について、次の更新条項が置かれた事案です(注4)。
本契約の発効日は,ライセンス契約書第8条に定める年間サポートの起算日とし,契約期間を5年間とする。また,契約終了の3か月以前に被告・技研・原告のいずれからも相手方に対して書面にて解約の申入れを行い協議の上合意した場合を除き,この契約は更に1年間自動延長し,その後も同様とする。(注4)
裁判所は、この条項を文言どおり解するならば、当事者間の合意がない限り本件契約は永続的に自動更新され、各当事者は契約上の義務を負い続けることになる、としたうえで、次のように述べています。
しかしながら,ソフトウェア製品の開発,保守,ライセンス契約を締結する事業者が,このような事態を想定するとは通常は考え難いことである。(注4)
そのうえで、契約期間が5年に決まるまでの交渉経緯(被告が当初1年と提示し、原告から10年、被告が5年または7年を提示し、最終的に5年で合意した)を認定し、5年という契約期間は双方が期間の長短についてのリスクをそれぞれ勘案して交渉したうえで定められたもので、双方とも契約期間の定めを契約上の重要な利害関係事項であると考えていたと認めています(注4)。
その先が、この判決のいちばん効くところです。
これらの点を勘案すれば,5年という契約期間については,約定の期間が満了するまで契約を継続させるという強い拘束力を有するものとして定めたと認めるのが相当であるが,その後の1年間ごとの更新を定める本件更新条項については,特段の交渉対象とされなかったことからしても,そのような強い拘束力を有するものとして定められたと認めるのは相当でないというべきである(注4)
交渉した条項と、交渉されなかった条項とで、拘束力に差を付けています。
そして、本件サポート契約は委任契約に類似した継続的契約の性質を有するとしたうえで、やむを得ない事由があるときに当事者は契約を解除することができるとする民法651条の趣旨を考慮すると、少なくとも、更新を妨げるやむを得ない事由がある場合には更新を拒絶することができると解するのが相当である、としました(注4)。
結論として、5年経っても商品化の目処が立たず、サポートを続ける商業上の意味が失われていたことから、更新を拒絶するやむを得ない事由があるとされ、更新後の期間分のライセンス料の請求は棄却されています(注4)。
三 直し方
1 更新後の期間と2回目以降を、条項の中で書き切る
改善例は、次の形です(注5)。
(更新) 第○条 本契約の契約期間は○年間とする。ただし、本契約期間が満了する○か月前に、当事者の一方、又は、双方から、相手方に対して、本契約を終了する旨の書面による通知をしないときは、本契約は同一の条件で1年間更新されるものとし、以後も同様とする。(注5)
一の条項例に対して、「1年間更新されるものとし」(更新後の期間)と「以後も同様とする」(2回目以降)が足されています。これで二の1と二の2は片づきます。
2 協議で更新する形なら、調わなかったときの帰結を書く
一の2つ目の形を使うなら、次のように足します。
(更新) 第○条 本契約の有効期間は、○年○月○日から1年間とする。 2 甲および乙は、本契約期間が満了する○か月前までに、本契約を更新するか否か、および更新する場合の期間その他の条件について協議するものとする。 3 前項の協議が調わないまま本契約期間が満了したときは、本契約は更新されることなく終了する。
第3項が要点です。協議が調わないときに終わるのか続くのかを書けば、協議が決裂しても宙に浮きません。
逆に、協議が調わないときも従前の条件で続けたいなら、第3項を「従前と同一の条件で1年間更新されるものとする」と書きます。どちらに倒すかは、その取引で自社が続けたい側か抜けたい側かで決まります。
3 「以後も同様とする」を置くなら、上限か見直しを添える
二の4で見たとおり、「以後も同様とする」を置き、終了に双方の合意を要する形にすると、文言上は終わりのない契約になります。裁判所が、更新条項の拘束力を弱く解したうえでやむを得ない事由による更新拒絶を認めた例はありますが、それは争いになってからの話です。
条項の側で手当てするなら、次のどちらかです。
3 前項による更新は、通算○回を限度とする。
3 本契約の締結日から○年を経過した後は、甲および乙は、更新後の期間における取引条件について協議するものとする。
前者は回数で切る形、後者は条件の見直しを協議する形です。後者を使うなら、協議がまとまらなかったときに終了できる権利とその時期も書いておきます。協議の義務だけでは、協議が不調に終わっても契約は終わらないからです。
四 相手方への説明のしかた
更新後の期間を書き足すよう求めると、相手方からは「同一の条件で更新すると書いてあるのだから期間も同じでしょう」という反応が返ってきます。
そのときに使えるのが、二の1の整理です。同一の条件と読む考え方と、期間の定めのない契約になると読む考え方の両方があり、最終的には当事者の意思の合理的解釈で決まる(注3)。どちらが正しいかを議論するより、どちらとも読めることを示すほうが早く通ります。
書き足す文言は「1年間更新されるものとし」の一言なので、相手方にとっても不利益が具体的に見えません。この修正は、実務では比較的通りやすい部類です。
「以後も同様とする」の上限を求めるときは、通りにくくなります。相手方が継続を期待している側なら、回数の上限は不利益そのものだからです。そのときは三の3の後者、条件の見直しを義務づける形に切り替えます。終わらせる話ではなく、見直す話にすると、相手方が受け入れやすくなります。
なお、二の4の裁判例を交渉の場で持ち出すかどうかは、慎重に判断します。この判決は、契約期間を交渉した当事者間で、更新条項が特段の交渉対象とされなかったという事情を重く見ています(注4)。同じ理屈は自社にも向きます。
五 どこまで直すか
優先して直すのは、更新後の期間です。二の1のとおり、ここが決まらないと更新後に中途解約できるかどうかまで決まりません。一言で足りるので、費用対効果がいちばん高い修正です。
次が2回目以降の扱いです。「以後も同様とする」の一言を足すか、あるいは1回限りにするか。どちらでもよいので、決めておきます。
協議で更新する形の契約は、協議が調わなかった場合の帰結を必ず入れます。ここが空いていると、期間満了の直前に交渉材料として使われます。
これに対して、「以後も同様とする」の回数上限や見直し条項は、優先度が下がります。三の3のとおり置ければ望ましいのですが、相手方の抵抗が大きく、かつ二の4のとおり裁判所がやむを得ない事由による更新拒絶を認める余地があるためです。
そして、更新条項を直したら、更新の記録を残す運用まで決めます。何度更新されたのか、条件を変えたことがあるのかは、後日、継続的契約終了の制限の法理が問題になったときに効いてきます。契約書の条項だけでは決まらない部分です。
本稿で扱わなかったこと
自動更新条項そのものの設計は、別稿「自動更新条項:意義と留意点」が扱います。通知の期限・方法をどう書くかは、そちらです。
期間の始期・終期の書き方と、「満了の○か月前まで」の数え方は、別稿「契約期間の始期・終期と期間の計算方法」が扱います。
更新後が期間の定めのない契約になった場合に中途解約できるかは、別稿「中途解約条項:留保しないとどうなるか」が扱います。
更新拒絶が認められるかという紛争そのものは、22章と27章の記事が扱います。更新条項の書き方と、更新拒絶が認められるかは別の問題です。
参考文献等
註
(注1)秦周平ほか編『契約書リーガルチェックのポイント──事例でみるトラブル条項例』(新日本法規出版、2020)設問7(自動更新の期間の定めが明確でなく、更新後の期間条件が問題となる場合)が掲げる条項例
(注2)太田大三『契約書一般条項のポイント──ドラフトに効く、レビューに活きる』(商事法務、2026)6頁の記載例②。日付を○に置き換えています。同書9頁は、この形の条項について、当事者が合意をすれば更新されるという当然のことを定めたもので、協議の端緒としての実務的な意味があると説明しています。
(注3)前掲注1の設問7の解説4・解説5
(注4)大阪地判平成27年8月20日(平成26年(ワ)第2839号、裁判所ウェブサイト)
(注5)前掲注1の設問7の改善例
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