再委託の可否と承諾の要否:請負なら自由、準委任なら制限という建付け

10 共通条項の条項別解説

【基礎実務】最終確認:2026年10月25日

一 問題の所在:何も書かないと、再委託できるのか

業務委託契約に、再委託の条項がありません。受託者が、業務の一部を別の会社に出しました。委託者は、これを止められるのか。

答えは、その契約が請負なのか準委任なのかで変わります。

民法は、委任について自己執行を原則とする規定を置いています(644条の2)。準委任にはこれが準用されます(656条)。他方、請負にはこれに対応する規定がありません。

つまり、条項を書かなかった場合に何が起きるかは、契約類型で分かれます。この記事は、その建付けを確認したうえで、契約書でどう書くかに進みます。


二 制度の枠組み

1 委任・準委任には、自己執行義務の規定がある

2017年改正で新設された条文です。

(復受任者の選任等) 第六百四十四条の二 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。 2 代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。(注1)

この規定は、法律行為でない事務の委託、すなわち準委任にも準用されます(656条)(注2)。

2017年改正は、受任者の自己執行が原則であることを明確に規定し、復委任(復受任)が許される要件と、復受任者と委任者との権利義務関係を規定しました(注3)。

2 「委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき」

再委託が許されるのは、この2つの場合だけです。

ただし、復受任を全く認めないことは委任事務の処理に支障をきたすことから、例外的に委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときには復受任者を選任することができる。(注4)

「やむを得ない事由」の内容は、条文にも逐条解説にも書かれていません。受任者が病気で処理できない、といった場面が考えられますが、契約実務では、この要件に頼らずに許諾の手続を決めておくことになります。

許諾は、個別の再委託ごとに求めるのが原則の形です。もっとも、契約の締結時にあらかじめ与えておくこともできます。四の1で見る事前承諾型の条項は、この許諾をいつ・どういう手順で与えるのかを、契約の側で先に決めておくものです。

3 復受任者は、委任者に対して直接義務を負うか

644条の2第2項は、復受任者が委任者に対して受任者と同一の権利を有し義務を負うと定めています(注1)。もっとも、これは「代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したとき」に限られます。

この規定は、改正前民法107条2項(改正民106条2項)の規定の内容を維持したまま、委任にも取り入れたものです(注5)。

業務委託契約の多くは、代理権の授与を伴いません。システムの開発、データの入力、施設の管理といった事務の委託では、受託者が委託者を代理して法律行為をするわけではないからです。この場合、644条の2第2項は働かず、委託者と再委託先との間に、この規定による直接の権利義務は生じません。

再委託先の行為について誰が何を負うのかは、別稿(再委託先の行為に対する責任)が扱います。ここでは、民法が用意している直接の権利義務は、代理権を伴う場面に限られるという点を押さえておきます。

4 請負には、対応する規定がない

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です(632条)(注6)。民法は、請負人が自ら仕事をすべきかどうかについて、何も定めていません。

売買契約における再委託についても、法律上、再委託の可否に関する特段の定めはありません。商慣習ないし取引上の信義則に照らしてこれを否定すべきであるような例外的場合を除き、原則として、売主は買主の承諾を得ることなく自由に再委託することができます(注7)。

仕事の結果さえ出れば、誰がやったかは問わない。これが請負の建付けです。


三 解釈:なぜ委任だけ制限されるのか

1 委任は、人を選んで頼む契約だから

条文の位置づけを、逐条解説が説明しています。

644条の2第1項の規定の仕方は、任意代理人による復代理人の選任の規定(104条)と平仄を合わせた文言となっており、代理は外部関係であり、委任は内部関係であることを明確にしている。(注5)

104条は、委任による代理人は本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ復代理人を選任することができない、と定めています(注8)。法定代理人が自己の責任で復代理人を選任できる(105条)のと、対照的です(注9)。

本人が選んだ代理人だから勝手に他人に代われない、という考え方が、委任にも同じ形で入っている、ということになります。

2 改正前も、結論は同じだった

もっとも、この条文は新しい規律を作ったわけではありません。

改正前民法は、委任の節(第10節)に受任者の自己執行義務や復受任の可否についての規定がなく、代理の規定が類推適用されてきた。しかし、委任は代理の内部関係の一つであり、委任によらない代理もあれば、代理権の授与を伴わない委任もある。復受任者に事務を処理させることが債務不履行にあたるか否かは、委任の内部的な問題であり、代理権の有無にかかわらない。改正法では自己執行義務に関する規定を新設し(644条の2)、受任者が自己執行義務を負うことを明確に規定した。(注4)

そして、実務への影響についてはこう述べています。

実務に影響はない。改正前民法の下でも、受任者に代理権があるときは104条により、代理権がないときも同条の類推適用により、復代理と同一の要件で復委任は認められてきた(大判大正10・11・3民録27輯1894頁参照)。(注10)

条文ができたことで変わったのは、根拠の示し方だけです。交渉の場で「民法644条の2により、御社は当社の許諾なく再委託できません」と言えるようになった、という違いはあります。

3 契約類型の見分けがつかない、という問題

二の建付けは明快ですが、実際の契約では機能しないことがあります。目の前の契約が請負なのか準委任なのかが、決まらないからです。

システム開発では、要件定義は準委任、設計・製造は請負、という形で工程ごとに性質が分かれることがあります。保守運用の契約も、作業の内容によって両方の要素を含みます。性質決定が争いになる場面では、再委託の可否も一緒に不明になります。

だから条項を置きます。民法の規定を確認するためではなく、性質決定の争いを飛ばして結論を固定するためです。


四 契約実務への還元

1 3つの書き方

再委託の条項は、次の3つに整理できます。

型書き方民法との関係
全面禁止型再委託を一切認めない委任・準委任なら民法より厳しい(許諾の余地をなくす)。請負なら民法を修正する
事前承諾型委託者の事前の書面による承諾を要する委任・準委任の原則に近い。請負なら民法を修正する
事前通知型・事後報告型再委託できるが、通知・報告を要する委任・準委任の原則を緩める。請負なら民法どおり+手続

雛形は、事前承諾型です。委託者は受託者の能力や技能を評価したうえで業務委託先として選定しているので、受託者が委託者の同意なく受託業務を第三者に再委託し得るものとするのは望ましくないからです(注11)。

第4条(再委託) 1 乙は、次に掲げる再委託先候補に関する事項を甲に通知し、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、乙と業務委託契約又はこれに類する契約(以下「再委託契約」という)を締結した第三者(以下これらを「再委託先」という)に、本件業務を必要な範囲で再委託することができる。 (1) 住所及び名称又は商号 (2) 乙と再委託先候補との間の取引関係及び取引実績 (3) 再委託する業務の内容及び範囲 (4) その他、甲が必要とする情報 2 乙が、再委託先候補に対して再委託する場合、書面をもって本契約において乙が遵守すべき事項を再委託先の義務とする再委託契約を締結しなければならない。 3 乙は、再委託先が本契約の各条項を遵守するよう管理監督するとともに、それらの業務の実施に係る一切の行為に関して、乙が為したものとして、甲に対し一切の責任を負う。(注12)

通知する事項を、承諾の要件として1項に組み込んでいる点が要です。「通知し、承諾を得た場合に限り」という書き方なので、通知を欠いた再委託は、承諾があっても条項違反になります。

受託者の裁量で再委託できるものとする場合の条項例もあります。事後的に委託者が再委託先の適性を判断し、再委託を中止させる形です(注13)。

2 「承諾する」だけでは足りない

事前承諾型を選んだ場合、承諾するかどうかを何で判断するのかが問題になります。

雛形4条1項は、通知すべき事項を4つ挙げています。住所および名称または商号、受託者と再委託先との間の取引関係および取引実績、再委託する業務の内容および範囲、その他委託者が必要とする情報です(注12)。

取引実績が入っている点が実務的です。再委託先の名前だけを見ても、判断はできません。

3 受託者のときに、全面禁止を飲むリスク

自社が受託者側で全面禁止条項を提示された場合、注意が要ります。

受注時点で再委託先が決まっていない案件では、全面禁止は履行の方法を縛ります。繁忙期に人手が足りず外部に出す、専門性の高い一部工程だけを別会社に頼む、といった対応ができなくなります。

売買契約の解説ですが、売主としては、再委託先が多数に上る場合など、再委託に買主の事前の書面承諾を要する条項を設けることの不都合が大きい場合には、当該条項の削除や、商品の重要部品の再委託に限るという限定を設けることが考えられます(注14)。全面禁止であれば、なおさら同じ交渉が必要になります。

限定の方向は2つです。業務の重要部分に限って承諾を要するとするか、あらかじめ列挙した再委託先については包括的に承諾を得ておくか。契約締結時点で外注先が見えているなら、後者が確実です。

4 承諾するときに、条件を付ける

事前承諾型の条項は、承諾するかしないかの二択に見えますが、実際には条件を付けて承諾することができます。

  • 期間・範囲を切る この案件に限る、この工程に限る、○年○月までに限る、と範囲や期間を限定して承諾する
  • 変更時の再承諾を求める 承諾した再委託先を変更する場合は、あらためて承諾を得るものとする
  • 再々委託を禁じる 承諾の条件として、再委託先がさらに外部に出すことを禁じる

3つ目が抜けやすいところです。条項が「再委託」しか書いていないと、再委託先から先の流れが見えなくなります。承諾書に一文入れておけば足ります。

5 個人データを扱うなら、選択肢が狭まる

扱う情報に個人データが含まれる場合、再委託の条項は、委託元が法律上負う監督義務を果たせる形にしておく必要があります。

個人情報保護法25条は、委託元に対し、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行うことを義務づけています(注15)。委託先が再委託を行おうとする場合について、ガイドラインは、委託元が委託先から事前報告を受け又は承認を行うこと等により、委託先が再委託先に対する監督を適切に果たすことを十分に確認することが望ましいとしています(注16)。

この場面では、委託元が必要かつ適切な監督を行える設計にしなければなりません(個人情報保護法25条)。ガイドラインは再委託先の事前報告や承認を望ましい対応として示しているので、事後報告型で足りるかは、データの性質やリスク、ほかの監督措置と併せて慎重に判断することになります。詳細は別稿(再委託の扱い、委託先監督義務と契約条項)が扱います。


五 まとめ:条項がないときに何が起きるか

契約類型条項がないとき条項を置く意味
委任・準委任許諾またはやむを得ない事由がなければ再委託できない(644条の2・656条)許諾の手続と判断材料を決める
請負原則として自由制限そのものを作る
性質が不明確争いになる争いを飛ばして結論を固定する

3行目が、実務でいちばん多い状態です。再委託先の行為について誰が責任を負うかは、別稿(再委託先の行為に対する責任)が扱います。


参考文献等

註

(注1)民法644条の2
(注2)民法656条
(注3)大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編『実務家のための逐条解説 新債権法』(有斐閣、2021)652頁
(注4)前掲注3・652〜653頁
(注5)前掲注3・653頁
(注6)民法632条
(注7)阿部・井窪・片山法律事務所編『契約書作成の実務と書式──企業実務家視点の雛形とその解説〔第3版〕』(有斐閣、2025)71頁
(注8)民法104条
(注9)民法105条
(注10)前掲注3・654頁の「(1) 財産法関係」の項
(注11)前掲注7・192頁
(注12)前掲注7・183頁の雛形4条
(注13)前掲注7・193〜194頁の条項例1項
(注14)前掲注7・72頁
(注15)個人情報保護法25条
(注16)「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(平成28年11月、令和8年6月一部改正、個人情報保護委員会)3-4-4


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