通知期間の設計

10 共通条項の条項別解説

【基礎実務】最終確認:2026年10月25日

一 この条項は何をしているのか

1 書かなければ、1年で落ちる(民法566条)

契約不適合責任の条項に、期間の定めが入っていないことがあります。そのときに働くのが、この条文です。

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限) 第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。(注1)

1年の短期期間制限にかかるのは、目的物の「種類又は品質」の契約不適合の場合に限られます(注2)。権利の一部が他人に属する場合および数量不足または一部滅失の場合の短期期間制限を定めていた改正前民法564条と、地上権等がある場合の短期期間制限を定めていた改正前民法566条3項は、いずれも削除されました(注2)。

理由は、判別の難易です。種類・品質の契約不適合は判別が困難であるため、目的物を引き渡せば履行を完了したとの売主の期待も保護する必要があり、また、日々大量の売買を繰り返す売主に長期間の証拠保存を要求するのは酷だとの価値判断に基づくものです(注2)。権利の契約不適合は対抗要件制度により、数量の契約不適合は引渡しをする売主にとって、いずれも判別が容易だからです(注2)。

「種類・品質は1年、権利と数量は時効の一般原則」という切り分けです。

2 商人間の売買なら、6か月が上乗せされる

相手方が商人であれば、話が変わります。

(買主による目的物の検査及び通知) 第526条 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。 2 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。 3 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。(注1)

商法526条は、民法566条と4点で異なります(注3)。

違い内容
① 検査義務商法には買主の検査義務が定められている
② 対象目的物の種類・品質に加えて、数量不足についても適用される
③ 主義通知が発信主義である(民法566条の通知は到達主義。民法97条1項)
④ 売主の重過失適用除外を定める3項が「悪意」しか書いていない

適用範囲は広いと考えておくのが安全です。商人間の売買であれば、特定物に限らず不特定物の場合にも適用されます(注4)。もっとも、改正前の事案ですが、給付された商品が契約目的物とは全く別物であるというように売主に基本的な誤りがある場合には、買主は検査通知義務によって権利行使を制約されないとした裁判例があります(注5)。ただし現行法は「種類」の不適合も対象に明記しているので、どこまでが「別物」かは慎重に見ておく必要があります。

そして、通知を怠ったときに落ちるのは、契約不適合責任の追及だけではありません。

……この規定の趣旨に照らせば、右により契約を解除しえず、また、損害の賠償をも請求しえなくなつた後においては、かりになお完全な給付が可能であるとしても、買主は、売主に対して、もはや完全な給付を請求しえないものと解するのが相当である(注6)

通知を欠けば、完全な給付を求めることもできなくなります。商事売買では商法526条が広く適用され、検査・通知義務を怠ると、契約不適合責任に基づく請求も債務不履行に基づく完全履行請求も行使し得ないと捉えておくべきです(注7)。

3 1年を守っても、その先に時効がある

見落とされやすいのが、期間が二層になっていることです。

566条の期間内に保存された買主の権利は、消滅時効の一般の規律に服し、買主が不適合を知った時から5年、または引渡し時から10年で時効消滅します(民法166条1項)(注8)。

改正前民法の下でも、瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は買主が目的物の引渡しを受けた時から進行するとされていました(注9)。

注意を要するのは、買主が不適合を認識しない場合です。改正前民法の下でも、買主が瑕疵を認識しなければ1年の期間は起算されないが、認識しないままでも引渡しから10年で時効消滅するとされていました(注10)。現行法でも、引渡しの時から10年で消滅時効が完成すると考えられます(民法166条1項2号)。


二 よくある条項例

(契約不適合) 第○条 甲は、乙から引き渡された本製品について、契約の内容に適合しない事由があることが判明した場合、乙に対して、本製品の修理又は代品の納入を求めることができる。(注11)

期間について何も書いていない条項です。この形だと、買主は契約不適合を「知った時」から1年以内にその旨を通知すればよいことになり(民法566条)、始期が買主の主観によることとなって不明瞭になります。請負の注文者の権利の期間制限(民法637条1項)についても、同じ問題があります(注11)。


三 問題点

1 起算点が、相手方の頭の中で決まる

一の1のとおり、民法566条の起算点は「知った時」です。売主から見れば、いつ起算されたのかを自分では確かめられません。

そこで、請負について、請負人の立場からは、契約書中で引渡しや検収合格から1年以内などと定めて、期間の始期の客観化を図ることが考えられます(民法637条1項)(注12)。売買でも、民法566条の起算点は同じく買主の主観によるので、売主の立場から同じ手当てが考えられます。

2 通知に何を書けば「通知」になるかが決まっていない

条項に「通知する」とだけ書いても、何を書けば足りるのかは決まりません。

改正前民法では、買主が瑕疵を知った時から1年以内にすべき行為は「契約の解除又は損害賠償の請求」という権利の行使とされていました(注13)。最高裁は、この1年を除斥期間と解したうえで、権利を保存するには売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判上の権利行使までは必要ないとしました(注14)。

その「明確に告げる」の中身が、次のとおり示されています。保存のためには、少なくとも、売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要があるとしました(注14)。実務上は、権利行使とほぼ同じ行為を求めるものだったといえます(注15)。

改正民法は、これを「不適合の事実の通知」に緩和しました(注16)。もっとも、中身が要らなくなったわけではありません。通知の趣旨は、時間の経過とともに不分明となっていく契約不適合につき早期に売主に内容を認識・把握させる機会を付与することにあるから、単に抽象的に契約不適合があると通知するだけでは足りず、売主が内容を把握することが可能な程度に不適合の種類・範囲を伝えれば足ります(注17)。

どこまで書けば足りるのかは、商法526条の前身である当時の商法288条について、大審院が示しています。船舶の売買で、買主が、重量噸数の不足や速力の遅緩とあわせて、汽機汽鑵(機関とボイラー)に構作上の根本的な不完全があるという以上の具体的な内容を示さずに通知した事案です(注18)。

従テ単ニ瑕疵アリト通知シタルノミニテハ未タ十分ナラス猶瑕疵ノ種類及大体ノ範囲ヲ通知スルコトヲ要ス然レトモ其ノ細目特ニ数量ノ如キハ之ヲ通知スルコトヲ要セサルモノトス何トナレハ此等ハ何時ニテモ点検ノ上之ヲ知ルコトヲ得ヘケレハナリ(注18)

原審は、機関のどの部分にどんな不具合があるのかを詳細に示さなければ適法な通知でないとしていましたが、破棄されました。船舶の売買である以上、機関部分に根本的な瑕疵があると伝えれば足りる、という判断です(注18)。

細目まで書く必要はないが、「不具合があります」だけでは足りない。この線は、改正民法566条の通知でもおよそ同程度と解されています(注17)。

3 短縮特約は有効だが、効かない場面がある

期間を短くする特約は、置けます。契約不適合責任を負わない旨の特約が有効である以上(民法572条)、全面的な免責特約はもちろん、権利保存期間を短縮する特約も有効です(注19)。ただし、売主が知りながら告げなかった不適合については、特約をしても責任を免れません(民法572条)。

法定の期間制限についても、売主の側に問題があるときは外れます。民法566条ただし書は、売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、期間制限が適用されないとしています。

商法526条3項は「悪意」としか書いていませんが、ここも同じ扱いにした裁判例があります。バーコードネームの製造販売で、誤ったバーコードが印刷された製品を大量に納入した事案です(注20)。

保護されるべき売主の信頼は正当なものであることが求められるというべきであり,瑕疵の存在を知らないことにつき売主に重過失があるときには,悪意の場合と同視し,売主は同項により保護されないものと解するのが相当である(注20)

理由の1つとして挙げられているのが、民法566条です。債権法改正により、目的物が契約内容に不適合であることにつき引渡時に悪意または重過失であった売主には、担保責任の期間制限規定が適用されないとされました。その背景となる利益衡量は、商法526条3項の解釈においても参考とし得ます(注20)。

民法の改正が、商法の解釈の参考にされています。この事案では、正確なバーコードの納入という最重要の義務について、生産工程の各段階での基本的ミスが競合したことが重過失と評価され、6か月の期間制限は外れました(注20)。


四 改善例

1 始期を、引渡しか検収合格に固定する

改善例は、2つの形です(注21)。

① 引渡しを始期とする場合 (契約不適合) 第○条 甲は、乙から引き渡された本製品について、引渡しを受けた後1年以内に契約の内容に適合しない事由があることが判明した場合、乙に対して、本製品の修理又は代品の納入を求めることができる。(注21)

② 検収合格を始期とする場合 (契約不適合) 第○条 甲は、乙から引き渡された本製品について、第△条に定める検収に合格した後1年以内に契約の内容に適合しない事由があることが判明した場合、乙に対して、本製品の修理又は代品の納入を求めることができる。(注21)

いずれも、双方が認識可能な引渡しまたは検収合格時を始期として、権利行使の期間制限を定めたものです(注21)。

②を採るなら、検収の条項と番号でつなぎます。合否がいつ確定するかが別条で決まっていなければ、始期は動きます。

2 立場によって、期間と要件を組み替える

買主側と売主側の条項例を並べると、次のようになります(注22)。

(条項例①)※ 甲は買主、乙は売主である。 商品に第4条第1項に定める検査では発見できない契約不適合があり、甲が検収後1年以内にその旨を通知したときは、乙は、甲に対し、甲の選択に従い、代品の納品、商品の修補又は部品の交換に応じる。なお、甲の乙に対する損害賠償の請求を妨げない。(注22)

(条項例②)※ 甲は買主、乙は売主である。 1 商品に第4条第1項に定める検査では発見できない契約不適合があり、乙の責めに帰すべき事由による契約不適合で、かつ納品後6か月以内に甲が契約不適合を発見し、通知したときは、乙は、甲に対し、甲の選択に従い、代品の納品、商品の修補又は部品の交換(以下「代品の納品等」という)に応じる。 2 乙が前項の定めによる代品の納品等をなし得なかった場合に限り、甲は、乙に対し、代品の納品等に代えて損害賠償を請求することができる。(注22)

①が買主側で、検収後1年以内に通知すればよい内容としています(注22)。②が売主側で、代品の納品等に応じる場合を、売主の責めに帰すべき事由による契約不適合でかつ納品後6か月以内に発見・通知された場合に限定し、さらに損害賠償請求をなし得る場合を制限しています(注22)。

②の「乙の責めに帰すべき事由による」は、民法の原則を変えている部分です。追完請求と代金減額請求のいずれにおいても、売主の帰責事由は不要だからです(注23)。

3 通知の中身を、条項に書く

三の2への手当てです。通知の内容を条項で決めておけば、「通知した」「あれは通知でない」という争いが減ります。

3 前項の通知は、契約不適合の内容および対象となる商品を特定してするものとし、書面又は電子メールにより行う。

商人間の売買では、これに加えて商法526条の6か月と発信主義が別に働きます。


五 書き分けの分岐:売主側と買主側

立場望ましい形
売主(受注者)始期を引渡しまたは検収合格に固定する(四の1)。期間を6か月に短縮する。帰責事由を要件に加える(四の2の条項例②)。救済手段を代品の納品等に絞り、損害賠償を制限する
買主(発注者)始期を検収合格とし、期間を1年以上取る(四の2の条項例①)。救済手段の選択権を買主に置く。損害賠償請求を妨げない旨を明記する
商人間の売買で買主に立つ場合商法526条の適用を意識し、検査体制と通知の記録を運用で固める。契約不適合の期間だけを延ばしても、検査・通知の手続を契約で別に定めていなければ、一の2のとおり商法526条で落ちる

交渉で正面から衝突するのは、期間の長さではなく起算点です。納品から検収までに数週間かかる取引では、この差がそのまま期間の差になります。

落としどころとして使えるのは、起算点を検収合格に譲る代わりに期間を短くする組み合わせです。売主は始期が確定し、買主は検査期間を期間に食われません。

そして、この条項を置いたら、通知の宛先と方法を運用に落とします。争われたときに残るのは、条項の文言ではなく実際に送った書面です。

本稿で扱わなかったこと

契約不適合責任の全体像と、4つの救済手段の関係は、別稿「契約不適合責任の全体像」が扱います。

請負における修補・報酬減額・出来高請求は、別稿「請負における修補・報酬減額・出来高請求」が扱います。本稿の三の1で触れた民法637条1項は、そちらでも扱います。

契約不適合責任を免除・軽減する条項の限界は、別稿「契約不適合責任を免除・軽減する条項の限界」が扱います。三の3の短縮特約は、免除特約の一種として位置づけられます。

納品・検査・検収の条項そのものの設計は、本稿では扱いません。

不動産売買における宅地建物取引業法40条・住宅の品質確保の促進等に関する法律の期間制限も、本稿では扱いません。当事者の属性によって適用条文が変わる点は、本稿では民法と商法だけを扱いました。

消滅時効の起算点と期間そのものは、別稿「消滅時効の全体像と契約実務への影響:協議の合意という道具」が扱います。


参考文献等

註

(注1)民法566条、商法526条
(注2)大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編『実務家のための逐条解説新債権法』(有斐閣、2021)521〜522頁
(注3)同547頁
(注4)最判昭和35年12月2日民集14巻13号2893頁(昭和33年(オ)第409号)
(注5)東京地判平成2年4月25日判例時報1368号123頁(昭和61年(ワ)第12190号・昭和63年(ワ)第389号、判例秘書L04530131)
(注6)最判昭和47年1月25日集民105号19頁(昭和46年(オ)第533号)
(注7)阿部・井窪・片山法律事務所編『契約書作成の実務と書式──企業実務家視点の雛形とその解説〔第3版〕』(有斐閣、2025)44頁
(注8)前掲注2・546頁
(注9)最判平成13年11月27日民集55巻6号1311頁(平成10年(オ)第773号)
(注10)前掲注2・545頁
(注11)秦周平ほか編『契約書リーガルチェックのポイント──事例でみるトラブル条項例』(新日本法規出版、2020)設問30(契約不適合責任に基づく権利行使の期間制限が問題となる場合)が掲げる条項例および問題点
(注12)同設問30の解説2
(注13)前掲注2・543頁
(注14)最判平成4年10月20日民集46巻7号1129頁(昭和63年(オ)第1543号)
(注15)前掲注2・544頁
(注16)同522頁
(注17)同522頁・546頁。同書は「通知」の意義について次註の大審院判例および中田裕康『契約法』(有斐閣、2017)320頁を引き、これとおよそ同程度の特定が必要と解されるとします
(注18)大判大正11年4月1日民集1巻155頁(大正10年(オ)第990号、LEX/DB文献番号27511094)。当時の商法288条についての判断です
(注19)前掲注2・546頁
(注20)東京高判令和4年12月8日判例タイムズ1521号131頁(令和4年(ネ)第1694号、判例秘書L07720814)
(注21)前掲注11の設問30の改善例①・改善例②および解説3
(注22)前掲注7・66頁の条項例①・条項例②
(注23)同43頁


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